天使と悪魔は鬼を狩る   作:もく 

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6話 天使と悪魔と産屋敷耀哉

照が目を覚ましてから、数日ほど時間が流れた。

 

部屋の空気に、わずかな変化が生まれる。

 

最初に反応を見せたのは――月詠だった。

 

微かに眉が動き、呼吸が深くなる。

やがて、ゆっくりと瞼が持ち上がった。

 

「……」

 

視線が天井を捉え、数拍遅れて現実を理解する。

 

「……照……?」

 

低く、掠れた声。

 

「起きてるよ」

 

そう答えると、月詠は小さく息を吐いた。

いつもの無表情だが、どこか力が抜けている。

 

「……生きてる、な」

 

「ああ」

 

それだけで、十分だった。

 

少し遅れて、隣の寝台からかすかな音がする。

 

「……う、ん……?」

 

葵だった。

 

寝返りを打つように身体を動かし、ゆっくりと目を開ける。

 

「……ここ……?」

 

状況を把握しようとするその目が、照と月詠を捉えた瞬間、少しだけ大きくなる。

 

「……二人とも……?」

 

「大丈夫だ、葵」

 

月詠がそう言うと、葵は小さく頷いた。

 

「……よかった……」

 

胸に手を当て、安堵するように息を整える。

 

最後に――

 

「……はは……」

 

小さな笑い声。

 

煉だった。

 

「目、覚めたら……知らねえ天井。

こりゃまた、派手に時代を飛んだもんだな」

 

ゆっくりと上体を起こし、周囲を見回す。

 

「全員……いるな」

 

「ああ」

 

四人が揃った、その瞬間。

 

長い眠りが、確かに終わったのだと実感した。

 


 

しばらくして、襖の向こうから静かな足音がした。

 

「入ってもいいかな」

 

柔らかく、落ち着いた声。

 

宇髄が応じる前に、襖が静かに開かれる。

 

そこに立っていたのは――

年若い少年だった。

 

白い髪。

病的なまでに細い身体。

だが、その目は、驚くほど澄んでいる。

 

(……お館様?)

 

直感的に、そう思った。

 

少年は、四人を見て微笑む。

 

「初めまして。産屋敷耀哉です」

 

その声に、場の空気が一段、引き締まった。

 

年齢は、どう見ても子どもだ。

それでも、この場を統べる“当主”だと、誰もが理解した。

 

四人が揃って頭を下げようとした、その時。

 

「そんなに畏まらなくていいよ」

 

耀哉は、少し困ったように笑った。

 

「今日は……お願いがあって来たんだ」

 

そう言って、少しだけ言葉を選ぶように間を置く。

 

「少し、我儘を聞いてもらってもいいかな?」

 

四人の視線が集まる。

 

「身分上、どうしても“対等”でいてくれる人がいなくてね」

 

どこか寂しそうな声音。

 

「上手く“友達”と呼べるような関係の子が、いないんだ」

 

照は、はっとした。

 

(……この人も、孤独なんだ)

 

「君たちは、少し若返っているらしいね」

 

耀哉は、そう言って僕たちを見渡した。

 

「見た目は幼いけれど……話していると、不思議と同じ歳のように感じるんだ」

 

——確かに、身体は子どもだ。

眠りにつく前より、明らかに幼くなっている。

 

けれど、僕たちの中身は違う。

戦国で過ごしたことになっている15年と、

そして――400年という“空白”を抱えたまま、ここにいる

 

「だから……友達のように、接してほしいんだ」

 

一瞬、静寂が落ちた。

 

最初に反応したのは、煉だった。

 

「……友達?」

 

「ああ」

 

「当主様とか、そういうの抜きで?」

 

「うん」

 

煉は、少し考えてから、豪快に笑った。

 

「いいじゃねえか!よろしくな、耀哉!」

 

その言葉に、耀哉は目を丸くし――

すぐに、嬉しそうに微笑んだ。

 

「……ありがとう」

 

葵も、少し戸惑いながら口を開く。

 

「……私でよければ」

 

月詠は、少しだけ視線を逸らし、短く言った。

 

「……構わない」

 

そして、照は小さく頷いた。

 

「こちらこそ、よろしく……耀哉」

 

その呼び方に、耀哉は満足そうに微笑む。

 

過去から来た剣士たちと、

未来を背負う当主。

 

新しい時間が、静かに動き出していく。

 

今後の投稿について

  • 全部時系列順に書く
  • 一気に原作開始まで飛ばす
  • ある程度は時系列順、必要なときに回想
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