個性。
それが人の性格などを表していたのは過去の時代。
人々が『異能』と呼ばれる力に目覚め始めた超常黎明期。病として排斥される異能者………その母が言う。これはこの子の『個性』だと。
増え続ける異能者。既存の法律が意味をなさない超常犯罪。対処するのも、当然異能。
自警団として立ち上がった異能者達が欲望のままに力を振るう異能者から民を守り、国々は最早認めるしか無かった。
無能者と異能者の数は逆転し、異能は個性と名前を変え世界に受け入れられた。
自警団は国から個性使用の認可を得た職業となり、人々は彼等をヒーローと呼んだ。
そんなヒーローになる為の資格を得るために存在する学校。その中でも特に人気な雄英高校。
現No.1ヒーロー『オールマイト』の母校であり、毎年倍率三百倍の狭き門をくぐり入学する生徒達は卒業後トップヒーローになる事が多い。
そんな狭き門に挑む、彼もそんな一人。
「なんで俺が一般入試なんだよ」
『まあ、色々あってね。オールマイトに悟られたくはないだろ?』
「そりゃまあ、そうだが………」
『君は君の仕事をこなせばいい』
「了解、せんせー」
ピッと通話を切り舌打ちしながらケータイをポケットに突っ込む。
「先輩の為にも頑張りますよ、と………」
『今日は俺のライブにようこそー! エビバディセイヘイ!!』
ボイスヒーロー『プレゼントマイク』。ラジオにも出演するDJのようなテンションの高いヒーロー。しかし誰も返答しない。
特に気にせず説明を続ける。
これより受験生は模擬市街地に向かい十分間演習を行う。
演習場に配置された3種の仮想
『俺からは以上だ! 最後にリスナーには我が校の《校訓》をプレゼントしよう! かの英雄ナポレオンは言った! 「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」!』
『
本当に市街地が用意されている。ちょっとした街が、複数。雄英には確かコンクリートを操る個性持ちのヒーローも教師として在籍しており、建てやすくはあるのだろうが……。
『はいスタート』
と、不意に聞こえた声に誰もが困惑する。実戦じゃカウントなど無いのだと叫ばれ漸く動き出す。
『標的捕捉! ブッ殺ス!』
コンクリートの壁をぶち抜き現れたのは2ポイントヴィラン。サソリのような見た目で尾から攻撃を放とうとして、手を向けた瞬間に固まる。そのまま背後から迫る1ポイントヴィランに攻撃を放った。
『殲滅殲滅!』
『ヤッテヤラア!!』
なんだってこんな台詞をインプットされているのかと疑問に思いつつも軽く腕を振るう。仮想ヴィラン達は即座に仲間割れを始めた。
「機械操作の個性か!?」
「まじかよ、有利じゃん!」
「ヴィラン壊せ! どのみちポイントだ!」
雄英に受験するだけあり自信を持つには十分な個性。成る程、単純な動きの機械程度なら軽く破壊するだろう。だが、今ロボットを操っているのは遥か格上。
「当たらねえ!?」
「操られてないのより強くね!?」
反撃は…………妨害行為に取られる可能性がある。仕方ないので彼等は放置し移動する。
仮想ヴィラン達が一斉に自爆した。これでポイントは全て独り占め。
クソ、と舌打ちして他の仮想ヴィランを探しに向かう受験者達を尻目に、響く轟音に振り返る。
ビルの屋上を掴み砕き現れた超巨大ロボ。0ポイントヴィラン。
市街地で暴れるギミックとは言っていたが、馬鹿みたいにでかい。街一つ簡単に破壊してしまいそうな、怪獣映画で見るようなロボットだ。
「やべえやべえ!」
「無理だろこんなの!」
「逃げろおお!」
「高校の受験じゃねえ!」
大慌てで蜘蛛の子を散らすように逃げる受験生。仮にもヒーローとしての資質を見る試験でそれはどうなんだと思いつつも、まあ評価総取りできそうだから良いや。
『踏ミ潰シタラア虫螻ガア!』
「そうか………ならこっちは、虫を握り潰すとしよう」
仮想ヴィラン達が破壊されたもの、起動しているもの問わずに浮き上がり、圧し曲がる。
形作られたのは巨大な鉄の手。
「彼奴、ロボットを操ってたんじゃなくて金属操作!?」
「だとしても、なんだあの規模!!」
宣言通り0ポイントヴィランを握り込むほど巨大な手を作るほどの操作質量。掴まれた0ポイントヴィランはメキメキと音を立て握り潰された。
『終了〜〜〜!!』
「ん………ああ、終わりか」
鋼鉄の手が崩れ落ちる。特に疲れた様子も気負った様子もなく欠伸しながら模擬市街地から出ていった。
「…………俺、何も出来なかった」
「俺もだよ………」
稲妻カムイ、雄英高校首席合格。
「撃破ポイント90に、実はさりげなく助けてたレスキューポイントで34点。合計で100超えなんて珍しいね!」
「申告された個性は雷系統らしいですが………応用にしても此奴は随分と……」
「出来る事を最善にやっている。合理的ですよこいつは」
「しかし底が知れないな。どう見ても本気出してないだろ此奴」
「ヒーローは何事にも全力で挑むべきだけど、必要以上に力が入るのもNGよね」
「試験が余裕ってことになるけど。なぜ推薦枠ではないのだ?」
「推薦する知り合いが居なかったんでしょう。そのあたりの繋がりも必要ですからね」
一応個性訓練を行った記録はある。強力な個性故に訓練は必須、かつ場も必要でそういった施設を利用していたらしい。
訓練結果は個人情報で見れないが、あれだけの個性なら監督はプロヒーローか研究者が関わりそうなものだが推薦はしてくれなかったようだ。
「俺が見ましょう。あれだけ大規模な個性は、俺が見たほうがいい」