自我持つ兵器の英雄譚   作:Nyappy-

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航空隊による対艦攻撃回

なお、本作における国防海軍航空隊の数字命名規則は帝国海軍準拠、国防空軍飛行戦隊の源流は帝国陸軍飛行戦隊です。



3. 航空隊突撃!

 

第一艦隊所属、第601海軍航空隊。

 

F/A-18J/DJホーネット、四十八機。

 

彼らは「瑞鶴」が致命傷を受ける直前、間一髪で全機の発艦に成功していた。

 

だが、攻撃目標はあまりにも近い。

 

既に戦闘海域の真上に近い位置から発艦していたため、一度距離を取り、隊形と攻撃態勢を整えた上で反転する必要があった。

 

 

 

───そして。

 

「隊長! 艦隊が!」

 

「……間に合わなかったか。クソッ!」

 

彼らが戻って来た時には、全てが終わりかけていた。

 

燃え上がる海面。

 

沈みつつある艦。

 

そこかしこから立ち上る黒煙。

 

第一艦隊は、既に壊滅していた。

 

彼らが帰るはずだった「瑞鶴」も、もうない。

 

「化け物め……よくもやりやがったな……ッ!」

 

隊長機が機首を下げる。

 

眼下。

 

海面の上を、人間ほどの大きさしかない何かが滑るように動いている。

 

それが何なのか。

 

何故、人の姿をしているのか。

 

何故、軍艦を沈められるほどの火力を持っているのか。

 

そんなことは、今はどうでもよかった。

 

「全機、突入!」

 

隊長が叫ぶ。

 

「奴らを生きて帰すな!!」

 

「「「応ッ!!」」」

 

士気は落ちていなかった。

 

むしろ逆だった。

 

第一艦隊の仇を討つ。

 

それだけで、航空隊の意志はほとんど一つになっていた。

 

 

先陣を切ったのは、ベテランを中核とする第一中隊。

 

十二機のホーネットが高度を落としていく。

 

「隊長! 対空砲火!」

 

海面から閃光が走った。

 

すぐ後、黒煙を引きながら砲弾が空を抜けていく。

 

───だが。

 

「気にするな! 予想が正しけりゃ当たらん!」

 

隊長機がそのまま突っ込む。

 

実際、敵の射撃は激しく見える一方で、高速飛行するジェット機を正確に捉えられてはいなかった。

 

弾幕の多くは後方へ流れ、あるいは遥か下を通り過ぎていく。

 

「で、これ見てどうなんだ、十二番!」

 

『多分間違いないです! 予想通りだ!』

 

 

 


 

 

 

数分前

 

「───すまん。もう一度言ってくれ」

 

『はい。ですから、あの敵は……人間の身体に、昔の軍艦みたいな能力を持たせた存在なんじゃないかと』

 

第一中隊第三小隊。

 

最近配属されたばかりの末番機、十二番機のパイロットが、半ば自信なさげに口にした推測だった。

 

『そんなことある訳ないだろ』

 

『アニメの見過ぎじゃないか?』

 

同じく若い僚機からは、当然のように否定の声が飛ぶ。

 

だが、

 

『いや。オタクの妄想と言い切るには、まだ早いぞ』

 

二番機のベテランが口を挟んだ。

 

「根拠があるのか、二番」

 

『ああ。無論だ、隊長』

 

少し間を置き、二番機が続ける。

 

『奴らが艦隊を攻撃していた時、何が起きてたか覚えてるか?』

 

「……あの砲声か」

 

『そうだ。あの轟音。それに、発砲する度に奴らの周りへ出てた黒煙。俺にはあれ、艦砲射撃にしか見えなかった』

 

別の機からも声が上がる。

 

『昔の戦争映画みたいだったな』

 

『それに、海の上を滑るように移動してた。人間だと思えば滅茶苦茶だが、船だと思えば筋が通る』

 

二番機が笑う。

 

『……だろ、十二番?』

 

『は、はい! その通りです!』

 

「信じられんな……そんなものが本当にいるのか」

 

『普通なら俺だって信じねぇよ。でも、見ちまったものは仕方ない』

 

「……確かにな」

 

隊長も、もう一度眼下を見た。

 

 

───どう見ても人間だ。

 

それなのに、軍艦を沈める砲を撃つ。

 

『なら、奴らを“軍艦”だと思って攻撃した方がいい』

 

二番機が言う。

 

『それも、大戦期の軍艦みたいな奴だ。……対艦装備で来てて良かったな』

 

今回、第601海軍航空隊は対艦兵装を搭載していた。

 

第一艦隊の出撃目的は、「如月」の捜索。

 

そして、「如月」が何者かに攻撃されていた場合の敵性勢力排除。

 

相手が普通の水上艦艇である可能性も当然想定されており、ホーネットには対艦ミサイルと爆装が準備されていた。

 

十二番機が、少し考えてから言った。

 

『もし僕の予想通りなら、防空能力そのものはそこまで高くないと思います。少なくとも、高速ジェットを相手にするようなものには見えません』

 

「ならいいが……問題は別にあるな」

 

『はい』

 

隊長は小さく息を吐いた。

 

「……小さ過ぎる」

 

 

 


 

 

 

そして、現在。

 

「十二番の言った通りだ! 対空砲火は脅威じゃない!」

 

第一中隊の十二機が低空へ入る。

 

「だが近付き過ぎるな! あいつらが何を持ってるか、まだ全部分かった訳じゃない!」

 

『了解!』

 

彼らは既に、一度対艦ミサイル攻撃を行っていた。

 

……結果は、一体撃沈。

 

決してゼロではない。

 

むしろ、その事実自体が異常だった。

 

日本の対艦誘導兵器は、命中精度という点では世界でも最上位に位置する。

 

その高性能な終末誘導装置をもってしても、人間ほどの大きさしかない目標を捉え続けるのは難しかった。

 

そもそも対艦ミサイルとは、本来なら全長百メートルを超えるような艦艇を狙う兵器だ。

 

レーダー反射面積も、赤外線像も、目標の幅も、何もかもが違う。

 

 

そして何より……敵は、避けた。

 

『ミサイル回避!?』

 

最初の攻撃時、パイロット達はその光景を見ていた。

 

海面すれすれを飛来した対艦ミサイル。

 

通常の軍艦であれば、最後はCIWSや電子戦で迎撃を試みる。

 

だが、眼下の人型目標は違った。

 

自分で動いて、射線から逃れた。

 

まるで人間が飛んでくる物を避けるように。

 

ただし、その速度は人間とは比較にならない。

 

誘導弾は懸命に追尾した。

 

それでも、大半が海面へ突っ込むか、至近を通過して爆発した。

 

ただ、一発だけ。

 

逃げ切れなかった個体へ直撃した。

 

その瞬間。

 

目標は爆炎に呑まれ、海面から消えた。

 

 

 

───つまり。

 

「当たりゃ沈む……!」

 

隊長は、その事実だけは確信していた。

 

敵は無敵ではない。

 

問題は、当たらないことだった。

 

「ミサイルで駄目なら、上から直接叩く!」

 

第一中隊は爆撃態勢へ入る。

 

「あと少し……」

 

照準、補正。

 

目標は動く。

 

速い。

 

小さい。

 

「ここだ! 投下!」

 

隊長機を皮切りに、各機が次々と爆弾を切り離した。

 

爆弾が海面へ降り注ぐ。

 

直撃……しない。

 

次々に巨大な水柱だけが上がっていく。

 

「ほぼ全部至近弾か……分かっちゃいたけどな!」

 

敵は水柱の間を高速で駆け抜けていた。

 

大型艦を狙うつもりなら十分な精度だった。

 

だが、人間大の目標となれば話は別だった。

 

 

それでも、至近弾は無意味ではない。

 

水圧、破片、衝撃。

 

爆発の中心から外れていても、至近で爆弾が炸裂すれば無傷では済まない。

 

『一体、動きが鈍った!』

 

「第二中隊、そこを狙え!」

 

『了解!』

 

続く第二中隊が突入。

 

既に動きを落としていた個体へ爆弾が叩き込まれた。

 

一体撃沈。

 

第三中隊、第四中隊も続く。

 

直撃は少ない。

 

それでも爆撃を繰り返し、至近弾で動きを削ぎ、そこへ次の攻撃を重ねる。

 

 

 

やがて、さらに三体が海中へ消えた。

 

第601海軍航空隊による撃沈、計五体。

 

……だが。

 

「……まだいる」

 

隊長は歯を食いしばった。

 

残存、七体。

 

その中には、第一艦隊を砲撃で壊滅させた大型個体もいる。

 

爆弾は使い切った。

 

対艦ミサイルもない。

 

残っているのは機関砲だけだった。

 

『やれるだけやるぞ!』

 

一部の機は再び高度を落とした。

 

敵がジェット機を捉え切れないことを利用して接近し、20mm機関砲を浴びせる。

 

火花は散る。

 

命中もする。

 

だが、決定打にはならなかった。

 

「クソッ……!」

 

一機が大きく旋回する。

 

『隊長! 俺が突っ込みます!』

 

「馬鹿野郎! やめろ!」

 

『でも、このままじゃ───』

 

「機体を捨ててどうする! 戻れ!」

 

怒りに任せ、体当たりまで考え始めたパイロット。

 

 

 

その時だった。

 

『第601海軍航空隊、聞こえるか』

 

知らない声が通信へ割り込んだ。

 

『こちら国防空軍、第7飛行戦隊』

 

空を見上げる。

 

遠方から、多数の機影が接近していた。

 

「……来た」

 

誰かが呟く。

 

「空軍だ!」

 

零式F-2、そしてその前任の76式戦闘攻撃機F-1。

 

国防空軍、第7飛行戦隊。

 

その後ろには第8飛行戦隊の姿もある。

 

総数、実に七十二機。

 

 

 

「第一艦隊が……ここまでやられたとはな……」

 

新鋭F-2を駆る第7飛行戦隊長は、眼下に広がる惨状に言葉を失っていた。

 

 

数時間前まで、彼らは百里基地にいた。

 

F-2初配備記念式典。

 

新しい時代の主力機を披露する、祝賀飛行。

 

その終了直後だった。

 

 

緊急発進命令。

 

 

───そして今。

 

新世紀の空を守るために生まれたばかりの戦闘攻撃機が、その初実戦で向き合っているのは、

 

人の姿で海を走る、正体不明の怪物だった。

 

『こちら第601海軍航空隊。救援、感謝する』

 

「第7飛行戦隊長だ」

 

戦隊長は、燃える海面を見下ろした。

 

「……間に合わなかった。すまない」

 

一瞬、通信が途切れる。

 

『いや』

 

海軍側の声が返った。

 

『来てくれただけで十分だ』

 

「後は任せろ」

 

戦隊長は前を向く。

 

「残っている奴らは、全部沈める」

 

『……感謝する』

 

第601海軍航空隊は、既に航続距離の限界へ近付いていた。

 

母艦はもうない。

 

帰還可能な基地まで飛ばなければならない。

 

ホーネット達が次々と戦場を離れていく。

 

そんな彼らとすれ違うように、F-2とF-1の大編隊が前へ出た。

 

「……まさか、お前の初陣がこんな相手になるとはな」

 

戦隊長が、F-2の操縦桿を握り直す。

 

この機体で実戦に出る日が来るなら、相手は高度なレーダーと防空ミサイルを備えた、現代の艦隊だと思っていた。

 

……だが。

 

眼下にいるのは、そんな相手ではない。

 

「対空能力が低いのは助かる」

 

僚機から通信。

 

『ですが、小さ過ぎます』

 

「ああ」

 

そこが最大の問題だった。

 

速い。

 

小さい。

 

しかも、自分で回避する。

 

艦艇攻撃用の兵器が想定している標的とは、あまりにも違う。

 

戦隊長が笑った。

 

「だからこそ、七十二機も連れて来たんだろうが」

 

 

精密に一発を当てる。

 

それが難しいなら……外れようのないほど撃ち込めばいい。

 

 

「全機、攻撃開始!」

 

第7飛行戦隊。

 

第8飛行戦隊。

 

F-2とF-1が、一斉に散開した。

 

「奴らを全部沈める!」

 

対艦ミサイル、誘導爆弾、通常爆弾。

 

搭載してきた兵装が、次々と海面へ放たれていく。

 

今回の攻撃で、最初から一発一発の命中率を当てにしてはいなかった。

 

逃げるなら、逃げた先にも爆発を置く。

 

右へ避ければ右へ。

 

左へ逃げれば左へ。

 

一体を一発で狙うのではなく、敵が動ける海面そのものを、攻撃範囲で埋め尽くす。

 

一発目を躱した個体の前へ、二発目。

 

そこから逃げた先へ三発目。

 

海が爆発した。

 

巨大な水柱が、次々と立ち上がる。

 

『直撃確認!』

 

『一体沈黙!』

 

『二体目!』

 

「攻撃続行!」

 

無数の至近弾、爆圧、破片。

 

人間大の敵が、どれほど高い耐久性を持っていようと、周囲全てを爆発で埋められれば、逃げ続けることは出来ない。

 

そして時折、日本製誘導兵器が、その小さな目標を最後まで捉え切った。

 

───直撃。

 

その度に、敵は沈んだ。

 

「やっぱりだ……!」

 

戦隊長は確信する。

 

硬い。

 

異常な火力を持つ。

 

人間とは思えない速度で海を走る。

 

だが……倒せる。

 

 

当てさえすれば、現代兵器で殺せる。

 

 

その事実は、この日、人類が得た最初の、そして極めて重要な戦訓の一つとなった。

 

 

 


 

 

 

───やがて。

 

『敵反応、減少!』

 

『残り一!』

 

最後の大型個体へ、複数の攻撃が集中する。

 

対艦ミサイルが海面すれすれを突進。

 

敵は避ける。

 

その先に、F-2から投下された爆弾が落ちる。

 

───轟音。

 

海面そのものが持ち上がった。

 

 

しばらくして水柱が崩れる。

 

そこに、敵の姿はなかった。

 

『敵、沈黙!』

 

『水上反応、消失!』

 

『全目標、撃破確認!』

 

戦隊長は、ようやく息を吐いた。

 

「……やり切ったか」

 

 

 

攻撃終了後。

 

海上に動く敵影は、一つも残っていなかった。

 

……だが、沈んだ第一艦隊は戻らない。

 

燃料も弾薬も減った戦闘機群が、ただ静かに海上を旋回する。

 

「……結局」

 

戦隊長が呟く。

 

「なんだったんだ、奴らは……」

 

答えられる者はいなかった。

 

 

 


 

 

 

後に、日本国防軍がまとめた戦闘結果。

 

日本国防軍。

 

国防海軍第一艦隊。

 

喪失、六隻。

 

大型航空母艦「瑞鶴」。

 

大型ミサイル駆逐艦「球磨」「多摩」。

 

汎用駆逐艦「睦月」「如月」「弥生」。

 

大破、一隻。

 

汎用駆逐艦「卯月」。

 

損害軽微、一隻。

 

汎用駆逐艦「皐月」。

 

第601海軍航空隊。

 

航空機喪失、なし。

 

 

国防空軍。

 

第7飛行戦隊。

 

航空機喪失、なし。

 

第8飛行戦隊。

 

航空機喪失、なし。

 

 

 

敵性存在。

 

撃破確実、十八。

 

うち、推定潜航型六。

 

水上型十二。

 

詳細分類、不明。

 

 

 


 

 

 

戦闘後の分析によって、いくつかの重要な事実が判明した。

 

敵は、人間大という極端に小さな目標であるが故に、従来の対艦捜索・照準体系では捕捉し難い。

 

その異常な機動力により、通常の艦艇を想定した誘導兵器さえ回避する。

 

 

一方、航空機に対する迎撃能力は、この時確認された個体群に限れば高くなかった。

 

 

 

そして、最大の発見。

 

 

直撃させれば、倒せる。

 

人類の兵器は、通用する。

 

 

問題は、

 

『どうやって当てるか』

 

だった。

 

 

 


 

 

 

───しかし。

 

この戦闘結果が公になることはなかった。

 

政府と国防軍上層部は、この事件の扱いについて協議。

 

 

最終的に、

 

『高度な政治的判断』

 

によって、真相は伏せられることとなった。

 

理由は、国内外での混乱を防ぐため。

 

 

 

公式発表。

 

日本国防海軍第一艦隊は、西太平洋航行中に大規模な海難事故へ遭遇。

 

複数艦を喪失。

 

残存艦にも損害。

 

 

 

この事件は、

 

『第一艦隊遭難事件』

 

として処理された。

 

 

当然、疑問の声は上がった。

 

僅かな時間のうちに、空母を含む第一艦隊の大半が沈んだ。

 

本当に、ただの海難事故だったのか。

 

 

だが、真相へ辿り着く材料は公開されなかった。

 

疑問は次第に陰謀論として処理されていった。

 

 

 


 

 

 

西太平洋 海底

 

「思ッテイタヨリ、ヤルワネ」

 

一人の女が呟く。

 

白い肌に黒い髪、赤い瞳。

 

頭には、鬼を思わせる二本の角。

 

人間に似ているが、似ているだけ。

 

少なくとも普通の人間ではない。

 

その背後には、巨大な口と、腕。

 

そして、三連装砲塔を二基背負った異形の存在が控えている。

 

「フフッ……ダガ、コノママ攻撃ヲ続ケレバ、イズレ奴ラノ戦力ハ底ヲツク」

 

女は笑う。

 

「物量デハ、我ラノ方ガ上ダカラ……フフフッ」

 

「姫サマ」

 

背後から声。

 

「女王陛下ヨリ通信デス」

 

「ン? 陛下カラ?」

 

女は僅かに眉をひそめる。

 

「折角、良イ気分ダッタノニ……」

 

通信が繋がる。

 

「……ドウカシマシタ、陛下」

 

『攻撃ハ、一旦停止ダ』

 

「……ナゼデス!?」

 

女の声が荒くなる。

 

「コノママ攻撃ヲ続ケレバ、人類ハ簡単ニ滅ボセルノニ!」

 

『ソレデハ、面白クナイダロウ?』

 

「……ハ?」

 

怒りより先に、困惑が浮かんだ。

 

「ドウイウコトデス?」

 

『タダ滅ボスダケデハ、ツマラナイ』

 

女王は淡々と続ける。

 

『世界ヲ分断スル』

 

『人類同士ヲ争ワセル』

 

『ソノ上デ、更ニ弱体化サセル』

 

「……人類同士デ、内ゲバヲ?」

 

『ソウダ』

 

僅かに笑う気配。

 

『面白ソウダロウ?』

 

「ソレハ……ソウデスガ」

 

女は少し考える。

 

「具体的ニ、ドウヤッテ?」

 

『簡単ナコトダ』

 

女王が答えた。

 

『既ニ各国ヘ潜リ込マセテイル者達ヲ使ウ』

 

『争イノ火種ナド、幾ラデモ転ガッテイル』

 

「ハァ……」

 

女は呆れたように息を吐く。

 

「イクラ人類ガ野蛮デモ、ソウ簡単ニイクカシラ」

 

『確実ニ分断サセル一手ハ、既ニ打ッテアル』

 

「……ソレハ?」

 

『思想ダ』

 

女王は答えた。

 

『最初ノ火種ニハ丁度イイ』

 

『ソコカラ政治、経済、資源……幾ラデモ広ゲラレル』

 

「……考エタワネ」

 

『十分ニ疲弊サセタ後ハ、我々ガ狩リ尽クス』

 

 

───そして、

 

『ソノ時ハ頼ンダゾ』

 

僅かな間。

 

 

『“戦艦棲姫”』

 

 

女は、狂気を含んだ笑みを浮かべた。

 

「フフフッ……任セナサイ」

 

「女王陛下」

 

 

 


 

 

 

それから、およそ一年。

 

2001年9月11日。

 

アメリカ合衆国で発生した大規模テロ事件をきっかけに、世界は再び混迷の時代へと足を踏み入れていく。

 

 

 

その背後で。

 

人ならざる者達が、既に動き始めていたことを。

 

この時の人類は、まだ知らなかった。

 

 

 

 

 

続く





あ と が き

「至近弾」については、艦これにおける「カスダメ」に相当すると考えています。なので、今回沈んだ深海棲艦の水上艦は艦これ的に言えばカスダメを大量に食らいまくった、と言う感じです。


次回 物語は加速する(二重の意味で)
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