天使と悪魔は鬼を狩る 作:もく
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目を開けた瞬間、違和感が全身を駆け巡った。
ここは、見慣れた天界ではない。
古びた木造の天井。隙間風の吹き込む壁。埃っぽい空気の奥に、鼻を刺すような――血の匂い。
ゆっくりと身を起こし、周囲を見渡す。
すぐそばで、同じように目を覚ましたばかりの子供が三人いた。
年の頃は、十歳前後だろうか。
白髪の少年、黒髪の少年、青髪の少女、赤髪の少年
幼い姿だが、その顔ぶれに見覚えがないはずがなかった。
――何度も世界を渡り、共に生き抜いてきた仲間たち。
僕たち4人は、天使と悪魔だ。
「……やっぱり、またか」
胸の内で小さく息を吐く。
どうやら今回も、創作の神の“いたずら”に巻き込まれてしまったらしい。
この神のいたずらは、神になるための試練と称されている。
天使と悪魔が、様々な物語から分岐した世界へと送り込まれ、人の運命を変える経験を積む――そう説明されているが、実態は気まぐれなゲームに過ぎない。
僕たちは、これまでにも幾度となく呼び出され、
人々を救い、時に救えず、それでもその1つ1つの世界を生きてきた。
互いの性格は知り尽くしている。
衝突することもあったが、それ以上に、信頼で結ばれた関係だ。
白髪の僕は天使で、自然とまとめ役になることが多い。
黒髪の悪魔は冷静沈着で、状況判断に長けている。
青髪の天使は優しく理性的。
赤髪の悪魔は明るく、楽しさを優先するムードメーカー。
――いつもの4人だ。
そのとき、頭の奥に直接声が響いた。
『起きた? それじゃ、今回も始めるよ〜』
来たな、と内心で苦笑する。
天界に招集される前触れもなく、こうして直接送り込まれるのは珍しい。
『今回君たちに頑張ってもらうのは【鬼滅の刃の世界で人々の運命を変えること】だよ!
原作については、世界観以外の記憶は消してあるからね。
君たちの能力はなし、身体能力もこの世界の人間の範囲まで。まあ、上手くやってよ』
一息置いて、神は続けた。
『あ、それから名前。
白髪の天使君は、天野
黒髪の悪魔君は、黒羽
青髪の天使ちゃんは、神野葵。
赤髪の悪魔君は、神野煉』
名前自体は、どこか懐かしい。
これまで旅した世界でも、何度か使ってきたものだ。
『設定としては、君たちは鬼に家族を殺された孤児。そろそろ鬼殺隊の人が来るから、準備しといてね〜』
軽い調子で言い残し、声は消えた。
部屋に、静寂が戻る。
僕たちは顔を見合わせ、同時にため息をついた。
「……また巻き込まれたな、照」
月詠が肩をすくめる。
「そんなこと言いつつ楽しそうだよね。今回は原作知識はなしね…珍しいパターンだね」
「私は…関わる人には、できるだけ生きてほしいな。記憶がどうであれ私たちがやることは今までと変わらないよ」
葵が、静かに言った。
「運命を変えるなら、犠牲を減らす方向でいきたい」
「ま、俺もそれでいいぜ!」
煉が笑って頷く。
四人の視線が交わり、自然と意思は揃った。
天使か悪魔かなんて関係ない。
これまでと同じ――同じ目標に向かうだけだ。
「じゃあ、とりあえず外に出よう。鬼殺隊の人が来るみたいだし。情報を集めて、強くなって……鬼を倒す」
そう告げた瞬間、遠くで足音がした。
血の匂いが、より濃くなる。
こうして僕たちは、『鬼滅の刃』の世界へと、確かに足を踏み入れた。
雪の匂いが漂う村の外。
冷たい風が頬を刺し、地に染み込んだ血の気配が鼻をつく。
村は、無残だった。
家屋は破壊され、地面には乾ききらない血痕。
鬼の姿はない――襲撃の後だ。
「……ひどい」
設定だと分かっていても、胸が痛む。
この世界の空気が、作り物の悲しみを現実に変えていく。
そのとき、木々の間から一人の剣士が姿を現した。
赫灼の瞳。
長く束ねた髪。
耳には日輪の耳飾り。
穏やかな佇まいの奥に、圧倒的な威圧感を宿した男。
「子供たちか。鬼の襲撃に遭ったのか。……家族は?」
僕は一歩前に出る。
「はい。鬼に殺されました。隠れていた僕たちだけが、生き残りました」
一瞬、言葉を区切る。
「……鬼を倒したいんです。復讐じゃなくて…誰もこんな目に遭わせたくないから」
男の目が、わずかに細まった。
「俺たちも同じだ」
月詠が続く。
「鬼を倒す方法を、教えてほしい」
「お願いします。みんなを守れるように、強くなりたいんです」
葵が頭を下げる。
「俺からも頼む!絶対無駄にしねえから!」
煉が勢いよく言う。
しばらくの沈黙の後、剣士は静かに頷いた。
「……分かった。私は鬼殺隊という組織に所属している、継国縁壱という。鬼の倒し方、戦い方――すべて教えよう」
こうして僕たちは、縁壱さんに引き取られ、鬼殺隊の拠点へと向かうことになった。
道中、縁壱さんは淡々と語る。
鬼の始祖、鬼舞辻無惨。
血によって変貌した存在。
再生力、血鬼術、そして――首を斬らねば倒せないこと。
「……鬼に自我はあるのか?」
煉の問いに、縁壱さんは一瞬だけ目を伏せた。
「ある。だが、人を殺すことに躊躇はない。元は人間だった者たちだ。……お前たちに、それを斬る覚悟はあるか?」
「あるよ」
僕は即答した。
「一人でも多くを救う。そのためなら、なんだってする」
縁壱さんは、幼い僕たちを見下ろし、複雑な表情を浮かべる。
「……そうか」
その静かな声が、この長い物語の始まりだった。
今後の投稿について
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全部時系列順に書く
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一気に原作開始まで飛ばす
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ある程度は時系列順、必要なときに回想