このキヴォトスには変革が必要だ!だが、変革には犠牲が伴う!   作:王朝万歳

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改革の一歩

『リオ、都市づくりの資金は援助しておいたぞ』

 

『助かるわ』

 

 ヴァルキューレ警察前のメインストリートで私は、リオと電話で話す。

 いつもの定期連絡。それも終わり。私は、ヴァルキューレ警察で待つ。

 

「釈放だ。もう馬鹿な真似をするなよ」

 

 ヴァルキューレ警察の生徒が、ヘルメットを被った少女を連れてきた。

 

「待っていたぞ」

 

「……! ノボリさん」

 

 私が運営する学校の生徒。数か月前、飲食店爆破で捕まった彼女の出所迎えだ。

 

「お前の部下のシャキシャキヘルメット団員から、話は聞いた」

 

「そっか。あいつら……すいません。社長」

 

 朝で静かなせいか、声が通る。押し殺された感情が私の胸を叩いてくる。

 

「……店員が、ブラックマーケットの生徒かって、鼻で笑ったんですよ」

 

「その瞬間、頭が真っ白になって」

 

「……あいつら、腐った芋で団員に料理を出した。だから、店ごと吹き飛ばした」

 

 数か月前、彼女は部下たちの慰労を兼ねて、ゲヘナで新規に開店した高級料亭に行った。

 そこで、店員はブラックマーケット生と侮り、料理に腐ったジャガイモを使用。

 それに怒った彼女が、飲食店を爆破し、ヴァルキューレ警察に逮捕された。

 

「恥じるな。前を向け、お前は正しいことをした」

 

 俯いた顔を前に向けさせる。彼女は正しい。彼女の勇気ある行動が部下たちの誇りを守った。

 

 ブラックマーケットへの帰る頃には、昼時になっていた。二人で寄った近場の自治区の飲食店は、美食研究会に爆破されていた。

 

「ハルナを引き取りに来た」

 

「あら、ごきげんよう。ヒナ風紀委員長」

 

 ゲヘナ学園の風紀委員長ヒナと美食家研究会を捕らえた警察とのやり取り。ヒナが美食研究会を預かって去っていくのを見やる。

 

「反吐が出る」

 

 足に力が入り、コンクリート道路を踏み抜いた。

 

 美食研が問題を起こし、ヒナ委員長がそれを納める。ゲヘナでは日常的な景色だろうが。

 

 ここはゲヘナじゃない。にもかかわらず、ゲヘナ学園は首を突っ込める。

 

「私たち、無学籍の生徒が美食研と同じことをしたら、どうなる」

 

「そりゃ、私の時みたいに、数か月はヴァルキューレ警察で拘留されるんじゃ。……そういうことっすか」

 

 私の言いたいことに気づいたのか。連れの彼女は諦めたような表情で、うなだれる。

 

 基本的にキヴォトスでは、学園に所属した生徒が問題を起こした場合、その生徒の所属校が裁く。

 

 じゃあ。ヘルメット団やスケバンなんかの無学籍の生徒はどうなるか。答えは──ヴァルキューレ警察が管理するんだ。

 

 生徒が同じ罪を犯しても、天秤の違いによって、実刑が変わる。クソッたれのシステム。学園の庇護下にある生徒は、ゆりかごで。無学籍は野ざらしで生きる。

 

「おかしいと思わないのか」

 

「おかしいって。でも、しょうがないですよ。住む世界が違いますもん」

 

 浮浪児だった頃の生活、今のミレニアム生としての生活。両方を体験し、私はこの分断と格差を痛感した。

 この狂った社会構造の原因を作り出していたのは、各学園の自治権およびそれを認める連邦生徒会だった。

 

 うなだれたままの彼女に手が出る。

 

「諦めてんじゃねえ! 私たちは生き延びた。夢を見る資格がある! そうだろ、兄弟!」

 

 吹っ飛ばした彼女の腕を掴み、拾い上げ、背に乗せようとする。

 

「自分で歩けます!」

 

「そうか」

 

 だが、彼女はそれを断った。彼女に肩を貸して、共に歩き。

 途中で買ったフライドチキンを食べながら、ブラックマーケットへ帰った。

 

 

 ◇

 

 ブラックマーケットのデスペラード社が管理する倉庫から抜け道を通り、

 エレベーターで下った地下深くに学園があった。

 

 馬、バイク、車などが雑多にが停められ、枯れ草が舞う。西部開拓地のような学園の講義堂に生徒たちが集まっていた。

 

「召集がかかったけど、何かあるの?」

 

「知らないのか。ノボリさんが大事な話するんだってよ」

 

 私は講演会場に集まった生徒たちを見やりながら、スピーチ台へと歩く。後ろから、タバネやフカメ達がついてくる。

 

 私たちの服装はバラバラで、所属もみな違う。だが、志は一つだ。

 

「今回、学園の闘論会を勝たせてもらった。ノボリだ。今から、みんなに聞いてほしい話がある」

 

 ヘルメット団やスケバンなどの無学籍の生徒たち、雷帝に従っていたゲヘナ生、派閥闘争に負けたトリニティ生が私を見る。

 

 皆、真剣な目をしていた。私の理想が叶いつつある。

 

 私は、連邦生徒会非公認の学校を建設した。学校名はリバティスクール。校則や生徒会といったものはなく、役職や学籍も一切ない学園だ。ここでは、無学籍の生徒だろうと学園所属の生徒だろうと平等に扱われる。

 

 学園の指針は、半年に一度開催される闘論会と呼ばれる。生徒同士の闘争で決まる。力だけが唯一の法だ。

 

「皆、疑問に思ったことはないか。なぜ、私たちがこんな生活をするのかと!」

 

 私の一言に。会場の生徒たちがざわめく。会場から「そりゃ、思ったことはあるけど」「だから、どうしたって話だよな」といった声が微かに漏れる。

 

 大きく息を吸って肺いっぱいに空気を貯め、熱く語りかける。

 

「キヴォトスがどうしようもなく腐敗しているからだ! 学園が退学させ、生徒を放り投げる。その様子を連邦生徒会は首を縦に振って見送る。所属すらしていない生徒は初めからいない者として扱う。各学園が自治区を管理する関係上、連邦生徒会と学園の間で行政は中途半端に止まった。残ったのは腐敗したヴァルキューレ警察だけだ。無学籍の生徒たちに、セーフティネットはなく、生き抜くために、安い労働力として、大人に使われるしかない」

 

「そんな私たちの現状を知らずに知った風を聞くインテリやオンボロ官僚どもは、落伍者だの努力が足りないだのほざきやがる。ただ、生まれに恵まれただけのの奴らが街を我がの物が顔で歩き、私たちは日陰で暮らす。この現状を腐っていると呼ばずに何という!」

 

「そうだ! こんな、現状はおかしい! キヴォトスは腐っている!!」

 

 共感したのか。演説を聞いた生徒たちが、銃を掲げる。

 

「連邦生徒会長は超人だの、なんだの世間からもてはやされていたが、まったくの出鱈目だ。奴は、自分たちの管理できない人間を排斥し、管理化における生徒だけを集め、統治したに過ぎない。ゴミをかき集めて、清潔な環境にするようにな!」

 

「ペテン師が去った後でも、奴らの規範は変わらない。事なかれ主義、全体主義おまけに排外主義。SRT学園の閉鎖による武力介入手段の削除、”先生”に問題解決させることによる各学園との信頼構築の放棄。力を無くし、理想を無くし、奴らはただの一組織に成り下がった! 奴らにキヴォトスの調停者たる力はない! ただ、消えた女のケツを追うだけしかない! 権力の上にしがみつくだけしか能のない豚どもだ!」

 

 生徒たちがわが校の旗を掲げる。自由の旗。星条旗だ。

 荒野を吹き抜ける風が、旗を広げ、その存在を主張する。

 

「連邦生徒会や学園の統治者が、学園の生徒からしか出ない都合上。私たちに参政権はない。ただ、指をくわえるしかなかった。だが、それももう終わりだ。私が生徒会長になったら、この腐った社会をぶっ潰してやる! 機能停止した連邦生徒会を、ゲマトリアやカイザーといった、それに群がる蛆虫ごと徹底的にぶっ潰す! 学籍制度を破壊する! ヴァルキューレ警察も解体する! 各学園から生徒会長と言った役職や校則を消してやる! これによって、すべての生徒は平等になる! 学園の所属の有無による格差は根絶される! ゆりかごは消える! 私たちの声は政治に通る! 私が拳と拳で語り合うキヴォトスを取り戻す! 気に入らない奴はぶん殴る! それが私の目指すキヴォトスだ!」

 

「ウオオオオオオ!! ノボリ! ノボリ!  ノボリ!」

 

 会場が熱狂の渦に包まれる。これだ! この声こそが人の魂の声だ! 慣習に囚われ、踊りつづける議会では起こせない声だ! 

 

 腐った世の中に対して、行動して見せる! 彼女たちこそが真の愛国者だ! 

 

「あんた! 気に入らない奴はぶん殴るんだったわよね!」

 

 ステージにヘルメットを被り、トリニティの制服を着た赤毛の少女が乱入してきた。私の学園には学籍は要らない。仲間に誘われて、見学に来る生徒もいる。彼女もその一人だろう。

 

「その通りだ!」

 

 演説を聞いていた生徒たちが突然の乱入者に騒ぐが、それを手で制す。後ろに待機する仲間にも手出し不要だと言っておく。

 

 私は、こういう気骨のある奴が大好きだ。彼女たちの体には真っ赤に燃える赤い血が流れている。人間として、最も重要な要素だ。

 

「私は、トリニティにいたことがある! 友達の中には、制度に守られた弱者もいた! あんたの世界じゃ、そいつ等は守られない!」

 

「強くなればいい! 誰にも権利を侵されないほどにな!」

 

「そうなれない人も、いるのよ!」

 

 赤毛の生徒が銃をバットのように構え、手榴弾を打ち出してくる。

 

 跳んでくるそれらを。私は、腕を振るって、上空へと弾き飛ばす。そして、大振りでがら空きになった相手の胴体に向けて、タックルを入れてやる。少女は、ステージを滑るように吹っ飛ばされていった。

 

「だが、お前も力によって、私に意見した。いわば、同志だ!」

 

「……な! ふざけないで! 私はあんたとは違う!」

 

 脳震盪でも起こしたのか、空中をさまよっていた彼女の手を掴み、上に掲げさせる。スタンディングポーズだ。

 

「見ろ! 彼女は自分の意志に従って、私に殴りかかかってきたぞ! これこそが、自由だ! 彼女もまた、勝者だ! お前たちはどうなんだ!? 私を応援するだけか? それじゃ、いままでと変わらんぞ! たとえ、私であろうと気に入らないなら殴りに来い! キヴォトスが腐敗したのは、私たちが殴られても黙っていたことも一因にある。私たちが変わることでキヴォトスも変わる! 声を封じられたのならば、手足を振るえ! 手足も潰されたなら、歯でかみつけ! 私たちはいつだって、自由と責任を胸に、勤勉と努力で、未来を切り開いてきた! 今度も同じだ! フロンティアスピリットで、自身の理想の世界を造り上げろ!」

 

 浮かれた大衆に活を入れる。彼女が、私たちの目指すべき理想を実践してくれた。

 

「キヴォトスは、“学籍”という特権を作った。貴族制の国家だ。共産主義でも、民主主義でもない。かび臭い国家だ! 私たちが、ゲヘナに、トリニティに、ミレニアムに、キヴォトス全土に自由の旗を掲げる! 民主主義の皮を被った疑似民主主義国家から、本当の民主主義を! 本来、人間が持つべき! 自由と平等を勝ち取るってわけだ!」

 

「私たちが勝ち取るぞおおおおおおおおおおおお!!」

 

 その日、演説を聞いた生徒たちの心が一つになった。

 そして、多くの支持によって、私は連邦生徒会防衛局員に当選した。

 

 これからだ! これから、私たちの復讐(REVENGEANCE)が始まる! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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