このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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戦争のギア

 桜舞い散る季節、ミレニアム学園の入学式。生徒たちは、我こそは、千年問題を解かんと夢想し、目を輝かせる。

 

「あなたたちは、どこの部活動に入るのかしら」

 

「私とチイちゃんは、ヴェリタスに入ろうかと思ってます」

 

「私はエンジニア部かな」

 

「そう。ヴェリタスに。エンジニア部ね。いいところよね。私は、セミナーに所属しようかと思ってるわ

 

「私たちは、兵器開発部に所属しようかと考えている」

 

「え!?」

 

「あそこは黒い噂が絶えないから、やめたほうがいいわ」

 

「そうだな。だが、優秀な生徒の集まりでもある。私は、絶対にあそこに所属するぞ」

 

「意思は堅いようね」

 

 そんな入学式も終わり。たまたま、席が近く、交流をもった。リオ、チヒロ、ヒマリ、ウタハ、タバネ、ノボリは、どこの部活に入るのか。話し合っていた。

 

 兵器開発部。成果至上主義を掲げるミレニアムの特徴を色濃く表した部活で。研究のためなら、多少の倫理は棄てれる優秀なマッドサイエンティストたちが部員として所属している。

 

 兵器と金は、密接な関係にある。いつの時代でも、兵器開発に多額の資金がつぎ込まれ、制作された優れた兵器が、利権を勝ち取ってきた。このキヴォトスでも、それは変わらない。彼女たちが作った兵器を求めるものは多く。それらは善悪の区別なく、売りさばかれかれていた。

 

 これは後で知ったことだが。2年前の事件に使用された洗脳兵器。教え~る君3号という兵器もここで開発されたものだった。事件を度々起こすが、稼いだ莫大な金をミレニアムに収めて、財政に大きく貢献する。厄介者だが、有用。それが、セミナーからの評価だった。

 

「私たちも行くか」

 

「うん」

 

 ホームルームも終わり。それぞれが別の部活動見学に向かい。教室に残った私とタバネも入部届を出しに行く。

 

「ここか。さて、部長に会えるかな」

 

「お、君たち、久しぶりだねー!」

 

 兵器開発部の部室のドアを開けると、中には部員数名と、現兵器開発部部長、識見カナの妹、識見フカメがいた。

 

「部長は、いないのか」

 

「ああ、お姉ちゃんか。丁度、用事で出たところだよー」

 

 タイミングが悪かったらしい。彼女の姉の識見カナは、用事で外に出ていた。

 

「君との交流も長く続いたものだなー」

 

「そうだな。私たちが初めて会ったのも、二年ほど前だったか」

 

 彼女とは、あの病院で会ってから、何度か。彼女の姉に尋ねにいっている内に交流を持った。

 

「すまない。セミナーからのお小言が長引いた。今年の部活動見学は、どれぐらい来た。今年は何人くらい、入りそうだ」

 

「おお、部長。見学は15人ほどで来て。それで、妹さんとこちらの彼女たちがは入部希望者だそうです」

 

「驚いたな。君たちか」

 

 部室のドアがガラッと音をを開き、セミナーから呼びだされていた、識見カナが戻ってきた。セミナーに呼び出されたというのに、彼女はブカブカの着崩した白衣姿だった。

 

 目元には隈があり、瘦せぎみの体で、不健康そうだった。妹も似たような格好だが、隈がない分、まだ、健康そうだ。

 

「いいだろう。今日から、君たちは兵器開発部の部員だ。よろしく」

 

「やったー。姉ちゃんと同じ部活だー」

 

「「よろしく」」

 

 無事に、入部が決まった。

 

「入部早々、悪いが。頼みがある」

 

「何だい」

 

「お前は、知っているだろうが。我が社、デスペラード社と専属契約してくれ」

 

「はあー。やっぱりか」

 

 私は、ミレニアムに入学したのは、このためにもあったのだ。この二年で、裏社会を支配し、ある程度の人員を確保した。だが、キヴォトスの変革するには、まだ色々なものが足りていない。

 

 だから、私は、ここの優れた兵器を手に入れるために、ミレニアムに来た。

 

「私たちは兵器を表裏の両者に。区別なく、武器を売ってるが。特定の相手にだけ、売ることはない」

 

「どうしてもというのなら、君が部長になって。君主導で取引したまえ」

 

「くっ。入部しただけでは駄目だったか。だが、部長になればいいんだな」

 

 以前から、ちょくちょく会いにいって、交渉していたのだ。だが、来るたびに、依頼形式でしか頼まれんと言われ続けていた。

 

 部員になれば、身内特権でそこら辺の厳しさも緩和されるかと思っていたが、そうではなかったらしい。しかし、部長になれば、契約を結べるとのこと。

 

「そういえば、あれがあったな」

 

 カナが立ち上がって、机の中を漁り始めた。おお、あった。あったというと。中から、一枚の紙を引っ張りだした。

 

「喜べ。君の部長就任に向けての足掛かりになる。そんな頼みがあったぞ」

 

「ふん。見せてみろ」

 

 彼女が見せてきた紙には、ゲヘナへの兵器部品の配達について書かれていた。一見すれば、普通の依頼だった。

 

「これは……」

 

「そう。ゲヘナの生徒会長からの依頼だよ」

 

 だが、相手が普通ではなかった。ゲヘナ学園の生徒会長。雷帝直々からの依頼だった。極秘資料なのか。依頼を受けないならば、すぐに処分するように書いてある。

 

「この仕事を私たちにこなしてこいと」

 

「そういうことさ。元々は受けない予定だったんだが。君という暴力装置が入ったことで、事情が変わった」

 

「君が協力してくれれば、彼女が率いる万魔殿とも友好的に交流できるかもしれない。稀代の天才発明家と謳われる雷帝の技術は私たちとしても欲するところ。君たちには、この依頼を通して、彼女らとパイプを作ってほしい」

 

 兵器開発部が受け付けていた、雷帝からの依頼は、稀代の天才発明家である雷帝と接触するチャンスでありながら、同時に、苛烈な性格であるとされる彼女と距離が近づくことになる。危険な依頼だった。

 

 もし、彼女の逆鱗に触れるようなことがあれば、あまり戦力を抱えていない兵器開発部では太刀打ちできない。しかし、私たちが入部したことで、事情が変わった。

 

「わかった。いつ行けばいい」

 

「明日」

 

「は!? すまないな。聞き間違えたかもしれん。もう一度、言ってくれ」

 

「聞き間違いもなにも、明日だ」

 

「はあ──ー!?」

 

 依頼書の返答期日は、明日までだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あなたたちが、ミレニアム学園の方々」

 

「そうだ。私たちが、ミレニアム学園、兵器開発部部員の歯車ノボリ、罪織タバネ、識見フカメだ。よろしく」

 

「私は、ゲヘナ学園、情報部の空埼ヒナよ。よろしく」

 

 翌日、ゲヘナ学園の近隣の駅まで、電車に乗って移動し、向かいの車に乗った。

 

「あなたたちはゲヘナについて、どれだけ知ってるのかしら」

 

「雷帝という生徒会長が君臨しているとだけ」

 

「私も同じく」

 

「そう。それで、今のゲヘナについて、どう思った」

 

 どこかで、争いでも起こっているのか。車が止まった。デモ活動でもしていたのだろう。打倒雷帝と描かれた旗をもった生徒たちが道路から、飛び出してきた。

 

「恐怖政治を許すなー!」

 

「私たちに自由を!」

 

「黙れ! 規則違反者共め、大人しくしていろ! 貴様らを、禁固一ヶ月の刑に処す」

 

 それを万魔殿の生徒たちが捕らえていく。

 

「いい所じゃないか」

 

「理想的だと思います」

 

「統制がとれてるねー」

 

「っ。そう。あなたたちはそう感じるのね」

 

 抗議デモが終わり、車の通行規制も解除された。

 

 運転席の空埼ヒナは、彼女たちの返答に、苦々しい表情を浮かべ。車の運転を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 運転を再開した車内。

 

「トリニティの奴らめ」

 

 車の振動で車内が程よく揺れ、眠気を誘われ寝た。罪織タバネは懐かしい夢を見ていた。

 

「どうして、我々は戦っているのでしょうか」

 

「どうしてか。どうして、戦っているかは答えられるが。何故、戦うのかは、お前が決めろ」

 

「同じでは」

 

「その二つは似ているようで違う」

 

 荒廃し、荒れ果てた街並みに、随分と古い記憶を基にした夢だなと思った。

 

 トリニティ設立時、合併に恭順しなかったアリウス分派の生徒たちは、他の分派から排斥され、地下に隠れ潜むようになった。

 

 時代が進み、アリウス分校内に、排斥したトリニティを憎む対立派とトリニティ生と仲良くしようとする融和派、二つの派閥が生まれた。

 

 二つの派閥は意見の対立し、内戦が始まった。私は、日々の生活のため、そんな争いあう派閥の対立派の少年兵として内戦に参加していた。

 

「この戦いはトリニティに対する今後のスタンスの違いで起こった。だが、個人が戦う理由はそれぞれだ。だから、戦う理由はお前自身で決めろ」

 

「なるほど……」

 

 内戦で戦う内に生まれた疑問を、上官にぶつけると。そんな答えが返ってきた。

 

 元は同じ、学区に住む仲間である同胞たちと傷つけあってまで戦う理由が知りたかった。

 

ー無意味な戦いに疲れていたんだと思う。

 

答えがあれば、そう思い上官に聞いた。だが、戦う理由は個々人が持つもので、自身で見つけ出さなければならないものだった。

 

「おい、貴様。補給班に負傷者が出た。代わりに行ってこい」

 

「わかった」

 

 ある日、補給班に欠員がでて、穴埋めとして部隊に参加し、始めて地上に登った。

 

そこで、理由が見つかった。

 

「綺麗な街並みだな。あの制服、トリニティの生徒か」

 

 トリニティの学区内で物資の補給中、トリニティの生徒を見かけた。丁度、ティータイムの時間なのか。彼女たちは、テーブルにケーキが乗った皿を置き、紅茶を片手に談笑していた。

 

「君たち、トリニティの生徒」

 

「ええ。確かに、私たちは、確かにトリニティの生徒ですけど。あなたは、どなたかしら」

 

「たまたま、ここに来た観光客。それで、一つだけ、聞きたいことがあるんだけど」

 

「観光客の方でしたか。ええ、何でも聞いていただいてかまいませんわ」

 

「アリウス分校って、知ってる」

 

「アリウス分校? 何ですの、それは。もしかして、新学校でしょうか」

 

気まぐれ。ちょっとした興味から出た質問。それが、手痛く私を噛んだ。

 

「そっか。手間をかけたね」

 

「あら、観光客の方、お待ちになって。どうせなら、トリニティの観光名所、教えますわよー! 行ってしまわれましたわね」

 

 走る。ひたすらに走る。

 

「はぁ。はあ」

 

 通りを歩く住人たちの隙間を縫うように走り、路地裏に入り込んだ。

 

「嘘だ」

 

 勝者が歴史を作る。そこに不都合な真実は要らない。陰は決して表に出ることはない。

 

 彼女たちは、アリウスについて、何も知っていなかった。アリウス生にとっては、常識であるトリニティの負の歴史を。

 

頭の中がぐちゃぐちゃになって、視界がかすんでいく。

 

「オエェー」

 

胃酸がこみ上げてきて、昼に食べた物を吐いてしまう。

 

――久しぶりの腐ってない食料だったのに。もったいない。

 

「お前たちは、臭い物に蓋をして、過去を忘れ。ただ、安楽に今を生きるというわけか」

 

「そうか。これは、血を流すにたる理由だ」

 

 罪を忘れ、安楽に今を生きる。トリニティの生徒に、激しい憎悪を抱いた。芯から湧いてくる憎悪が、なぜ対立派の生徒たちが戦うのか理解させた。

 

「上官。今日から、私のことは、無尽の憎しみ(ザ・ヘイト)と呼んでくれ」

 

「理由を見つけたか」

 

 あの戦場で戦う理由が生まれた。

 

「どうして、あなたたちは戦いを望むの! 確かにトリニティは憎いけど。だからって、トリニティとの対立を続けても、何も生まれない! ただ、寒いし、貧しいだけ!」

 

「だから、トリニティに謝罪して、支援を求めるって! それを私たちに強制すんな! 私たちは、そんなの望んじゃ、いねえんだよ!」

 

 戦う明確な理由をもったことで、見える景色が変わった。融和派も対立派も、一人一人の兵士が、己の理想のために戦っていた。

 

 彼女たちは、互いに血を流しあいながら、必死に歴史を作ろうとしていた。この戦いはつまらないものじゃない。

 

vanitas vanitatum et omnia vanitas なんて、くだらない言葉だ」

 

 確かに、結果だけをみれば、いつかは塵と消えるものなのかもしれない。だが、自分たちが生きる未来のために戦う。あの姿が、虚しいなんて口が裂けても言えない。

 

 そうして、戦いは続き。

 

「遂に、我々は、融和派のリーダーである。ロイヤルブラッドを捕縛した。この内戦の勝者は我々、対立派だ!」

 

 遂に、融和派のリーダーであるロイヤルブラッドの身柄を抑えることに成功した。

 

「国を作るのは、血ではない。人々の信念だ。ロイヤルブラッド、あなたたちはもう、我々にとって必要ではない。今日、この日をもって、アリウスは再び、我々の手で生まれ変わる」

 

 正反対の目標を掲げる融和派の生徒が、我々の統治に大人しく従うはずはない。

 ロイヤルブラッドを含む融和派をアリウスから追放し、対立派が今まで通り、アリウスを反トリニティの学園として運営する。思想は統一され、アリウスは生まれ変わるはずだった。

 

「私はベアトリーチェと申します。今日から、私が生徒会長を務めさせていただきましょう」

 

 漁夫の利を狙ったゲマトリアと名乗る組織に所属するベアトリーチェという大人に横やりを入れられ、乗っ取られるまでは。

 

「あなたたちが、飢え、苦しんでいるのは。すべて、トリニティのせいなのです。あなたたちには、復讐の権利がある。彼女たちを憎悪し、いつか復讐する。それが、アリウスの悲願なのです」

 

「トリニティのせい。でも、これ以上。痛い思いはしたく、ないです」

 

「はあー。352番を懲罰室に送りなさい」

 

「わかりました。マダム」

 

 若い生徒が、教官となった生徒に連れられていく。情報は制限され、思想を強制される。今日もマダムの教育によって、偽りの憎しみを植え付けられた生徒が量産される。

 

「あなたたちには、この任務にいってもらいます」

 

 マダムに反抗的な意思をもつ、私たちはマフィアとの貿易の交渉、敵対組織の襲撃といった裏の任務に使われ、数を減らしていった。

 

 仲間は死に、後輩たちは意思を無くし、兵士足りえなくなった。あれだけ愛した戦場という故郷は消えていった。

 

「次の任務です。潜入して、取引記録を奪取し、この人物を抹殺しなさい」

 

 もはや、一人になった。私に、マダムから任務が下りた。

 

 写真に乗っていた人物は、マダムに、拷問器具を売りさばいていた。教育会社の社長だった。

 

 黒い噂の絶えない大企業への潜入。マダムがこちらを確実に消そうとしているのわかった。

 

「ごめん。みんな、私もそろそろ、そっちにいくかも」

 

 いよいよ、命運もつきただろう。自分の死期を悟りながらも挑んだ、任務先。

 

「どいつもこいつも、安く使われやがって。気に入らん。私が、矯正してやる!」

 

「なんなんだ。あいつ」

 

 港の倉庫内。護衛対象であるマフィアのボスの隣でその光景を見た。

 

「暑苦しい。だけど、目が離せない」

 

 倉庫内を恵体の生徒が走り回り、洗脳された生徒をぶん殴っていく。

 話す内容も暑苦しくて、スポコン染みていてウザったいのに。どこか、爽やかさを感じる。

 

「あいつと戦いたい。私とあいつで、意思をぶつけ合いたい」

 

 気づけば、冷え切った心に熱が戻っていた。

 ──潜り込んだ先で、私は運命に出会った。

 

 圧倒的な自己を持ち、自身の信念のため、仲間のため、戦う。どこか。故郷の仲間を思い出させる少女。歯車ノボリに。

 

「彼女たちと一緒に訓練したり、企業したり。楽しかったなー」

 

 戦場という楽園を追い出された兵士に待っていたのは、楽園だった。

 

「む。揺れてる。覚めるのか」

 

 現在まで、行動を共にしている新しくできた親友たちを想い、笑っていると。地面が揺れ始め、意識が覚醒してきた。

 

 

 

「起きろ。タバネ。ゲヘナ学園に着いたぞ」

 

「ううん?」

 

「しょうがない奴だな。タバネは~」

 

「急いで、渋滞に巻き込まれたから、面会まで時間がない」

 

 ノボリに肩を揺らされ、起きた。どうやら、ゲヘナ学園に着いたらしい。

 

 万魔殿で待っている雷帝との謁見のため、空埼ヒナに案内されて、広大なゲヘナ学園内の道を歩く。

 

 道中、呟いた。

 

「戦争は終わらなかった」

 

 ゼロになって、折れかけた心は立ち直った。ならば、ベアトリーチェを排除した時、自由になったアリウス生たちも、きっと意思を持てる。

 支配から解放された彼女たちは、たくさんの経験を積み、自分たちの信念をもって、行動するようになる。

 

「いつか、決着をつけよう」

 

 マダムの介入によって、トリニティに対する姿勢の問題で融和派と対立派に別れ、争った内戦の決着はつかなかった。今は、マダムによって、スタンスの違う組織が一つにまとめられているが。彼女の支配が消えれば、問題はいつか表在化し、再び内戦が起きるだろう。

 

 その時こそ、融和派と対立派。どちらが、これからのアリウスを導いていくのか、決着をつけよう。

 

 

 

 

 

 

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