天使と悪魔は鬼を狩る   作:もく 

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やはり原作開始は早すぎましたね
でもここから時系列順だと原作開始までかなりかかりそうです
引き続き応援よろしくお願いします
またいつも読んでくださりありがとうございます


15話 煉獄家

実弥たちの最終選別が終わった直後

煉は槇寿郎に呼ばれ煉獄家を訪れていた

 

襖を開けた瞬間だった

 

 

「どうし……がっ!」

 

 

喉に強い衝撃

槇寿郎の手が煉の首を掴み上げていた

 

 

「父上!何をしているのですか!」

 

 

杏寿郎が駆け寄る

 

 

「黙れ!」

 

 

槇寿郎は煉を壁へと投げつけた

畳を滑る衝撃

それでも煉は睨み返す

 

 

「んだよ、クソジジイ……!」

 

 

槇寿郎の目は怒りというより、焦燥と混乱に濁っていた

 

 

「お前は知っていたんだろ!」

 

 

低く、震える声

 

 

「日の呼吸のことを……!俺たち炎の呼吸が、元を辿れば派生だということを……!」

 

 

一歩踏み出す

 

 

「俺たちを……バカにしていたんだな!」

 

 

拳が振り下ろされる

煉は受けきれず、頬を打たれ、腹を打たれ、何発も畳に沈む

 

 

「バカになんてしてねえ!話を聞けよ!」

 

 

「うるさい!」

 

 

さらに拳が入る

怒りというより――

“自分が積み上げてきたものが揺らいだ恐怖”の拳だった

 

 

煉は歯を食いしばる

そして

 

 

「聞けっつってんだろうが!」

 

 

初めて反撃した

槇寿郎の胸倉を掴み、突き飛ばす

槇寿郎が畳に崩れ落ちた

 

 

荒い息、静まり返る部屋

煉は肩で息をしながら、言葉を吐き出した

 

 

「日の呼吸は、俺たちを拾った隊士が使っていたものだ」

 

 

槇寿郎は動けない

怒鳴り返すこともできない

煉の声は震えていたが、目は逸らさなかった

 

 

「あの人は、頭がおかしいくらい強かった。初めて呼吸を覚えた人間だった」

 

 

「……だが」

 

 

拳を握る

 

 

「そいつは気付いていた。自分だけの力じゃ鬼は倒せないって」

 

 

喉が軋む

 

 

「現に……そいつは無惨に勝てなかった」

 

 

その事実は、煉自身の胸にも刺さる

 

 

「だから、それを知ってたからそいつは、当時の隊士に呼吸を教えたんだ!それぞれに適した形に変えて……!」

 

 

一歩、踏み出す

 

 

「その意味が分かるかよ!」

 

 

「……」

 

 

槇寿郎は、何も言えない

煉の声が震える

 

 

「あんたら鬼殺隊の力で!全員の力で無惨を倒そうとした……縁壱さんの気持ちが分かんのかよ!」

 

 

杏寿郎が息を呑む

煉は止まらない

 

 

「ちゃんと続き読んでねえだろ……!その代の炎柱は、俺の師匠は……!」

 

 

声が掠れる

 

 

「縁壱さんが勝てなかった無惨を倒すために、縁壱さんに習った炎の呼吸を、ちゃんと後世に継ごうとしてたんだ!」

 

 

拳を握りしめる

 

 

「あんたは勝手に解釈して、絶望して……踏み躙ろうとしてんだよ!」

 

 

沈黙

重い、長い沈黙

杏寿郎が小さく呟く

 

 

「煉……」

 

 

煉は槇寿郎を見下ろした

怒りはまだある

だが、それ以上に、悔しさが滲んでいた

 

 

「いいか。あんたが何を思うかなんてどうでもいい」

 

 

静かに、しかし強く

 

 

「でもな……今まで継がれてきた呼吸は全部、無惨を倒すために繋がってんだよ」

 

 

「そのために煉獄家は炎の呼吸を継いできたんじゃねえのか!」

 

 

槇寿郎の指が、畳を握る

 

 

「くっ……」

 

 

嗚咽にも似た息

煉は背を向けた

 

 

「繋いだ力は、絶対に無惨を倒す」

 

 

襖へと向かう

一度だけ振り返った

 

 

「……明日また来ます」

 

 

声はもう荒れていなかった

 

 

「じっくり考えて、また明日俺を殴るか決めてください」

 

 

静かに襖が閉まる

部屋に残ったのは、崩れた男と

炎を継ぐという意味だけだった

 

 

 

 

 

翌日

再び煉は煉獄家を訪れた

 

 

庭先から聞こえる声

 

 

「杏寿郎、そこは違う。もっと腰を落とせ」

 

 

槇寿郎が杏寿郎に炎の呼吸を教えていた

昨日のような逃げる姿ではない

 

 

煉は足を止める

その光景を、少しだけ遠くから見つめた

 

――戻った

 

そう確信した瞬間だった

屋敷の奥から声がする

 

 

「煉さん」

 

 

煉は振り向いた

 

 

「どうしたんですか、瑠火さん」

 

 

部屋に入ると床に伏せる瑠火が微笑んでいた

顔色は白く、呼吸は浅い

 

 

「主人は……今日は話す気になれないと言っていました。身勝手な主人で申し訳ございません」

 

 

「いえ……」

 

 

煉は首を振る

瑠火は静かに目を伏せた

 

 

「二年近くも主人について行ってくださったのに、あんなことになってしまって……原因は、私にもあります」

 

 

その声音に、責める色はない

ただ、家族を想う母の声だった

 

 

「煉さん……私は、もうじき死ぬでしょう」

 

 

穏やかな断言

 

 

「この体は、今も病に侵されています」

 

 

一瞬の沈黙

 

 

「身勝手なお願いをして申し訳ございませんが……私の死後、主人を、杏寿郎と千寿郎をお願いしてもよろしいでしょうか」

 

 

部屋に、風の音だけが流れる

煉は目を閉じた

そして、ゆっくりと口を開く

 

 

「……ここからの話は、他言無用でお願いします」

 

 

真剣な声

いつもの明るい彼とは対照的だった

 

 

「杏寿郎にも、槇寿郎さんにも言わないと誓ってください」

 

 

瑠火は、静かに頷いた

 

 

「あなたの病は……数十年後に治療法が確立されます」

 

 

その言葉に、瑠火の目がわずかに揺れる

 

 

「ですが、あなたは間に合わない」

 

 

事実だけを告げる声音

 

 

「俺は……俺たちは、この世界の人間ではありません」

 

 

そして静かな告白

 

 

「なんなら、人間ですらない。人が崇める側の存在です」

 

 

神々しさはない

ただ、真実を置くような口調

 

 

「俺たちなら、あなたを救えます」

 

 

一歩、踏み出す

 

 

「生きて、杏寿郎たちを見守ってくれませんか」

 

 

長い沈黙

瑠火は、ゆっくりと息を吐いた

そして、微笑む

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

恐れはなかった

ただ、母としての願いがあった

 

 

 

 

煉は煉獄家を後にした

向かった先は、葵の住む屋敷

 

 

「葵〜」

 

 

縁側で薬草を干していた葵が顔を上げる

 

 

「あれ、煉じゃん。どうしたの?」

 

 

「実はな……」

 

 

事情をかいつまんで話す

 

 

「……ってことで、結核の薬が欲しいんだ」

 

 

葵は腕を組む

 

 

「ほうほう……あるよ、結核の薬」

 

 

「マジかよ!」

 

 

目を見開く煉

葵は少しだけ視線を逸らした

 

 

「もう“病で救えない”なんて嫌だからね」

 

 

その声は、軽いようで重い

煉は一瞬だけ理解する

 

 

「……そうか。照の……」

 

 

葵は遮るように笑った

 

 

「ま、持ってって!しばらくかかるけど絶対に治るよ!」

 

 

「……ありがとな」

 

 

素直な声

 

 

「今度たくさんお菓子買ってよね!」

 

 

「おう!」

 

 

そして笑い合う

そのやり取りは、未来を変えるための小さな約束だった

 

 

 

 

その日を境に煉獄家は少しずつ変わっていく

 

 

炎は絶えず継がれ続ける

 

 

絶望ではなく、継承のために燃え続ける炎へ

 

 

そしてまた未来は静かに書き換えられた

 

 

今後の投稿について

  • 全部時系列順に書く
  • 一気に原作開始まで飛ばす
  • ある程度は時系列順、必要なときに回想
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