はじめまして、Nyappy-です。
この作品は私の妄想を文章化したものです。
もしよければ見ていってください。
0. ある少年の決意
西暦2026年
『余程の緊急事態でない限り、そっちの判断で行動してくれ。初陣で緊張しているだろうが、心配するな。零もいる。大丈夫だ』
「りょーかい、伯父さん」
通信越しに聞こえてきた男の言葉に、艦長が軽い調子で答える。
ここは、ある軍艦の艦橋。
艦長は今、日本国防軍の統合司令長官と連絡を取っているところだった。
その艦長の名は、
日本でも有数の名家として知られる神崎家の一員であり、俺の妹でもある。
「天音、ジジイは何て?」
通信を終えたところで声を掛けると、天音は椅子を回してこちらを向いた。
「好きにしろって。だから、お兄の作戦通りに行こう。……と言っても、アレが作戦と言えるかはビミョーだけど」
「何だよ、その言い方。大火力でのゴリ押しだって立派な作戦だろ?」
「それは否定しないけどさぁ……」
「それに、そのための『建御雷』だろ?」
俺がそう言うと、天音は少しだけ呆れたように笑った。
俺達が今乗っている艦は、艦娘母艦「建御雷」。
人類を護る盾として戦い続けている存在───『艦娘』を、戦場まで送り届けるための軍艦だ。
普通の軍艦と異なるのは、運用する戦力が航空機でも艦載艇でもなく、人の姿をした艦娘だということ。
つまり、艦娘にとっての航空母艦、とでも言えば分かりやすいだろうか。
もっとも、普通の空母と同じものだと思ってもらっては困る。
何しろこの艦、艦娘を運ぶための母艦でありながら、かつての戦艦にも匹敵するほどの大火力を備えているのだ。
おまけに、その巨体を眺めれば、一般的な軍艦とは随分と印象が違うことにも気付くだろう。
いくつもの発進デッキ、大型の艦橋、そして艦体各部に配置された兵装。
それらが一体となった艦影は、どちらかと言えば、俺の大好きなロボットアニメに登場する母艦に近い。
考えてみれば、艦娘も人の姿をした兵器なのだから、運用する母艦がロボットアニメのそれへ似てくるのも、ある意味では当然なのかもしれない。
……いや、もちろん、実際の設計には色々と理由があるんだが。
例えば、どうして艦娘を運ぶ母艦に、そこまでの火力が必要なのか。
普通に考えれば、母艦は後方に控え、戦闘そのものは艦娘達に任せた方が合理的だろう。
だが、それが必ずしも通用しないのが、俺達の戦場というものだ。
そもそも、俺達が相手にしている敵は───。
「───お兄!」
「……ん?」
不意に掛けられた声で、思考が途切れた。
顔を上げると、天音がこちらをじっと見ている。
「さっきから何ぶつぶつ喋ってんのさ」
「……聞こえてたのか?」
「そりゃ、あんなに喋ってたら聞こえるって」
どうやら、考えていたことが途中から声に出ていたらしい。
「まあ、その……声が聞こえた気がしてな」
「! そう……なんだ……」
天音が一瞬、妙な顔をした。
驚いたような、何かに気付いたような、どうにも説明しにくい表情だったが、それも本当に一瞬のことだった。
「……ま、いっか。それより、もう着くよ! 作戦海域に」
「そうか、了解だ。レーダーは?」
「まだ大丈……あっ」
天音が正面の表示へ視線を戻した途端、表情を変える。
「ジャミングされた。はぐれ艦隊なのに、やるわね」
「やっぱりか。もっとも、敵がはぐれ艦隊だってのも、人工衛星からの情報でしかないからな」
「うん?」
「潜航しているヤツが混じってるかもしれない。海面上に見えてる連中だけとは限らないぞ」
「まあね。そこはソナーの反応次第かな」
天音は表示された情報を手早く確認し、僅かに考え込んだ。
だが、すぐに顔を上げる。
「……でも、とりあえずは」
「ああ」
俺も頷き、艦橋の正面へ視線を向けた。
広大な海原。
そのどこかに、俺達が迎撃すべき敵艦隊がいる。
なら、やることは決まっていた。
「総員、第一戦闘配備! 全艦娘、出撃準備だ!」
直後、艦内へ戦闘配置を告げるブザーが鳴り響いた。
もっとも、だからといって、艦内が急に慌ただしくなったわけではない。
そもそも今回の出撃に参加する艦娘達は、既に艤装を装着し、各カタパルトデッキで待機している。
あとは発進命令を待つばかりだった。
そして、もう一つ。
この艦には、艦娘達以外の乗組員が殆どいない。
巨大な艦体を動かし、多数の艦娘を運用する軍艦としては、あまりにも少ない人数だろう。
だが、これにはちゃんと理由がある。
天音達が持つ特殊な能力と、それに対応するよう開発された艦艇制御システム。
それらによって、「建御雷」は通常の軍艦とは比較にならないほど高度な自動化・省力化を実現しているのである。
だから艦内に乗組員が少なくても、航行や戦闘に支障はない。
むしろ、艦娘を運用するための母艦としては、非常に都合のいい仕組みだった。
『本艦は艦娘発進シークエンスへ移行する! 全カタパルト、スタンバイ!』
天音の声が艦内放送へ切り替わり、発進デッキの各所で準備が進められていく。
さて。
こっちも、アイツらへ一言くらい伝えておくか。
俺は通信を開き、待機中の艦娘達へ呼び掛けた。
「お前ら、一応言っておくが、敵艦隊の位置はざっくりとしか分かってない。索敵はしっかりな」
『『『『『了解!』』』』』
複数の返事が重なった直後、その中から一際元気のいい声が飛び込んできた。
『任せなさい! いつも通り、翔鶴姉と私の二式艦偵で見つけてやるんだから!』
「ああ、頼むぜ、瑞鶴」
通信の向こうで自信満々に答えているのは、空母艦娘“瑞鶴”。
「翔鶴型航空母艦」の二番艦であり、この艦隊の航空戦力を担う二人の空母艦娘の一人だ。
俺とは小さい頃からの付き合いで、お互いに遠慮のない関係でもある。
本人はいつも通りの調子だが、今回の作戦でも彼女達の索敵能力は重要だった。
何しろ、敵の正確な位置が分からないことには、こちらも十分な火力を叩き込めない。
『駆逐艦は右舷カタパルトへ! 巡洋艦は左舷カタパルトへ!』
艦内放送に合わせ、各デッキで艦娘達が発進位置へ移動していく。
「でも瑞鶴、慢心はすんなよ? 今回、俺は出ないんだからな!」
『分かってるって! てゆーか、私の強さはアンタが一番よく分かってるでしょ』
「それでも、だ!」
瑞鶴の強さは知っている。
誰よりもよく知っているつもりだ。
これまで何度も一緒に戦ってきたし、その実力について疑ったことはない。
だが、だからといって、何が起きても大丈夫だと思うほど楽観的にはなれなかった。
戦場では、どれだけ強い者でも、ほんの僅かな判断の違いで命を落とすことがある。
まして、今回は俺が一緒に出撃するわけではない。
『まあまあ、零』
そこへ、もう一つの声が割って入った。
『瑞鶴は私が守るから、心配しないで?』
「翔鶴姉……」
“翔鶴”。
瑞鶴の姉であると同時に、俺にとっても昔から頼りにしてきた存在だった。
妹と比べれば少し穏やかな話し方をするが、その実力は折り紙付きである。
何より、瑞鶴のことを誰よりもよく理解している。
『ほら、翔鶴姉もこう言ってんだし、大丈夫だから!』
すかさず瑞鶴が得意げに言ってくる。
『じゃあ私達はもう出るよ!』
「……ああ、了解」
俺は小さく息を吐いた。
そこまで言うなら、これ以上心配しても仕方がない。
「行って来い、二人とも」
『うん!』
『行ってくるわね、零』
通信が切れる。
翔鶴姉が一緒なら大丈夫だ。
そう信じよう。
《リニアカタパルト、ボルテージ上昇。発進準備OK!》
艦橋の正面から、中央メインカタパルトが見える。
既に所定の位置へ立った瑞鶴は、艤装を展開し、発進姿勢を取っていた。
発進デッキの各部に設けられた装置が作動し、カタパルトへエネルギーが供給されていく。
そして。
『空母瑞鶴、抜錨! 出るわ!』
その声と共に、瑞鶴がデッキを蹴った。
直後、リニアカタパルトが彼女の身体を一気に加速させる。
艤装をまとった少女の姿が中央メインカタパルトから勢いよく飛び出し、海面へ向かっていく。
その後ろ姿を、俺は艦橋からじっと見送っていた。
いつものように元気で、自信に満ちた瑞鶴。
普段なら、あの調子に呆れながら見送るだけで済むのだろう。
だが、今日は少し違った。
何しろ、今回の戦いには俺が出ない。
だからこそ、最後にもう一度、心の中で呟いた。
───無事に戻って来いよ、瑞鶴。
この戦争が始まってから、既に四半世紀以上が経過した。
俺が生まれるよりも、ずっと前から続いている戦い。
それは今も終わることなく、人類と敵との戦いは、ますます激しさを増している。
長い年月の中で、俺達は多くのものを失った。
それでも、生き残った者達は戦い続けている。
何度傷ついても、何度苦しい思いをしても、諦めることなく。
いつか、この戦争が終わる日を信じて。
そして、その先に平和な未来が待っていると信じて。
俺も、そのために戦っている。
俺は「神崎
日本国防海軍、新生『第二特務艦隊』の司令官だ。
続く
あ と が き
今回は主人公とその周りの重要キャラ(一部)の紹介的な感じでした。
次回からは一旦時系列を2000年代まで戻して物語の第一章を開始します。なのでしばらくはオリキャラ祭りです。
次回 全ての始まり