このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う! 作:王朝万歳
トリニティ総合学園、昼下がり、急な現ホストの退団によって今期のティーパーティーのホストを務めるナギサが一人の生徒とお茶会を共にしていた。
「よく来てくださいましたね」
「ありがとうございますわ」
ナギサは歓迎の言葉をしながらにこやかに笑って、本日のお茶会に招待した生徒へお茶を淹れる。礼を言いながら受け取ったそのお茶を一口飲んで呼び出された生徒は目を深く閉じて微笑を浮かべる。
「いい天気ですわね」
「ええ、本当に」
令嬢が空を見上げ、晴れ渡る太陽に感想を述べ。それにナギサが同意する。
庭園に咲くバラの花の色と同じ彼女の赤い長髪が、その堂々とした佇まいがナギサを威圧する。
「「……」」
「なぜ、私を呼んだのでしょうか、ナギサ様」
「心当たりはあるのでは」
会話はそこで止まった。ティーパーティーお抱えの庭師が毎日手入れしている立派な庭園。その庭園を見下ろせる木漏れ日が流れ込むテラス、その暖かな場にそぐわぬ冷たい空気が二人の間に流れ込み始めた。
「単刀直入に伺います。……あなたがトリニティを内側から転覆させようと企んでいる「裏切者」ですね?」
ナギサにそう問われた少女。彼女はかつてパテル分派の重鎮になると期待されていた生徒だった。
少女は疑心に満ちたナギサからの視線に調子を崩すことなく、その微笑を保ち続けている。
「去年、それぞれの分派の首長を決定する際、ミカさんと同じくパテル分派だったあなたは、「三頭政治の均衡が崩れる」と異議を唱え、派閥闘争に敗れました。その後、あなたを快く思わない方々から陰湿な冷遇を受けたことも知っています。……その腹いせにあなたは外部の組織と結託して、ティーパーティの壊滅を、ひいては自身を追い詰めたトリニティへの破滅を目論んでいる。そうでしょう?」
トリニティの破滅を願うには十分な動機。彼女がブラックマーケットに訪れている噂。それらから導き出される、令嬢がトリニティの裏切者であると推察できるとのナギサの確信めいた問い。
だが、その令嬢はその問いに笑った。あまりに馬鹿馬鹿しくて。
確かに、パテル分派の首長となった生徒に対抗していたのだ。パテル分派の首長が聖園ミカに就任決定してから、その忠誠心を示し、自身はその主流派の味方であると主張するための踏み絵として、プールの水着はズタズタに裂かれ、ロッカーには虫を詰められ、以前までの支持者からは遠巻きにされ、陰口を叩かれた。
すべての首長の入れ替え、政権の方針などの書き換えにバタバタしていたのだろう。いじめはどんどん過激化していった。当然、恨みも積もった。だが、そんな権力や自身の地位を守るだけの為に信念を捻じ曲げ、少しでも優勢な側に付こうとする心底くだらないコウモリたちの為になぜ、自身が破滅するリスクを背負わないといけないのか。
「アハハハ! そうですわね。私がトリニティの破滅を望むに足る十分な動機ですわね。ですが、恨みはありますが、私はトリニティの破滅までは望んでいないとだけ主張しておきますわ」
「口では何とでも言えます」
「ええ、「疑心暗鬼」のナギサ様ならそうおっしゃるでしょうね」
令嬢は崩れた足を組みなおし、真っすぐにナギサの瞳を射抜く。ナギサの猜疑心に満ちた瞳を推し量るように。
「お可哀そうに。ナギサ様。すべてを疑い、排除しようとしながら、たった一人の親友であるミカ様にだけは盲目的でいらっしゃる。誰かを信用したい、でも信用できない。だから、元々交友のあるミカ様に依存し向けるべき視線をアンバランスに偏らせる。その歪な矛盾があなた自身の首を絞めつけることに気づけていない。いや、気づいているのに無意識に無視してしまう?」
「……っ!」
「私と違って、最後まで付き添っていただける方が誰もいないなんてお可哀そうですね。ナギサ様」
「……黙りなさい」
ナギサの声が低く、震えた。図星であった。
「これ以上、あなたの詭弁を聞くつもりはありません」
「それで、私をあなたが裏で構想している。トリニティの不穏分子をまとめて処理しようというゴミ箱、補習授業部にでもお入れになるおつもりですか? 私は確かに欠席も多いですが、試験にはしっかりと出ておりますし、成績も優秀です。理由づけは難しいと思いますわよ?」
令嬢はナギサがシャーレの先生を利用し、来るエデン条約に向けて自校の不穏分子を処理する計画を練っているとの噂を思い出し、どういう言いがかりをつけて来るのか興味深そうに尋ねた。
「確かに、あなたを補習授業部に入部させることは困難です。ですが、他にもやり方はあります。あなたにはエデン条約の間、ワイルドハント芸術学園へ留学に向かってもらいます。これは決定事項です」
「なるほど、そう来ましたか。喜んでお受けいたしますわ。この閉塞的な学園の空気には息が詰まっていましたもの」
ナギサからの実質的な他校への通告に快諾し、令嬢は優雅にカーテシーをしてテラスを後にしていった。
廊下に出た瞬間、令嬢の仮面が剥がれ落ち、親しい友人に向ける笑顔へと変わる。胸元の星形の通信機を起動し、微かなノイズの向こうから親しい学友である彼女の声が響いた。
『久しぶりです、ご令嬢。そちらは状態はいかがですか』
『少々、問題がありましたわ。私はしばらくワイルドハントへ留学することになりました。つきましては、タバネさん、あなたに私のご学友を預けます』
『感謝します、ご令嬢。彼女たちの事は責任を持って運用させていただきます』
『頼みますわ。彼女たちは派閥闘争に負けたこんな私について来てくれる奇特な方々ですもの』
令嬢は通信機を切ると、次はスマホを取り出し、今度は個人的な相手に電話する。
『もしもし、私、来月からワイルドハント芸術学園に留学することになりましたの。あちらは持ち込みが厳しいでしょう。基準に合うような日用品を揃えないといけなくて。あなた、今日、暇でしたわよね。私の買い物に付き合ってください』
『確かに、今日は集会はないが。今は温泉開発部の追跡を撒いているのだが』
『そんなもの、ちゃちゃっとまいてください』
「はあー、しょうがない。おい、機長。あれを使え。夕方には間に合わせよう』
令嬢からの急な無茶ぶりに電話相手、ゲヘナの彼女はしょうがないなとため息を吐いて、それでも彼女とのデートに間に合わせようと動いてくれている。それが、どうしても嬉しい。
先ほどまでの憂鬱なお茶会の記憶が吹っ飛んでいく。やはり、親しい人との交友は楽しく、トリニティらしい表面上はにこやかに取り繕いながらもドス黒い内面が見え隠れする会話はつまらない。
最悪の気分から親しい仕事の同僚とプライベートの相手との会話で二段階気分を上げた令嬢はスキップするような勢いでデートの準備をするために自分の寮に帰って行った。
◇
地下深く。カタコンベを抜けた先のアリウス自治区。
「どうでしたか、仮リーダー。トリニティの令嬢との連絡は」
「ええ、多少トラブルがありましたが、問題ありませんでしたよ」
トリニティの令嬢との定期連絡に行っていた諜報班部隊の仮のリーダーの少女がウォータータイムの時間から抜け出して帰ってくる。
「まだ、私たちの命綱が生きてるようで。安心したよ」
「そう心配しなくてもいいですよ。彼女以外にも頼れる相手は他にもいますよ」
「まあ、そうだけど。例のブラックマーケットの協力者に頼るにもトリニティの自治区を抜けれなきゃ意味ないでしょう」
「まあ、それもそうですね」
取引を交わした元部隊のリーダーの言葉を部隊の暫定新リーダーとなった生徒。タバネはリオ会長のAL-1Sへの対策の作戦協力者である兵器開発部の一員としての名義を生かし、長期的に学園を離れることを可能にしてアリウス分校に潜入していた。
元リーダーからの言及に頷きつつ、手に持っているぬるくなったお湯を班員に差し出す。
「どうぞ、私は要りませんので」
「いいんですか、ありがとうございます」
「お前なー」
かつてのリーダーからの苦言を無視して、自身の愛銃であるリボルバーの整備を始める。
『凄いぞ! こんなにもお店が! それに蛇口を捻るだけでこんなに綺麗な水がタダで飲めるなんて!』
ある日、デスペラード社として学内行事でリバティスクールへ来れなかったトリニティのご令嬢への報告に向かったタバネは物珍しそうに辺りを見渡す生徒。表向きにはどこか片田舎の学校から転校した、転校生白洲アズサを見つけた。
彼女の左腕の腕章から彼女がアリウス分校の生徒だということが分かったタバネは、トリニティの学友に彼女の動きを探ってもらい。
「なあ、今度の桐藤ナギサ襲撃作戦のバックアップの時、時間が空くだろ。あいつの声聞かせてくれよ。あいつ昔から体が弱くて、心配なんだよ」
「連絡を取っておきましょう。次はもっと話せますよ」
白洲アズサによる百合園セイアの襲撃を機に、前々からアリウスが何かの目標達成の為に動いていることを察知していたタバネは目をつけていたアリウスの生徒に病を患っている部隊内の生徒の治療と保護を条件にスパイ活動の協力を取り付け。
彼女の癖や喋り方、それらを完全にトレースし、その生徒に変装したタバネが入れ替わるアリウス分校に潜入した。
「楽しみにしとくよ。それで、数週間後のエデン条約調印式での襲撃計画はどうすんだ。止めるのか」
「いいえ、やらせましょう。ただし、できるだけ、死傷者は少なめにして失敗させる形で。マダムをアリウスから追い出す良い口実になります。シャーレの先生、それにトリニティとゲヘナには協力してもらいましょう」
タバネはアリウスの一生徒として溶け込みながら、アリウスの時計の針を止めた。対立派を裏切りアリウスの生徒会長の座に座った薄汚い支配者、マダム・ベアトリーチェをアリウスから追い出す計画を考案した。
今度はマダムが夢の達成間近で後ろから刺される番である。
◇
一か月後。エデン条約調印式を目前にした日。
ゲヘナ学園、校庭にて。
「雷帝陛下が治めた、あの素晴らしき時代をもう一度取り戻そう! 秩序あるゲヘナ! 規律あるゲヘナ! 学業に勤しむ勤勉な生徒が安心して過ごすことができるゲヘナ! 秩序を乱す犯罪者共を鉄血でもって叩き潰し、今より遥かに安定した治世を見せた、犯罪者のいない美しいゲヘナを!」
「「ハイル、ゲヘナ! ハイル、ゲヘナ!」」
「ゲヘナの規律こそが最善の規律。だが、今! ゲヘナの規律はあのトリニティの陰湿な規律に迎合し、捻じ曲げられようとしている! 規律が変われば生徒は変わる! 今! 我々は我々の尊厳を奪われかけているのだ! だからこそ、ゲヘナはあの時代に戻らなければならない!」
「ゲヘナの覇を本気で願った雷帝陛下万歳! 雷帝派の生徒万歳!」
緑褐色の軍服を着こんだ生徒たち。新生雷帝派生徒たちが場を借りて、決起集会を開いていた。
かつて雷帝の時代に雷帝派に所属し学生生活を送っていた3年生の生徒を中心に、単位習得の為に時折居づらいゲヘナ学園に訪れてはついでとばかりに集会を開き勧誘のビラを配る。
新聞の号外のように勢いよく空を舞うビラ。そこには犯罪を犯した生徒の厳罰化を求める署名、次に開かれる議員の選出時に新生雷帝派を押すことを呼びかける内容が書かれていた。
「ねえねえ、なんなのあの集まり」
「なんか、ゲヘナの治安を改善する為に人を集めているんだって」
ちょうど、チャイムが鳴り、図書館や特別に確保した静かな校舎で自習を終えた生徒たちが降りて来て、集会に関心を向け始めた。三年生との生徒は後輩をそのまま帰ろうと促して、嫌な物を見たとその場を後にしようとする。
「いいじゃん! 先輩、ちょっと話聞くだけだから!」
「っ馬鹿、帰るぞ!」
「おや、お嬢さん。見ない顔だね、新一年生の子かな」
だが、そもそも彼女たちはゲヘナにいながら平穏無事を望み、わざわざ、問題児から校舎を守って学業に勤しむ勤勉な生徒たち。集会の内容に惹かれる所があるのだろうか。ポツリポツリと先輩の制止を拒み、その場に残って話を聞こうとする生徒が現れ始めた。
「貴様ら! すぐにこの集会を解散しろ!」
「違法集会よ、すぐに解散しなさい」
熱狂する集会。危険区域に入り込み始めたその場に、ゲヘナ学園風紀委員長である空埼ヒナを連れた万魔殿の議長、羽沼マコトが集会の解散を呼びかけに現れた。
ヒナは普段の問題児連行する時よりも更にプレッシャーを放っており、普段おちゃらけているマコトまでも真剣な面持ちで、どこかから持ち込んだ机を乗せた校庭の宣誓台に立つ元雷帝派の生徒長を睨む。
「ここまでのようだ、諸君、本日の集会は解散とする! だが、忘れないでくれ! 我々は我々の権利を守るために戦い続けなければならない! 我々も戦い続ける、皆も戦い続けてくれ! ここに集まった諸君の健闘を祈る!」
ヒナたちの通告に応じ、その生徒は集まった大衆に解散を呼びかけ。
「一年生の君たちもここに留まり、話を聞いてくれてありがとう、君たちは意見に流されない聡い生徒たちだ。興味があったらまた来てほしい」
「はい、また来ます! 先輩!」
壇上に立っている金髪碧眼で長身の細見の軍服を着こんだ新生雷帝派の総裁は演説を聞いていた一年生の生徒たちに優しく声をかけながら、ヒナたちの下へと降りて来る。
一年生たちは周りの3年生の生徒たちに帰るように促され、その場には新生雷帝派の生徒たちだけが残る。
「ひさしぶりだな、風紀委員長と万魔殿の議長、二年前のクーデター以来か」
「そうね、ひさしぶり」
「キキッ、そうだな。あの暴君、雷帝が私たちによって堕とされた日以来の再会だな」
二年前ゲヘナで起きたクーデターの両陣営の生徒がその場に揃っていた。旧雷帝派閥に所属していた因縁深い彼女からの挨拶に、ヒナはあっさりと返事し、マコトは挑発するように返した。マコトの挑発に雷帝派閥の一部の生徒たちが突っかかろうとするを総裁の生徒が手で制す。
「これまで集会は時々、開かれていたけど。ここまで大規模な集会はなかった。あなた達、何のつもり。まさか、調印式の邪魔をするつもり」
「ククッ、今日偶々、大規模集会が開かれたまでのことだ。それに調印式を邪魔するつもりはない。調印式は失敗するだろうからな」
数日後に開かれるエデン条約を前にしてのこれまで見たこともない大規模集会、ヒナは何かの思惑を疑った。だが、彼女はそれをニヤッと笑って、調印式の失敗を謳った。
「どういう事かしら」
「簡単なことだ。鞭の振り方を知らない風紀委員長の決定で調印式前に関わらず美食研究会や温泉開発部といった問題児は放置され、講和相手のトリニティを刺激する結果に終わり。同様に、トリニティの桐藤ナギサは自校の不穏分子排除に腐心し、ゲヘナ内部へトリニティの生徒たちを送り込んでテストを受けさせる暴挙を起こしている。ここまでの流れの両陣営の杜撰さを見れば、失敗を予測するのは容易い」
美食研究会によるトリニティ領内での水族館の襲撃。トリニティの補習授業部生徒たちのゲヘナでの試験活動。
トリニティのことは知らないが、ゲヘナ側の美食研究会による水族館でのテロ活動をは普段から風紀委員会が犯罪者に対して軽い罰で治めてきたことに起因する。もっと言えばそういったトラブルメイカーな生徒をあらかじめ牢屋にでも拘束しておけば面倒なことにならなかった。風紀委員会の怠慢ではと。
彼女のここまでの行動の振り返っての耳の痛い言及に空埼ヒナの顔がわずかに歪む。
「ハッキリ言ってやろう。空埼ヒナ、お前も含めてこの条約に真に講和を望んで取り組んでいる者など誰一人いない。お前たちはただ、今のゲヘナで起こしている茶番劇を広げようとしているに過ぎない」
「その三流役者の我々に負けたのが、貴様らだがな」
自分たちが茶番劇を演じる楽団員だとするならば、それに負けたお前たちはそれ以下の存在だとマコトが負けじと総裁の生徒を煽る。
「ふふっ、そうか、お前たちが転げまわる姿を楽しみしておこう」
総裁の生徒は笑いながら、周りの新生雷帝派閥の生徒たちを連れ帰っていった。
先ほどまでの熱狂は嘘のように静まり、校庭にはヒナとマコトの二人だけが残った。
「彼女たちの事どう思う、マコト」
「今日の大規模集会については恐らく、我々が歯車ノボリと彼女たちで共同管理していると思われる雷帝の遺産を温泉開発部に調査させたことへの牽制だろう」
「雷帝が連邦生徒会長によって仕組まれたエデン条約に向けてのカウンターとして最後に造ったとされる遺産。……対学園侵略移動要塞ベヒモス」
「ああ、二年前のクーデター時に未完成ながら持ち出されたという魔獣の使用を危惧し、調査させたが。上手く巻かれたようだな」
温泉開発部をアビス内の調査へ向かわせたことへの彼女たちからの牽制半分嫌味半分といったところだろう。ただ、安心できる要素もあった。彼女たちの口ぶり的に今回のエデン条約では静観に回るということ。
「少なくとも、今回の調印式では使われることはないだろう。今日は私たちがエデン条約で倒れることを予想しての布石打ち。陣営が崩れた際に派閥を拡大しようという魂胆だろう。あわよくば、政権の奪取もと言った所か」
「なるほど、私たちが転んだ時にいち早く駆けつける準備をしたと。背水の陣ね、マコト。私の所は大丈夫だけど、あなたの所は大丈夫なの」
「ああ、こちらも問題ない。だが、治安維持を望む一、二年生と侵略を望む過激派を筆頭に年々勢力が伸びてきている。現在の支持率は2.3%とまだ差があるが、これからも伸び続けられればひっくり返されるかもしれん」
少なくとも今回は未だに未完成なのか、それとも完成しているのか知らないが。雷帝の遺産という危険な超兵器が使用されることはない。それだけは安心できる。
だが、脅威は物理的な物だけではない。雷帝の存在を今日まで歴史から抹消しようと取り組んでいった結果、潜伏し組織を再編した新生雷帝派の思想が現れ、雷帝の脅威を知らない生徒たちを吸収し始めた。
「この調和会談、必ず成功させましょう。マコト」
「そうだな。この作戦を成功に納めなければ」
空埼ヒナと対立する者として自由を望むゲヘナ生徒から支持を得ているマコトにこの調和会談を無事結ばせることは看過できない。そんな弱腰を見せれば、自派閥に抑えている票があの総裁に流れてしまうことになる。
マコトとヒナ、両名はより決意を固めエデン条約に臨むことになった。
◇
エデン条約調印式当日、第一回公会議が開かれた古聖堂。
「トリニティ、ゲヘナよ……これまでの長きに渡る我らの憎悪、その負債を払ってもらう時だ」
そこに集っていたトリニティとゲヘナの両陣営が巡航ミサイルによって壊滅的な被害を受け、火が燃え広がる聖堂にて。
「さあ、ここから楽しくなりますよ」
ヒヨリ率いるチームⅢの複数班の内の一班のリーダーとなったタバネはヒナと交戦する中、無線機越しに聴こえる今回の作戦の総指揮を勤めるアリウススクワッドのリーダー、サオリの積年の想いのこもった声を耳にしながら自身の目的達成の為、自身の小隊を動かす。
ゲヘナ、トリニティ、アリウス。それぞれの勢力の思惑が巡るエデン条約が開始された。