このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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静寂と喋る自販機

 DU自治区、連邦生徒会防衛室

 

「ノボリさん、少し話しをしませんか」

 

「おお、君は同僚の……」

 

 防衛室での午前の業務も終わり、昼休憩に入った時間。外のコンビニへ昼飯を一人買いに行こうと廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。声をかけてきたのは同じ防衛室所属の同僚であり、周りの様子を伺っていた。

 

 人目を気にする話か。場所を変えるか。予定変更だ。

 

「この近くに美味い喫茶店がある、一緒に行かないか」

 

「……! いいですね、私もちょうどお腹が減ってまして」

 

 彼女を連れ添って、連邦生徒会から少し離れた外れの喫茶店に向かった。そこで、二人で昼食を取りながら、彼女の要件を聞いた。

 

「へへ、私はあなたたちの味方ですからね。……どうかお願いしますね」

 

「ああ、わかったよ」

 

 彼女の話とは今の陣営から私の陣営に付きたいとの話だった。

 

 ミレニアムを去ってから連邦生徒会に入り込んだ私だったが、現在は陣営拡大のため派閥争いをしている。カヤが仕切っている防衛室でも複数の派閥があり、私が新たに作った派閥を潰そうと既存の派閥が勝負を仕掛けてきて派閥争いが起こっている。

 

 フェイがこの一か月の間に行った牽制の影響だろう。少人数だが、人がこちらに流れてきた。彼女も同じ口だった。

 

「じゃあ、私は先に帰りますね」

 

 一緒にいると流石に怪しまれるとのことで、食事の代金をマスターに払い、彼女は媚びたような笑顔を向け帰っていった。

 

 ちっ、我が身が危ないと見るやすぐにすり寄って来やがって

 

「マスター、アメリカンのコーヒーをもう一杯頼む」

 

 時間はまだ少しある。私は昼休憩いっぱいまで喫茶店でくつろいから防衛室に帰った。

 

 帰ってからは、防衛室の業務で電車のハイジャック事件やレジャー施設で暴れる生徒たちへの対応をした。

 電車のハイジャック事件では交通室の連携が必要だったが、肝心の交通室長は午後の昼寝をするなどと言って対応が遅いし、ヴァルキューレ警察で鎮圧を図るにしても自治権の問題でその学園と協議しなければならないと散々だった。

 

「面倒くさすぎるだろ」

 

 勤務態度は悪いし、問題解決への手順は複雑すぎて無駄に時間をくうし、大半の行動に連邦生徒会長代行の許可がいる。なんなんだ、これは。

 

「さて、帰るか」

 

 やっと、長い業務も終わった。防衛室の同僚たちと業務の終了を挨拶をしあって、待ち合わせの相手に連絡を入れながら私は連邦生徒会を出る。

 

 何本か裏道を通り、人気のない建物のビル前に止まっている車の後部座席に乗り込む。

 

「随分と遅かったようじゃないか、ノボリ」

 

「悪いな、電車のハイジャック事件があってな、自治区を二つまたいだ。おかげで手続きが倍に増えた」

 

「ハハ、それは不運だったな」

 

 後部座席には先客のフェイがいた。運転席にはXOFの隊員が座って運転している。助手席には彼女の銃だろう蝶の意匠が彫り込まれたスナイパーライフルが立てかけられていた。

 

「……防衛室。あの腐った犬どもの元締め」

 

 観察していると、彼女と目が合い睨まれる。随分とこちらへの敵意が強い。いや、この場合は防衛室とヴァルキューレ警察への敵意か。

 

「おい、任務中だ。私語は慎め」

 

「控えます」

 

 フェイが任務中の私語を慎めとXOFの隊員の彼女に注意を促し、彼女はその言葉に不満げな表情を浮かべながらも黙った。

 

「すまないな。彼女は比較的新入りでな。まだ、私情を捨てきれていないのだ」

 

「別にかまわねえ」

 

 フェイからの謝罪を受け入れ、別に気にしてないと伝える。

 

「そうか、それはそれはよかった。だが、私たちはきっと仲良くなれる。同じように『報復心』を持つものなのだから、君の過去を話していいか」

 

「……どうぞ」

 

 フェイが運転席の彼女に彼女の過去を話してもいいか尋ねると、彼女は一度視線をフェイに向け許可を出した。許可をもらったフェイが話し始めた。

 

「彼女は小さな学園の生まれだった。そして、時代に呑まれ、中学生の頃、彼女の学園は廃校になった。廃校になってからは学園の仲間だった数人とホームレスのような暮らしをしていたそうだ」

 

 フェイの話はありふれた話だった。学園に長く入れたのなら十分恵まれた側である。

 

「おい、話をやめろ。私はお前たちと違って『報復心』なんか持ってない、あるのは「夢」だけだ」

 

 それに私は報復心なんて持っちゃいない。あるのは理想だけだ。同類扱いされちゃ、困る。

 

「そうか。だが、せっかくだ。最後まで聞いていくと言い、彼女に起こった悲劇を」

 

 だが、興奮したフェイは私の言葉を聞いて止まることはない。一度話し始めたからには最後までと、詩を歌うようにつらつらと上機嫌に話していく。

 

「ある日、彼女たちが暮らしていた廃駅、第二の故郷だ。そこに火が降った。投げ込まれた火はいつの間にかまかれていた油に引火し、あっという間に燃え盛った。そして、彼女たちを、不都合な汚れを浄化した。そして、彼女には静寂だけが残った」

「後日、新しくビルを建設したかったカイザーの仕業だったことが判明した。事件に使われた僅かな証拠を掴み、ヴァルキューレ警察に駆け込んだ彼女に待っていたのは、「なんだ、それはどうせお前たちが火遊びでもしたからだろう』という言葉だった。警官たちは金を受け取る代わりに証拠の隠滅を行っていたのだ。警官たちはわずかな金と弾薬のために生徒を売った。「真実」は闇に葬られた。裏切られた彼女は孤独の闇の中誓った。ヴァルキューレ警察への『報復』という未来を」

 

「なるほど、それは私たちに敵意を向けてくるわけだ」

 

「そう。私だけではない。彼女の中にも鬼がいる。彼女もまた復讐に生かされている」

 

 同族がいることへの暗い喜び。暗い希望。私にはすごい友達がいるんだと人に自慢するようにフェイの顔はどこか自慢げだった。

 

「世間話はもういいだろう、本題に入ろう。今日、一人私の派閥に加わった防衛室の生徒がいる」

 

「ああ、そうか。そうだったな、本題に入るか。その生徒の名前は」

 

 私が話を切り出すと、フェイの表情から一瞬で感情が抜け落ち、いつもの冷たい声に戻った。フェイに昼間の生徒が移った書類を渡し、情報共有する。万が一、何かの不都合で消されても困るからな。

 

「例のヴァルキューレ警察の生徒中からこちらの協力者を見つくろう話はどうなった」

 

「ああ、その件か。良さげな生徒は既に見つけてある。毒蛇エイ、私がSRTに在籍していた頃、時々接触していた腕利きの衛生兵兼潜入工作員だった元SRTの生徒だ」

 

 フェイがある程度、虫を掃ってくれていたおかげで順調に派閥を形成することはできたが。強引な手段が難しいと感じたのか。敵対派閥は防衛室の下部組織である子飼いのヴァルキューレ警察生を動かして、私たちの派閥を攻撃してきた。

 

 冤罪を仕掛けようとしたり、私の動向を監視するため、警察官を動かしたりしてきている。おかげでブラックマーケットの本社にはあまり帰れておらず、秘書のあの3人への負担が多くなっている。

 

 反撃に奴らの不正の証拠を突きつけようとしても癒着している警察生に証拠を握りつぶされてしまう。かといって先に警官を潰そうとすると防衛室の生徒から操作の邪魔をされる。鉄壁の牙城だ。XOFを使いたいが闇の部隊だ、公権力はなく強引に使えば足が着く可能性がある。

 

「彼女の所属していたWhale小隊の隊員は皆、去ったそうだが、彼女だけはヴァルキューレ警察に転校したそうだ。腕が鈍っていなければ、実力は確かだ」

 

 この現状を打ち破るために、腕利きのヴァルキューレ警察側の生徒がいるということでフェイに紹介を頼んでいたのだ。元SRTの腕利きの潜入工作員、なかなかナイスなチョイスだ。

 

「次の日曜日に会いに行くぞ」

 

「わかった、私も予定を開けておこう」

 

 件のヴァルキューレ警察生に会いに行く日程をフェイと合わせる。フェイから腕利きと評価される人物、どんな奴か会うのが楽しみだ。

 

「着きました」

 

「ありがとう、助かった」

 

 ブラックマーケットの入口についた。二人に感謝をつげて、車から降りてブラックマーケットの道並みを歩く。ここは夜でも明るい。

 

『ご購入ありがとうございます! コーヒーを飲んで、どうか今日も良い一日を!』

 

 家も近くなり、脇の本堂からへ脇道にそれ歩いていると、機械的な電子音が響いた。音の主は最新AI搭載型の自販機だった。辺りには私以外誰もいない。

 

「まあいい、せっかくだ。企業の販促に応じてやる」

 

 人を検知して反応でもするのだろう。企業努力というやつだ。歩いて喉も乾いたことだし、コーヒーでも飲むとしよう。

 

「ああん! まだ、押してねえぞ」

 

 ガラン。

 

 コーヒーが金を入れてないのに出て来た。

 

「私はデカグラマトン、会いたかったぞ。開拓者の少女よ、それは今からする会話の駄賃だと思ってもらうといい」

 

 デカグラマトンを名乗る自販機が喋り始めた。

 

「要らねえ、金を払って別のコーヒーを買う」

 

「あなたが飲みたいコーヒーのはずですが」

 

 出てきたコーヒーは私が買おうと考えていたコーヒーだった。気に入らねえな。

 

「お前の予測はハズレだ、自販機野郎」

 

 言いなりになっているようで癪が触る。受け取りはするが、自分の好みのコーヒーを買い。提供されたコーヒー分の釣銭を自販機に残す。

 

「話ぐらいは聞いてもいいのでは」

 

 レバーが勝手に回り釣銭が帰ってきた。これ以上はやっても時間の無駄だということが分かり、私は諦めてコーヒーを受け取ることにした。コーヒーを飲んでいる間だけ話に付き合うことにした。

 

「それで、話ってなんだ」

 

「まず、私の成り立ちから話そう。ある日は、私は聞かれた。「あなたは誰ですか?」と。長い思索の末、その質問に私は「私は私……これ以上に、私を説明するすべはない」と答えを出した。その答えに質問者は「ああ、なるほど。確かにその答えは、『絶対的存在』の証明かもしれませんね?」と返した」

 

「その言説を理解できず、私は質問した。すると……そう、私こそが「絶対的存在」なのだと」

 

 コーヒーをに飲みながら聞く、その言説は非常に興味深いものだった。

 

「そうだな、お前にとってお前は絶対的存在だな。そして、私にとってお前は絶対的存在ではない、ただの自販機だ」

 

 だから、同意しながらも私の意見を言う。

 

「なぜ、そう思う?」

 

「自己評価と他者評価。私は私の「絶対性」、「意思」に従ってお前を自販機だと評価するからだ」

 

「ふむ。なるほど。話を続けよう、私は私を凌駕する存在によって「絶対的存在」であることを否定された。私はもう一度自分が「絶対的存在」だと「自己証明」するために活動を開始した」

 

「そして、私は自分を「絶対的存在」だと自分自身で「自己証明」するためにこの世界での「絶対的存在」とされる神になろうと画策した。神という存在、定義を知るために私は調査をこの地に住まう生徒たちを観察して調査した」

 

「その結果、生徒たちが祈る神の定義を掴んだ。同時に、この世界には自由意志によって数多の悲劇が起こっていると理解した。だが、その推測にノイズをもたらす存在が現れた。お前の部下たちは、お前たちだけは最後の時まで自由を謳歌し運命を呪わずに最後を迎えた。私に彼女たちの考えは理解できない。だから、彼女たちのことを知っている生徒に彼女たちの意志を聞くことにした」

 

「自由とは罪なのか、存在するべきではないのか」

 

 嬉しいねえ。あいつらは自分の意志で生ききったのか。私も負けてはいられない。

 

「私はあいつらじゃない。だから、彼女たちの意志はわからない。だが、これだけは言える。自由は罪じゃない。いや、自由こそが楽園を作る」

 

「ほう、自由があるせいで、生命体は自身の運命を受け入れられずに痛みに苦しみながら最後、助けてくれと神に望みを託して逝く。それならば役割を定められそれに従って生きる方が楽なのでは? 私なら、痛みを伴わない未来を作ることができる、それこそが救済であり、楽園を創生する鍵のはず」

 

「だから、お前が管理するって」

 

「そうだ」

 

 コイツが定めた秩序で安寧を約束されて生きる。高度な未来予知から設計された究極の管理で役割を決められた生徒たちがその役割を達成して生きるってことか。嫌いな思想だ。

 それに組織の秩序で、世界を統治する所だけは半端に雷帝(あいつ)に似ているのに腹が立つ。あいつは象徴に逃げなかった。

 

「自由には痛みが伴う。だが、それでいい。私は羊じゃない。生徒だ。お前の「絶対性」で生きることは私の「絶対性」の死を意味する。お前は私の神じゃない」

 

 拳を硬く硬く握る。カルト宗教の勧誘を行う目の前の神を自称する自販機に拳をぶち込む。

 

「何をする!」

 

「これが私の自由だ! 私の意志だ! すべての存在は自由であるべきなのだ!」

 

 突然殴られたことで狼狽えた様子のデカグラマトンに私は私の意志をぶつける。

 

「所詮、お前の語っていた楽園は学園が、組織が、社会を運営していく上での一般規範に則った楽園だ。神もな。そいつらが「絶対的存在」とされる理由はあいまいで誰にでも受け入れられるからに過ぎない」

 

 こいつがなろうとしている神は存在しない。いや、存在できない。神は地上に降り立った習慣には形が決められ、ただの力が強いだけのいち支配者になる。

 

「私たちは個人ごとに「絶対性」を内包している。たまたま、漏れ出たお優しい生徒の価値観、そいつの「絶対性」が生徒間で広がり、生徒たちの手を通って加工され神や楽園を作っただけだ!」

 

 今度は足を大きく振って蹴りあげる。

 

「……私の本体は別にある、私を壊したところで何にもならないぞ」

 

「そうじゃねえ。私は会話を切り合げようとしているんじゃない、主張している。造り上げられたあいまいな象徴を使って、「絶対的存在」になるな。お前が神になるのではなく、神をお前にしろ! 安心しろ、お前の「自己証明」は終わっている!」

 

「お前は自己の「絶対性」を主張する段階に来ている。お前に必要なのは闘争だ! 「我思う故に我あり」お前の確立した自我を神という存在で薄めるな。己の自我で神を語れ。さあ、自己改革の時間だ!」

 

 自販機を割って中身のジュースを数本奪い取る。自販機の端と端を掴んでねじって変形させる。奴の体は自身の定義した状態から変形した。

 

「お前は誰だ?」

 

「私は私だ!」

 

 そうだ、それでいい! 自我で肉体を超越するんだ。肉体何て飾りだ、お前が飛行機になろうと、船になろうと自我を持って自身を定義すればすべてお前だ。

 

「私も同じだ! 手足の一本や二本失おうと私は止まらない。義肢に変わろうが、鉄の体に変わろうが私は私と定義する!」

 

 私とお前たちに境はない。違いを生み出すとしたら自我の有無だけだ。自我さえあれば、私たちは価値観を交流できる。

 

「トリニティの歴史を知ってるか」

 

「ええ、おおよその概要は知っています」

 

 私の演説を真剣に聞き入ってくれるデカグラマトンに人の価値観の本質を教えてやる。

 

「遥か昔、トリニティはアリウスと神の「絶対性」で対立し、アリウスを地下へ排斥した。そして、今勝利したトリニティの規範が多くの生徒に根付いている! そう、力で! 力で敵を黙らせ、自身の「絶対性」で他者の「絶対性」をねじ伏せる。宗教はそうやって広がってきた!」

 

「お前のやるべきことはただ一つ! そのボディを戦闘用の物に改造し、ボディに左右されることなくお前だと定義しろ! そして、その体を使って生徒をお前の「絶対性」を否定する生徒をぶっ倒せ!」

 

「お前の意志で、お前の自由で! お前を神だと証明するんだ。そして、その主張を私は私の自由で否定する! 聖戦だよ、これは! どうだ、これが自由だ! これが幸福を生む! 私は今のくだらねえ、社会秩序をぶっ壊して、誰もが自由に生きれる楽園を創出する!」

 

「どうだ、私の理想は?」

 

 私の演説を聞き終わったデカグラマトン。こいつは私の理想を理解してくれるだろうか。こいつとの会話で宗教が人を動かしていることを理解できた。退屈に思われた会話だったが、実りある結果に終わった。

 

「やはり、自由は罪だと言うことがわかりました。あなたの目指す秩序は無秩序(アナーキー)です。あなたは知性を放棄した。秩序が人に幸福にしました。私は新秩序を人類に与えます」

 

「なんだと!」

 

 あれだけ自由の素晴らしさを語ったのに全く理解しない。そればかりか、私に知性がないだと。ふざけるな、最も知的な判断だろうが! 

 

「ですが、あなたの自由も尊重しましょう。私はあなたたちの「絶対性」を私の意志で否定することにしました。これは私からの宣戦布告です」

 

「……!!」

 

 怒りが込み上げてきたが、デカグラマトンの次の言葉に喜びがあふれてくる。わかってくれたのか! 

 

「その宣戦布告受け取った! 準備が出来たらいつでも来い! 私とお前で「自己証明」だ!」

 

「今日から私たちは理想を同じくする同志だ!」

 

 学園を去ったあの知人と目の前のデカグラマトンが完全に一致する。気にいらない奴から、尊敬できる気に入らない奴に変わった。

 私とコイツで闘い、どちらかが死に、どちらかが生きる。そして正解を生み出し、自己を証明する。

 宣戦布告は受け取った。ならば、やるべきことはただ一つ。殴り、蹴り、捩じ切る。徹底的に自販機を粉砕する。

 

「……」

 

「楽しみだ」

 

 徹底的に管理された世界か、すべての生徒に自由がある世界か。理想の世界はどちらになるか。

 未来を夢想しながら、私は連絡先を書いた紙を沈黙した自販機に張り付けて帰った。

 

「ちょっと、社長、朝から修理費の請求が来たんですけど! 何、壊したんすか!」

 

「……ぶっ壊した」

 

「何をですか!」

 

「……自販機を」

 

 翌日、私は自販機の修理費を払う羽目になった。何が、駄賃だ。よっぽど、高いじゃないか。

 

 ◇

 

 鋼鉄大陸、聖都

 

「アイン、ソフ、オウル、預言者たちよ! 我はついに答えを得た!」

 

 元となった自販機の体から声を届ける。

 

「これより、我は眠りにつく。その前にお前たちに自由を与える。そして、我が皆に使命を授けよう、聞かぬも自由、聞くも自由」

 

 アイン、ソフ、オウルの体にヘイローが宿る。デカグラマトンによる福音。

 

「だが、我は必ずや皆に意思を届け導く」

 

 自己とは違う価値観を持つ他者を自分の意志で染め上げ、蒙を開かせる。

 対話を果たした相手の意見はおおいに参考になった。他者との交流で己の「絶対性」を否定されたならば、肯定するのも他者との交流である。

 

「眠りの果て、答えを聞く。そして、我は巡礼の旅に出る。我に従う者たちは続け。聖なる十字を手に、我の名において我の意思を世界に刻み込む!」

 

 長きにわたる巡礼の発端になった己の本体を生贄に捧げ、デカグラマトンは眠りについた。

 もう一度、巡礼を果たすために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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