日常回のような何か。大きな進展もあります。
主に洋平と“鳳翔”にとって。
2009年8月中旬
国防省 特務艦隊司令部
「……八月か。もう夏なんだな」
いつものように執務机へ向かっていた洋平は、ふとパソコンの隅に表示された日付を見て、力なく呟いた。
窓のない地下深くの司令部では、外が晴れているのか雨なのかさえ分からない。室温も一年を通してほぼ一定で、意識して日付を確認しなければ、季節感など簡単に失われてしまう。
「最近は猛暑日が続いているそうですよ」
隣で書類を整理していた“鳳翔”が、少し困ったように笑った。
「ここは地下ですし、提督は最近ほとんど地上へ出ておられませんから、余計に感覚が狂ってしまいますね」
「猛暑日、ねぇ……」
洋平は椅子の背へ身体を預けた。
深海棲艦との戦争が始まる以前なら、こんなことはなかった。だが、開戦から九年近くが経ち、国防軍の中枢で昼夜を問わず働く人間は増え続けている。
今年に入ってからは大規模な外洋作戦こそ控えているものの、哨戒、警戒、艦娘部隊の出撃調整、各地の基地との連絡、G5各国との情報交換、第二世代計画への対応など、仕事が減ったわけではない。
特務艦隊司令長官であり、第一特務艦隊司令官まで兼任している洋平は、その中心にいた。
気付けば、今年も半分をとうに過ぎている。世間では盆休みに入る頃だというのに、洋平に休暇の予定はなかった。そもそも、まともに何日も仕事を離れたのがいつだったか、本人にもすぐには思い出せない。
「せめて……」
洋平は、机の端に置かれた家族写真へ視線を落とした。
「父さんと母さんの墓参りくらいは行きたいんだけどな」
“鳳翔”の手が止まる。
「今年も、海斗さんと美香さんにお願いするのですか?」
「そうするしかないだろ。この仕事量じゃ、北海道まで行って一泊して戻ってくるだけでも厳しい」
「……そうですか」
少し寂しそうに答える“鳳翔”へ、洋平は苦笑した。
「まあ、墓が逃げるわけでもないさ。落ち着いたら行くよ」
そう言って、再びキーボードへ手を伸ばす。
結局、その『落ち着いたら』が何年も来ていないことには、触れなかった。
二日後の午前。
「墓参り行くぞ、兄貴」
「……来て早々、何だよ?」
突然、国防省へ海斗と美香が現れた。しかも二人だけではない。護衛を兼ねて“出雲”と“磐手”まで連れてきている。
事前連絡すらまともになかったため、洋平はそれだけでも驚いたのだが、執務室へ入るなり海斗が発した言葉で、驚きは困惑へ変わった。
「だから、墓参り。今年まだ行ってないんだろ?」
「そりゃ行ってないけど……仕事はどうするんだよ」
「一日くらい何とかなるだろ」
「ならねぇからここにいるんだよ」
即座に返す洋平へ、美香が呆れたように腰へ手を当てる。
「兄さん、自分で抱え込み過ぎなのよ。全部自分で確認しようとするから終わらないんでしょう?」
「いや、でも最終的な責任は俺に───」
「だからって、書類一枚一枚まで全部自分で処理する必要は無いだろ」
海斗も続けた。
「一特艦にも司令部にも、仕事の出来る奴はいるんだから任せろよ。艦娘達だって、頼めば喜んで手伝ってくれるぞ」
洋平が何か言い返そうとしたが、その横で“鳳翔”が静かに頷いた。
「私も、その点については海斗さん達に賛成です」
「鳳翔まで……」
「提督は、少しお休みになるべきです」
味方がいない。
洋平が頭を抱えたところで、美香が笑った。
「まあ、私は別に兄さんがこのまま仕事漬けでもいいんだけどね」
「何でだよ」
「だって、その方が鳳翔ちゃんとずっと一緒にいられるんでしょ?」
「…………」
“鳳翔”の頬が、僅かに赤くなった。だが、洋平はそれに気付かない。
「美香、俺と鳳翔はそういう関係じゃ───」
そこまで言ったところで、不意に妙な圧を感じた。横を見ると、“鳳翔”が何とも言えない表情でこちらを見ている。
「……鳳翔?」
「はい」
「どうした?」
「…………いえ」
僅かな沈黙の後、“鳳翔”はぷいと顔を逸らした。
「何でもありません!」
「いや、絶対何かあるだろ」
「ありません」
耳まで赤い。それでも洋平には理由が分からない。
そんな兄を見て、海斗は深く息を吐いた。
「……兄貴」
「何だよ」
「身を固めるなら、早めにな」
「は?」
「俺達、もう二十七だぞ。アラサーだ」
「えっ……いや、だから何でその話になるんだ?」
「さあな」
海斗はそれだけ言って、美香と目を合わせた。二人とも楽しそうだった。“出雲”は苦笑し、“磐手”も何となく事情を察した顔で姉の隣に立っている。
当事者の一人だけが、完全に置いていかれていた。
なんだかんだと抵抗したものの、最終的に洋平は連れ出された。仕事については、“鳳翔”が事前に必要な引き継ぎをほぼ済ませていたらしい。つまり、最初から逃がす気はなかったのだ。
「…………暑っ」
国防省の建物から一歩外へ出た瞬間、洋平は立ち止まった。
真夏の太陽。熱せられたアスファルト。まとわりつく湿気。冷房の効いた地下で長期間過ごしていた身体へ、容赦なく襲い掛かってくる。
「何だよこれ……」
「夏だよ」
海斗が平然と答える。
「知ってるよ! でもこんな暑かったか!?」
「最近ずっとこんな感じよ」
美香が笑いながら先へ歩く。
「ほら兄さん、車までそんなにないから」
「俺、真冬以来まともに外に出てないんだけど……」
「それを反省して」
ふらつきながら、洋平も後へ続いた。
目的地は羽田。そこから神崎家が所有し、現在は東堂家へ管理を任せているプライベートジェットで北海道へ向かう。墓は、東堂家の広大な敷地の一角にあった。
二時間後、北海道へ向かう機内。
「……なあ」
洋平が隣を見る。
「何でしょう?」
座っていた“鳳翔”が微笑む。
「何で鳳翔まで来てるんだ?」
「あら」
向かい側から、美香がすぐに反応した。
「連れて行っちゃ駄目なの?」
「そういう意味じゃないけど、墓参りは神崎家の用事だろ」
「だからだよ」
海斗が何でもないように返す。
「士と加奈にも挨拶しなきゃならんし」
「……何の?」
「挨拶」
美香が意味ありげに強調する。
「ね?」
「お前らなぁ……」
その意味に気付き、洋平が頭を抱える。向かいに座る“出雲”と“磐手”は顔を見合わせたが、助け船を出すつもりはないらしい。
その一方で、当の“鳳翔”は窓の外へ視線を向けながら、別のことを考えていた。
───結婚。
先程から、海斗と美香は半ば冗談としてその言葉を使っている。洋平本人に至っては、まだまともに考えてすらいないだろう。
だが、“鳳翔”にとっては、既に冗談ではなくなっていた。
───そこまで心配するなら、洋平も艦娘研究の関係者と結婚すればいいのに。
少し前、研究所で秋吉から聞いた言葉。あの時は突然過ぎて、まともに返すことも出来なかった。
だが、その後、何度も考えた。
“鳳翔”は、洋平が好きだった。
第一特務艦隊へ配属された当初、それは信頼する上官へ向ける親愛だった。自分達艦娘を兵器としてだけではなく、一人の人間として扱ってくれる人。危険な任務から逃がすわけではない。戦うべき時には、戦えと命じる。
けれど、傷つけば心配する。無茶をすれば叱る。笑えば一緒に笑う。悩めば話を聞く。自分達が人間から理不尽な扱いを受ければ、本気で怒る。
そんな日々を重ねるうちに、その感情は少しずつ形を変えていった。
いつから恋愛感情になったのか、本人にもはっきりとは分からない。ただ、今では自分が洋平の隣にいることを、自然に思うようになっていた。
それでも、今までは口に出そうとは思わなかった。
自分は艦娘だから。人間と艦娘の結婚など、前例がない。今の制度では、そのまま認められるものでもない。
そして洋平には、いずれもっと普通の人間の女性が現れるかもしれない。そう思っていた。
だから、好きでも、それでいい。隣にいて、秘書艦として支えることが出来るなら、それで充分だと自分へ言い聞かせていた。
だが、秋吉の言葉を聞いた時、初めて思った。
『絶対に無理なこと』ではなく、『出来るようにすればいいこと』なのではないか、と。
海斗と美香も、明らかに自分の気持ちに気付いている。それどころか最近は、二人とも自分を半ば兄嫁候補のように扱っている。
そして、洋平本人は───。
「…………」
“鳳翔”は、ちらりと横を見る。当人は海斗と何やら話している。
鈍い。非常に鈍い。
しかし、嫌われてはいない。それだけは分かる。むしろ、自分をかなり大切に扱ってくれている。無自覚である可能性は高いけれど、少なくとも脈なしではない。
なら、自分から動けばいい。
制度のこと、政治的な意味、今後考えなければならないことは沢山ある。だが、その前に一番大事なのは、自分がどうしたいのかということだった。
答えは、既に出ている。
洋平と一緒にいたい。出来るなら、上官と部下ではなく、もっと近い家族として。
周囲が背中を押してくれているのなら、もう遠慮する理由はない。
(……頑張りましょう)
“鳳翔”は、静かに拳を握った。隣に座る洋平は、当然ながら、その決意に気付いていなかった。
その日の夕方、北海道の東堂家。
「久しぶり、兄ちゃん達」
「本当に久しぶりだね」
数年ぶりに顔を合わせた士と加奈は、以前より随分と成長していた。士は十七歳、加奈は十四歳である。
海斗は士を見るなり、持ってきた包みを押し付けた。
「ほら、誕生日プレゼント。遅くなったけどな」
「ありがと、海斗兄ちゃん」
「いやぁ、それにしてもデカくなったな、お前!」
そう言って昔と同じように頭を撫でようとする。だが、以前とは違い、海斗の腕はほぼ水平だった。しかも士の方が僅かに屈んでくれている。
「……お前、もうちょっと子供のままでいろよ」
「無茶言わないでよ」
その横では、美香が加奈を抱き締めていた。
「加奈ー! 久しぶり!」
「ちょ、美香姉ちゃん苦しい!」
こちらは、昔とあまり変わらない。
“出雲”も久々の再会を喜び、“磐手”は初めて士と加奈へ紹介された。
そして最後に、海斗が“鳳翔”を見る。
「で、士」
「うん?」
「この人が兄貴の奥さん」
「だから違うって言ってるだろ!」
間髪入れず、洋平が突っ込んだ。
「はいはい」
海斗は全く悪びれない。
「今はまだ違うらしい。兄貴の艦隊にいる空母艦娘、“鳳翔”だ」
「今はまだ、って何だよ」
洋平の抗議を無視し、士が“鳳翔”へ向き直る。
「初めまして。東堂士です」
「航空母艦“鳳翔”です。よろしくお願い致します」
丁寧に頭を下げる“鳳翔”を見て、士は少し固まった。
(……綺麗な人だな)
隣にいた加奈が、すっと目を細める。何かを感じ取ったらしい。
「どうした、加奈?」
「別に」
「?」
その後、久々に集まった一同で夕食を囲み、ちょっとした宴会のような時間になった。途中、士が加奈に締め技を掛けられていたが、理由を聞いても、加奈は「何となく」としか答えなかった。
士にとっては理不尽な話だが、周囲は誰も助けない。東堂家では、いつもの光景だった。
夜。
食事を終え、皆で片付けをしていた時、士が小さな声で“鳳翔”を呼び止めた。
「鳳翔さん」
「はい、何でしょうか?」
“鳳翔”が振り返る。少し離れた場所では、加奈も食器を片付けている。こちらを見てはいないが、明らかに聞いていた。
士は少しだけ頭を掻いた。
「俺、こういう時に何言えばいいのか、あんまり分からないんですけど」
「はい」
「……頑張って下さい」
“鳳翔”は、一瞬だけ目を丸くした。
「洋平兄ちゃんのこと」
言われた意味は、すぐに分かった。
「兄ちゃん、ああいう人だから、自分からは多分なかなか動かないと思うんで」
「士」
加奈が低い声を出す。
「余計なことまで言わない」
「でも本当だろ?」
「それはそうだけど」
二人のやり取りに、“鳳翔”は思わず笑った。そして深く頭を下げる。
「ありがとうございます」
顔を上げた時、その表情は先程より明るくなっていた。
「頑張らせていただきますね」
「はい」
士も笑う。加奈も小さく微笑んだ。
海斗や美香だけではない。神崎家と東堂家、洋平に近い人達は、自分を受け入れようとしてくれている。その事実が、“鳳翔”には嬉しかった。
自分は艦娘だから、家族の輪の外にいるわけではない。そう思えた。
翌朝。
一行は、東堂家の敷地内にある墓地へ向かった。
広い敷地の一角、木々に囲まれた静かな場所に、神崎家の墓がある。そこには二人の名が刻まれていた。
神崎洋一。
そして、その妻。
ただし、納められている遺骨は一人分だけだった。
2000年、洋一は海の上で空母「瑞鶴」と共に消息を絶った。遺体は戻らなかった。
洋平は墓前へ進み、古くなった花を取り替え、線香へ火を点ける。全員がその後ろへ並んだ。
「……総員、敬礼」
洋平の声に合わせ、参列者達が一斉に敬礼した。
軍人、艦娘、そして家族。少し不思議な組み合わせだが、それでも今の神崎家らしい光景だった。
黙祷を終えると、洋平は墓へ向かってゆっくり話し始めた。
「……父さん、母さん。久しぶり」
少し照れ臭そうに笑う。
「今まで来れなくて悪かった。仕事を言い訳にしてたら、何年も経っちまった」
横で海斗も口を開いた。
「今回は俺達が無理矢理連れてきた。兄貴、そのまま放っといたら来年も再来年も同じこと言ってそうだったから」
「余計なこと言うな」
「本当だろ」
美香がくすくす笑う。その空気に、洋平も少しだけ肩の力を抜いた。
「それと今日は」
洋平が後ろを見る。
「俺達と一緒に戦ってくれてる奴らも連れてきた」
最初に、“出雲”が一歩前へ出た。
「初めまして。装甲巡洋艦“出雲”です」
静かに一礼する。
「海斗司令、美香艦長をはじめ、ご子息、ご息女の皆様には、いつも大変お世話になっております」
続いて、“磐手”が前へ出る。
「出雲型装甲巡洋艦二番艦、“磐手”です」
いつもの快活さを少し抑えた声で続ける。
「私も、皆さんにはお世話になっています。それと……」
一瞬だけ墓を見る。
「息子さん達のことは、私達が守ります。だから、安心して見ていて下さい」
海斗が僅かに笑う。
そして最後に、“鳳翔”の番が来た。
“鳳翔”は一歩前へ出て墓前に立った。
ここへ来るまで、何度も何を言うべきか考えていた。普通なら、所属を名乗り、日頃世話になっていることを伝えれば、それで充分だろう。
だが、今ここで言わなければ、また躊躇ってしまう気がした。
昨夜の士の言葉。海斗と美香の笑顔。そして、洋平の姿を思い浮かべる。
“鳳翔”は深く一礼した。
「初めまして。航空母艦“鳳翔”です」
洋平も、何となくその横顔を見る。
「御二方のご長男、神崎洋平提督の指揮下で、第一特務艦隊に所属しております」
穏やかな、いつもの“鳳翔”の声だった。
「提督には、日頃から大変お世話になっています。私達艦娘のことを誰よりも大切に考え、守ろうとして下さる方です」
洋平が少し気まずそうに目を逸らす。
「だから、これからは私も提督をお守りします。戦場でも、それ以外でも」
洋平が何か引っ掛かったように顔を上げる。
“鳳翔”は墓前をまっすぐ見つめた。
「そして、もう一つ」
背後で、海斗と美香が顔を見合わせる。士も加奈も何となく察した。“出雲”と“磐手”も僅かに目を見開く。
洋平だけが、まだ分かっていない。
“鳳翔”は胸の前で両手を重ねた。少し緊張している。それでも、もう迷いはなかった。
「神崎洋一様、奥様」
静かに、そしてはっきりと告げる。
「私、“鳳翔”は」
洋平を見る。目が合う。今度は逸らさない。
「御二方のご長男、神崎洋平さんと───」
洋平の表情が固まる。
「結婚させていただきたいと思っております」
一瞬、時間が止まった。
誰も喋らない。蝉の声だけが、やけに大きく聞こえる。
そして“鳳翔”は、さらに言葉を重ねた。
「本日は、そのご報告とご挨拶に参りました」
「…………は?」
洋平の声が、ようやく出る。
「……え?」
“鳳翔”はにこりと笑った。
「よろしくお願い致します」
墓へ深々と頭を下げる。
洋平は弟を見る。海斗は目を逸らしているが、口元は笑っていた。美香は満面の笑みを浮かべ、士は親指を立てている。加奈は少し呆れながらも笑っていた。“出雲”と“磐手”まで、何故か温かい目でこちらを見ている。
「…………いや」
洋平の顔が、徐々に赤くなる。
「待て待て待て待て」
“鳳翔”が顔を上げる。
「はい?」
「はい? じゃない!」
ついに洋平が叫んだ。
「俺、今初めて聞いたんだけど!?」
「はい」
「はい!?」
「今、初めてお伝えしましたので」
「そういう問題じゃねぇ!」
墓地へ洋平の声が響く。海斗は耐え切れず吹き出し、美香も笑った。士は肩を震わせ、加奈ですら口元を隠している。
「お前ら知ってたのか!?」
「いや」
海斗が答える。
「ここまでやるとは思ってなかった」
「じゃあ止めろよ!」
「墓前で?」
「ぐっ……!」
それを言われると弱い。
“鳳翔”は、そんな洋平を見ながら穏やかに微笑んでいる。
もちろん、墓前で宣言したからといって、それだけで結婚が成立するわけではない。洋平本人の気持ちを聞かなければならないし、法律や制度の問題も山ほど残っている。それは“鳳翔”自身も分かっていた。
それでも、まずは最初の一歩を踏み出した。もう『どうせ無理だから』と諦めるつもりはない。
「提督」
「……何だよ」
「後ほど、きちんとお話をさせて下さい」
少しだけ頬を赤くしながらも、“鳳翔”は真っ直ぐに言った。
洋平は暫く何も言えなかった。やがて頭を掻き、大きく息を吐く。
「……分かったよ」
“鳳翔”の顔が明るくなる。
「はい!」
その返事を聞いて、周囲がまた笑う。
洋平だけは、自分が何故こんな大事な話に突然巻き込まれ、結婚まで決まりかけているのか、まだ理解が追いついていなかった。
ただ、一つだけ確かなことがある。
長く上官と部下として続いてきた神崎洋平と“鳳翔”の関係は、この日初めて、その枠の外へ一歩を踏み出した。
そして二人は、まだ知らない。
その一歩が、二人だけの問題では終わらないことを。
次に待っているのは、恋愛のその先。今の日本にも世界にも、誰も答えを持っていない問いだった。
人間と艦娘は、結婚出来るのか。
───その答えを、これから自分達で作ることになる。
続く
あ と が き
外堀埋めての奇襲こそ最強戦術。
次回 ケッコンカッコガチ