自我持つ兵器の英雄譚   作:Nyappy-

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“ゼロ”を希空の理想通り(ガチのチート)にするにはこれくらいは、という事で超技術かつド直球な他作品ネタ注意。
(以前の希空のセリフから既にお察しの方も居るかも)

まぁ、ほぼ魔法レベルにイカれてる超技術の塊な
艦娘関係技術に比べればたいした事は無いですがね。

えっ、そりゃ「艦これの二次創作」だから当然?

まあそれは…そう、まあ…そうね。(北上様並感)



28. 改造少女の幼稚な発明(マッドサイエンス)

 

4月10日 艦娘技術研究所

 

「んん〜〜……」

 

この日、希空は自身の研究室で珍しく唸っていた。

その手元にあるのは、研究のために分解した宇宙戦艦のプラモデル、その機関部。

以前、1番のお気に入りだと両親に話していた物だ。

 

 

「この構造そのままで、実際に造れないかな?サイズは別にどれだけ大型になっても、大丈夫だし。艦娘の縮小技術を使えばOKだもん」

 

彼女が考えているのは、“ゼロ”の搭載機関のこと。

“ゼロ”の設計上、最もその性能を左右すると言っても過言ではない機関部で妥協したくないと考えた結果、彼女は秘密裏にある計画を立ち上げていた。その内容は他人が見ればまず間違いなく「無謀」「SFの見過ぎ」などと嘲笑うような代物だった。

 

「……本当、妖精さんの科学力の賜物だよね……。私1人じゃあ、理論は考えられても実際に造るのはきっと無理だっただろうし」

 

 

「反物質生成も安定したから、残ってる問題は……

核融合炉から数段先の機関を造れるだけの設備と、

 

…………1番肝心な“燃料”。

マイクロブラックホールの安定稼働は大前提として、

余剰次元に関する理論の確立も必要。後は───」

 

 

そこまで呟き、希空は改めて手元の機関を見る。

 

 

「……タキオン粒子、か」

 

頬杖をつきながら、彼女は言葉を漏らす。

未だ未発見な空想上の物質でしかない存在の名を。

 

「もう少しで、“私の望む姿”で発見出来そう。それさえ済めば……!」

 

彼女はモニターに表示されている“ゼロ”の設計図面を一瞥する。

 

「今のところ“ゼロ”には対消滅炉を搭載予定だけど、

もし開発が間に合えば、搭載機関はこっち。

 

反物質技術にマイクロブラックホール、

補助動力にはレーザー核融合炉……

これまでやって来た動力機関研究の集大成。

 

全ては、この為に……。

資金は充分だから、本当に私の頭脳次第だなぁ……」

 

そう言って、プラモのフライホイールを指で回した。

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻───

 

「…………ははっ」

 

かつて各国の司令官達が集結した際にお披露目された試作核融合炉。その隣部屋に新たに設置されたモノを見て、秋吉は乾いた笑いを漏らしている。

 

「“新しく造った機関を見て”って言うから来てみたけど……。こんなバケモノをこのサイズに出来てしまうんだな……」

 

「これもう、希空が世界で一番艦娘の技術を理解してるみたいだ。妖精とも良くコミュニケーションを取ってるから、それか?」

 

そこに置かれていたのは、融合炉に代わって新たに研究所の発電機となるべく設置された、試作型のBH(ブラックホール)エンジン。サイズは大体50メートル四方であり、その出力を考えれば充分に小型。

また、部屋の隅には冷蔵庫ほどのサイズの金属箱がポツンと置かれており、気になった秋吉が近付くとそれには『非常用電源:レーザー核融合炉』とだけ記されていた。

 

 

「……例え技術不足でエンジンのサイズが惑星規模にまでなったとしても、艦娘技術で縮小してしまえば良い、か。全く、希空も考えたなぁ。

いや、別に僕も思い付いてはいたけど、実現にはハードルがあり過ぎたからな……。良くやったよ、本当に」

 

比較的小型なエンジンを見て、秋吉はそう口にする。

彼の言う通り、目の前のBHエンジンの本来のサイズは地球と同程度か少し大きいくらいである。これは技術不足が原因で肝心のマイクロブラックホールが全然“マイクロ”で無いが故だが、その問題を解決する手段を艦娘技術が持っていた。

 

艤装の縮小───技術発展により、どんな物であれ「艦娘の艤装」と定義出来れば、際限無くサイズを縮小出来るようにまでなっていた。

これこそ、希空が急速な技術革新を引き起こせたカラクリであり、これまで登場した超技術を支えていた土台でもある。

試作核融合炉から始まり、宗谷海峡の浮沈式電磁加速砲台(レールガン)、そしてこのBHエンジン。全て、本来なら実用性など微塵も無いような大型の物。それを無理矢理縮小して運用に耐えられるレベルまで持って行っていたのだ。

 

希空の数世紀先を行く頭脳と、その構想を可能とする妖精由来の艦娘技術……これら2つが合わさる事で、“理論上可能”を実用化させていた。

 

 

 

 

 

さて、そんな“ゼロ”の建造計画であるが、

現状は果たしてどうなっているのか。

 

まず建造予定時期だが、これは今年の7月を予定している。以前は早くても12年以降の建造を予定していたのだが、“elite”個体をはじめとした深海棲艦の脅威増大に伴い大幅に前倒しされた。

 

次に性能だが、はっきり言って“前代未聞”。

核融合炉の搭載を予定していた初期段階では、まだ“高性能”という言葉に収まるレベルの性能だった。だが、昨年末に希空が反物質の安定した生成・保存システムを確立した事で状況は一変。

これまで理論上の存在でしか無かった対消滅エンジンが現実の物となったのだ。また、炉心内でのマイクロブラックホール生成・活用技術も成熟しつつあり、それを用いるBHエンジンも試作型が完成間近という所まで漕ぎ着けた。

そして、その二つさえも上回る機関を希空は現在研究中であり、その進捗次第では更なる性能アップが見込まれている。

 

そして最後に建造目的。

当初から“第二世代艦娘の雛形”としての役割を期待されていた“ゼロ”だが、当然ながらここまでインフレしたスペックを後に続く艦娘達にも持たせる、というのは不可能だ。建造に掛かるコストが膨大過ぎる上、希空が建設した艦娘技術研究所内にある工廠を除いた現在の世界の標準的な科学力では量産どころかたった1基製造する事すら到底不可能。何よりそれらの問題を解決出来たとしても、元々蒸気タービンで動く艦娘に現代の最新機関を搭載するのは構造上困難だからだ。

よって“ゼロ”の担う技術面での役割は、正直なところ穂乃果と凛によって既に達成されている部分が大きくなってしまっている。

では何故、そんな状況にも関わらず“ゼロ”の建造が中止されないのか、と言うと……。

 

 

既に莫大な資金が集まってしまった事が一つ。

 

希空が異常なまでに乗り気、かつ技術革新も副次的ながらもたらしている事が一つ。

 

そして一番の理由は、対上位個体用の“決戦兵器”として期待されているから、だった。

 

 

ここまでの超々ハイスペック、かつ完全なワンオフとなると、いざ実際に運用するとなった時に整備面で重大な問題が発生する事は分かり切っている。だったらいっその事、可能な限り突き抜けたスペックを持たせて対上位個体用に運用する、というのが秋吉が国防軍上層部や政治家を説得するために用いた構想。

 

この考えを聞いた者達の一部からは「コンコルド効果による判断ミスだ!」などと批判を受けたが、随伴も無く海上に佇むただ1隻の上位個体に対して未だ有効な対処法が確立されていない事もまた事実であり、そう言った規格外の存在に対するカウンターとして、“ゼロ”の建造は再度承認されていた。

 

 

しかしながら、実のところ希空がどれほどの技術革新を引き起こしたのか、という部分については断片的な情報しか表に出ていない。具体的には核融合炉の基礎的な製造技法くらい。急速な技術発展による悪影響を危惧した秋吉によって秘匿されたからだ。

 

以前、初めて研究所を訪れた士が外界と比べあまりに隔絶した技術力を目の当たりにして秋吉に理由を聞いた際、彼はこう答えている。

 

「初めは彼女の頭脳をもってすれば、科学の飛躍的な進歩をもたらせるのではないか、そう考えていたんだ。今もそこは変わらない。

……でもその結果、今は彼女のあまりに高度な頭脳を持て余している。止まる事を知らない技術革新によってあまりにも進歩し過ぎた科学は、今の人類の手には負えなくなってしまったんだよ。

僕も、まさかここまでとは思っていなかった。つい数年前まで、いや現在でも地球を飛び出すのが精一杯なのに、いきなり星間国家レベルの技術を発明してしまうなんて……。想定を遥かに超えている、彼女を造ったのは他ならぬ僕なのに───」

 

希空が引き起こした技術革新は秋吉の想定以上だった。核融合炉を試作した時点ではまだ、数年〜多く見積もっても数十年科学技術を進めた程度でしか無かったのが、気付けばもう一世紀程度では収まらなくなっている。

 

 

そしてそれらの研究、その集大成となる計画は、

 

遂に最終段階に突入した。

 

 

 

5月20日

 

タキオン粒子 生成成功

 

“ゼロ”用新型機関 開発開始

 

 

 

6月1日

 

「……そう言う訳で、“ゼロ”の建造準備は遅くても今月末には整う予定だよ」

 

「了解、良く頑張ったね……」

 

希空は、建造準備がほぼ完了した事、月末には建造が可能となる見通しである事を秋吉に報告していた。

 

「それにしても、恐ろしいスペックだな……。もし、もし何かあった時、対処出来るんだろうか……?」

 

「“何か”、って?」

 

「ほら、もしこっちの命令に従わずに暴走したら、とか……」

 

「それは大丈夫。私の言う事をちゃんと聞いてくれるように“設計”したから!」

 

「“設計”……?」

 

「うん。『お姉ちゃん()の事を大好きでいてね!』って、脳にインプットしとくんだ!」

 

「お、おう……」

(本当に、良いんだろうか……これで)

 

 

倫理観の欠片も無いような言動を繰り返す希空を見て、更に複雑な心境になる秋吉。

だが彼は知らない。希空から見せられた設計図は、最新版では無い事を。

 

希空は、誰にも“ゼロ”の本当のスペックを教えはしなかった。技術流出への警戒というよりは、単に詳細なスペックを秘密にしておきたいからだった。

 

 

“ゼロ”の本当の搭載機関、その答えは誰も知らない。

 

 

 

6月3日

 

建造実施日を7月4日に決定

 

官民共に最大の出資者である米国の提案を採用

 

 

 

 

 

混沌深まるこの世界に、もうすぐ新たな風が吹く……

 

その行き先は平和な未来か、更なる災厄か───

 

 

 

 

 

“ゼロ”建造の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あ と が き

“こういう展開”のために、“サブカルが活発になれるような”戦後の世界観にした訳です。
本作中において人類側は、艦娘の装備の発展を過去の兵器開発をなぞる事で迷走せずに最短コースで行えているのですが、
それと同じ理屈で、例えそれがフィクションの中の産物であっても「ゴール」が分かっているなら後は技術面さえどうにかなれば発明への近道になり得る、という具合です。
史実においても近い例はありますし。
(ディズニーボムとか)

まぁ、艦娘の艤装を「艦艇の兵装を人間サイズまで縮小している」設定にした時点で、正直何でもありです。大きさを度外視出来るなら、大体の物は造れるでしょうから。
よく半世紀くらい前にスマホを造ろうとすると、テニスコートとか、ビル一棟分の大きさになると言われますが、それと同じです。
モニターで例えれば、技術的に解像度16×9の100インチ(2.5m)モニターしか造れなくても、それを数万個並べれば4Kだよね、っていう理屈です。

要は色々と問題はあれど、
“理論上は造れる”んでしょ?って事です。

文系なので詳しい事は分かりませんが。

また、このレベルの技術インフレが何故起きたのか、上記以外の理由としては“希空が自分の欲求を満たしたかったから”以外にありません。
全ては、妹の“ゼロ”を究極の艦娘(最高傑作)にするために。

……ある意味、艦娘の事を一番「兵器」として見ているのは、彼女かも知れません。
艦娘を手篭めにしている者達でさえ、まだ「女」としては見ている訳ですから……。


いずれにせよ、その作品のファンである希空は例のエンジンが本来“どういう存在”であるか充分に理解していますが、現実で自らが造るそれについては、単なる強力なエンジン、としか考えていません。

強力なエンジン、鉄壁のバリア、そして必殺の大砲。その全てを持ち合わせて“ゼロ”が産まれた時、果たして“彼女”は世界からどういう扱いを受けるのでしょう?

……その答えは、またいずれ。

(物語のプロットは最終章まで出来上がっているので、
外的要因以外で失踪は)ないです。

(逆に一番プロット無いのがこの第一章だったり。当初、妄想を始めたのは第二章からだったので。
なので今はまだ“後付けのプロローグ”……。
“0話のメンバー”が揃って初めて本編開始。

それで言うと実はもう本編へ片足突っ込んでます。
理由は、0話を見返すと分かるかも?
この28話の“16年後の未来”が、そこにあります)


作中時系列的に“リメイクシリーズ”はまだ公開前ですが、設定面は基本的にそちら準拠です。
ただし“オリジナルシリーズ”の要素も含みます。

要するに両方の良いとこ取りかつガバさの許容です。


次回 一つの時代の終わり
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