このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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退職通知

 空に太陽が浮かび始め、朝焼けが街を照らししていく。季節は、秋を過ぎ冬に差し掛かった頃で、澄んだ空気が太陽の光をより鮮明に映す。

 

「ハア、ハア、ハア」

 

 早朝、少女は日課となったトレーニングで、白い息を吐きながら街を走っていた。

 

「着いた。走った距離は、100kmか。悪くないな。次は、あの鉄棒で懸垂をするとしよう」

 

 ブラックマーケットに西方に位置する運動公園へ辿りつき。手元の計測器を見れば、100kmと表示された。伸びてきた数値に笑みをこぼして、次のトレーニングの懸垂に移る。

 

 あの日から2年、私は企業に安い給料で使われながらも、何とか生き残っていた。

 

「1、2……30……1000。次は、腕立て伏せだ」

 

 あの日、カイザーの派遣社員とロボ社長に簡単に押し込められ、戦闘力と知識の不足を実感した私は、トレーニングと勉強を開始した。幸い、仕事は不定期に来るので、時間の確保は簡単だった。

 

 ギヴォトスに転生してから、6年が経過し。おそらくだが、年齢は12歳になった。第二次性徴に達したのか。身長もぐんぐんと伸び、170cmに達した。体の成長とトレーニングのおかげか、戦闘力も格段に伸びてきている。

 

 勉強に関しては、かなり古い中古のBDを使用しているので、それが十分なのか。少し不安だ。

 

「……998、999、1000 今日のトレーニング終了 さて、朝食にするか」

 

「あああ、姐さん。もしかして、もう今日のトレーニングに終わっちゃったんすか。一緒にトレーニングしたかったのに」

 

「ほら、私の言った通りじゃん。姐さん、朝早いんだから。もう今日は諦めたほうがいいって言ったのに」

 

「うるせえな。そもそもコイツが野良猫、構ってなきゃ。遅れてねんだよ」

 

「ごめん。でも、猫さんが可哀そうだったから」

 

 朝食に、ペロロ・ホーテで買ってきた卵一パックとプロテインを混ぜ合わせたドリンクを飲んでいると。うるさい声がした。

 

 声をかけてきたのは、3人の不良たちだった。一年ほど前、たまたま虫の居所が悪かった俺が裏路地を歩いていた時、絡まれそれを返えりうちにしてからというもの。

 

 “あんたの強さに惚れ込んだ。舎弟にしてください”などと、訳の分からん理由で、彼女たちに付きまとわれている。

 

「そもそも、あんたも猫、可愛がってたじゃん」

 

「っ。そんなわけねえだろうが。私はタフな女だぞ」

 

「うるせえぞ。テメエら! コレ、飲み終わるまで待っててやるから。 さっさと、トレーニング終わらせて来い」

 

「マジっすか、姉さん。自分、早く終わらせてくるっす」

 

「げえ。あんた、よくやるよ」

 

 口論を続ける不良三人娘に、待っててやるから、早く今日のトレーニングメニューを済ませるようにいう。飽きもしないのか。三人は公園の外周を、口喧嘩しながら走っている。

 

「終わりました。姐さん」

 

「お疲れ。ほら、私特性のドリンクだ。受け取れ。トレーニング終わりは、これが効くぞ」

 

「いただきやっす」

 

 余っていた材料を使い、三人に私が飲んでいたものと同じプロテインドリンクを振る舞ってやると。一人は嬉しいそうに、他二人は顔を青ざめさせて受け取った。

 

 当然だろう。ほぼ、生卵のアレを飲むのは抵抗感がある。いまではスルスルと美味しく飲めるが。私も最初は抵抗感があった。

 

「二人はもう飲まねえのか?」

 

「うん。うち等は十分」

 

「そっか、じゃあ、貰うぞ。かー、うめえ。コレコレ!」

 

 不良の一人が、手が止まっていた二人から、ジョッキを奪い。二人の分のドリンクを飲み干す。その姿にドン引きしたのか。バケモノなどと口に漏らしていた。

 

「ククク。飲みすぎには注意しろよ。胃腸を壊すからな」

 

「え。本当ですか」

 

「バカ。ていうか、姐さん、笑ってる」

 

「ああ、本当です。姐さんが笑うなんて珍しい」

 

 流石にあのドリンクを飲みすぎるのは、不味いので注意してやると。笑っていることを教えられた。

 

 ……そうか。私は笑っていたのか。久しぶりに、笑った気がする

 

「おい、お前ら。今日は何だか、気分がいい。昼飯奢ってやる」

 

「やった。姐さん太っ腹」

 

「その、お金は大丈夫なんですか」

 

「ああ、気にするな。午後から仕事があるから、問題ない」

 

 なんだか、気分がよくなった私は、三人に飯を奢ることにした。

 

 午後からの仕事も絶好調で、クソロボ社長の指示通り、敵対企業を壊滅させることに成功した。

 

 

 

 

 ◇

 

 

「私の友人が困っているらしくてね。君に、助けにいって欲しいんだ」

 

「これは。紙がほぼ白紙なのは、間違いないの」

 

 ある日、依頼に呼び出された。それ自体は普通なのだが、依頼内容が怪しかった。契約書に記載されているのは“ゲヘナ地区の港区、11時頃に来てください”とだけ。

 

 いままでの依頼には、何かを運んでくれなどと、もう少し内容が記載されていた。

 

「すみませんが。この依頼は断らせていただきます」

 

「いえ、駄目です。絶対に受けてもらいます」

 

 最近は、給料も二倍の額がもらえるようになり、私に対する態度も棘のあるものから軟化してきていた。これなら、こちらの要求も通るだろうと、ロボ社長に依頼を断りたいと伝えたが。スッパリと拒否された。

 

「友人は大切な物です。あなたにも分かると思うんですがね」

 

「これはっ!」

 

 社長はテーブルの引き出しを開けると、一枚の写真を取り出してきた。写真には、あの三人がのっていて。港のような場所で、縛られていた。

 

「お前、自分が何してるか。わかってるんだろうな」

 

「ええ。それで、依頼は受けるんですか、受けないんですか」

 

 ビルを出て、真っ先に銀行へと向かう。全速力で走ること、数分、カイザー銀行の看板が見えてきた。

 

「おい、銀行員。今すぐ、金がいる。貯金を下ろさせてくれ。全財産だ」

 

「列に割り込まれないでください。困ります。それに、お客様、今日、一日で全財産を降ろすのでしたら、百万円ほど、手数料で頂きますよ」

 

「それで構わん。とにかく、早くしてくれ」

 

 銀行で今日まで、貯めた金。一千万円、すべて引き出す。そして、急いで銀行を出る。手元の腕時計は、三時を示してる。時間がない。足がいるな。

 

「おい、そこのヘルメット団。そのバイク、少し借りるぞ」

 

「は!? ちょ、待てよ。止まれえ!」

 

 銀行前に止めてあった大型バイクを、ヘルメット団から借り、次の目的地へと向かう。

 

「ここについて、心当たりはないか」

 

「ううん? ここは……、少しだけあるな」

 

 次に訪れたのは、仕事で交流をもった情報屋

 

「本当か」

 

「ああ。だが、そこに行くってんなら辞めておいた方がいいぜ」

 

「それほどの場所か。ますます、行かなくちゃならなくなった」

 

「はあ、金寄越しな。後、他言無用だからね」

 

「わかった」

 

「そこは、ある企業が管理していて……」

 

「ありがとう」

 

 情報の礼に、総額一千万円の半額の五百万円を支払う。

 

「店主。そこのグレネード、機関銃、ロケットランチャー。それと、防弾ベスト、ナイフ。全部くれ」

 

「お嬢さん。そんなに買って、戦争でもおっぱじめる気かい」

 

「そんなところだ」

 

 最後に、武器屋で武装を買い込み、店を出て。外に止めてあるバイクに乗りこんで、依頼書に書かれていた。ゲヘナ地区の港に向かった。

 

「現在、ゲヘナ自治区に巨大な台風が接近しております。台風は夜から朝方にかけて続くようです。海岸部にお住まいの方は高波にお気をつけてください」

 

 約束の時間の11時にゲヘナ地区の港についた。ラジオを止め、バイクから降り。買い込んだ武装を装備して、契約書に同封されていた簡易的な地図を見ながら、待ち合わせの場所に向かう。

 

「ここか」

 

 待ち合わせの場所は、港に隣接する巨大倉庫だった。薄暗く、中には大量の貨物コンテナが積みこまれていた。そのまま、中へと歩いていくと。扉がしまった。

 

「待っていたよ。遅かったじゃないか」

 

 そして、倉庫の二階から、マフィアのような風貌の帽子を被った細身のロボが現れた。隣には、骸骨の刺繡が施された白い制服を着た生徒らしき人物がいる。

 

「写真を見たぞ。私の友人たちをどこにやった!」

 

「さあな。どこにやったかな。だが、まあ、君は自分の身を案じた方がいい」

 

「なに?」

 

「君のご主人様から伝言だ。“お前はもう要らない”だとさ」

 

 あの三人のことを聞くが、はぐらかされてしまう。ロボマフィアは、懐からボタンを取り出し、押した。ボタンに反応して、一斉にコンテナが開き。

 

「お前たち! 私の敵が現れたぞ。ただちに排除しろ!」

 

「ご主人様の命令は絶対。敵、排除する」

 

「ご主人様の敵は、排除させてもらいますわ」

 

「旦那の敵だな、排除させてもらう」

 

 中から、ヘッドホンをつけた大勢の生徒たちが現れた。生徒の大半は、ブラックマーケットに住むような奴らだったが。中には、トリニティの制服を着た生徒やゲヘナの制服を着た生徒などもいた。

 

 彼ら一同、正気ではないのか。目は逝っていて、口からはブツブツと戯言を漏らしていたが。主人からの命令に従い、一斉に襲い掛かってきた。

 

「情報屋の言った通りの会社って、わけだ。いいぜ、かかってこい」

 

 情報屋から聞いた通りの会社らしい。キヴォトスに住まう生徒たちに安心と教育を届けます。表向きにはそう看板立てて、裏では真逆の事を行っている会社。株式会社ダストシュート、とんでもない会社だ。

 

 私は、持ってきた銃を構え、応戦することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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