最後に残していったもの。
それから、数時間が経った。
横須賀の岸壁に停泊する「建御名方」は、既に深い夜の中にあった。
艦内では夜間当直の妖精たちが持ち場に就き、各種設備の点検や警戒任務を続けている。
「建御雷」の喪失が発表されて以来、艦内の雰囲気は明らかに沈んでいたが、戦争が続いている以上、悲しんでいるからといって全ての仕事を止めるわけにはいかなかった。
もっとも、今夜ばかりは、一部の者たちに通常とは異なる仕事が加わっていた。
外部へ情報を漏らさないこと。
そして、誰にも知られていない生還者たちを保護することである。
特務艦隊司令部の一角にある会議室は、普段より厳しく出入りを制限されていた。
部屋の中にいるのは、洋平と“鳳翔”、それに“磐手”と“出雲”の四人。
そして、「建御雷」に乗り込んでいた妖精たちだった。
“出雲”は既に濡れた服から着替え、最低限の診察を受けている。
数日間にわたって外洋を泳ぎ続けた結果、極度の疲労と脱水、全身の筋肉への負担が認められたが、幸いにも生命に関わるような新たな負傷は見つからなかった。
ただし、元々の身体が完全に回復していなかったこともあり、医療担当の妖精からは安静を厳命されている。
食事と水分を少しずつ取らせ、出来ればそのまま眠らせるべき状態だった。
にもかかわらず、本人は先に報告を済ませたいと言い張ったのである。
「……出雲、本当に大丈夫?」
椅子に腰掛けた“出雲”の顔を覗き込みながら、“磐手”が尋ねた。
“出雲”は少しだけ笑う。
「正直、あまり大丈夫ではないかな」
「でしょうね。だったら寝なよ」
「でも、先に話しておきたいの。皆もいるし、今なら覚えていることを整理出来るから」
「だからって……」
“磐手”は言いかけて、口を閉じた。
言いたいことは山ほどある。
しかし、こういう時の“出雲”が、そう簡単に考えを変えないこともよく知っていた。
「……ほんと、相変わらずなんだから」
溜息交じりに呟く。
その様子を見ていた“鳳翔”も、やや困ったような表情を浮かべた。
「診察を担当した方からも、長時間の聞き取りは避けるようにと言われています。途中でも辛くなったら、必ず言ってくださいね」
「……はい。分かりました」
「それから、今日は全てを話し切ろうとしなくても構いません。妖精の皆さんにも、後から確認出来ますから」
“鳳翔”が視線を向けると、会議室に集まっていた妖精たちが頷いた。
彼らは、つい数時間前まで“出雲”の身体にしがみついていた者たちである。
現在は、医療担当や保護に当たる妖精たちの助けを借りて人数と健康状態を確認し、必要な処置を施していた。
そのうち、報告に関わる者たちがこの部屋へ集められている。
残りの者たちも、外部から隔離された艦内の安全な区画で休んでいた。
全員の所在は確認済み。
一人の行方不明者もいなかった。
それが今夜、最初に確認出来た事実だった。
「……さて」
洋平が、手元の端末を操作した。
「通常の報告系統とは切り離した。記録はこの部屋の独立端末にだけ残す。自動転送も停止済みだ」
「こちらでも確認しました」
“鳳翔”が答える。
「出雲さんたちの帰還についても、通常の当直日誌や救助報告には記載していません」
「よし」
洋平は頷いた。
この艦へ“出雲”が帰ってきたことを知っているのは、彼女を発見した“蒼龍”と“飛龍”、穂乃果と凛、救助に関わったごく少数の妖精たち。
そして、この部屋にいる者たちだけだった。
外部の国防軍組織はもちろん、横須賀基地の他部隊へも知らせていない。
それは、あまりにも異常な措置だった。
戦死したと発表された部隊の生存者が現れたのである。本来なら直ちに上級司令部へ報告し、捜索状況を更新するとともに、全軍へ正式な情報を伝えるべきだった。
しかし、洋平にはそれが出来なかった。
……いや。
今の状況で、そんなことをしてよいはずがなかった。
「建御雷」の出撃には、初めから不審な点が多すぎたのである。
そして今、その艦から生きて帰ってきた者たちが、誰にも見つからないよう身を隠していた。
まずは事情を確かめなければならない。
何が起きたのか分からないうちに、再び彼らを危険へ晒すわけにはいかなかった。
「……始める前に、一ついいか?」
洋平は、“出雲”へ目を向けた。
「お前、どうやって建御雷に乗ったんだ?」
その問いに、“出雲”は一瞬だけ視線を逸らした。
「……勝手に、乗り込みました」
「それはもう聞いた」
「出港前に、こっそり乗り込んだんです。司令官と艦長にも、出港してから見つかりました」
洋平が額へ手を当てる。
「……そうか」
声には呆れが混じっていた。
「海斗も美香も、さぞ驚いただろうな」
「……かなり」
「だろうな」
その横で、“磐手”が大きな溜息を吐いた。
「やっぱり……!」
“出雲”が顔を向ける。
「磐手?」
「だから、嫌な予感がしてたんだってば!」
「……何の話?」
「出雲がいなくなった時!」
今度は洋平が反応した。
「……待て。磐手、お前は出雲がいなくなっていたことを知っていたのか?」
“磐手”は、少し気まずそうな顔になった。
「……知ってた、というか。正確には、いるはずの場所にいないのは分かってました」
「いるはずの場所?」
「統合作戦司令部の監視下に置かれてたところです。あの時、二特艦の生き残りって、ほとんど自由に動けなかったじゃないですか」
洋平は頷いた。
その事情なら、嫌というほど理解している。
第二特務艦隊は、先の北方海域で壊滅的な被害を受けた。
所属艦娘の多くを失い、残った者たちも負傷や修理のため戦闘能力を大きく落としている。
そこへ国防軍上層部による指揮権限の縮小が重なった。
かつての第二特務艦隊は、既に独立した戦闘部隊としての実態を失いつつあったのである。
第一特務艦隊も、同じように政治的な圧力を受けていた。
しかし、そちらにはまだ「建御名方」という母艦が残されている。
艦隊司令部としての組織も、最低限の体裁だけは保っていた。
そのため、統合作戦司令部側も監視や権限の制限を加えてはいるものの、一特艦の全員を一箇所へ集めて拘束するような状態にはなっていない。
対して二特艦は違った。
その最後の拠点とも言うべき「建御雷」が出撃した時点で、残された艦娘たちは事実上、統合作戦司令部の管理下に直接置かれてしまったのである。
表向きには保護や療養、あるいは部隊再編までの待機。
しかし実態は、完全な監視と行動制限だった。
その中に、“磐手”もいた。
もっとも、「建御雷」の撃沈が発表されてからは、その監視も緩められている。
二特艦がもはや戦力として機能しないことが、誰の目にも明らかになったからだった。
“磐手”が今夜「建御名方」にいるのも、そのためである。
「……それで、出雲がいなかったのか?」
洋平が尋ねる。
“磐手”は頷いた。
「はい。でも、下手に騒いだら探されると思って……」
少しだけ“出雲”を見る。
「研究所で療養中です、って答えてたんです」
「……研究所?」
今度は“鳳翔”が首を傾げた。
「ですが、こちらでは……」
「そう。話が合わないんですよね」
“磐手”が苦笑する。
実際、艦娘技術研究所では、“出雲”が横須賀へ向かったものと認識されていた。
そこには洋平や“鳳翔”たちがいるし、“磐手”をはじめとする第二特務艦隊の生き残りもいる。
艤装を失って戦闘不能と判定されていた“出雲”は、軍事的には既に戦力として数えられていなかったため、研究所側でも彼女の行動を厳密に追跡していたわけではない。
一方、「建御名方」側では、そもそも第二特務艦隊の生き残りが何処に置かれているのか、全員分を正確には把握出来なくなっていた。
統合作戦司令部の監視下に置かれているのか。
研究所で療養しているのか。
そのどちらかだろうと考えられていたのである。
「……つまり」
洋平が、ゆっくりと口を開いた。
「研究所は、出雲が横須賀へ行ったと思っていた」
「はい」
「こっちは、研究所か統合作戦司令部の管理下にいると思っていた」
「そうです」
「で、磐手だけは、実際にいないことを知っていたが……」
「私が研究所にいるって答えてたから、それ以上確認されなかったみたいです」
“磐手”は、申し訳なさそうに肩を竦めた。
「だって、出雲が本当にどこへ行ったのかなんて分からなかったし。でも、余計なことを言ったら探されるでしょ?」
その言葉を聞いた洋平は、暫く考え込んだ。
「……いや。お前の判断は間違ってない」
「……そうですか?」
「ああ」
少なくとも、当時の第二特務艦隊が置かれていた状況を考えれば、仲間の所在をわざわざ監視者へ教える必要など無かった。
しかし、その結果として生じた情報の空白は、想像以上に大きかったらしい。
「……それで、出雲が『建御雷』に乗ったかもしれないと思ってたのか?」
洋平が尋ねる。
“磐手”は、少しだけ目を伏せた。
「……薄々ですけどね」
「根拠は?」
「出雲ですから」
即答だった。
“出雲”が、何とも言えない顔になる。
「……それだけ?」
「それだけで十分でしょ!」
“磐手”は、呆れたように両手を広げた。
「司令官と艦長があんな命令で出撃させられて、それを出雲が黙って見送ると思う?」
「……」
「ただ、まさか本当に乗ってるとは思いたくなかったけどね」
最後の言葉だけは、少し小さかった。
洋平も、それ以上は追及しなかった。
結局、“出雲”がどこにいるのかを誰も把握出来ていなかったのは、幾つもの事情が重なった結果だったのである。
第二特務艦隊の残存戦力が、統合作戦司令部の監視下に置かれていたこと。
研究所側と第一特務艦隊側で、彼女の所在について異なる認識を持っていたこと。
“磐手”が仲間を守るため、意図的に虚偽の説明をしていたこと。
そして、何より。
反艦娘派の上層部にとって、“出雲”は既に軍事的価値を失った存在だった。
艤装を失い、戦闘への復帰も認められない少女に、今さら何が出来るというのか。
少なくとも、RBDの構成員たちはそう考えていた。
第二特務艦隊の艦娘たちを監視下に置きながら、戦闘不能と判定された彼女一人について、厳密な個別監視までは行っていなかったのである。
その判断が、どれほど大きな見落としだったのか。
彼らはまだ、知らなかった。
「……まったく」
洋平が、“出雲”へ目を戻す。
「お前が密航したことも大概だが、誰にも把握されてなかったってのもな……」
「……申し訳ありません」
「……まあ、今さら怒っても仕方ないか」
洋平は、小さく息を吐いた。
本来なら、勝手に軍艦へ乗り込んだ行為を見過ごせるはずがない。
しかし、今回ばかりは話が違った。
もし“出雲”があの艦へ乗り込んでいなければ、海斗と美香が最後に逃がした妖精たちは、ここへ帰ってこられなかったかもしれない。
まして、その結果として「建御雷」の戦闘記録まで持ち帰ってきたのである。
「……話を始めよう」
洋平は、端末へ目を戻した。
「……まず、一つ確認する」
洋平は椅子に腰掛け、“出雲”と向かい合った。
「俺たちは今、建御雷がどうなったのか、ほとんど何も知らない」
“出雲”が顔を上げる。
「……何も、ですか?」
「ああ」
洋平は、机上の端末へ国防軍が発表した情報を表示した。
そこに記されているのは、簡潔な内容だけだった。
作戦行動中の艦娘母艦「建御雷」が、太平洋上で深海棲艦上位個体と交戦。
その後、消息を絶つ。
神崎海斗第二特務艦隊司令官、神崎美香艦長以下、乗員全員戦死と判断。
「俺たちが正式に知らされているのは、これだけだ」
「……え?」
“出雲”は、思わず画面を見つめた。
「相手が誰だったのかも?」
「知らん」
「戦闘の経緯は?」
「何も届いてない」
「……そんな」
「むしろ聞きたいくらいだ。俺たちの司令部には交戦報告も、被害報告も、最後の通信記録すら届いていない。なのに国防軍上層部は、『上位個体と交戦した』と発表している」
洋平の声が、少し低くなった。
「その情報を、どこから得たのかも説明されてない」
“鳳翔”も頷いた。
「こちらで分かっていたのは、出撃命令の内容と、最後に確認出来た行動状況だけです。国防軍の公式発表に書かれていること以上の情報はありませんでした」
「研究所も同じだと思いますよ」
“磐手”が続ける。
「私が確認出来た範囲では、あちらにも現場の情報は届いてませんでしたから」
「……そうだったんですね」
“出雲”は、少しだけ目を伏せた。
この数日間、自分が海を泳いでいる間にも、誰かが「建御雷」の最期を調べているのではないかと思っていた。
あるいは、もう詳しい情報が知られているかもしれないと考えたこともある。
しかし、実際は違った。
「建御雷」に何が起きたのか。
相手が何者だったのか。
それどころか、本当に戦闘が行われたのかさえ、直接確かめられる情報が届いていなかったのである。
そして、そのことは別の疑問にも繋がっていた。
「……上層部は、何を知っているんでしょう」
“出雲”が呟いた。
洋平は、暫く答えなかった。
「……それも、これから考えなきゃならん」
国防軍上層部には、特務艦隊が把握していない独自の情報網がある可能性もある。
しかし、その情報が存在するのなら、何故こちらへ伝えられていないのか。
そして、仮に敵の正体まで把握しているのなら、何を根拠に識別したのか。
それを説明出来なければならない。
現場から情報が届いていない以上、上層部が詳細を知っていること自体が、不審な事実になり得るのである。
そして実際には、RBDはその答えを知っていた。
「建御雷」の航路と行動情報を敵へ流していたのだから。
ただし、この部屋にいる者たちは、まだそこまで確信出来ていない。
「……分かりました」
“出雲”は、一度深く息を吸った。
「それなら、私たちが見たことを、最初からお話しします」
洋平が頷く。
「頼む。ただし、無理はするな」
「はい」
「それと、推測と事実は分けてくれ。見たこと、聞いたこと、確認出来たことを先に聞きたい」
「分かりました」
“出雲”は背筋を伸ばした。
ここから先は、報告だった。
「建御雷は、出港後、命令された航路を進んでいました。随伴艦娘は無し。周辺部隊とは決められた時間に連絡を取っていましたが、任務海域へ進む間に、直接護衛してくれる部隊はいなくなりました」
「予定通りか?」
「はい。少なくとも、私が知る限りでは」
“出雲”は、当時の状況を思い出しながら続ける。
「最初は、敵の反応がほとんどありませんでした」
「ほとんど?」
「ええ。普段なら、もっと何かしら反応がある海域なのに、妙に静かだったんです。司令官も、少し変だと言っていました」
洋平の指が、僅かに止まった。
“鳳翔”も顔を上げる。
「……それで?」
「暫くして、前方に一つだけ大きな反応が出ました」
“出雲”は、少しだけ口を閉じた。
そこから先は、今でも鮮明に覚えていた。
「……“戦艦棲姫”でした」
その名前が出た瞬間、室内の空気が変わった。
「……戦艦棲姫?」
“磐手”が、思わず聞き返した。
“出雲”は頷く。
「うん。間違いないよ」
「お前をやった奴か?」
洋平が尋ねる。
「はい。先日の北方海域で第二特務艦隊を襲った、あの個体です」
“出雲”の表情が硬くなった。
自分が相手の姿を忘れるはずなど無い。
最後には身体を破壊され、海の底へ沈められたのである。
その時、どれだけの力の差を見せつけられたのかも、よく覚えていた。
「……最初は、距離が七十キロほどありました。ですが、非常に速い速度で接近してきて……」
「海斗は回避しようとしたのか?」
「はい。針路を変更しました。でも、向こうも進路を変えたんです」
洋平が顔を上げる。
「追ってきた?」
「そうです。こちらが動けば、相手も合わせて動く。偶然同じ海域にいた、という感じではありませんでした」
「……なるほど」
洋平は端末へ記録する。
「それは、実際に確認出来た動きだな?」
「はい。ただ、最初からこちらの位置を知っていたのかどうかは、分かりません」
「それでいい」
洋平が頷く。
「海斗は、何か言っていたか?」
「……任務海域と敵の位置を確認していました。それから、出来すぎている、というようなことを」
「誰かに情報を流された、とか?」
「そこまでは言っていません」
“出雲”は、首を横に振った。
「ただ……司令官も艦長も、明らかに不自然だとは感じていたと思います」
「分かった」
洋平は、そこも記録した。
敵の正体は“戦艦棲姫”。
識別は、以前同じ個体と交戦した“出雲”が行っている。
敵は「建御雷」の針路変更に合わせて接近方向を修正し、迎撃するように動いた。
海斗と美香は、その状況を不審に思っていた。
そして、洋平自身も。
今まで知らなかった情報が一つ増えるたび、出撃命令への疑惑が強くなっていくのを感じていた。
「……戦艦棲姫、か」
小さく呟く。
先の北方海域で、第二特務艦隊を壊滅寸前まで追い込んだ個体。
それが今度は、艦娘を一人も随伴させていない「建御雷」の正面に現れたという。
偶然で片付けるには、あまりにも都合が良すぎた。
そして何より。
その事実を、特務艦隊司令部も研究所も、今の今まで知らなかったのである。
洋平は端末を操作し、公式発表の文面をもう一度確認した。
そこには、相変わらず「深海棲艦上位個体」としか書かれていなかった。
「……鳳翔」
「はい」
「上層部から、敵の識別情報は来ていないよな?」
「ええ。少なくとも、私たちへは何も」
「そうか」
洋平は短く答えた。
もし向こうが、今後こちらから何も報告していないにもかかわらず、“戦艦棲姫”という名前を当然のように出してきたとしたら。
その時は、一体どこからその情報を得たのか、説明してもらう必要があるだろう。
そして、既にその情報を知っている者たちがいたとすれば。
彼らは、単なる不運な遭遇戦について語っていたわけではないのかもしれなかった。
それから先は、“出雲”だけでなく、妖精たちも報告へ加わった。
「建御雷」が、どのように戦ったのか。
海斗と美香が、どのような判断を下したのか。
そして、妖精乗員たちが何を見て、何を聞いたのか。
洋平は一人ずつ話を聞き、必要な部分では、別の持ち場にいた妖精にも確認を取っていった。
まず、砲術担当。
「主砲は、交戦開始時点では両砲塔とも正常に作動していました」
「初弾から有効弾は出たのか?」
「はい。最初の斉射から、目標へ損傷を与えています」
その言葉に、洋平が顔を上げた。
「……初弾からか」
「正確には、一発が掠めるように命中しました。以降の斉射でも複数回の直撃を確認しています」
別の妖精が、当時の射撃管制について補足した。
「過去の交戦記録も使用しています。“戦艦棲姫”の機動傾向を分析し、回避先を予測して射撃を行いました」
「過去の記録、というと?」
「呉での交戦や、両特務艦隊との戦闘記録です。直近では、北方海域での“出雲”さんの交戦データも参照していました」
“出雲”が顔を上げる。
「……私の?」
「はい」
妖精は頷いた。
「司令官は、使える情報は全て使うと仰っていました」
その言葉に、“出雲”は暫く黙った。
自分があれだけ戦い、それでも倒すことが出来なかった相手。
最後には、自分自身が海へ沈められた。
その戦闘で得られた情報が、今度は「建御雷」の砲撃を支えていたのである。
「……ちゃんと、当たっていました」
“出雲”が、ぽつりと言った。
洋平が顔を向ける。
「主砲が?」
「はい。何度も」
少しだけ、表情が変わる。
「戦艦棲姫の艤装も削っていましたし、装甲も吹き飛ばしていました。相手も、明らかに損傷していました」
「そうか……」
「最後までは倒せませんでしたけど、少なくとも無傷ではありませんでした」
妖精たちも頷いた。
「複数回の明確な命中を確認しています。敵艤装の一部が破損し、砲塔にも損傷を与えました」
「我々が退艦する時点でも、敵の戦闘能力は残っていましたが、交戦開始時より確実に損傷していました」
洋平は、端末へ視線を落とした。
「建御雷」は、艦娘母艦だった。
艦娘の輸送、整備、補給、部隊指揮を担うと同時に、自艦にも強力な兵装を備えた大型艦である。
しかし、本来は艦娘たちと共に行動することを前提としており、上位個体との一対一の戦闘を主目的とする艦ではなかった。
それでも、あの「建御雷」は、確かに戦ったらしい。
それも、ただ一方的に破壊されたわけではない。
「……海斗たち、相当やったんだな」
洋平が呟く。
“出雲”は、小さく頷いた。
「……はい。強かったです」
ほんの僅かに笑う。
「司令官も艦長も、本当に強かった」
洋平は、その言葉を黙って受け止めた。
自分の弟と、その妻が最後まで戦った。
その戦いを実際に見ていた者が、今、目の前で語っている。
つい先ほどまでは、それさえ知ることが出来なかったのである。
「……次に、艦の損傷について聞きたい」
洋平が話を戻した。
今度は、機関担当と応急要員の妖精たちが前へ出る。
最初の大きな被弾は、右舷側の上部構造物だった。
続いて左舷に直撃を受け、浸水が始まる。
自動消火装置や排水系統を作動させながら、応急班が損傷した区画へ向かい、機関と主砲への給電を維持するために作業を続けた。
その間も、「建御雷」は回避運動と砲撃を繰り返している。
「速力は?」
「交戦開始時には三十五ノットまで増速しています。ただし、損傷が増えるに従って、回避運動へ制約が生じました」
「機関自体は?」
「退艦時点では、二基とも稼働していました。出力制御や推進に影響する周辺設備に損傷がありましたが、機関そのものは停止していません」
洋平は頷いた。
そこで、砲術担当が続ける。
「第二主砲塔が直撃を受け、旋回不能になったのは、その後です」
「……主砲が半減したわけか」
「はい。ただし、第一砲塔は使用可能でした」
「三門で戦闘を続けた?」
「その通りです」
一つ一つの報告が重なっていく。
被弾による火災と浸水。
損傷する電探と射撃管制装置。
使えなくなっていく補助兵装。
落ちていく速力。
それでも、海斗と美香は指揮を続けた。
妖精たちも持ち場を離れず、消火し、排水し、装填機構を補助し、損傷した設備を切り離した。
「建御雷」は、止まらなかった。
ただし、艦の状態は確実に悪化していた。
「……第二砲塔を失った時点で、もう長くは戦えない状態だったと思います」
機関担当の妖精が言った。
「出力そのものには余裕があっても、艦内のあちこちが損傷していました。主砲も残り三門ですし、回避も難しくなっていましたから」
洋平は、黙って頷いた。
戦闘の推移を聞くだけでも、その時の海斗が何を考えたのか、ある程度は想像出来る。
そこへ、“出雲”が口を開いた。
「……それで、司令官が総員退艦を命じました」
室内が静かになった。
洋平が顔を上げる。
「……海斗が?」
「はい。艦長からも、同じ命令が出ました」
すぐに、妖精の一人が頷いた。
「間違いありません。司令官より、妖精乗員全員に対する退艦準備命令を受領しました」
「艦長からも、負傷者を含めて全員退艦するよう命令されています」
別の妖精が続ける。
「我々は当初、艦内に残って応急作業を続けることを申し出ました。しかし、司令官から命令に従うよう指示されました」
洋平は、目を閉じた。
「……あいつらしいな」
短い言葉だった。
その場にいる妖精たちも、誰も異論を唱えなかった。
海斗と美香は、最後まで自分たちを助けようとしてくれた。
今、その結果として、全員がここにいるのである。
「……私も、残ると言いました」
“出雲”が続けた。
その途端、“磐手”が呆れたような顔になる。
「でしょうね」
「……結構、本気だったんだけど」
「それで?」
「駄目だって」
「そりゃそうでしょ!」
“磐手”は思わず声を上げた。
「今の出雲が残って何するのよ!」
「……それは、私も分かってた」
「分かってたなら……」
“磐手”は途中で言葉を止めた。
本当に分かっていたのだろう。
自分が残ったところで、戦闘の役には立たない。
艤装も無ければ武器も無い。
ただ、海斗と美香の傍にいたいという気持ちだけで、残ろうとしていたのだ。
「……それで、どうしたの?」
声を落として尋ねる。
“出雲”は、少しだけ俯いた。
「……別の仕事を頼まれたの」
胸元へ手を当てる。
「妖精たちを連れて帰るようにって」
洋平が黙って聞いていた。
「小型化してもらえば、私の身体に乗せられますから。艤装が無くても泳ぐことは出来ますし、普通の人間よりずっと長く潜っていられます」
「……なるほど」
「それで、皆で退艦の準備をしました」
そこで“出雲”は一度言葉を切った。
「……でも、その前に」
指先が、膝の上で強く握られる。
「……希空と零を頼む、と言われました」
“鳳翔”が、静かに目を伏せた。
洋平も、何も言わなかった。
それは、二人が自分たちの生還をほとんど期待していなかったことを意味していた。
しかし、それでもなお、言わなければならないことがあったらしい。
「……それから、司令官が」
“出雲”の声が少し震えた。
「……私も、もう家族みたいなものだろうって」
洋平が顔を上げる。
“磐手”も、隣に座る“出雲”を見た。
「実の娘じゃないけど、うちの娘みたいなもんだよって……そう言ってくれたんです」
その言葉が終わった後も、暫く誰も口を開かなかった。
洋平には、弟がそんなことを言う姿を容易に想像出来た。
長年、海斗と共に戦ってきた“出雲”。
何度も危険な任務へ出撃し、時には家族同然に神崎家の中へ迎え入れられてきた少女。
考えてみれば、海斗たちは、実の子供である希空や零との日々よりも遥かに長い時間を彼女と共に過ごしていたのである。
今さら娘のようだと言ったところで、不思議ではなかった。
しかし。
その言葉を、海斗が最後の別れ際に告げたという事実が、あまりにも重かった。
「……美香は?」
洋平が尋ねる。
“出雲”は、目元を押さえながら答えた。
「……もう他人という感じもしないし、って」
少しだけ笑おうとする。
「……二人とも、いつもみたいに話してたんです」
“鳳翔”は、そっと口元へ手を当てた。
“磐手”も、視線を落としている。
「それで……」
“出雲”は、もう一度息を吸った。
「……最後に、行ってきますって言いました」
「……ああ」
「……お父さん、お母さん、って……」
その言葉に、洋平の表情が変わった。
「……出雲?」
“出雲”が、ゆっくりと顔を上げる。
洋平は、少し迷ってから尋ねた。
「……今、何て?」
“出雲”は、目元を拭った。
「……あの時、初めてそう呼びました」
一度、息を整える。
「……お父さんと、お母さんって」
今度こそ、洋平は何も言えなかった。
“鳳翔”も、静かに目を伏せている。
“磐手”は、隣の“出雲”を見つめたままだった。
「……そしたら、お父さんが『おう』って。お母さんが『行ってらっしゃい』って」
“出雲”は、どうにか続きを話そうとした。
しかし、そこで声が詰まる。
少しだけ間を置いてから、続きを絞り出した。
「……それが、最後でした」
誰も急かさなかった。
洋平も、“鳳翔”も、“磐手”も。
妖精たちも、ただ黙っていた。
やがて、“出雲”は自分から顔を上げた。
「……それから、私たちは海に入りました」
妖精たちを小型化させて身体へ乗せ、艦内の退艦口から海へ飛び込んだこと。
海中を潜航し、そのまま「建御雷」から距離を取ったこと。
背後では再び砲声が聞こえ、二人が最後まで“戦艦棲姫”の注意を引き続けていたこと。
その一つ一つを、“出雲”は話していった。
「敵には見つからなかったのか?」
洋平が尋ねる。
「……少なくとも、追撃はありませんでした。私たちが離れる間、戦艦棲姫はずっと建御雷を相手にしていましたから」
「そうか」
「それで、暫く泳いで……」
そこで、“出雲”の表情が変わった。
「……光が見えました」
洋平の指が止まる。
「光?」
“鳳翔”が、静かに尋ねた。
“出雲”は頷いた。
「水の中だったのに、周りが真っ白になるくらいの……すごく大きな光でした」
一度、目を閉じる。
あの瞬間が、今でも脳裏に焼き付いていた。
「少し遅れて、衝撃が来ました。海の中まで全部揺れて……」
肩にいた妖精たちも、俯いていた。
皆、覚えている。
あの光を。
あの衝撃を。
「……多分」
“出雲”は、何度か息を整えた。
「多分、そこで……」
言葉が続かない。
どうしても、口に出来なかった。
洋平は、暫く彼女を見つめていた。
それから、ゆっくりと頷く。
「……分かった」
端末へ、最後の記録を入力する。
そこには、推測ではなく、証言によって確認出来た事実だけが残されていた。
妖精乗員全員が退艦。
“出雲”と共に海中を離脱。
退艦後、戦闘海域の方向から強烈な閃光を確認。
その後、水中へ大規模な衝撃が到達。
「建御雷」の最終状況については、直接確認した者がいない。
海斗と美香が妖精たちを退艦させた後も、二人だけで戦闘を継続していたことは分かっている。
しかし、その後に主砲がどうなったのか。
艦が最後にどんな行動を取ったのか。
あの爆発が何によって生じたのか。
それらは、まだ証言出来る事実ではなかった。
洋平は画面を確認し、静かに息を吐いた。
「……十分だ」
“出雲”が顔を上げる。
「でも、まだ……」
「何だ?」
「帰ってくるまでのことも、話していませんから」
「それは明日でもいい」
「……でも」
「出雲」
洋平は、少しだけ声を柔らかくした。
「今日のところは、ここまでにしよう」
“出雲”は、まだ何か言いたそうだった。
しかし、そこへ“鳳翔”が口を開く。
「出雲さん。もう休みましょう」
「……鳳翔」
「妖精の皆さんも全員連れて帰ってきました。それに、海斗さんと美香さんがどんな戦いをしたのかも、ここまで届けてくれたんです」
“鳳翔”は、静かに続けた。
「もう十分です」
“磐手”も、隣で頷く。
「そうだよ。帰還までの話なら、私たちも手伝って整理出来るから。出雲が今すぐ全部やる必要なんてないって」
「……でも」
“出雲”の声が掠れた。
「二人に、頼まれたから……」
洋平が頷いた。
「ああ」
「妖精たちを……みんな連れて帰れって」
「ああ。ちゃんと帰ってきた」
「……希空と零も、頼むって」
「……そうだな」
洋平は、少しだけ言葉を選んだ。
「希空と零には、これからもお前が必要になるだろう」
“出雲”が、ゆっくりと顔を上げる。
「……はい」
「だからこそ、今は休め。二人に会う前に倒れられても困る」
その言葉に、“出雲”は何も言えなくなった。
何日も海を泳ぎ続けてきた。
誰にも助けを求めず、誰も信用せず、ただ帰ることだけを考えてきた。
妖精たちが全員いることを何度も確認し、日本を目指し、横須賀まで辿り着いて。
それでも、まだ終わっていないと思っていた。
報告しなければならない。
皆が生きていることを知らせなければならない。
海斗と美香が、最後まで戦ったことを伝えなければならない。
そう考えて、どうにか身体を動かし続けてきたのである。
だが、今は。
「……出雲」
“磐手”が、そっと彼女の肩へ手を置いた。
「もういいんだよ」
その一言で、張り詰めていたものが崩れた。
「……っ」
“出雲”が俯く。
一滴、二滴と涙が膝へ落ちた。
「……お父さん……」
肩が震える。
「お母さん……」
押さえようとしても、今度は止まらなかった。
「私……ちゃんと……」
「ああ」
洋平が答える。
「みんな……連れてきた……」
「ああ」
「一人も……いなくなってない……」
「分かってる」
洋平は椅子から立ち上がり、“出雲”の前まで歩いた。
そして、そっと肩へ手を置く。
「……よくやった」
それ以上、気の利いた言葉など思いつかなかった。
自分の弟も、その妻も、もう帰ってこない。
その現実を、誰よりも理解していた。
それでも今、目の前には、二人が最後まで守ろうとした者たちがいる。
「……本当に、よく帰ってきた」
“出雲”は顔を覆った。
そのまま、初めて声を上げて泣いた。
“鳳翔”が隣へ寄り、“磐手”も反対側から身体を抱き寄せる。
妖精たちの中にも、泣いている者がいた。
洋平は何も言わず、ただそこに立っていた。
海斗も美香も、もう帰ってはこない。
しかし、二人は何も残さず消えたわけではなかった。
最後まで守ろうとした者たちが、今ここにいる。
そして、その者たちが二人の最期を持ち帰ってきた。
本来なら、あの海で全てと一緒に失われていたはずの証言。
現場にいなかった者には決して分からない、その戦いの記録。
一人の艦娘と、彼女が連れて帰ってきた妖精たちは、失われた「建御雷」の戦闘詳報そのものだったのである。
ただし、それが国防軍の正式な戦闘詳報として提出される日は、まだ来ていなかった。
何故なら、彼らは今も。
公式には、全員が死んだことになっているのだから。
その後、“出雲”はようやく休むことになった。
“鳳翔”と“磐手”が付き添い、艦内でも人の出入りが少ない区画へ移す。
医療担当の妖精が改めて状態を確認し、食事と水分を取らせた後、無理に起こさず眠らせるよう指示した。
幸い、全身の疲労以外に大きな問題は見つかっていない。
それでも、何日も海を泳ぎ続けた直後である。簡単に回復するような状態ではなかった。
「……寝た?」
寝台の傍で、“磐手”が小声で尋ねる。
“鳳翔”は、静かに頷いた。
「ええ。ようやく」
“出雲”は既に眠っていた。
先ほどまでの会議室では、何とか背筋を伸ばして報告を続けていたが、今はそんな力も残っていないらしかった。
“磐手”は、暫くその寝顔を見つめる。
「……ほんっと、無茶するんだから」
その声には、呆れだけではないものが混じっていた。
“鳳翔”も、眠る“出雲”へ目を向ける。
「そうですね。でも……」
「……うん」
“磐手”が頷く。
「帰ってきてくれて、よかった」
それだけだった。
その後、二人は暫く何も言わなかった。
同じ夜。
“出雲”の報告を終えた洋平は、長官室へ戻っていた。
机の上には、先ほど作成した聞き取り記録がある。
ただし、それは通常の作戦記録とは異なり、外部へ一切転送されていなかった。
“出雲”と妖精たちの証言。
「建御雷」が実際に戦闘した相手。
敵の行動。
主砲の命中状況。
船体の損傷。
そして、最後の総員退艦命令。
それらは、全て洋平にとって初めて知る情報だった。
それどころか、特務艦隊司令部に所属する誰も、これまで知らなかったのである。
「……戦艦棲姫、か」
洋平は、もう一度その名前を呟いた。
それだけで、出撃命令の異常さが改めて浮かび上がってくる。
第二特務艦隊の戦力が壊滅的な損害を受けた直後。
艦娘を随伴させることも許されず、単艦で指定された航路を進まされた「建御雷」。
そして、その正面から現れたのが、第二特務艦隊を壊滅寸前まで追い込んだのと同じ“戦艦棲姫”だった。
さらに、こちらが針路を変更すると、相手も追従してきたという。
「……偶然、か」
洋平は、誰にともなく呟いた。
その言葉を信じることが出来れば、どれほど楽だっただろう。
しかし、あまりにも条件が揃いすぎている。
そして、もう一つ。
今夜まで、特務艦隊司令部も研究所も、相手の正体すら知らなかった。
それにもかかわらず、国防軍上層部は「上位個体と交戦した」と発表している。
無論、それだけで内通の証明になるわけではない。
しかし、その裏付けとなる情報を一切示さず、現場を指揮するはずの組織へも伝えないとなれば、話は別だった。
一体、何を知っているのか。
そして、何を隠しているのか。
そこへ、別の問題が重なっていた。
“出雲”の所在である。
“磐手”以外、誰も彼女が行方不明になっていたことを把握していなかった。
研究所は横須賀にいると思い、こちらは研究所か統合作戦司令部の監視下にいると思っていた。
反艦娘派にとっては、艤装を失った戦闘不能の少女など、もはや厳密に監視する価値も無かったのだろう。
それが結果として、あの密航を誰にも気付かせずに済ませた。
そして、その少女が今。
「建御雷」の最期を知る生存者として帰ってきた。
妖精乗員たちまで、全員連れて。
「……皮肉なもんだな」
洋平は、小さく笑った。
敵が戦力として数えなかった少女が、今は彼らにとって最も都合の悪い証人になっている。
そして、その証人を生かしたのは、海斗と美香だった。
洋平は、暫く机上の記録を見つめた。
それから、通信端末へ手を伸ばす。
通常の国防軍回線ではない。
特務艦隊と艦娘技術研究所の間で使用出来る、限られた者しか扱わない独立した連絡系統だった。
その相手へ、今夜のことを知らせなければならなかった。
希空と零。
海斗と美香の、残された子供たちへ。
艦娘技術研究所もまた、普段よりずっと静かだった。
夜間も止められない設備は稼働しており、当直の研究員や妖精たちも残っている。しかし、昼間のような賑わいは無かった。
秋吉の執務室には、まだ希空と零、士、加奈がいた。
誰も帰ろうとはしなかった。
帰ったところで、眠れるとは思えなかったからである。
希空は端末へ向かっていたが、作業が進んでいるとは到底言えなかった。
同じ設計資料を開いては閉じ、別の画面へ切り替えたかと思えば、いつの間にか元の資料へ戻っている。
秋吉は暫くその様子を見ていたが、とうとう声を掛けた。
「……希空。今日はもう止めたらどうだ」
「まだ出来る」
「出来るかどうかの話じゃない」
「……分かってるよ」
希空は画面を見たまま答えた。
「でも、今寝たって多分寝られないし」
「それも分かるけどな……」
秋吉も、それ以上は強く言えなかった。
零はソファの端に座り、膝の上で両手を組んでいる。
昼間よりは落ち着いていたが、普段のように研究所の中を歩き回ることもなく、ただ黙っていた。
反対側では加奈が士の袖を掴んでいる。
士も何も言わず、そのままにしていた。
そんな空気の中で、秋吉の端末が短く鳴った。
「……ん?」
表示を確認した秋吉が、僅かに眉を寄せる。
「どうしたの?」
希空が振り向いた。
「特務艦隊司令部からだ」
「洋平伯父さん?」
「本人だな」
秋吉は、すぐに通信を開いた。
「秋吉だ」
『俺だ』
洋平の声だった。
疲労は滲んでいる。
しかし、昼間までの、何かを噛み殺していたような声とは少し違っていた。
「こんな時間に、どうした?」
『今、そこに誰がいる?』
秋吉が室内を見回す。
「希空と零、士、加奈。それと僕だ」
『他には?』
「この部屋にはいない」
『回線は?』
「独立系統だ。通常の外部ネットワークからは切り離せる」
『頼む』
秋吉はすぐに端末を操作し、通信に不要な接続を遮断した。
希空も席を立ち、画面へ近付いてくる。
「何かあったの?」
洋平は、すぐには答えなかった。
『……今から話すことは、そこにいる五人以外へ出すな』
その一言で、室内の空気が変わった。
士も加奈も顔を上げ、零もソファから立ち上がる。
「……分かった」
秋吉が答えた。
『通常の報告系統にも上げていない』
「……そこまでか」
『ああ』
希空が、我慢出来ずに口を挟んだ。
「……伯父さん。何があったの?」
少しだけ間があった。
そして。
『……出雲が帰ってきた』
「…………え?」
誰も、すぐには意味を理解出来なかった。
最初に首を傾げたのは希空だった。
「……出雲ちゃん?」
『ああ』
「……帰ってきたって、どういうこと?」
洋平は、少しだけ間を置いた。
『今、建御名方にいる』
「……うん?」
希空は、困惑したように秋吉を見る。
秋吉も、何とも言えない顔をしていた。
「……洋平。それは、出雲がそっちへ戻ったという報告か?」
『……いや』
「じゃあ、何の話だ?」
秋吉が聞き返す。
「出雲は、横須賀へ行くと聞いていた。そちらにいること自体は、特におかしくないと思うんだが」
『……』
今度は洋平の方が、僅かに言葉を止めた。
『お前たちは、出雲が横須賀へ行ったと思ってたのか?』
「そうだけど?」
希空が答える。
「療養中ではあるけど、ずっと研究所にいる必要も無いし。磐手ちゃんたちも横須賀にいるから、会いに行ってるんだと思ってたよ」
『……そうか』
洋平が、短く息を吐いた。
先ほど“磐手”から聞いた話と、綺麗に繋がった。
やはり研究所側は、“出雲”が最初から横須賀にいるものと考えていたのである。
だから、彼女が行方不明になっていたこと自体、誰も気付いていなかった。
「……伯父さん?」
希空が、もう一度呼んだ。
「何か、変なこと言った?」
『いや。そういうことじゃない』
洋平は、少しだけ考えた。
どう説明すればいいのか。
「……出雲ちゃんが、どうかしたの?」
希空が尋ねる。
零も、端末の前へ近付いてきた。
「出雲が、何かしたの?」
その問いに、洋平は答えた。
『……お前たちは、出雲が何処にいたのか知らなかったんだな』
「……?」
希空の眉が寄る。
『……あいつは、建御雷に乗ってたんだ』
数秒間。
誰も、何も言わなかった。
「…………は?」
最初に声を出したのは、秋吉だった。
『建御雷だ。海斗たちと一緒に出撃してた』
「……ちょっと待って」
希空が、ゆっくりと口を開く。
「出雲ちゃんが?」
『ああ』
「……あの、建御雷に?」
『そうだ』
「……いつから?」
『出港前に勝手に潜り込んだらしい。海斗も美香も、出港してから知ったそうだ』
今度こそ、希空は完全に言葉を失った。
「…………」
その隣で、士が思わず身を乗り出す。
「……出雲、建御雷に乗ってたのか?」
『ああ』
「……あの出撃に?」
『そうだ』
「……マジか」
加奈も、目を丸くしていた。
「……何で?」
それは、誰もが抱いた疑問だった。
艤装を失い、戦闘能力も無い。
その上、ようやく身体を取り戻したばかりで、まだ療養中だった。
そんな“出雲”が、何故あの出撃へ付いていったのか。
「……いや、待って」
希空が、ようやく口を開いた。
「それで……出雲ちゃんは?」
『今、建御名方にいる』
「……だから、どうして?」
『生きて帰ってきたんだ』
「…………」
希空は、暫く画面を見つめていた。
それから、ゆっくりと意味を理解した。
「……帰ってきた、って……」
ようやく、最初の言葉の意味が分かった。
“出雲”は、ただ横須賀へ戻ってきたのではない。
失われた「建御雷」に乗っていて。
その戦闘を生き延びて。
そして今、横須賀へ帰ってきたのだ。
「……出雲ちゃん、生きてるの?」
声が震えた。
『ああ。間違いない』
「……本当に?」
『俺が直接会ってる』
希空は、暫く何も言えなかった。
その横で、零が顔を上げる。
「……出雲、いたの?」
『ああ』
「父さんと母さんと、一緒に?」
『そうだ』
零は、少しだけ目を見開いた。
そして。
「……生きてるんだよね?」
『ああ。ちゃんと生きてる』
「……そっか」
小さく頷く。
しかし、洋平の話はそれだけではなかった。
『しかも、出雲だけじゃない』
「……どういうこと?」
希空が尋ねる。
『建御雷の妖精乗員も、全員帰ってきた』
「…………」
今度こそ、誰も言葉を返せなかった。
秋吉さえ、一瞬だけ端末を見つめたまま固まった。
「……全員?」
『ああ。一人も欠けてない』
「……どうやって?」
士が尋ねる。
洋平は、短く説明した。
『海斗と美香が、最後に総員退艦を命じたそうだ』
希空の表情が止まった。
零も、何も言わなくなった。
『妖精たちを全員小型化させて、出雲へ移乗させた。出雲は艤装が無いから、海を泳いで逃げたんだ』
「……泳いで?」
加奈が聞き返した。
『ああ』
「……どこまで?」
『日本まで。そこから横須賀へ来た』
士が目を見開く。
「……待てよ。じゃあ、何日も?」
『そうだ』
「……無茶苦茶だな」
秋吉が呟いた。
艦娘だから出来る、と言えば確かに出来る。
しかし、それは彼女の身体が無限に頑丈だという意味ではない。
まして“出雲”は、ほんの少し前まで瀕死の重傷を負い、ようやく日常生活を送れるまで回復したばかりだった。
その身体で、何日も外洋を泳いだというのである。
「……出雲ちゃん、何考えてるの……」
希空が、思わず呟いた。
しかし、すぐに別のことが気になった。
「……怪我は?」
『新たな大きな外傷は無い。ただ、ひどく消耗してる』
「……そりゃそうでしょ」
『今は休ませてる』
その言葉に、希空はようやく少しだけ安心した。
しかし、秋吉は別の点が気になっていた。
「……ところで、何で横須賀まで誰にも見つからなかった?」
洋平の声が、少し低くなった。
『……誰にも見つからないように帰ってきたんだ』
「……何?」
『軍にも警察にも、民間人にも、自分からは接触しなかったそうだ』
室内の空気が、再び変わった。
『誰を信用していいのか、分からなかったらしい』
希空の表情が引き締まる。
その理由は、聞くまでもなかった。
あの出撃命令が、あまりにも不自然だったからだ。
『国防軍の艦艇に救助されれば、当然、上層部へ報告が行く。そこに誰がいるのか分からない以上、自分たちが生きていることを知られたくなかったんだろう』
「……出雲ちゃん……」
希空が、小さく呟く。
どれほど心細かっただろう。
何日も海を泳ぎ続け、疲れ切っていても、誰にも助けを求められない。
日本へ戻ってきても、自分の国の船を避けなければならない。
そんな帰還だったのである。
『最後は建御名方の近くまで来て、蒼龍たちの夜間訓練で見つけてもらったそうだ』
「……そこまでしたのか」
士が呟いた。
『ああ』
洋平は短く答えた。
『そこまで警戒するだけのものを、あいつは見てきた』
「……何があったの?」
希空が顔を上げる。
洋平は、暫く言葉を選んでから答えた。
『今夜、出雲と妖精たちから一度話を聞いた』
「……うん」
『俺たちも今まで、ほとんど何も知らなかった。建御雷が上位個体と交戦したという情報さえ、国防軍の発表で知ったくらいだからな』
秋吉が頷いた。
「こっちも同じだ。現場の交戦記録は、何一つ届いてない」
『だろうな』
洋平は、少しだけ声を落とした。
『……相手が分かった』
希空が息を呑む。
「……誰?」
『戦艦棲姫だ』
数秒間。
誰も何も言わなかった。
「……戦艦棲姫?」
秋吉が、確認するように繰り返す。
『ああ。出雲が識別した。先日の北方海域で、第二特務艦隊を襲ったのと同じ個体だそうだ』
希空の表情が変わった。
「……あいつが?」
『そうだ』
零も、ゆっくりと顔を上げた。
“戦艦棲姫”。
その存在は、研究所に残された交戦資料を通じてよく知っている。
何度も特務艦隊の前へ現れ、その度に甚大な被害を与えてきた上位個体。
そして、ほんの少し前には“出雲”を死の寸前まで追い込んだ相手だった。
その個体が。
今度は、父と母の乗る「建御雷」を襲ったのだという。
『しかも、出雲たちの証言によれば、向こうは最初から建御雷の方へ向かってきたらしい。こちらが針路を変えれば、相手も追ってきた』
「……待って」
希空が口を挟んだ。
「それ、偶然って言えるの?」
『分からん』
洋平は、はっきりと答えた。
『ただ、偶然で片付けるには不自然すぎる』
希空は黙り込んだ。
『海斗自身も、出来すぎているという趣旨のことを言っていたらしい』
「……お父さんが」
『ああ』
洋平は続けた。
『ただし、海斗が誰かの内通を口にしたわけじゃない。出雲も、敵がどこから情報を得たのかは知らない』
「……うん」
『だから、今は事実と推測を分けて記録してる』
秋吉が口を開く。
「……証言者は?」
『かなりの数だ。建御雷の妖精乗員が全員帰ってきてるからな』
その意味は大きかった。
一人だけなら、記憶違いや混乱、個人の主観だと言い逃れることも出来るかもしれない。
しかし、今回は違う。
艦橋乗員、砲術担当に機関科、応急班など、それぞれの持ち場にいた妖精たちが、生きている。
全員が同じものを見たわけではない。
だが、だからこそ、それぞれの証言を突き合わせれば、「建御雷」で実際に何が起きたのか、かなり正確に再構築出来る。
「……生きた戦闘詳報、か」
秋吉が呟いた。
『……そういうことだ』
洋平も頷く。
『それも、こっちが今まで一切知らなかった内容ばかりだ』
「戦闘は……どうだった?」
希空が、慎重に尋ねた。
『建御雷は、かなり善戦したらしい』
「……え?」
『主砲を何度も命中させてる。戦艦棲姫の艤装にも、相当な損傷を与えたそうだ』
士が顔を上げた。
「……あの建御雷が?」
『ああ。主砲は二基六門の31cmレールガンだ。元々、相応の火力がある艦ではあったが……』
洋平は一度言葉を切った。
『海斗と美香も、妖精たちも、最後まで戦った』
その言葉を聞いた希空は、ゆっくりと目を閉じた。
「建御雷」の核融合機関や各種改修には、自分も関わっている。
あの艦がどれほど強くなったのか、誰よりも知っているつもりだった。
それでも、まさか“戦艦棲姫”を相手にあそこまで戦えるとは思っていなかった。
父と母が、その艦で最後まで戦っていた。
その事実は嬉しくもあり、同時に、どうしようもなく苦しかった。
「……でも、やっぱり……」
希空が呟いた。
洋平は、短く答えた。
『……ああ』
それ以上の説明は必要無かった。
どれほど善戦しても、二人は帰ってこない。
そして、それが今夜も変わらない事実だった。
『最後は、艦の被害が大きくなって、海斗と美香が総員退艦を命じた』
「……うん」
『妖精たちは全員逃がした。出雲が連れて帰った』
「父さんと母さんは?」
零が尋ねた。
誰も止めなかった。
洋平の返事は、少し遅れた。
『……帰ってこない』
零の手が、強く握られた。
『そこだけは、昼間から変わらない』
「……そっか」
小さく答え、視線を落とす。
父と母が帰ってこない。
その事実が消えるわけではない。
それでも。
「……出雲は、生きてるんだよね」
『ああ』
「妖精たちも?」
『全員、生きてる』
零は、暫く黙っていた。
それから、本当に小さく息を吐いた。
「……よかった」
希空が、そっと弟の肩へ手を置く。
零は何も言わず、その手を握った。
加奈も顔を伏せ、目元を押さえている。
「……よかった……」
彼女も、同じ言葉を漏らした。
士は隣で長く息を吐いた。
「本当に……それだけでも」
その先は続かなかった。
『ただし』
洋平の声で、室内の空気が再び引き締まった。
『出雲の帰還も、妖精たちの生存も、当面は伏せる』
秋吉は、すぐに意味を理解した。
「公式には、今も全員戦死か」
『そうなっている』
「ここで発表を訂正すれば、生存者がいることを相手側にも教えることになる」
士が続ける。
『ああ』
加奈が顔を上げた。
「……相手って、誰?」
洋平は即答しなかった。
『まだ分からん』
「……」
『だから伏せる』
静かな声だった。
『もし本当に国防軍内部へ情報を流した人間がいるなら、建御雷乗員が生きていると知られるのは危険だ』
希空が端末を見つめる。
「……反艦娘派?」
『可能性は考えてる』
そこで、洋平は少しだけ強く続けた。
『だが、決めつけるな』
「……分かってる」
『証拠が足りない。今ここでこっちから騒げば、相手が誰であれ手の内を見せるだけだ』
「うん」
秋吉も頷いた。
「分かった。こっちでも記録へのアクセスを絞る。出雲たちのことは一切表に出さない」
『頼む』
洋平は、そこで少しだけ声を和らげた。
『……それから、希空』
「何?」
『海斗と美香から、出雲へ伝言があった』
希空の表情が強張る。
「……お父さんとお母さんから?」
『ああ』
零も顔を上げた。
洋平は、短く息を吐く。
『お前と零を頼む、と』
希空は、ゆっくりと目を閉じた。
父と母の声を直接聞いたわけではない。
それでも、最後に二人が何を考えていたのか、その一言だけで痛いほど伝わってきた。
『それと……』
洋平が少しだけ言い淀む。
『海斗は、出雲に、もう家族みたいなものだろうと言ったそうだ』
希空が目を開く。
零も、顔を上げた。
『実の娘じゃないけど、うちの娘みたいなものだってな。美香も、同じように考えてたらしい』
「……そっか」
希空は、それだけを答えた。
不思議ではなかった。
“出雲”は、ずっとそばにいた。
海斗と美香と一緒に戦って。
研究所へ来れば、普通に家族の中へ混ざって。
零のことも、ずっと気に掛けていた。
今になって、名前が付いただけなのかもしれない。
『それで、あいつも……』
洋平は、一度言葉を切った。
『最後に、海斗と美香をお父さん、お母さんって呼んだそうだ』
「……え?」
希空が、僅かに目を見開いた。
『二人とも、普通に送り出してくれたらしい』
希空は、暫く何も言えなかった。
零も、端末を見つめている。
“出雲”が父と母をそう呼んだ。
そして、二人もそれを受け入れた。
それが、最後の別れだったという。
「……そっか」
希空が、もう一度呟いた。
今度は、少しだけ笑った。
「……じゃあ、ほんとに家族になっちゃったんだね」
洋平も、小さく頷いた。
『……そういうことだな』
「……出雲は?」
零が尋ねた。
『今は休ませてる』
「寝た?」
『多分な。鳳翔と磐手がついてる』
「……会える?」
その声は、今までより少しだけ幼く聞こえた。
洋平も、柔らかく答える。
『今日は無理だ』
零の顔が僅かに沈む。
『何日も泳いできて、そのまま報告までしたんだ。まずは寝かせる』
「……うん」
『起きて、医者がいいと言ったら、その後だ』
「分かった」
零は少し考えてから、もう一度尋ねた。
「姉さんも、一緒に行っていい?」
「当然でしょ」
答えたのは、希空だった。
零が姉を見る。
希空の目は、まだ赤かった。
それでも、昼間より僅かに表情が戻っている。
「私も、出雲ちゃんに聞きたいことあるし」
少し間を置く。
「……顔も見たい」
『ああ。明日、様子を見てこっちから連絡する』
「……分かった」
そこで、極秘通信は終わった。
端末の画面が暗くなると、研究所には再び夜の静けさが戻ってきた。
海斗と美香が帰ってこないことは、何も変わっていない。
零や希空にとっては、父と母。
加奈にとっては、兄と姉。
士や秋吉にとっても、長い付き合いのあった大切な二人だった。
その喪失が、今夜の連絡で消えたわけではない。
けれど、全てがあの海で失われてしまったわけでもなかった。
“出雲”が生きていた。
妖精たちも、全員生きていた。
海斗と美香が最後に逃がした者たちは、一人も欠けることなく帰ってきたのである。
そして彼らは、二人が最後まで戦ったことも、最後まで誰かを守ろうとしていたことも、全て持ち帰ってきた。
「……ほんと、馬鹿」
希空が、ぽつりと呟いた。
零が姉を見る。
「……出雲?」
「そう」
希空は椅子へ腰掛け、顔を伏せる。
「戦えないのに勝手について行って、何日も海を泳いで、誰も信用出来ないからって横須賀まで隠れて帰ってきて……」
言葉だけを聞けば、呆れているようだった。
しかし、その声にはもう、昼間の硬さだけではないものが混じっていた。
「……ほんとに、馬鹿」
今度は、少しだけ笑った。
零も、ほんの僅かに口元を緩めた。
明日、会えるかもしれない。
もう二度と会えないと思っていた人に。
それだけで、この夜は、昼間までとは少しだけ違う夜になっていた。
続く
あ と が き
希空や零にとっても、出雲との関係は今までと変わらず、ただそこに名前が付いたというだけ。
次回 姉弟の対面