このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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自由の獲得

 深夜、ゲヘナの港に、激しい銃撃戦の音が響き渡る。洗脳された大勢の生徒たちが、一人の生徒に襲い掛かかる。

 

「こんなものか! 貴様らー!」

 

 多勢に無勢。少女はなすすべもなく、数に圧倒されるに思われたが。現実は、真逆の様相を呈していた。

 

 少女が装備したロケットランチャーや機関銃を掃射する。一発、一発が撃たれるごとに、生徒たちは吹っ飛ばされ、壁に激突して意識を失っていく。

 

「ちっ。弾切れか」

 

「弾が切れたぞ。今だ!」

 

「ちょうどいい。体を動かしたくなってきたころだ。貴様らで、肩を温まらせてもらおうか」

 

 弾を打ち尽くし、弾薬が切れたので。もう用済みとなった兵装を、敵に投げ捨て、格闘戦に移行する。

 

「オラ、吹き飛びやがれ」

 

「な、やめろー!?」

 

 向かってくる一人の足を掴んで、振り回す。生徒同士がぶつかり合う。キヴォトスの生徒特有の頑丈な体が、強力な武器とかし、よりハイペース負傷者を量産した。

 

 気づけば、倉庫を埋め尽くす程いた。生徒たちは、もはや数十人まで切っていた。

 

「な、何なのだ。あいつは。おい、君」

 

「はい。何でしょうか」

 

「何でしょうかではない。状況見れば、分かるだろう。このままでは、私は奴に捕らえられてしまう。そうなれば、どうなるか」

 

「あの暗い地下から抜け出し、露頭に迷っていたのは誰だと思っているんだ。今がその恩に報いる時だろう!? さっさと、戦ってこい!」

 

「その間に、私は逃げる用意をする。時間を稼いでこい!」

 

「わかりました」

 

 自慢の兵隊たちである生徒が、たった一人に蹂躙されていく様を見て。自分が捕まる可能性を考慮した。ロボマフィアは、護衛として雇っているアリウス生に殿を任せ、重要な書類を取りに行く。

 

「待て、逃げるな。ロボット野郎」

 

「させない」

 

 倉庫の裏手から、ロボマフィアが外に逃げ出そうとしているのを発見し、追おうとするが。進行方向に、白いパーカーを着た金髪の140cm台の小柄な生徒が立ちはだかった。

 

「邪魔だ。どきやがれえ!」

 

「凄い力。だけど、私になら、投げとばせる。ふん!」

 

「なんだと!? ガハッ」

 

 あいつを逃すわけにはいかない。加速を維持しながら、立ちはだかってきた小柄な生徒に向けて、渾身の右ストレートを振るう。

 

 圧倒的身長差から生まれる。圧倒的な力の差。小柄な体で受ければ、間違えなく重症を負うであろう拳を。白い生徒は、鍛え上げたCQCで、冷静に対処する。

 

 拳を顔に掠めさせながら、絶妙なタイミングで、相手の懐に入り込み、体全体にかかっている勢いを利用して、そのまま一本背負いを決めた。

 

 一瞬の内に、空に打ち上げられ。倉庫の天井に勢いよく激突した。肺が強く圧迫され、中の空気がすべて吐き出された。

 

「ぺッ、やるじゃないか。白チビ」

 

 天井を足で蹴って、地面に飛び降りる。口が切れていたらしく、血が溜まっていたので、それを吐き出して、私を投げ飛ばした白チビを見つめる。どうやら、侮れない相手らしい。

 

 白いアリウス生は、片手に拳銃、もう片方の手にはナイフを持って、中腰の姿勢に構えをとっていた。

 

「いくぞ!」

 

 生半可な攻撃では、先ほどのようにさばかれ、逆に攻撃に利用される。なら、あちらが捌ききれないほどの攻撃を繰り出して、攻略するまでだ。

 肩を半身に逸らした状態で、足に力を込め、貯めた力を一気に解放して、タックルする。今度は、投げられることはなく、体を横にずらすことで避けられた。

 

「まだだ! もっと、いかせてもらうぞ!」

 

 タックルで詰まった距離を生かし、接近戦に移行する。今度は、一発目と違い、ジャブやフックを織り交ぜながら、殴る。

 

「フッ! フッ! フッ!」

 

 繰り出した拳たちが、的確に撃ち落される。そして、また、懐に入り込まれ、空いた、わき腹に手を入れ、地面に叩きつけようとしてくる。

 

「ただで、投げられるつもりはない!」

 

「ガハッ!?」

 

「かは!?」

 

 投げられる最中に、両足を相手の足に絡めて、そのまま引っ張る。二人が空中に投げ出され、白チビの方がより、長い円周を描いて跳ぶ。空中で、足を振り落として、相手をより加速させ、あちらの方が早く地面に叩きつけられるようにする。

 

 こちらも少なくないダメージを負ったが、向こう側のダメージはもっと大きかったらしい。口から血を吐き出した。

 

「ハハ。よくも、やってくれたな! デカ女!」

 

「お前こそな! 白チビ!」

 

 不謹慎だが。対等に近い、実力の相手と。工夫を凝らして戦うのが楽しくなってきた。向こうもそうなのだろう。声が弾んでいる。

 

 白チビは、立ち上がりながら、口元についた血を白い制服で拭うと。ナイフを構え、突き出してきた。刃物というキヴォトス人にとって、殺傷性の高い攻撃に驚きつつ、咄嗟に回避する。

 

「甘い!」

 

「お前もな!」

 

 ナイフに意識が向きすぎており、注意が逸れていた。無警戒な足を掬われ、地面に転ばされる。転がったことで、下がった首、目掛けて、ナイフが振り降ろされる。

 振り押されたナイフを、左手で防ぐ。ナイフは手の甲を貫通するが、首元までは届かず、途中で止まった。急いで、ポケットからナイフを取り出し、白チビの首、目掛けて振るう。

 

 白チビは、首に迫ってきたナイフに、驚いた表情を浮かべながら、横に前転して、ナイフを避けた。

 

「ハハ! そうか。お前も持っているのか。本物の殺意を!」

 

「当たり前だろう! こうして、殺し合いをしているのだから」

 

「そうか、当たり前か。いや、そうだな。そうだった。本来、闘争とはそうあるべきだったな」

 

「いつぶりだ。この痛み! この怒り! 偽りの教義で、教化された愚かな連中が抱く。欺瞞に満ちた殺意とは違う。純粋な個人の意思による殺意。久しぶりだ。久しぶりに。私は、戦場に帰ってきた!」

 

 真顔になった白チビからの質問に、当たり前だと答えると。白チビは、その答えが痛く気に入ったのか。嬉しいそうに、笑い始め。その目は怪しく光りだした。

 

「そうか。よかったな。私もこの戦いは楽しいが、やるべきことがある。そろそろ、終わらせようじゃないか」

 

「オッケー」

 

 腕に刺さったナイフを引き抜き、白チビへと投げる。ナイフをキャッチした奴は、拳銃をズボンのホルスターに戻し、ナイフ一本で戦う構えを見せた。

 

 うるさかった。倉庫内が静寂に包まれ。外の雨の音だけが、聞こえるようになる。両者の間に、ヒリついた緊張感が高まっていき。

 

「おい。そこのバケモノ女。コッチを見ろ。お前の大事な友人たちが、死ぬぞ!」

 

「なっ!? きさまあ!」

 

「おっと、少しでも動いてみろ。この拳銃をぶっ放すぞ!」

 

 爆発寸前といった所に、邪魔者が現れた。スーツケースを抱えたロボマフィアが、人質の不良娘三人組のこめかみに拳銃を突きつけていた。三人は、顔にガスマスクが嵌められ、そこから催眠ガスを注入され、眠らされていた。

 ヘイローが消えている状態で、頭に攻撃されれば、いくら、キヴォトス人といえど、死ぬ可能性がある。手に持っていたナイフを地面に降ろし、手をあげた。

 

「いいぞ。そのまま、じっとしていろ! お前がそのまま、じっとしていれば、この三人には危害を加えない。おい、アリウス生! そいつに銃弾を撃ち込め!」

 

「このような、脅しせずとも。私なら、勝てます。あなたは、先に逃げていただければ」

 

「いいから、早くやれ! それじゃ、私は安心できんのだ!」

 

「チッ。わかりました」 

 

 アリウスの生徒はナイフをしまい、拳銃を取り出す。拳銃のマガジンが外され、新しいものに入れ変わった。

 

「おい、お前、本当にそのまま、動かないつもりか。死ぬかもしれんぞ」

 

「ああ、いい。大切な友人が死ぬよりはずっとマシだ」

 

「そうか。生き残ることを期待しているよ」

 

「ぐああ!」

 

 拳銃から、6発の銃弾が発射され、全弾、私の頭に命中した。強い脳震盪を起こし、仰向けに倒れた。

 

「よくやった、アリウスの生徒! さっさと、ここを出るぞ!」

 

「お役に立ててよかったです。社長。ところで、そこの不良たちは、どうするんですか。それと、ケースは受け取りましょう」

 

「ああ、この不良たちか。あのバケモノ女を呼び出すための餌で。もう用済みだが。そうだな。あの女には、手を焼かされた。私に歯向かった罰に、見せしめにしてやろう」

 

 組織に歯向かった少女が倒れたのを確認した。マフィアのボスは、ほっと胸をなで下ろしていた。あのバケモノ女用の餌であった不良三人の処遇を聞かれ。今回の腹いせに痛めつけてやることを決心する。今は、逃げなければならないから。とりあえず、誰かに預ける必要がある。

 そうだな、ブラックマーケットの知人か。それとも、アリウスの生徒会長である、あの赤トマトの下へか。

 

 その様子を冷めた様子で伺っていたアリウス生は、預かったアタッシュケースの中身を確認し、目的の書類を見つけ終えると。

 

「今、わかりました」

 

「うん。なんだね。何が分かったというんだ。もしかして、私の偉大さか」

 

「いえ、あなたが、本物のクズだってことが!」

 

「……!?」

 

 再び、リロードした拳銃で、マフィアの頭を打ちぬいた。 頭を打ちぬかれたマフィアは、地面に倒れて呻き声をあげた。

 

「いったい、なぜだ? お前は、私の部下のはずじゃ」

 

「そもそも、私はあなたの部下ではありません。アリウスの任務で、ここに来ていただけですから」

 

「そんな、馬鹿な」

 

「それと、我が校の生徒会長であるマダム、ベアトリーチェから伝言です」

 

「“教育道具の調達、非常に助かりました。ですが、少々動き回りすぎているご様子。これ以上は、私の存在まで、危うい。あなたには消えてもらいます”とのことです」

 

「頼む。ゆるしてくれ。金なら、払う。だから、命だけは」

 

 アリウス生は、不良三人娘の顔に手を触れ、装着されたガスマスクを外す。じきに、不良たちも目覚めるだろう。

 

「では、さようなら」

 

「待ってくれ、そいつにはこの事件の犯人として、捕まってもらう」

 

「困った。任務を遂行しないと、折檻を受けるか。最悪、死ぬかも。どうしようか」

 

 後、2、3発も撃ち込めば、死ぬだろうとあたりをつけ。銃弾を撃とうとしたが。倒れていた少女に止められ。頭を悩ませる。

 

「何が言いたい。そいつを殺す以外の頼みだったら、他の何でも聞くが」

 

「その言葉を待ってた。私と友人になって。それが、そいつを殺さない。交換条件」

 

「はあ~?」

 

「ひどい。私たち、あんなに熱い死闘を繰り広げたのに。もう強敵と書いて、友。それぐらいの絆が芽生えたようなものなのに」

 

「それに、なんだか。私たち、気が合いそうな予感がする」

 

 頭を悩ませている様子なので、何か、交換条件があるのか。聞けば、こいつと友達になることが条件だと言われた。

 奴の話曰く、戦ってる内に親近感を覚えたとのこと。まるで意味ががわからなかった。

 

「ううん? ここは?」

 

「確か、私ら、あの日、姐さんに昼飯奢ってもらって、その帰り道に攫われて」

 

「それで。あいつに監禁されてて。今日? まずい、姐さん!」

 

 アリウス生から謎のアプローチを受けていると、三人が目覚めた。起きたばかりなのか、三人の意識は混濁していた。

 

「バカが、お前ら。俺がお前らのことをどれだけ。大事に思ってると思ってんだ」

 

「姐さん!? そんな、抱き着かれたら。あれ、ちょっと待って、力つよずぎ。く、苦しい」

 

 彼女たちが目覚めたことに対する。嬉しさの余り、抱き着いた。ちょっと、力が強すぎたらしく、三人を窒息させる所だった。危ない。危ない。

 

「そこの四人、お熱い所、悪いけど。こいつを捕まえるの手伝ってくれない」

 

 遠巻きに見ていた。アリウス生から注意され、急いで協力する。

 

「縄は確か、こう縛れば、よかったはず」

 

「おい。本当にこれで、大丈夫なのか」

 

「最近、捕縛任務なんて、やってなかったんだ。しょうがないだろう」

 

「どうせ。この後、俺に待っているのは、捕まるか、殺されるか。どの道、まともに生きてはいけない」

 

「おいおい、まともに生きれるように、捕まるんだろ。社長さんよー」

 

「うるさい! それなら。それなら。俺の人生を壊したお前たちも、道連れにしてやる! 音声認証起動、ただちにこの倉庫を爆破せよ」

 

「は!?」

 

 縄で、ロボマフィアを縛りあげていた時。マフィアが口を開き、諦めの言葉を吐きながら、私たちを道連れにするために、AIに倉庫の爆発指令を出した。

 

「ククク。これは、もしもの時のための、証拠隠滅用に設置した爆弾だ。一度、命令したら、私でも止められん。さらに、積荷には、大量の液体燃料が積み込まれている。もはや、誰も生かして帰らんぞ」

 

 爆破は速やかに行われ、入口部分が塞がった。それから、順に中へ中へと、爆発は進んでいく。このままでは、本当に全員が死ぬことになる。

 

「お前ら、あのコンテナに乗るぞ。倒れてる他の生徒も担ぎ込め」

 

 倉庫の中の、ひと際頑丈そうなコンテナを見つけ、洗脳されていた生徒たちを中に詰め込んでいく。

 

「姐さん、これで、全部です」

 

「よくやった! お前たち。 私もこれで、最後だ。オラァ、お前には、生き残ってもらわなきゃ困るんだよ!」

 

「な、やめろ! 私はここで死ぬんだ!」

 

 生徒たちも積み終わり、仕上げに、主犯のロボマフィアをコンテナにぶち込む。よし、完了だ。

 

「私の名前は、罪織タバネ。最後に、あなたの名前を教えて、友よ」

 

「そうか。いい名前だな。私の名前は、歯車ノボリだ。じゃあな、友よ」

 

「痛!? はあ、ちょっ! 何閉めてるんすか。まだ、姐さんが入ってないっすよ。早く、開けて!」

 

「悪いが。もう、開けられん。鍵は閉めた。じゃあな、お前たちの無事を祈ってる!」

 

 最後に、今日、友人になった。アリウス生と自己紹介を済ませ、お互いに敬礼しあった。なんとなく、察しているのだろう。その後、入口部分に、突っ立て、私を招き入れようとする一人を、中に蹴り入れる。

 中からガンガンと扉を叩く音がする。それも徐々に収まり、中からは泣いているのだろう声がしてくる。それをタバネが慰めているようだ。少し変だが、優しい奴だ。

 

「最後の仕上げをするとしよう!」

 

 爆発まで、後、三分。地面を蹴って、コンテナの前へと飛び移り。それを持ち上げて、周りに投げて、やや、耐久性に不安のあるコンテナの補修に使う。

 

「ここまでか。お前たち、生きろよ」

 

 十分だと思われる量のコンテナを投げ入れ、補修を終え。爆弾が、爆発するタイムリミットの時間を迎え。爆弾が爆発する、爆炎が巻き起こり、コンテナ内に積み込まれていた液体燃料へと着火し、大爆発を起こした。

 爆発は、倉庫内のあらゆる物を吹き飛ばした。燃焼によって、酸欠を起こし、気を失っていき、遥か空の高くへ吹き飛ばされる。最後には、台風の影響で、荒れた海へと真っ逆さまに落ちていった。

 

「姐さん、起きて、起きてくれよ!」

 

「そんな、うち等、あんな、別れ。嫌だよ」

 

「いつも見たいに、起きてください。そしたら、今度はあの激マズドリンクを飲み干しますから」

 

「心臓が動いてない。ノボリは死んだかもしれない」

 

 翌朝、あの大爆発から、生き残った。三人は、事情説明を他の巻き込まれた生徒に任せ。早朝、台風が続く中、ノボリを捜索し、海から拾い上げた。

 だが、残念な事にその心臓は止まっており、体は焼けどし、海へ流された影響か、低体温状態に陥っていた。

 

 友人であり恩人が死んだ。そんな事実が、彼女たちに襲い掛かろうとしていた。

 

「君たち、離れろ!」

 

 だが、その時、奇跡が起きた。昨夜から、ゲヘナ自治区に続いた台風も消息を始め、電荷がため込まれた雷雲が、地上へ雷が降ろした。

 

「脈がある!? 脈が戻ったんだ。ノボリが生きかえった!」

 

 雷が心臓を再び、動かさせた。胸が上下し始め、呼吸が再会する。肺に溜まった水は、口から外へと吐き出されていった。三人の胸に希望の光が灯った。

 

「へえ。あの爆発で生き残ったのか。すごいなぁー」

 

「こら! もうちょっと、配慮した発言をするんだ」

 

「やはり、訪ねてきたか」

 

「予想してたのかな。なら、改めて、自己紹介させてもらおうか。私は、ミレニアム学園所属、兵器開発部。部長の識見カナ。こっちは、妹のフカメだ。よろしく」

 

 ノボリの生存の可能性に喜ぶ三人に、ミレニアムの生徒たちが訪ねてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 病院の中、ベッドに一人の生徒が横たわっていた。生徒は寝ているようで、ゆったりとしたリズムで呼吸が行われている。ベッドサイドには、花を差し替えられたばかりの花瓶が置かれていた。

 

「はっ! 私は、いったい。いつまで、寝ていたんだ」

 

 あの夜、裏社会の抗争の果てで、生死の境をさまよい続けた少女が、息を吹き返した。

 

「ここは、病院か。とりあえず、ナースコールを押して、人を呼ばなければ。くっ!」

 

 ナースコールを押そうと手を触れると、指先から電流が流れた。流れた電流が何個か、機械壊したのか。ブザーが鳴った。

 

「まずい! 何かが原因で、生命維持装置が、故障した。急げ! むっ」

 

「そんな! 姐さん! 大丈夫ですか! えっ、嘘」

 

「あー。久しぶりだな。お前たち」

 

 ブザーに呼び寄せられ、病室に、五人の生徒が入ってき。寝たきりだった少女が起き上がったことに気づいた。

 

「ついに。ついに。姐さんが遂に起きたんだ。姐さんー! って、痺れる」

 

「随分、長く寝てたね。久しぶり」

 

「おい! 今、抱き着くな、何故か、知らんが。体から、電流が流れるんだ」

 

「ああ、久しぶり。ところで、私は、何年、寝ていたんだ」

 

「それについては、私が説明しましょう」

 

「あんたは? 誰だ? 教えてくれるなら、ありがたいが」

 

「私か、私は、君の面倒を見ている者だ。Dr、カナとでも呼んでくれ。じゃあ、説明を始めるとしようか。これから、話す内容には驚くだろうが。いいか、落ち着いて聞いてくれよ」

 

「よろしく頼む」

 

「君は、一年半ほど寝ていた。それと、あの日、君に依頼を斡旋した社長と依頼主の二人だが。事件に巻き込まれたゲヘナ生やトリニティ生が訴えを出したらしく、捕まったよ」

 

 不良娘三人とタバネが再会したことを、喜びあった。Dr.カナ、いわく、私は一年半ほど寝ていたらしい。私を罠に嵌めた、ロボ社長たちも捕まったそうだ。あの社長たち、捕まったのか。

 

「今回の事件に使用された。洗脳機械だが、私たちが制作して、売り出した兵器でね。そこのタバネ君に、取引の記録を消す代わりに、君の願い事を聞くよう交渉を持ちかけられているんだ」

 

 タバネの方を見れば、ウインクを返してきた。頑張った、私へのご褒美とのことらしい。なかなか、味な真似をする。

 

ーしかし、何でもか。悩むな。よし、頼む内容が決まった。

 

「今、何か、頼みたいことはあるかい。浮かばないというのなら、後日でも構わないが」

 

「いや、今でいい。ちょうど、頼みたいことができた」

 

「へえ。じゃ、その頼みとやらを聞こうか」

 

「何でもいい。学籍をくれ。私たち、全員分だ」

 

「それぐらいなら、お安いご用さ。そうだな、君たちは、確か。今、中学二年生だったか。今からだと、二年間、空白が生まれるが。そうだな、誤魔化せる所にしといてやろう」

 

 私は、四人分の学籍を求めた。カナは、どこか。都合のいい学園に入学させてくれるそうだ。用事はすんだと言って、カナは帰っていった。

 

「エレクトン通信中学、所属、歯車ノボリ」

 

「これが、学生証か。すっげえー! うちら、初めて、見ました!」

 

「ここにいる全員、見たことないと思うよ」

 

「まあ、私たちはストリートチルドレンか、少年兵だからな。うん!? これは、手紙か」

 

 後日、コンビニでダンボールを受け取り、いつもの裏路地に戻った後。中身の学生証を取り出し、お互いに見せ合った。手紙によると、所属している学園は裏社会の人間が復帰するのに適している学園だそうで、割と自由度が高いとのことだった。

 

 学籍は手に入れた。これで、キヴォトス人として、正式にヴァルキューレや連邦生徒会などの公共の施設を使えるようになった。人権が認められたと言える。でも、私にはまだ、やりたいことがある。

 

「やりたいことがある。お前たち、ついて来てくれるか」

 

「いいよー。君は、面白いことをやってくれるからね」

 

「私たち、姐さん、どこまでもついていきます」

 

 私たちは、また、帰ってくるであろう裏路地を出て、学園生活を送りに行った。

 

「合唱コンクールに来ましたけど。姐さん、歌下手だったっすね」

 

「うるせえ。誰が、こんな歌、歌ってやるか。神は死んだ」

 

「まあ、あなたは、賛美歌を歌うような玉じゃないか。だけど、少し、懐かしいな」

 

 中学の二年間は、あっという間に過ぎていった。

 

 

 ◇

 

 ブラックマーケット、中央区のビル。社長室、一人の生徒が、ロボの首を掴み、持ち上げ。その様子を、秘書の三人と、傭兵が見ていた。

 

「今日の私たちには、時間がない。早く答えろ。このまま、黙っているようなら、流す電流を増やして、その頭をショートさせるぞ!」

 

「わかった。辞める! 社長の座は君たちに譲る!」

 

「英断だな」

 

 私たちは、学生生活の傍ら、起業した。会社名は、デスペラード社。ブラックマーケットのヘルメット団やストレートチルドレンといったならず者たちが集まって、設立された会社だ。

 力によって、他社の乗っ取りを行い。事業の拡大を続け、今では、ブラックマーケットの裏稼業の半分を担うほどまでに成長した。

 

「ノボリ社長。では、いつも通り、部下の一人に、ここの社長を継がせますね」

 

「ああ、それで頼む。ところで、今日の入学式だが」

 

「ええ。ミレニアム学園の入学式ですね。今から出れば、十分間に合うかと」

 

 あれから、成長し、私の秘書になった不良娘の一人に、車の運転をしてもらい。ミレニアム学園まで、乗せていってもらう。

 

 ブラックマーケットで傭兵をしていた頃に、学んだことがある。搾取される者と搾取される者。ギヴォトスでは、これの関係が、大人と子供で一方的に固まっていると。

 私たちのような、学籍のない者は、法の穴をついた悪い大人に利用され、安い鉄砲玉として利用される。学園の校則に縛られ、企業する学生が少なく、大人と同じ土俵で戦える学生はなかなかいない。それを覆すために、デスペラード社を作った。

 

 悪い大人の企業を、悪い生徒たちが、食いつぶしにいく。企業闘争により、生徒と大人の一方的だった関係は崩れる一歩となる。

 

 キヴォトスに薄っすらとある。学生が、学生らしくあるべきという流れ。キヴォトス人の力を抑制している。それを破壊し、力がすべてを支配する、本来のキヴォトスを取り戻す。

 

「ノボリ姐さん、タバネ姐さん。ミレニアム学園、入学おめでとう」

 

「お前たちも、おめでとう!」

「君たちも、おめでとう!」

 

 高校生になった。私たちは、ミレニアム学園に入学した。

 

 

 

 

 

 

 

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