今回は短め。次回以降への繋ぎって感じです。
重要な回だけど日常って感じで、
淡々と建造が進む感じも逆に良いかなって。
冒頭部分は、
「希空の技術なら出来んじゃね?」と思い付いた故。
当時まだ未就学児だった私にとっても衝撃は強かったらしく、今も鮮明に覚えている最古の記憶ですね。
年が明け、
2011年3月11日
この世界においても、東北で地震は発生した。
───が、その規模は“大震災”と呼ぶほどのものでは無かった。
深海棲艦研究の副産物、という形で希空が地震の発生を予知。そのデータを基に艦娘技術研究所の総力をあげて数週間前から断層へ断続的に衝撃が与えられ、人工的に地震を起こし続けた結果、“本震”の規模を震度4程度まで抑え込む事に成功したからだ。断層の“ガス抜き”など希空にとっても未知の事ではあったが、彼女はやり遂げた。
だが彼女が頑張った理由としては、“日本を、東北を救いたい”……と言うような正義感より、直近に控えている大事な予定を邪魔されたくないから、という個人的な感情の方が大きかった。
とはいえ、こうして被害の軽減を図ったのは、放っておいたらとんでもない被害が出る事を分かっていたからであり、それ故に政府に対しては、秋吉を通して『自分が何もしなかった場合の推定被害データ』を提出。
その結果、史実に比べれば低調なものの、日本全体の防災意識を高める事に繋がっていく。
───それはさておき。
3月16日 艦娘技術研究所
希空が地震に邪魔されたくなかった“大事な予定”、今日がその日だった。
工廠には、希空と零の姿がある。
希空に連れられて、零は工廠まで足を運んでいた。
「…よし。準備は良い、零?」
「…ん」
そう言って零は頷く。まだそこまで話せるわけでは無いものの、現在生後8ヶ月な事を踏まえれば、これでも充分に異常だ。
「今から、零の“初めての妹”を建造していくよ」
零の初めての妹……
試作型第二世代艦娘、つまり零号機である
JK-2-X-00 “ゼロ”に続く、量産型第二世代艦娘初号機。
『JK-2-01』建造の時だ。
JK-01 “出雲”の設計段階から定められていた、艦娘開発における1つのゴール。それに今日、遂に辿り着く。
「───建造、開始!」
意気揚々とした希空の叫び声に呼応して、「釜」が動き出した。
約1時間後 希空の研究室
建造終了を待つ間、2人は遊んでいた。
「よし、こっちおいで」
「ん」
トテトテ…と、零が希空の元へと歩いていく。
そして零が辿り着くと、希空は零を抱き上げた。
「すごいすごい!もう歩けるじゃん」
実はこれも、一種のトレーニング。
零の早期の戦力化を企図した、希空なりの特訓であった。
実体はかなり、姉と弟がただ遊んでいるというだけの物だが、意図そのものはそうであった。
そうして2人で遊んでいると、工廠からやってきた妖精から報告を受けた。
「失礼します。
───建造終了。上手くいったみたい」
「りょーかい!…じゃあ、零。行こっか?」
希空から伸ばされた手を、零は握った。
工廠 「釜」正面
「どうかな……」
ワクワクしつつもちょっぴり不安そうな声で呟く希空。零を建造した時とはまた別の緊張感があった。
そして、遂にその時は来た。
「…よし。開けるよ」
そう言って、扉を開けていく。
中からは白煙が噴き出してきた。
モクモクと周囲に広がった煙が、やがて晴れていく。
そうして、遂に“彼女”は姿を現した。
金髪碧目という、少し外国人っぽさもある赤ちゃん。
でもそれは、その元となった艦艇の経歴ゆえのもの。
髪の毛はまだ少なめだが……
何となく、前髪を弄りたくなる感覚を覚える。
その姿を見て、希空は満足そうに頷いた。
「うん、問題ない。……軽巡洋艦“阿武隈”、建造完了」
「…あぶくま?」
「うん、“阿武隈”。……初めての妹だよ、零」
零に、艦娘としての初めての妹が出来た瞬間だった。
───“阿武隈”。
何故、彼女が最初の量産型第二世代艦娘に選ばれたのか、と言うと……国防海軍にとって大切な艦名、「国防海軍の魂」とも言える存在だからだ。
昭和30年、
戦後初の国産巡洋艦として就役した、ミサイル巡洋艦「阿武隈」。その後就役した川内型ミサイル巡洋艦の準同型艦であり、米軍供与のフレッチャー級と共に冷戦初期の国防海軍を支えた。
その「先代」とはいえ、
そんな意味を持つ名前の艦娘であれば、国防海軍初の量産型第二世代艦娘『JK-2-01』の型式番号を与えるに相応しい、そう希空は考えたのだった。
希空は彼女を抱き上げて、零の元へと連れてくる。
「……抱っこ、してみる?」
「うん」
(もし間違って落としてしまったとしても、それで怪我する第二世代艦娘では無いので)希空は零に、まだ状況を理解していなさそうな動きを見せている“阿武隈”を抱っこさせた。
「……んぅ」
零に抱っこされ、少し声を出した“阿武隈”。
そして零の顔を見て、
「んふぅ…」
何か安心感を覚えたのか、彼女は笑った。
「……おー。ふふっ、相性良さげだね。
……これなら、大丈夫そうかな?」
零と“阿武隈”、2人の相性が良さげな事を確認できたことで、希空は安心したようだった。
歩けるようになったくらいの赤ちゃんが、
産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこして、
その姿を6歳の幼児が微笑みながら見ている……。
文字に起こすと……
いや、実際の光景もとんでもなく異質な物だが、
これが艦娘技術研究所、
次世代艦娘開発計画の辿り着いた、1つの結論だった。
その後、量産型第二世代艦娘はすぐに本格的な量産に入り…たかったのだが、“阿武隈”の建造後にも設計変更やコストカット要求などの問題が頻発したため、仕方なく完全な量産体制の構築は2012年からとし、
年末までに建造する艦娘は、既に型式番号の付与まで済んでいた川内型軽巡洋艦の3人のみ、とした。
そして、
3月24日にJK-2-04 “那珂”
10月10日にJK-2-02 “川内”
12月8日にJK-2-03 “神通”
がそれぞれ建造され、
量産型第二世代艦娘の第一次建造計画は完遂された。
3番艦であるはずの“那珂”が先行して建造されたのは、艦魂が建造に最も適した状態になるのが、その元となった艦艇の『進水日』である事が判明していたため、それに合わせた結果であった。
続く
あ と が き
最後の理由から、
第二世代艦娘(一部の第一世代艦娘も)の誕生日は、
その元となった艦艇の『進水日』となります。
今回でEp.3のタイトル要素はほぼやり切ったので、
次回より、第一章は終盤に入っていきます。
次回