このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う! 作:王朝万歳
要塞都市エリドゥ。都市のビル群の中。生徒たちが激しくぶつかり合う。
爆弾が爆発し、生徒たちが銃撃戦が繰り広げる。
「はっはっは! 流石はわが校が誇るエージェントたち! なかなか粘るじゃないか!」
「油断はするなよ」
私とフカメは、ネルを抜いたC&Cと戦いを繰り広げていた。私が攻撃し、フカメが電磁力で銃弾を防ぐ。
弾が切れても、電磁力で空中に浮遊された弾倉を直ぐに受けとって、リロードして銃を撃つ。
堅牢な防御に、高火力の銃撃。フカメと私、二人の力で疑似的な装甲車を作り。
そして、リオのAMASを引き連れ、蹂躙する。
「アハハ! すっごーい」
「ええ、ですが。あちらにも弱点があります」
遮蔽物に隠れながら、後退を続けていた。C&Cメンバーだったが、アカネが飛び出してきて爆弾を投げた。
爆弾が爆発し、一瞬視界が塞がる。
「今です、撃ってください」
「了解した」
アカネがそう指示すると、フカメの展開する電磁力シールドの死角から弾丸が飛来し、フカメの頭に当たった。
仰け反ったフカメのヘイローが点滅する。
「大丈夫か」
「っ、ああ、問題ない。やられた、このような方法で突破されるとは」
爆弾で視界を塞ぎ、死角からスナイパーによる狙撃。突破方法を編み出したわけだ。
なるほど。数々の高難度のミッションをこなしてきたエージェントらしく、実践経験豊富だ。
だが、そんなものは一度限りだ。
「私が前に出る。その間に」
「ああ、任せろ」
私が前に出て、前線に出ている二人のC&Cメンバーの相手をする。当然、被弾率も上がるが、そんなものは微々たるもの。
むしろ、この痛みを感じてこそ、闘いだ。
「見つけた!」
私の後ろに下がったフカメが撃たれた方向からおおよその位置をスナイパーの位置を特定。
電磁釵でAMASを浮き上がらせ、狙撃地点である都市ビルの屋上に向かって投擲する。スナイパーの下に辿り着いたAMRSが狙撃を妨害する。
これで私たちへの対抗策は潰した。
復帰したフカメが再びシールドを展開し、元の戦いに戻る。
後方からの火力支援も失った。C&Cの二人はそのまま、後退を続け。最後には壁に追い込まれた。
「なかなか、いい闘いだったぞ。三人とも」
私の前にいる二人ともが、銃撃にさらされ、満身創痍の状態になっていた。スナイパーの方も片付いたとのこと。
しかし、時間を食わされたものだ。早めにトキの支援に行くとするか。
「しばらく、眠っているといい」
仕上げの一撃に、ボロボロの二人に向けて、今、銃に込めている弾をすべて吐ききる。
確実に意識を刈り取る銃の嵐。
『させませんよ♪』
「なんだと!」
都市にヒマリの音声が響き。二人に迫る銃弾は地面から飛び出てきた防壁によって防がれた。
そして、二人と私たちは分断され、見失う。
「ノボリ、スナイパーも消えた」
先ほどまで、ビルの屋上にいたはずのスナイパーも姿を消していた。
リオ渡された通信機器が震える。
『ごめんなさい。ハッキングを抑えていたのだけど、突破されたわ。都市の機能も一部ジャックされた』
ヒマリとヴェリタスの都市へのハッキングを抑えれていたが。
セミナーが押収していた鏡がヴェリタスに回収。元々、ヒマリの方がハッキング分野に優れていることもあり、一気にシステムを浸食されたらしい。
『それと、先生たちが防衛ラインを突破したわ。C&Cのメンバーもこちらに向かってきてる。急いで、戻ってきて』
『イエス。マム』
『分かった。なるべく早く、戻ろう』
リオから、現在進行形ヒマリの操作で変わりつつある都市のルートで、まだ、リオの手にある都市区域を使っての都市中央部に向かうルートを提示され。
リオの通信を聞いて、トキと私たち、それぞれで向かう。
「防壁が生えてくるぞ! 地面には気をつけろ」
「わかっているさ」
フカメと二人で、地面から突発的生えてくる障害物に注視しながら、ビル群を走る。
このままいけば、先生の到着前には三人とも都市の中央ビルに辿り着く。
だが、そう簡単にはいかせてくれないようで。
『すまん。遅れる』
『何かあったの?』
『お前の傑作が私たちの相手をしてくれるらしい』
リオとの通信を繋ぎ、今直面している状況を伝える。
『アバンギャルド君でしたか。この上なくダサいデザインですが、優秀な兵器であることは変わらないわけですし、使わない手はありませんね♪』
今いる区画からの脱出ルートの進路上にヒマリに乗っ取られたリオ製作のアバンギャルド君が待ち構えていた。
『そう。なら、先生たちは私たちで対応する。幸運を祈ってるわ』
『任せろ。すぐに合流する』
リオとの通信を切れ、私たちとヒマリの操作するアバンギャルド君との戦いの火蓋が切られた。
『これはこれは♪ えい♪』
そんな可愛らしいヒマリの声とは裏腹に、アバンギャルド君から放たれる攻撃はえげつないもので。
武双が展開され、堅牢な盾を構えた上で、アサルトライフル、バズーカ砲、ガトリングガンが持ち出され、圧倒的な火力を押し付けられる。
「チッ、逃げるぞ」
流石に分が悪すぎるので。
フカメと二人でビルの中などを経由して、引き撃ちしながら後退する。
『ふっふっふ♪ 逃げるばかりでは勝てませんよ♪』
「そうだなー!」
ビルの上から手榴弾を投擲して、爆発させてみるが。あまり効果はなかったらしく、直ぐにバズーカ砲が放たれ、先ほどまで経立っていた場所が木端微塵になる。
『残念でしたね♪』
地面に着地して、また逃走するが。後ろから、アバンギャルド君が追いかけて来る。
ここがビルなどの障害物が多い場所で助かった。平地ならば、あっという間に補足されていただろう。
まったく、リオは恐ろしい発明品を作ったものだ。
だが、私たちは兵器開発部としてもっと恐ろしい戦車を作ってきた経験がある。
戦車の対策方法も熟知している。スイッチを押し、アバンギャルド君の周りの地面に散らばっている建造物の破片たちに紛れ込ませた爆弾を爆発させる。
『な!? そんなでたらめな!』
「今だ! フカメ!」
「兵器運用を間違えたな!」
爆発で足場が崩れ、動きが取れなくなったアバンギャルド君を。ビル中腹部からフカメが磁力で近場のビルの半分を持ち上げ、押しつぶす。
ビルの倒壊という衝撃は凄まじく、距離を取っていた私にまで伝わってきた。
『…………』
土煙が晴れると、そこには真っ二つに折れ、完全に機能を停止した。アバンギャルド君がいた。
「厄介な相手だったな」
「まったくだ。私もこういった場合を考えて、自爆機能はつけるべきかもしれないな」
「それは勝手にしろ」
アバンギャルド君の破壊を確認し、スタっとビルから降りてきたフカメと軽口を交わしながら、都市の中央タワーへと向かう。
全く厄介な相手だった。強力すぎる兵器も考えものだ。多少は人の手を介すアナログな部分もセキュリティ対策にはいるかもしれん。
「静かすぎないか」
「確かにな」
都市中央に向かって、走っていたが。防壁の展開などは起こらず、初めにリオの提示したルートとほとんど変わっていなかった。
ヒマリなら都市のシステムを使って、しつこく妨害してくると思っていたのに、それがなく。私たちは二人で首をかしげる。
こちらに時間を割いての足止めに見切りをつけ、中央タワーのシステム攻略に力を入れることにしたのだろうか
バン!
「「…………!?」」
そういって疑問を浮かべながら、都市中央部に辿り着いた時、とてつもない爆発音が鳴り響き、都市上空に巨大な建造物が浮かんだ。
方舟の形をしたそれは都市を分解し、吸収する形でその規模を拡大し続けている。
「間に合わなかったのか!」
「そのようだね」
こうして、見ている間にも、肥大し続けるそれに二人して冷や汗をたらして、喉を鳴らす。
実態は一刻を争っていた。
「ノボリ、先の戦闘で、私の身体はもう限界だ。ここに置いておいて、君は先にいけ!」
「わかった。最終手段の用意をしておいてくれ。私があのタワーの上に登って合図を送る!」
フカメが乗り移っているボディは度重なる戦闘で限界を迎えており、今も頭の上のヘイローが点滅し消えかけていた。
精神へのダイブ技術を応用したサイボーグ化だが、ダイブ中の肉体が死ねば、精神的ダメージがフィードバックし元の精神も元の肉体も死ぬ。
これ以上の戦闘は限界なので、エリドゥで寝かせてある元の肉体へと戻って。
そこで、兵器開発部員たちと最終手段の用意をしておくよう頼んでおく。
「エレベーターは故障中か。ならば、自力で上がるまで」
フカメと一旦別れた私は中央タワーの外壁を駆けあがっていった。
◇
「先生、あの子たちを連れて逃げてちょうだい。ここは私が何とかして収めて見せるから」
「“リオ、それが君の優しさだったんだね"」
中央タワーの最上階、リオはアリスの身体を動かす「Key」を名乗る存在がキヴォトスを滅ぼすのを止めるべく、全力で頭を悩ませていた。
……あの時、私がためらってしまったから
それはしばし前、ノボリたちがアバンギャルド君を倒していた時。
「“そこまでだよ、リオ”」
「そうみたいね。トキも倒されて、ノボリ達もこちらにいない以上。私に抵抗するすべはないもの」
都市の演算機能を丸ごと使用したチートと呼べる超ハイテク武装、アビ・エシェフを操縦するトキを先生たちに倒され。
ノボリ達も未だヒマリにハッキングで乗っ取られたアバンギャルド君と交戦中でここにはいない。
リオにはもう打てる手はなかった。
「私たちの負けね」
モモイやミドリ、ユズ。ゲーム開発部の部員たちがアリスを殺すために用意した機械の上で眠る電極に繋がれたアリスの傍へと寄る。
このまま、アリスは先生たちに保護されミレニアムに帰っていくのだろうと思われた。
「その行為は推奨しません。現在「王女」の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています。強制的に接続を解除すると、取り返しのつかない損傷を起こすでしょう」
突如、サーバールームのすべてのディスプレイの画面に、“Division”の文字が浮かび上がり、都市を驚異的な速度で乗っ取り始めた。
急いで、アリスに装着された電極コードを外そうとするモモイ。それを眠りから覚めたアリス。いや、アリスの体に宿る別の危険な存在、Keyが静止した。
「まだ、止められる」
都市の機能はまだ、乗っ取り切れておらず、アリスを殺害する装置も稼働していた。今なら、まだ、キヴォトスの終末を止めることができる。
目の前のモニターに映るこのプログラムを実行するだけで。リオの手が動き、ボタンを押そうとする。
「……そんな、うそ」
だが、リオの手はボタンを叩くことなく、机を叩いていた。
いくらノボリに弁護され、本人が必要なことだと合理的に判断していても。心のどこかで。
アリスが人間で。今から自分がやるのは人殺しだと思ってしまっていた。
それでも、自分が悪になってでも自分はミレニアムの会長なのだから責任を果たさなければと飲み込んでいた。
「私はあのチビを助けたいんだよ!」
でも、アリスを助けようとここまで向かってきた先生たちの姿を見て、アリスが人間かもしれないという考えが再び浮かんでしまった。
「愚かですね。100%、リソース確保完了。アトラ・ハーシスの箱舟の顕現を開始します」
Keyの冷徹な一声で、キヴォトスを滅ぼす厄災の顕現が始まった。
「最終手段に移るしかない」
拡大を続け、間もなく完成するであろう箱舟。残された時間はあとわずか。
ノボリと兵器開発部たちが用意したあの恐ろしい兵器を使用するしかない。今から連絡を入れても、起動までに時間がかかる。
「先生、この状況を解決する方法があるの。急いで退避してちょうだい」
ここから先生たちを退出させ、残って時間を稼ぐ必要がある。
覚悟を決め、先生たちを帰そうとした時。
「リオ、待たせたな!」
「……あなた、どうやって!?」
爆音と同時、辺り一帯に窓ガラスの破片が飛び散る。
予想外の人物が予想外の方法で入ってきた。
リオの共犯者たちの一人。ノボリが窓ガラスをぶち破って外壁から侵入してきた。
◇
中央タワーの最上階のサーバールームへ到達。部屋には先生とゲーム開発部、ノボリとリオが集っていた。
「リオ、あれを使う。衝撃に備えろ!」
「あなた、まさか! あなたたち、何処かに捕まって。AMAS、彼女たちの保護を!」
リオの姿を確認し、あの兵器を使うことを知らせる。ここだと巻き込まれる可能性あり、多少の危険あり。その後は……まあ、運が良ければ。
まあ、事態は一刻を争う。実行だ。腕を振って、こちらを確認しているだろうフカメたち兵器開発部に合図を送る。
要塞都市エリドゥ。ひと際、小高い丘の風力発電所。そこに設置された超巨大砲台から
「合図確認、フカメ部長、撃てます!」
「……外しはしない」
一発の銀の弾丸が放たれた。
次の瞬間。
「……そんな、あり得ない」
銀の弾丸は一直線上に飛び。空に浮かぶ箱舟を貫通、その勢いを落とすことなく、続いて、中央タワーの骨組みの半分に穴を開け。
アイスクリームをスクープで削り取るように、エリドゥの地上部を削り取っていった。
「痛い、頭を打ったわ」
「わああああああああ! タワーがへし折れてく」
支えを失ったタワーはギシギシと嫌な音を立てて折れていく。
幸いなことに、私はガラスが多少刺さり、リオは多少頭を打って、たんこぶを作る程度の軽症で。他は無傷で全員無事だった。
「おら! 先生、受け取れ」
「なにするんですか!」
「なにするって、決まってんだろ」
飛び降りるんだよ。
私はゲーム開発部員を捕まえ、先生に投げ。すぐにリオを掴み、先生が受け取る同時に、先生も掴み。崩れゆくタワーから窓ガラスをぶち破って、隣接するビルに向かって跳躍。距離が足りなかったので、空中で五人ぶん投げる。
「ああん! なんで、先生とチビ達、リオが空から降ってきやがるんだ」
「ネル先輩! まだ、中にアリスちゃんが!」
放物線を描いて飛んでいった五人は無事に隣接するビルまで届き。C&Cメンバーにキャッチされていた。
……心配するな。ALー1Sはちゃんと始末しておいてやる。
中央タワーをぶち抜いて都市は今停電中だ。復旧には時間がかかる。エレベーターの使用も停止中だろう。
「私の勝ちだ」
AL-1Sが気になるのだろう。倒壊していくビルに目を向けたネルと目があったので、満面の笑みを浮かべ。
Keyが巻き込まれるビルの崩壊の予測地点に向けて、私も落下した。
「ぐあああああ!」
地面と激突。私の体からブチブチ、ボキボキと鳴ってはいけない音がし、激痛に襲われた。