今回から第一章開始です。時系列は2000年代まで遡り、人類とSUE(深海棲艦)の初接触の話です。
1. 長き戦いの始まり
西暦2000年
冷戦終結から約10年が経った。世界はミレニアムイヤーという事もあり様々な盛り上がりを見せていた。
10月3日
日本国防空軍 百里基地
「バイパーゼロ…遂に配備開始されるんだ」
この日、日本防空を担っている百里基地に3人の若い男女の姿があった。
空軍の新型戦闘機『F-2』の初配備に伴う式典に参列しているのである。
「美香、F-2の配備をずっと楽しみにしてたもんな」
「そりゃあね。あっ!来た来た。海斗、洋平兄さん、見て見て!カッコいい〜!」
「まぁかっこいいのは分かるけどな…」
「正直F-16の色違いにしか見えないよ、美香」
「ちょっと2人共!色々と違いがあるんだよ!全く、神崎家の長男次男が揃ってそんなんじゃダメでしょ!ほら教えてあげるから!例えば翼の形とか…」
F-2の事を熱心に語っているのは「神崎
彼等は両親が軍人である事や、名家である神崎家の人間である事からこの式典に招待されていた。
「そういや兄貴…父さんと母さんから言われた事、忘れてないよな?」
「…覚えてるわ!ええっと、確か──」
「神崎家の次期当主の対外的なお披露目も兼ねてるんだからしっかりとした態度で臨め、だよ兄さん」
「ああ、そうだそうだ!それそれ」
「ったく大丈夫かよ…マジで」
洋平は神崎家の次期当主なのだが、抜けている所がありよく2人に突っ込まれていた。
「はぁ…俺らも高校卒業したら士官学校に進むのかな〜なぁ兄貴」
「そうだな…俺ら2人は家系的に確定なんだし」
彼等3人は18歳。高校卒業を間近に控えている。
「でも美香は良いの?別に無理に軍人の道に進まなくても…」
海斗が美香を心配して聞くが、
「もうひとりぼっちは嫌だもん…それに『パパ』と同じ道に進みたいし」
「…そっか」
美香は10年ほど前に神崎家に引き取られてきた子だった。
彼女の父親が洋平と海斗の父親と仲が良かったのだが、湾岸戦争に日本が参戦した際に空軍中東派遣部隊の一員として出撃し、運悪く戦死してしまった。
母親は彼女が幼い頃に出て行った。理由は聞かされていない。その後は父が男手一つで育てていた。
父の死後、残された美香は親戚をたらい回しにされた末に神崎家に引き取られてきたのである。
美香は父親がカッコ良くて大好きだった。父親に憧れて幼い頃から軍人を目指していたし、その過程で濃いめのミリオタにもなっていた。
「でもその割には空軍じゃなくて海軍志望なんだな」
「ひとりぼっちは嫌だからね」
「どうせ海斗とイチャつきたいだけだろ?」
「…うるさいなぁ」
海斗と美香は婚約していた。高校卒業と同時に結婚する予定である。
「まっ、2人が幸せなら俺も嬉しいぜ、末永くな」
「「そりゃあもちろん」」
と、将来について話していると、
《只今より、F-2の配備を記念した祝賀飛行を行います》
と、会場にアナウンスが流れた。
「おっ、飛んでる所が見れるのか」
「そうだよー。しかも操縦してるのは腕利きのパイロットだってさ!」
「「へぇー」」
「…お願いだからもうちょっと興味持ってよ」
美香は呆れていた。
数分後…
ゴオオオオオオオォォォォ……
「すげぇ轟音だなぁ!」
「はっや!」
「かっこいいなぁ…」
上空を飛ぶ蒼色の翼に3人は見惚れていた。
興味無さげでもやはり男子。なんだかんだでかっこいいものには夢中なのだ。
そうして式典は順調に進み、最後にF-2が会場の上空を超音速で通過するとアナウンスされた。
「ソニックブーム、楽しみだな〜」
「確かアレだろ?超音速の時に発生する衝撃波による轟音…」
「そうそう!それ」
「私も直接体験するのは初めてだから楽しみだな〜」
《頭上通過まで、10、9、8、…》
カウントダウンが始まる。
《5》
《4》
《3》
《2》
《1》
ドオオオオオオオオオオオォォォォォォン………
……カウントダウンの終了と共に確かに轟音は響いた。
だがその音が聞こえたのは頭上ではなく……
遥か東の彼方、太平洋からであった。
後に祝賀飛行を担当したパイロットはこう振り返る。
「あの轟音をもって、我々の敵は現代艦から海を滑る2mサイズのバケモノに変わってしまった」
…と。
続く
あ と が き
いやー、筆が乗った(当人比)のは良かったのか悪かったのか。上手く描けたか自分では分かりませんね。自分が満足ならそれで良いっていうならこれで良いんですけどね。
ちなみにこの時点での日本国防軍の装備は基本的に史実2000年の自衛隊の装備と同一で、ただ数を多くしただけ、と言う事で考えています。もしツッコミ所が有りましたら教えて下さい。
とりあえずこれで物語の導入は済んだので次回からは早速戦闘パートがやってきます。
記念すべき(?)ファーストバトルは 現代兵器 対 深海棲艦 です。
小型で小回りの効く彼女達に対して現代兵器は何処までやれるのでしょうか?