第二の試練をクリアした私たちは、最後の試練に挑戦するため道標の光を辿っていた。
「…次で最後か」
「うん、そうだね」
真剣な顔つきで話すテオだが、その頬は私の手形で赤く腫れている。
「全部終わったら、あの集落で暮らすのも悪くないんじゃないか?」
「そうだね、自然豊かで子供の成長に良さそう。それにアマノシン様にはお世話になったし恩返ししたいな」
「!?」
「テオ?どうしたの?」
「…いや、トウカが子供のことを話したことに驚いただけ…。ほら、最初の告白の時から避けて来たじゃん」
「あっ…」
不覚…。
願いの成就が見えて来て、気が緩んでしまっていたのか私は口を滑らした。
「悪いことじゃないよ!むしろオイラは嬉しいよ!トウカが子供を諦めないでくれて!右腕を失った甲斐がある!」
「それほんとやめて」
私はテオのあまりの言葉に真顔で非難する。
「うっ、ごめん」
いい雰囲気だったのがテオの失言で台無しだ…。
まぁ…。
「まぁでも、あの集落で暮らすのは賛成かな。終わったらアマノシン様にも相談してみる?」
「うん!」
それから数日をかけて、私たちは森に囲まれた草原へと辿り着いた。
「ほわぁ〜、ポカポカして気持ちがいいなぁ〜」
「確かになんだか落ち着く」
草原は暖かな太陽の光と草花の匂いに満ちておりとてものどかでリラックスできる環境が整っていた。
綺麗な川も流れていて、水生ポケモンたちが優雅に泳ぎ、他ポケモンには水飲み場として利用されている。
「まさに楽園だな」
「そうね…」
「!!、トウカ!あれを見て!」
テオが急に指差した方を見るように言う。
テオの指先にはとても綺麗なポケモンがお昼寝をしていた。
「あれは?」
「スイクン!伝説のポケモンだよ!」
「あれがスイクン…綺麗」
スイクンに魅了されていると頭上を何かが通ったのを感じた。
「あれはラティオスにラティアス!すごい!」
テオは伝説と呼ばれる珍しいポケモンたちにものすごく興奮している。
他にもいないかとテオは周りを必死に見回す。
「!!、あれはテラキオンにビリジオン!あっちに飛んでいるのはサンダー!ここは天国か!!」
テオ、暴走状態。
大きな声を出しているが、ポケモンたちは気にしていないようなのが救いだ。
「伝説と呼ばれるポケモンたちが集まるほどの過ごしやすさってことね。さすが楽園の地と呼ばれるだけはあるわね」
でも、私たちの目的は…。
「テオ!忘れたの?私たちの目的は」
「ああ、ごめん。つい興奮してしまって…」
「はぁ、行くわよ。まだ道標は先を示しているし」
「おう!」
私たちは楽園の地のさらに奥へと進む。
奥に進むにつれて、あれだけいたポケモンたちの数がどんどん少なくなっているように感じた。
しばらくするとあたりには1匹もポケモンを見なくなった。
私たちにも緊張感が生まれる。
注意しながら先へと進むと地面がやけに凸凹している広場へと辿り着いた。
「なんだ?あれ?」
「道標が…途切れている?」
道標が途切れているのを見て私たちは困惑する。
だが、その困惑は長くは続かなかった。
ヒュー
「「?」」
謎の音に私たちは顔を見合わせる。
頭上が急に暗くなる。
「「えっ?」」
2人同時に上を見て固まる。
仲良いな私たち。
そんなこと思ってる場合じゃない!!
私たちの頭上に降り注ぐのは巨大な岩、俗に言う隕石である。
それも…1つや2つではなく複数。
りゅうせいぐん
「うわぁぁぁ!」
「キャァァァ!」
私たちは降り注ぐりゅうせいぐんから逃げ惑い、なんとか命からがら森の方へ逃げ延びることができた。
「あそこら辺が凸凹なわけがわかったね…」
「トウカ…あれを見て」
「うん?」
テオが太陽の方に指を差す。
道標の光が太陽の方へと伸びている。
そしてその太陽の中心に黒い点のようなものが見えた。
「あれは…」
「高すぎてよく見えないけど、たぶんメテノっていうポケモンだよ」
「メテノ?」
「うん、ただメテノはりゅうせいぐんを使えないはずなんだよなぁ」
「…」
番人のポケモンはみんなおかしいんだね…。
「どうするの?あのりゅうせいぐんを掻い潜って、メテノにダメージを与える方法はある?」
「届くかはわからないけど試す価値はあると思う」
「聞かせて」
「うん、それは…」
「行くよ!トウカ!」
「うん!テオ、しっかりね」
私たちは同時に森から飛び出す。
その瞬間にも空からりゅうせいぐんが降り注ぐ。
ずっとりゅうせいぐんを落とし続けるってチートすぎぃっ!
かえんほうしゃ
私は精一杯の炎をりゅうせいぐんへ向けて放つ。
作戦としては私のかえんほうしゃでりゅうせいぐんを相殺、その間にテオはメテノの真下から必殺の一撃を放つというもの。
テオの技がメテノのまで届かなければ成立しないが、まあテオならなんとかするだろう。
さて、私のかえんほうしゃでりゅうせいぐんを迎え撃ったが、相殺するどころか普通にかえんほうしゃをかき消して来た。
「えっ!?キャァァァ!!」
私の周囲にりゅうせいぐんが降り注ぐ。
「トウカァ!ぐわぁぁぁ!!」
それはもちろんテオにも。
弱い。
私は弱い。
私の力ではテオの手助けもできない。
そんな私がテオの隣にいていいのか。
いや、弱い以前の問題もある。
そもそもテオを私は騙している。
私はテオの隣にふさわしくない。
私はテオと一緒にいてはいけない。
でも…
「トウカ!」
私の名を呼んで笑ってくれているテオの隣に私はいたい。
この試練をクリアして願いの秘薬を手に入れたら、全てを話そう。
それで拒絶されても受け入れよう。
それがテオのための、私のための、私の覚悟!
オイラは見た、倒れ伏すトウカの体が変化し始めるのを。
そのまま起き上がり始めるのを。
あれは進化ではない…と思う。
何かはわからないけど、でもトウカのためになる変化だと直感する。
「行けぇぇ!トウカァァァ!!」
ひゃっきやこう
トウカから無数の紫の人魂が現れ、その一つ一つがりゅうせいぐんを砕いていく。
「ハァァァァ!!」
トウカが叫びながら、りゅうせいぐんを相殺し続ける。
「テオォォォ!撃ってぇぇぇ!!」
「!!」
テオは立ち上がり、大きな口を太陽へメテノへ向け開ける。
ハイドロカノン
テオから放たれた水の砲弾は、番人へと直撃した。
番人が落下してくると同時にりゅうせいぐんも止む。
「お、終わったぁ」
私は安心のあまり倒れ込む。
「トウカ!」
そんな私を受け止めて抱き寄せるテオ。
「よく頑張ったなトウカ!」
「…うん」
私は疲労から目を細めて瞑ろうとする。
あれ?落下した番人が…いない?
「ぐあぁぁぁ!」
テオの叫びで私は覚醒する。
テオの背中には無数の石が突き刺さっていた。
「テオ!?」
バッと前を見るとピンクのボールのような存在が浮いていた。
「ぐぅぅ、メテノの特性のリミットシールド…忘れてたよ」
「テオ、喋っちゃダメ」
キッとメテノを睨みつける。
「私の夫に手を出すなぁぁぁ!!」
れんごく
私から放たれた獄炎によってメテノは焼き尽くされた。
「…ハハハ、オイラもアブソルの時に同じようなこと叫んだっけ」
嬉しいな…。
愛の力は…やっぱ強いんだな。
オイラはそう思いながら気を失った。