天使と悪魔は鬼を狩る   作:もく 

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5話 天使の目覚め

目を開けた瞬間、最初に感じたのは――音だった。

 

遠くで、風が木々を揺らす音。

どこかで、鳥が鳴いている。

 

……生きている世界の音だ。

 

次に、瞼の裏に差し込む、柔らかな光。

眩しさに思わず目を細める。

 

「……」

 

声を出そうとして、喉がうまく動かない。

身体は重く、指先に感覚が戻るまで少し時間がかかった。

 

ゆっくりと、深く息を吸う。

 

――空気が、違う。

 

血と鉄と死の匂いが当たり前だった、あの時代とはまるで違う。

澄んでいて、静かで、どこか穏やかだ。

 

「……ここは……」

 

掠れた声が、自分の耳に返ってくる。

 

そのときだった。

 

「派手に目覚めると思ったが、ずいぶん地味だな」

 

低く、張りのある声。

 

視線を向けると、少し離れた場所に一人の男が立っていた。

背が高く、がっしりとした体躯。

額には宝石のような飾り、派手な装飾の施された隊服。

 

――知らない顔だ。

 

だが、その存在感だけで分かる。

 

(……鬼殺隊の剣士だ)

 

「安心しな。ここはお館様の屋敷だ」

 

男は腕を組み、こちらを値踏みするように見下ろしている。

 

「俺は宇髄天元。今はお前らの“見張り役”ってところだ。

……つっても、今日たまたまこの仕事が回ってきただけだがな」

 

……お前ら?

 

その言葉に、意識が一気に冴えた。

 

「……他の、三人は……」

 

喉が鳴り、ようやく言葉になる。

 

宇髄は顎で、部屋の奥を示した。

 

「まだ寝てる。全員な。

お前が一番最初だ、白髪」

 

視線を動かすと、少し離れた場所に並ぶ寝台が見えた。

そこに横たわる、見慣れた三つの影。

 

月詠。

葵。

煉。

 

胸の奥に、じんわりとした熱が広がる。

 

(……戻ってこれた)

 

生きている。

四人とも。

 

「……どれくらい、眠ってたんですか」

 

そう尋ねると、宇髄は一瞬だけ言葉を切った。

 

「……さてな。

少なくとも、俺が生まれる前だ」

 

その一言で、すべてを察した。

 

(……相当、未来だ)

 

縁壱さんの顔が、脳裏をよぎる。

珠世さんの声。

眠りにつく前の、あの静かな覚悟。

 

「……そう、ですか」

 

宇髄は、ふっと鼻で笑った。

 

「驚かねえんだな。

もっと『ここはどこだ!』とか『無惨は!?』とか騒ぐかと思ったぜ」

 

「……状況は、あとで聞きます」

 

ゆっくりと身体を起こす。

まだ少しふらつくが、立てないほどではない。

 

「まずは……仲間の無事を確認したい」

 

その言葉に、宇髄は目を細めた。

 

「なるほど。

派手じゃねえが……悪くない目だ」

 

そして、くるりと背を向ける。

 

「お館様には、もう伝えてある。

他の連中が起きるまで、俺がここにいる」

 

一歩、縁側へ向かいながら、振り返る。

 

「歓迎するぜ、ずいぶん昔の時代から来た剣士さん」

 

外に出るとちょうど日の出だった

 

止まっていた歯車が――

今、確かに回り始めた。

 




この話では宇髄天元は原作より3年早く産まれていて早めに産屋敷耀哉に出会い入隊しています

今後の投稿について

  • 全部時系列順に書く
  • 一気に原作開始まで飛ばす
  • ある程度は時系列順、必要なときに回想
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