このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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雷帝

「ミレニアムの諸君、よく来てくれた。好きなところに座ってくれたまえ」

 

「ほう。ならば、お言葉に甘えさせてもらおうか」

 

 空埼ヒナから仕事を引き継いだ雷帝直属の部下に案内され、執務室へと入ると。雷帝は机の椅子に座り、腕を組んで私たちを待っていた。

 席に座るよう促されたので、向こうの言葉に甘えて、奴の対面に置いてあるソファーに足を組んで座る。

 

「このアサルトライフル、ずいぶんと質がいい」

 

「おーい。そこの君、この銃について解説してくれないか」

 

 他二人は脇のソファーに座り、執務室内に飾られている銃器を物色し始めた。雷帝との交渉は私が進めることになったのだ。

 

 あまりの態度の悪さに一瞬、雷帝の顔が歪み、直ぐに戻ったが。脇に控えている部下たちはこちらを睨み付けていた。

 

 本来なら、座高の違いであちらから見降ろされる形になるのだろうが。互いの身長差で、目線が揃った。

 

「それでは依頼の話をしようか」

 

「随分と急ぐな。まずは、世間話でもして、アイスブレイクでもしようじゃないか」

 

「くだらん冗談を。時間は有限だ。即断即決に限る」

 

「クク。すまんな、冗談だ。こちらも、話は早い方が助かる。まだ、本命の交渉があるからな」

 

 交渉が始まった。

 

「では、交渉成立だな。では、後は私の部下に任せる」

 

「まあ、待て。もっと、いい提案がある」

 

「なんだと」

 

 交渉が纏まり、部屋を去ろうとする雷帝を止める。わざわざ、ここに来た理由である。本命の提案をする。

 

「私たちと組まないか」

 

「どういう意味だ。説明してみろ」

 

 興味を持ったのか、扉の前で立ち止まった雷帝が、話を続けるように促してくる。

 

「お前は、今、何か。とてつもない兵器を発明をしようとしているのだろう。それこそ、学園間のパワーバランスを崩す程のものを」

 

「そして、ゲヘナだけで仕事を回せばいいのに、ミレニアムにまで、これだけの大掛かりな仕事を持ってくるほどに、完成を急いでいる」

 

「そうだな。私は急いでいる」

 

 取引される兵器のパーツは、どれも現状の兵器開発部が提供できるものの中で最新鋭のもので、大量に買っていた。

 学園の長だということを加味しても、あり得ない程、過剰な量だった。それこそ、戦争を起こそうとしない限りは。

 

 ゲヘナとトリニティ間の隔絶を考えれば、トリニティと戦争するのだろうが。

 

「トリニティに、いや、キヴォトス全土に侵略戦争でも仕かけるのか」

 

「ほう!」

 

 話をしているうちに、領土獲得に対する雷帝の果てしない野心が伝わってきた。こいつは、トリニティだけで、満足するような玉じゃない。ゲヘナがキヴォトスを統一するのを夢見ている。

 

「お前は3年生で、ゲヘナの生徒会長としての任期は後一年しかない。時間がないはずだ。だからこその……」

 

「だからこその電撃戦だ。他の学園が保持する兵器を凌駕する超高性能兵器でもって、圧倒し征服する」

 

「ぞれでも、戦争には時間がかかる。だから、私たちがその時間を早めてやる。そちらに、無償で我が部の優秀なエンジニアたちを出向させる。代わりに、お前の兵器開発に関わらせろ」

 

「なるほど。そちらは、人手を。こちらは、技術を提供しあうというわけか」

 

「そうだ。ギブ・アンド・テイクだ。悪くない提案だろう」

 

「確かに、魅力的な提案だな」

 

 わずか一年という限られた間に、ギヴァトスを統一したい雷帝にとって、時間は惜しいものだ。優秀なエンジニアたちが協力すれば、兵器開発の速度も上がり、開戦を早めることができる。あちらは時間を確保でき、こちらは協力の過程で雷帝の技術を学べる。この提案は、双方に利益がある。

 

「だが、一つ問題がある」

 

「なんだと」

 

「お前たちに信用がないことだ。もしも、他学園の貴様らの口から計画や兵器のことが漏れるようなことがあれば、私はそれを統制できない。計画は一瞬で水の泡となる」

 

 意識的にせよ。無意識的にせよ。彼女たちの口から、計画が漏れれば、ミレニアムの自治区ゲヘナが戦争を仕掛けようとしていることが他学園に伝われば、計画は破綻する。

 

「どうすれば、信頼してもらえる」

 

「強さを示せ。秘密を守れるだけの強さを。信頼は鉄と血でもってしか得られない」

 

 雷帝が立ち上がり、銃を構える。それに呼応するように、彼女の部下たちも一斉に攻撃態勢に入った。

 

「わかりやすくていい」

 

「鉄と血。あなたの考え方、気に入った」

 

「新兵器のお披露目するとしよー!!」

 

 私とタバネは獲物である銃を構え、フカメは背負っていたカバンから蜘蛛型の足を出す。

 

「それでは、戦おうか!」

 

 その日、ゲヘナ学園に雷と硫黄の雨が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

「私の勝ちだな。お前の方が一秒ほど先に倒れた」

 

「いいや、私が勝った。貴様の方が、二秒程、先に膝をついていた」

 

「なんだと、それを言うなら、お前のほうが……」

 

「いや、貴様のほうが……」

 

 半壊し、焼け溶けたゲヘナの校舎で倒れた二人はどちらが勝ったか。互いに言い争っていた。

 

「何をやっているんだ、あのバカは?」

 

「ええ、本当に」

 

「二人とも、同時に倒れていた」

 

 その様子を、戦いの中で友好が芽生えた雷帝の部下とノボリの友人たちは、呆れた目で見ていた。

 

「会長! そんな下らない争いしてないで。早く話を進めてください」

 

「ノボリー! どっちが勝ったかなんて、後で決めろ。帰りの電車がなくなるぞ~」

 

 彼女たちからの静止に、二人は言い合うの辞めた。

 

「ちっ。それで、どうなんだ。私たちは信用を勝ち取れたのか」

 

「貴様らの強さは見せてもらった。合格だ、貴様らは協力者足りえる。よろしく頼むぞ」

 

「ああ、よろしく」

 

 兵器開発部はゲヘナの雷帝と共同で、兵器開発をすることになった。

 

「三人ともよくやってくれた。これで、我が部は更に躍進することだろう」

 

「礼には及ばん」

 

 成果を手に帰り、兵器開発部内での地位も確保できた。

 

 

 

 

 

 

 

 そこから、月日は流れていき。

 

「雷帝。この列車砲だが、もっと機能をつけないか」

 

「ほう。どんな機能だ」

 

「そうだなー。せっかく列車なんだし、宿泊機能をつけよう。それに、キャタピラーも」

 

「ふざけるな。遠足気分じゃないんだぞ」

 

 雷帝との共同での兵器開発

 

「私はあの二人に負けた。このまま、卒業するのは口惜しい。せめて、お前に託すとしよう」

 

「これは鍵か」

 

「そう、私の傑作たちのマスターキーだ。後、私の同志たちの事も頼んだ」

 

「任せろ」

 

 クーデターを起こされ、失脚した雷帝からの遺産の引継ぎ

 

「ホシノちゃん、ごめんね」

 

「まだ、息はあるようだな」

 

「アビドスは死んだ。私たちが、アビドスを蘇らせるんだ。こんな所で倒れるわけにはいかない」

 

「ここで、死ぬのか~ でも、一緒に死ねるなら悪くないね」

 

「こっちもか。今日はよく、遭難者に会うな」

 

 アビドスの砂漠で倒れていた遭難者たちの救助

 

「ノボリ、取引しよう。私が部長になって、君の会社と専属契約する。だから、君はセミナーに入って、兵器開発部を廃部から守ってくれ」

 

「いいだろう」

 

 連邦生徒会長の統治で平和が訪れた。裏社会の者たちにとっての暗黒の時代。部員は他所に流れ、資金も減った兵器開発部の次期部長との取引。

 

「此れからのミレニアムは多角的な観点から物を見ていくべきです。今までの用に、極端な成果史上主義では多様性は生まれません。それを助長する、兵器開発部は要りませんね♪」

 

「兵器開発部は部員数も、利益もだせていない。これ以上、残すのは非合理的だわ」

 

「私はそうは思わないな。兵器開発部も立派な一要素だ。なにより、兵器開発部はミレニアムの財政に貢献してきた。廃部はせず、縮小でいいだろう。それと、彼女たちの功績から起業権を与えるべきだ」

 

 ミレニアムの超成果主義を危ぶんだリオ、ヒマリの二人組との攻防。

 

「ありがとう。君のおかげで、零細部活としてだが生き残ることができた」

 

「構わん。それに、兵器開発部は元々、そとに向けた活動が多かった。影響は大してないだろう」

 

「そうだね」

 

「それより、会社の名前は決まったか」

 

「うん。決まったよ。会社名はワールドマーシャル社だ」

 

 部長が作る新会社の設立の協力。

 

 それらをしている内に、二年間が経過した。

 

 

【クロノス社から、ニュースのお届けします。突如、連邦生徒会長が失踪してから数週間、後任に先生なる人物がここ、キヴォトスにやってくるそうです】

 

「ちょっといいかしら、ノボリ。あなたに重要な話があるの」

 

「ここに来るとは珍しいじゃないか。リオ」

 

「もしも、キヴォトスが滅亡するかもしれないと言ったら、あなたは笑うかしら」

 

「ほう! 面白い!」

 

 高校生活、最後の一年が始まった。

 

 

 

ノボリが朝のニュースを見る数時間前

 

DU自治区の病院に。学校が始まる前の早朝から、ピンク髪の少女が来院してきていた。

 

「あら、ホシノちゃん。今日もお見舞いに来たの」

 

「うへえ~ いつも、朝早くにごめんねえ」

 

「構わないよ。私、夜勤だったから。帰っちゃうけど、交代の人が二時間後ぐらいにくると思うから。よろしくね」

 

「うん。おじさんに任せて~ それより、こんなおじさんに構ってないで。早く帰りな~ 寝不足になっちゃうよ~」

 

 夜勤を終え、家に帰る。いつもお世話になっている病院勤務の看護学生に挨拶をすませ、とある生徒が眠っている病室に入る。

 

「ユメ先輩、今日も来ましたよ」

 

 規則正しくなる病室のベッドには、青緑色の髪をした。彼女の先輩が眠っていた。

 

「私があの日、つまらない意地を張って、先輩と喧嘩して。砂漠で遭難した先輩が見つかってから、二年。ユメ先輩、この二年の間に、私にも後輩ができました」

 

「私にはもったないぐらい。いい子たちで。先輩にも紹介したいです。だから、早く目を覚ましてください。ユメ先輩」

 

 二年前、些細なことで先輩と喧嘩した。先輩は砂漠で遭難し、通りがかりの生徒に救助されたらしい。でも、砂漠を数週間さまよった先輩は酷い熱中症や脱水をおこしてて、救助された日から二年経った今でも、先輩は昏睡している。

 

 登校時間までの間、彼女のベッドに潜り込み、布団の中の手を取って、己の罪を懺悔するように縋っていた。

 

「行かなくちゃ。また明日来ます。ユメ先輩」

 

 登校時間、いつもの電車に乗って、学校に登校する。

 

「先輩! 今日も遅刻ですか!」

 

「遅いわよ、先輩!」

 

「ん……いつも通り」

 

「お寝坊さんですね~」

 

「ごめんねえ~ みんな~」

 

 遅れてきたことを後輩たちから若干責められながら、小鳥遊ホシノは教室に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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