このアカシアを君に   作:エンペライ

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1話 願いの秘薬を求めて

遥か彼方の西の海を越えた先、緑に満ちた地に大いなる者『アマノシン』あり。

大いなる者、訪れし者に試練を与えん。

勇者試練を越えしとき、大いなる者秘宝を与えん。

それは万能の願望器、命亡き者には新たな命を与え、怪我や病に伏せし者は体が癒える。

勇者よ、アマノシンの『願いの秘薬』を求めるのだ。

 

 

 

「って伝説があるんやって、それでオイラ考えたんだけどこの『願いの秘薬』なら君の体を治せるんじゃないかって」

 

「えーと、どうだろうねあくまで伝説だし…」

 

私はトウカ(バクフーン)。夫のテオ(オーダイル)からとある伝説の話を聞かされてその反応に困っているただの一般ポケモンだ。

 

「この伝説にかけてみないか?医者からも見放された君の体だって治るかもしれない。もし治ったら諦めていた子供だって」

 

「う、うん…」

 

私たち夫婦に子供はいない。

それは私が幼い頃にかかった病に原因があり、当時はなんとか一命を取り止め障害等も残らずに回復したのだが、のちの検査で子供ができない体になってしまっていたとわかったからだ。

 

 

 

というのが夫にしている説明だ。

まず前提として…私は『♂』である。

 

何を言っているのかわからないという顔だな。

私とテオは夫婦だ…同性のな。

まあテオは気づいていないが(目逸らし)

 

なぜこうなったのかを簡単に説明すると、昔に私の一族とテオの一族で取り決めがあって、その内容が百年に一度それぞれの一族の子で婚姻を結ぶというもの。

 

この取り決め自体は問題ない、むしろ良いことだと思う。ただ私の代で問題が起こった…『♂』しか生まれなかったのである。

テオの方から♀を出してもらえればいいじゃないかって?

確かにそれが普通だ、話し合いをするなりすればよかったんだ。それが上の爺様婆様のプライド等のくだらないものによって当時中性的だった私が♀として育てられ、さっきの設定とともにテオと結ばれたというわけだ。

 

テオは私の設定を受け入れてくれて、体調に気を遣ってくれたりするいい夫だ。仲も良好だがぶっちゃけ罪悪感が半端ないし、夜のその…そういった行為も跳ね除けているからバレた時が怖い。

 

「よし!決まり!さっそく明日出発しよう!」

 

「…」

 

私の設定を受け入れてはくれたがやはりテオも子供が欲しいのだろう。そう思いながら嬉しそうにしているテオを見て私は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

「しゅっぱーつ!」

 

「お、お〜…」

 

一族等の親しい者たちへ挨拶を済ませて私たちは伝説のアマノシンがいるという『古惑の森』を目指して旅立った。

 

 

 

長い長い旅路。数多の種族と出会い、交流してアマノシンの情報を聞きつつ先を急いだ。

そして、約2年の旅路の果てに私たちはついに古惑の森へと辿り着いた。

 

「ここが…」

 

「ああ、古惑の森だ。ようやく着いた」

 

着いてしまった…私はそう思ってしまった。

この長い旅路、テオとともに過ごした2年はとても楽しいものだった。ずっと続けばいいのにと…そう思っていた。

 

だがとうとう着いてしまった…。

アマノシンの伝説が嘘であれば、テオは残念がるだろうがこの先も幸せに過ごしていけるだろう。

しかし、いつか必ずバレる時が来て今の幸せの日々が全てが終わる。

 

旅の途中にいつか終わる日々を考えてしまい、それを思うと胸が張り裂けそうになった。

 

アマノシンの『願いの秘薬』。

もしこれが本当に存在するのだとしたら私の願いを叶えてくれるかもしれない。

テオと添い遂げ、二人の愛の結晶を抱くことができるかもしれない。

 

そのためなら…私はなんだってやる。

 

 

 

「トウカ!おいトウカ!」

 

「えっ、テオ何?」

 

「考え事か?ぼーっとしてたぞ」

 

「うん、ごめん長旅で疲れちゃったみたい」

 

「そうか、無理するなよ。あと朗報だ!あそこを見てみろ!」

 

テオの指さす方を見ると煙が上がっているように見えた。

 

「えっ!?火事!?」

 

「いや、あれは狼煙だな。つまり、誰かいるってことだ」

 

「…私たちと同じ目的かな?」

 

「さあな、とりあえず行ってみるか!」

 

私たちが狼煙の元へと向かうと、森の中に集落を見つけた。

 

「こんなところに」

 

「おや?見ない顔ですね。旅のお方ですかな?」

 

集落の入り口にいるところへ話しかけられて、声の方を向くとそこにいたのはヤドキングと呼ばれる種族のポケモンだった。

 

「はい、オイラたちアマノシンの伝説を聞いてここに来たのですが…」

 

テオの言葉にヤドキングは一瞬驚いたような顔をしたが笑顔に戻る。

 

「そうでしたか、あなた方もアマノシン様の願いの秘薬を求めてはるばるここまで。それはさぞかしお疲れでしょう。ここから右手に向かうと宿屋があります。旅の疲れを癒していただければと思います」

 

「これはご丁寧にありがとうございます。あなたのお話から察するにアマノシンの伝説は本当のことなのですね!」

 

「…はい、本当です。このお話はまた後日させていただきますよ。お連れ様は大変お疲れのようですし、ああ申し遅れました、私この集落の長をさせていただいておりますパッチです。どうぞごゆっくり」

 

言い終わるとパッチさんは集落の奥の方へと帰っていった。しかしテオってここまで丁寧に話せるんだな…旅の途中でも思ったけど。

 

「トウカ!行こうぜ!」

 

…私に丁寧な言葉で話してっていったらどうなるかな。

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

旅の疲れをゆっくり休んだ私たちはパッチさんの元を訪れていた。

 

「ようこそ、テオさんにトウカさん、歓迎いたします」

 

「パッチさん、アマノシンのことを教えていただけませんか?」

 

「…お恥ずかしながら私を含めこの集落のものはアマノシン様のことはほぼ何も知らないのです」

 

「そんな…」

 

「テオ…」

 

私は残念そうに顔を伏せるテオを見て心が苦しくなる。

 

「ただ、アマノシン様に会う方法は知っております」

 

「「えっ?」」

 

「この森の奥のある神殿、そこに訪れたものでアマノシン様に選ばれた者はお声を聞くことができると言われています。選ばれた者には試練が与えられ、それを越えた者に秘薬が与えられると言われております。ただ…」

 

「ただ?」

 

「選ばれて試練に向かった者は皆、誰一人として帰ってくることはありませんでした」

 

「「っ!!」」

 

「それでも行かれますかな?」

 

 

 

…私たちは神殿に足を踏み入れていた。

パッチさんの忠告を聞いた上で、ここまで来て何もせずに帰ることは微塵も考えなかった。

 

「ここが…1番奥か」

 

私たちは最奥と思われる場所にたどり着いた。

大きな円形の模様の床にそれぞれ色の違う3本の柱が立っている。

 

『妾の声が聞こえるか?』

 

「「!?」」

 

どこからともなく声が聞こえて私たちは驚きのあまり声が出ない。

 

『…再度問おう、妾の声が聞こえるか?』

 

「…あなたがアマノシン様ですか?」

 

再び聞こえた声になんとかテオが返事をする。

 

『ほう、2匹とも妾の声が聞こえるか。これは珍しい、良きかな良きかな』

 

声が届いたことが嬉しいのか、アマノシンと思われる声は喜びをあらわにする。

 

『いかにも妾はアマノシンと呼ばれる存在だ。して、其方たちは何用で妾の領域に足を踏み入れた?』

 

「貴方様の『願いの秘薬』をいただきたい!その秘薬でオイラの妻の体を癒してもらいたいのです!」

 

声の正体はやはりアマノシンだった。

テオは私たちが願いの秘薬を求めていることをアマノシンへと伝える。

 

『ほう、妾の秘薬を求めるか…なるほど、其方らに秘薬を与えるのは構わんが条件がある』

 

「それは…『試練』でしょうか?」

 

『知っているのであれば話は早い。其方たちには3つの試練を越えてもらう』

 

「3つの…試練…」

 

『そこにある3つの柱、それは各試練への道標なのだ。そして試練がクリアされれば、対応する柱に灯りが灯る。全ての柱に灯りが灯る時、妾の秘薬が現れる』

 

「よぉーし!やるぞトウカ!」

 

「うん!」

 

『ふふふ、仲の良きことよ。妾からは試練のヒントを与えよう。

 

第一の試練

天聳る霊峰、全てを切り裂く白銀の閃光

 

第ニの試練

隠されし地底湖、全てを呑み込む赫き瞳

 

第三の試練

楽園の地、全てを見守る星の守護者

 

以上である。行け、勇者となり戻ってくることを期待しておるぞ』

 

「アマノシン様ありがとうございます!必ず試練をクリアして見せます。行こう!トウカ!」

 

テオに手を握られ私は、私たちは第一の試練の場所へ向かうのだった。

 

この先に何が待ち受けているかも知らずに…。

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