今回ちょっとダイジェスト気味・シリアススイッチのON・OFF激しめです。
───時系列は、少し遡る。
第一艦隊が、横須賀へ帰還した。
そう聞いた洋平達三人は、港へ駆け付けていた。
「瑞鶴は……? 父さんは!?」
洋平が叫ぶ。
百里基地で緊急発進していく戦闘機を目にした三人は、その理由が「第一艦隊の救援」であると知ると、式典どころではなくなり、大急ぎで横須賀鎮守府までやって来ていた。
……だが。
『第一艦隊が帰還した』
その言葉から想像していた光景は、そこにはなかった。
港へ戻っていたのは、僅か二隻。
ほとんど損傷のない「皐月」。
そして、
見るも無惨な姿となった「卯月」。
何より、父───神崎洋一が乗っているはずの「瑞鶴」は、どこにもいなかった。
「父さんは!? どうしたんですか!?」
「何が……あったんですか……?」
「皐月」から降りてきた士官へ、海斗と美香が詰め寄る。
美香の声は震えていた。
一度、父親を戦争で失っている。
だからこそ、
頭のどこかでは、既に分かってしまっていた。
士官は三人の顔を見た。
「……君達は、神崎司令官のお子さんか」
「はい。父は!?」
答えは、すぐには返ってこなかった。
士官は僅かに俯く。
……そして、
「……すまない」
それだけを残し、去っていった。
「…………」
「……そんな」
海斗の顔から、血の気が引いていく。
「嘘だ……」
洋平も、それ以上の言葉が出なかった。
認めたくない。
だが、
三人とも、認識せざるを得なかった。
『父が死んだ』
その事実を。
数時間後。
三人は横須賀鎮守府司令長官から、神崎洋一第一艦隊司令官の戦死を正式に告げられた。
最初は、ただ悲しかった。
湾岸戦争を生き抜いた父だった。
自分達にとっては、英雄などという大層な肩書きより先に、ただの父親だった。
その父が、もう帰ってこない。
連絡を受けて鎮守府へ駆け付けた母も、何も言えず泣いていた。
そんな母の姿を見て、
三人は、それぞれに決意する。
「俺……戦うよ」
海斗が口を開いた。
「父さんを殺した奴らと戦う。父さんの仇を討ってみせる」
「私も」
美香も続く。
その声には、悲しみだけではないものが混じっていた。
十年前。
実の父を失った。
そして今。
もう一人の父まで失った。
「……もう誰も失いたくないから」
最後に。
洋平が静かに目を閉じる。
十八歳。
まだ高校生。
それでも、
今日から、自分は神崎家を背負わなければならない。
「……父さん」
拳を握る。
「俺、立派に当主を継いでみせる」
「だから……俺達のこと、見守っててくれ」
そして、顔を上げた。
「神崎家当主として、この日本を護ってみせる」
ミレニアム・ショックで失われたのは、神崎洋一だけではなかった。
神崎家の分家にあたる東堂家でも、当主夫妻が第一艦隊に所属していた。
二人とも優秀な軍人だった。
同一家系の当主夫妻を同じ艦隊へ置くことには、当然ながら危険性を指摘する声もあった。
だが、本人達が共に第一艦隊勤務を希望したこと。
そして2000年当時の第一艦隊が、装備の新旧以上に高い練度を要求される重要部隊だったことから、それは認められていた。
───結果。
東堂家もまた、一度に当主夫妻を失った。
残された後継者は、まだあまりにも幼かった。
そのため後に、洋一の妻と、その末娘も東堂家の屋敷へ身を寄せることになる。
幼い後継者を、
少なくとも、彼が一人で立てるようになるまでは支えてやるために。
その後。
洋平達は高校を卒業すると、江田島の海軍兵学校へ進学。
国防海軍軍人としての道を歩み始めた。
そして洋平は十八歳という異例の若さで、神崎家当主となった。
また、生前の洋一は、海斗と美香へ何度も言っていた。
『二人の結婚式を早く見たい』
その願いに、もう本人が立ち会うことは出来ない。
だからこそ、二人は高校在学中に結婚した。
洋一の葬儀を迎えるまでの僅かな時間で準備を進め、ささやかながら結婚式も執り行った。
あまりにも早い結婚だった。
けれど、それが二人なりの、洋一へ出来る最後の報告でもあった。
それから、およそ二年半。
世界では、再び戦争が始まっていた。
2001年9月11日に発生したテロ事件。
それを契機として始まった、対テロ戦争。
世界はミレニアムイヤーに期待されたような、穏やかな新世紀を迎えることは出来なかった。
日本国防軍にも、アメリカから協力を求める声が届いた。
湾岸戦争で、日本国防軍が実戦部隊として相応の働きを見せていたことも大きかった。
……もっとも。
日本側の反応は、決して積極的なものではなかった。
つい先日と言っていいほど前に、未知の敵によって第一艦隊を丸ごと失ったばかりなのだ。
正体も、目的も、次に何処へ現れるかも分からない。
そんな状況で、主力戦力を再び長期間国外へ出すことなど出来るはずもなかった。
それでも、半世紀以上の同盟関係もある。
何より、米ソ最後の熱い戦争で共に戦った相手から正式に協力を求められている。
完全に断ることもしなかった。
日本国防軍は、ごく短期間、最低限の部隊だけを中東方面へ送り、補給、輸送、警戒その他の後方支援を中心として、限定的に作戦へ参加した。
そして、何事もなく帰ってきた。
───それ自体が不気味だった。
日本から中東へ向かい。
任務を行い。
また日本へ戻ってくる。
海上交通も、航空路も、妨害や襲撃は一切なかった。
まるで、あの日の出来事など最初から存在しなかったかのように。
2003年4月
兵学校の戦時速成課程を修了した洋平、海斗、美香の三人は、いよいよ士官として部隊へ配属される。
───はずだった。
「『対SUE用決戦兵器開発任務』の進捗を確認して来い?」
洋平が渡された書類を見て首を傾げる。
「どういうことです?」
「そもそも……『SUE』って何ですか?」
海斗と美香も同じだった。
配属を目前に控えた三人へ、国防省から突然与えられた極秘任務。
担当者は三人の反応を見ても、詳しい説明をしようとはしない。
「まあ、実際に見れば分かる」
一枚の地図を差し出した。
「そこに“ラボ”の座標が記してある」
「ラボ?」
「現地へ行け。それと───」
担当者の表情が変わる。
「今から君達が知ることは、全て最高軍事機密だ」
三人も自然と姿勢を正した。
「絶対に漏らすな。家族にもだ」
「何処に誰の目があるか分からん。この手の研究を欲しがる国も組織も山ほどある」
「分かったな?」
「「「……了解!」」」
こうして三人は。
地図に記された場所へ向かうこととなった。
北海道北部。
地図上には、ただ山地が広がっている。
「……ここか?」
三人は指定された座標へ到着していた。
だが。
「何もないぞ」
洋平が周囲を見渡す。
山、木、岩。
……それだけ。
「これ、地図が間違ってるんじゃないか?」
海斗がそう言いかけた、その時。
ゴゴゴゴゴゴ……。
「……ん?」
低い地鳴り。
それと共に、三人の目の前にあった斜面がゆっくりと横へ動き始めた。
「「「…………」」」
土と岩にしか見えなかった巨大な構造物が移動し、その奥から人工的な通路が現れる。
照明が灯った。
「……いや」
「そこまでやる?」
海斗が呟く。
「映画じゃん……」
美香も呆然としていた。
極秘研究施設とは聞いていた。
……だが。
まさか本当に、山そのものへ偽装した入口が開くとは思っていなかった。
三人が立ち尽くしていると、奥から一人の女性が歩いてきた。
「あなた方が、神崎家の方々ですね?」
「え? あ、はい」
「お待ちしていました。中へご案内します」
促されるまま、三人は“ラボ”の中へ足を踏み入れた。
応接室。
「初めまして」
一人の青年が立ち上がった。
「僕は秋吉智明です」
丁寧に頭を下げる。
「この施設───正式名称『艦娘技術研究所』の所長を務めています」
「初めまして。神崎家当主、神崎洋平です」
洋平も頭を下げた。
そして。
改めて目の前の男を見る。
───若い。
どう見ても、所長という肩書きから想像する年齢ではない。
「あの……失礼ですが」
「はい?」
「所長……にしては、随分若く見えるんですけど。おいくつですか?」
「二十歳です」
「「「───わっか!?」」」
見事に三人の声が重なった。
秋吉が苦笑する。
「……あなた方も、人のことを言える年齢ではないと思いますけど」
「いや、俺達は研究所長じゃないから……」
「───ていうか」
美香が秋吉の顔をじっと見る。
「その名前……どこかで聞いたような」
「美香さんなら、ご存知かもしれません」
秋吉は相変わらず丁寧な口調で答えた。
「高校時代から軍事技術研究へ関わっていましたから。最近では、F-2の改良研究にも一部参加しています」
「あっ!」
美香が指を差す。
「それだ!」
「“今世紀最大の天才”って言われてる人じゃん!まだ2003年なのに!」
「……その呼び方は、少し大袈裟ですよ」
秋吉は照れくさそうに笑った。
高校時代から軍事研究へ参加。
十代にして複数の研究計画へ関わり、その能力を買われ、十九歳で軍の極秘研究施設を任された。
秋吉智明は、既に一部では世界的な注目を集め始めていた若き研究者だった。
「ところで……」
海斗が少し身を乗り出す。
「任務を受けてから、ずっと気になっていたんですが」
「はい」
「SUEって……何なんですか?」
秋吉は少しだけ三人を見回した。
そして。
「……そうですね」
「その前に」
秋吉がふっと表情を緩めた。
「敬語、別にいりませんよ」
「え?」
「同い年でしょう?」
「僕も堅苦しいのは得意じゃないので。ここからは普通に話しましょう」
洋平達は顔を見合わせる。
「……じゃあ」
洋平が改めて尋ねた。
「聞きたいんだが」
「SUEって、何だ?」
秋吉の表情から、笑みが消えた。
口調も、先ほどまでよりずっと砕けたものへ変わる。
「……洋平君達なら」
「もう半分くらいは知ってる」
「え?」
「2000年」
秋吉が言った。
「第一艦隊を壊滅させた、正体不明の生命体」
「君達のお父さんを殺した存在だ」
三人の表情が固まった。
「…………!」
忘れたことなどない。
横須賀へ戻ってきた「皐月」と「卯月」。
帰ってこなかった「瑞鶴」。
泣いていた母。
父の死。
その全てが、一瞬で蘇る。
秋吉は静かに続けた。
「SUE」
「Submerged Unknown Enemy」
「日本語なら、“潜航する未知の敵”」
「最近、国連側が便宜上そう呼び始めた」
海斗が拳を握る。
「……じゃあ」
「俺達は……」
「ああ」
秋吉は頷いた。
「君達がここへ呼ばれた理由も、たぶんそれだ」
「上は、君達をいずれSUEと戦う側へ置くつもりなんだと思う」
それ以上、秋吉は何も言わなかった。
三人が落ち着くまで、ただ待った。
少しして。
「……もう大丈夫だ」
洋平が息を吐く。
「それより」
海斗が秋吉を見る。
「そういうことなら、任務名にあった『対SUE用決戦兵器』って……!」
「そう」
秋吉が頷いた。
「ここでは、それを作ってる」
「SUEに対抗出来るのか!?」
「ああ」
そして……少し笑った。
「今研究してる───『艦娘』ならね」
「「「───カン、ムス?」」」
「艦に娘と書いて、艦娘」
秋吉は立ち上がる。
「簡単に言うなら、軍艦が持っていた力を、人間大の身体と艤装へまとめる兵器体系だ」
「SUEと同じように海上を動いて」
「砲を撃って」
「艦と同等の能力を、人間サイズで扱う」
美香が眉をひそめる。
「……人間大の身体?」
「まさか」
「───少女を使う」
その一言に、美香の顔が明らかに曇った。
秋吉も、それを見逃さなかった。
「……うん」
先ほどまでより、少し歯切れが悪くなる。
「そこは僕も問題だと思ってる」
「普通の少女へ、後から艦の力を背負わせる」
「今考えている方式だと、どうしてもそうなる」
「身体への負担も大きい」
「脳への情報量も」
「艤装との接続も」
「まだ問題だらけだ」
秋吉は自嘲気味に肩を竦めた。
「だから“決戦兵器”なんて大層な名前は付いてるけど、現状はまだ研究段階」
「改善案も探してる」
「……でも」
表情が引き締まる。
「時間があるとは限らない」
「ミレニアム・ショック以降」
「表向きには、SUEは一度も姿を見せていない」
洋平が顔を上げる。
「表向きには?」
「……その辺は、まだ君達にも全部話せる権限がない」
秋吉はそれ以上を濁した。
「ただ」
「奴らが消えたなんて、誰も思ってない」
少し間を置く。
「君達も聞いてるだろ?」
「国防軍が、一度だけ短期間、中東へ出てたこと」
「ああ」
洋平が頷く。
「あれもそうだ」
秋吉は続けた。
「部隊を日本から出して」
「中東まで行って」
「仕事を終えて」
「また帰ってきた」
「その間、一度も襲われなかった」
海斗の表情が曇る。
「……確かに」
「妙だろ?」
秋吉は小さく息を吐いた。
「敵なら、こっちの戦力が国外へ出てる時を狙ってもいい」
「航路を襲ったっていい」
「でも、何もしてこない」
「むしろ」
秋吉の目から笑みが消える。
「表立って何もしてこないことの方が、不気味なんだ」
2000年の『第一艦隊遭難事件』。
一般社会では、
『太平洋上で起きた大規模海難事故』
そう処理された事件。
しかし、真相を知る一部の政府・軍関係者は、それを別の名で呼んでいた。
『ミレニアム・ショック』
世界有数の練度を持つ日本国防海軍第一艦隊を壊滅させた、正体不明の存在。
───SUE。
その正体を掴めないまま。
各国は極秘裏に、次に来る何かへ備え始めていた。
「……でも」
海斗が首を傾げる。
「そんな技術、どうやって作ったんだ?」
「いくら秋吉が天才でも、ゼロからそんなもの作るのは無理だろ」
「その通り」
秋吉はあっさり認めた。
「僕が全部発明したわけじゃない」
「紹介するよ」
「来て」
研究室へ赴く。
秋吉に連れられ、三人は応接室を後にした。
広い研究区画。
端末。
実験機材。
大型の作業設備。
そこで働いていたのは、十数人ほどの女性だった。
入口で三人を案内した女性の姿もある。
美香が首を傾げる。
「……なんだろ」
「何か変じゃない?」
「分かる」
海斗も頷く。
「人間には見えるんだけど」
「人間じゃないような……」
秋吉が笑う。
「分かった?」
「彼女達は一体……?」
「人間じゃないよ」
「「「───は???」」」
「ぷっ、はははっ!」
秋吉が吹き出した。
「やっぱり三人とも同じ反応するんだな」
「さすが兄妹」
「いやいやいや!」
洋平が詰め寄る。
「確かに何か変だとは思ったけど、人間じゃないなんて聞いてねぇぞ!」
「どういうことだよ!」
「そこも含めて説明するよ」
秋吉は研究室で働く女性達を見る。
「彼女達は自分達のことを」
「“妖精”と呼んでる」
───妖精。
彼女達が人類の前へ姿を現したのは、およそ一年前。
突然、日本国防省へ接触してきたという。
『我々はSUEへ対抗し得る技術を持っている』
『人類へ協力したい』
当然、国防省は警戒した。
人間ではない存在。
出自も分からない。
目的も分からない。
それでも、妖精達が提示した技術は、
無視するには、あまりにも大きかった。
艦艇に残された“艦魂”を回収する技術。
その艦魂を利用し、軍艦級の機能を人間サイズへ収めた艤装を建造する技術。
そして、その艤装を人間の身体へ接続し、同調させる技術。
どれも当時の人類科学だけでは、到底実現出来ないものだった。
「妖精っていうくらいだから、小さいのかと思ってた」
美香が研究員の一人を見る。
どう見ても普通の成人女性ほどの大きさだ。
「小さくもなれるよ」
秋吉が答える。
「というか、小さい姿と今くらいの姿を行き来出来る」
「どういう原理かは、僕達も完全には分かってない」
「彼女達自身は普通に使ってるけどね」
海斗が唖然とする。
「……そんな連中と、一年も一緒に研究してんのか」
「そういうこと」
秋吉は机の上に置かれた試作部品へ手を置く。
「ただし」
「妖精が持ってきた技術を、そのまま人間が使えるわけじゃない」
「彼女達にとっては“出来て当然”でも」
「人類側には、何をどう作れば再現出来るのかすら分からないものが多い」
「だから」
秋吉が自分を指す。
「僕達が、それを人間の工学へ翻訳してる」
「……それで」
洋平が試作艤装……らしき物を見る。
「出来るのが、艦娘?」
「正確には」
秋吉は少し笑う。
「今、“出来るようにしてる”ところだな」
「本当にSUEへ対抗出来るの?」
美香が尋ねる。
「正直」
秋吉は即答した。
「まだ分からない」
「実戦に出した艦娘は、一人もいないからね」
だが。
「それでも」
「現時点では、かなり筋の良い答えだと思ってる」
海斗が腕を組む。
「理由は?」
「敵の兵器へ対抗する時、一番分かりやすい方法の一つは」
秋吉が説明を始める。
「相手と同じ土俵で、同等以上の性能を持つ兵器を作ること」
「例えば、そうだな……」
少し考える。
「フィクションだけど、人型機動兵器なんか分かりやすい」
「それまで既存兵器で戦っていた大国が、新機軸の兵器を投入した側に押されて───」
「「…………」」
「でも国力では優位だから、その兵器を解析して、より高性能な───」
「「………………」」
「それで量産性も───」
「秋吉」
洋平が遮った。
「ん?」
「ストップ」
「……あ」
秋吉は口を閉じた。
美香が小声で呟く。
「この人、説明始めると長いタイプだ……」
「聞こえてるよ」
「……まあ」
洋平が話を戻す。
「理屈は分かった」
「でも、それって」
「艦娘とSUEが本当に“同じジャンル”だった場合の話だろ?」
「大丈夫なのか?」
「じゃあ」
秋吉が少し楽しそうに笑った。
「三人とも、分かる範囲でいい」
「艦娘とSUEの共通点を挙げてみて」
「「「うーん……」」」
考える。
人間大。
海上を移動する。
その身体には不釣り合いな艦砲級火力。
軍艦に相当する能力。
そして、
「「「……あっ」」」
三人揃って声を上げた。
「分かったみたいだね」
「艦娘って……まさか」
海斗が呟く。
秋吉が頷いた。
「発想だけで言えば」
「艦娘は───“人類製SUE”と呼んでもいい」
「もちろん」
すぐに付け加える。
「同じ生物だとか、同じ技術で出来てるとか、そういう意味じゃない」
「人間大の身体へ軍艦級の能力を集約して」
「海上を自由に動き」
「砲雷撃戦をする」
「戦闘システムとして見れば、驚くほど似てるってこと」
秋吉は試作艤装へ視線を落とした。
「妖精達が持ってきた技術が、たまたまこの方向へ向いていたのも大きい」
「でも」
「最終的に、この形を選んだのは人間側だ」
「ミレニアム・ショックで」
「たった人間大の敵に、第一艦隊が壊滅させられた」
「だったら」
「人間大の軍艦には」
「人間大の軍艦をぶつける」
秋吉は僅かに笑った。
「単純だろ?」
「……乱暴なくらいにな」
洋平も苦笑した。
「でも」
美香が試作設備を見る。
「それで誰かを守れるなら……」
その言葉に、秋吉は何も返さなかった。
ただ、少しだけ表情を柔らかくした。
その後、
三人は数時間にわたって、艦娘技術研究所の説明を受けた。
SUE、妖精、艦魂、艤装。
そしてまだ存在してすらいない、人類初の艦娘。
全ての説明を終え、三人が研究所を後にしようとした時、秋吉が声を掛けた。
「洋平君」
「海斗君」
「美香さん」
三人が振り返る。
「艦娘は」
秋吉が言った。
「あと二年もすれば、何とか実戦へ出せるところまで持っていけると思う」
2005年。
まだ遠いようで、決して遠くない未来。
「だから」
秋吉は少しだけ冗談めかして、けれど目だけは真剣なまま言った。
「それまで、生きていてくれよ?」
「艦娘だけ完成しても」
「彼女達を戦場で指揮出来る司令官がいなきゃ」
「意味ないんだからさ」
洋平達三人は、一瞬だけ顔を見合わせた。
そして、
「……ああ」
洋平が笑う。
「任せろ」
この時、彼らはまだ知らなかった。
この研究所で生まれようとしている新しい力が、
自分達の人生だけでなく、人類と海の戦いそのものを大きく変えていくことを。
続く
あ と が き
や〜っと艦娘建造フラグ立ったよ……。これでやっと堂々と「原作:艦隊これくしょん」を名乗れる……。
次回 艦娘建造 (注意:オリジナル艦娘です)