個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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体育祭終了

 プロヒーロー兼雄英講師セメントス。個性はセメント。セメントを操るコンクリートジャングルでは無類の強さを発揮するヒーロー!

 

 しかし電熱で溶けたコンクリートは操れないのでステージの修繕に時間がかかった。

 そして準決勝2回戦目は黒影(ダークシャドウ)の弱点が光であることを見抜いた爆豪の爆炎による光で弱体化した黒影(ダークシャドウ)。そのまま本体を押さえつけた。

 

 常闇が敗北宣言して爆豪が決勝進出。

 

「よお、さっきの力はなんだよ………」

「半獣化………って呼んでるな」

 

 半獣………半………つまりはまだ先がある。あれ以上がある事に戦慄しながらも獰猛な笑みを浮かべる爆豪。自分でもそれが高揚ではなく強がりであると自覚しながらも、それでも爆豪勝己は逃げない。

 

「なら使えやぁ! そんでテメェをぶっ殺して、俺が名実ともに1位になってやる!!」

「使わねえよ。使うまでもねえ」

「舐めプか!?」

「ただの事実だ」

 

 プレゼント・マイクの合図と共に青筋を浮かべた爆豪が迫る。少し意識を集中したカムイからすれば止まっているような速度。適当に雷撃を………。

 

「────!」

 

 ドォン! と爆音を立て爆豪の真横に落ちる雷。石畳が熔け、爆発的に膨張した空気が爆豪を吹き飛ばす。

 

(威力が想定より高い………完全じゃねえとは言え久々の全身獣化で弁がバグったか)

 

 だから定期的に発散させろって言ってたんだが。

 

「──────────!」

「………………」

 

 加速した思考に置いていかれた世界。間延びして聞こえる爆豪の声は、多分何考え事してやがる、だろう。

 

 伸ばされた手を避け掴み投げる。爆豪からすれば一瞬の出来事でありながら反応し爆破でバランスを整え回転しながら蹴りを放つ。

 

 腕で受け、追撃に手を伸ばせば爆破で後方に飛んでいた。追いついて腹を押す。

 

「ぐっ!?」

 

 時間感覚を元に戻す。

 想定以上の速度で後ろに飛んでしまった爆豪が慌てて反対方向に爆破し勢いを殺す。

 

 今ので場外を決められると思っていたが、中々どうしてセンスの塊。

 『世代』が違えばもっと遊べたかもしれない。

 それか個性訓練をそれこそ幼少期から行っていたなら少しは楽しめたかもしれない。残念だ。

 

 流石に個性を殆ど使わず勝つ、なんてことをすれば爆豪の評価にも影響が出るだろう。八百万? 彼女の個性は文字通り無限の可能性が有るのはプロなら分かるだろう。

 

「余計な考えごとしてんじゃねえ!!」

 

 と、爆豪は爆破を利用し空高く浮かび上がる。自身を浮かせるほどの爆発、それでいて自分にダメージがないように調整。バランス感覚、筋力……総合的な才能ならやはり彼がA組で1番自分に近い。

 

「使えや! 雷!!」

 

 そう叫びながら爆破で回転していく爆豪。汗が爆薬になる都合、戦いが長引けば長引くほど、個性を使用すればするほど体は温まり火力は増していく。

 

 パチチとカムイは掌に電気を弾けさせる。

 

榴弾砲(ハウザー)──着弾(インパクト)!」

雷哮(らいこう)

 

 勢いと回転を乗せた爆豪の極大爆破。対するカムイは空気を熱し膨張させる。

 瞬間的に三万度に達した空気は雷鳴を響かせながら膨張し、同時に冷えるも衝撃だけは消えず爆豪の爆破を掻き消し爆豪を吹き飛ばした。

 

「………くそ、がぁ…………!」

 

 至近距離で雷鳴が鳴り響いたのだ。耳から血を流す爆豪………個性的に爆音に対する耐性も人より高いのだろうが、それを超えた。

 

 三半規管もやられ、当然立てるわけもない。というか既に場外だ。

 

「爆豪君場外! よって、稲妻君の勝ち!」

 

 雷光と雷鳴に目と耳をやられていたミッドナイトが遅れて勝利宣言。

 

『以上で全ての競技が終了! 今年度の雄英体育祭1年の優勝は! A組、稲妻カムイ!!』

 

 わああああ!! と響く歓声。先程の雷鳴にも劣るまい。

 

「………………」

 

 視界も揺れまくっているだろうにそれでも立ち上がらんとする爆豪。敗北を認めていないわけではなく、勝利への渇望が消えていない。

 

「いいね………」

 

 その執念をカムイは当然評価した。

 

 

 

 そして表彰式。爆豪は2位の壇上に上がろうとしなかったので今は縛られている。

 因みに3位決定戦はなしで常闇と轟が同位だ。

 

「メダル授与よ! 今年のメダルを贈呈するのはもちろんこの人!」

 

 と、その言葉と同時にスタジアム観客席の屋根から飛び降りる影。

 

「私が! メダルを持ってき「我等がヒーロー! オールマイトォ!!」」

 

 被った。ミッドナイトはごめん、と謝る。

 さて、メダルの贈呈は3位から。まずは常闇。

 

 相性差を覆すには個性に頼り切りになってはいけないと助言されたあとメダルを渡された。

 

 轟は瞬殺されたのがむしろ良かったと、自分で告げた。何でも左を使う覚悟が出来ていなかったのだとか。自分だけが吹っ切れて終わりではなく、精算しなくちゃならないものがあるらしい。

 

 続いて爆豪。オールマイトは口枷を取ってあげる。

 

「オールマイトォ…………2位なんざなんの意味もねえんだよ! 1位じゃねえなら、俺にとっちゃ何の意味もねえ! 世間がどれだけ褒めようが(じぶん)が認めてなきゃゴミなんだよ!!」

 

 目尻が吊り上がり顔からはみ出て見える。オールマイトは『顔すげえ』と思った。

 

「うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない!」(顔すげえ)

 

 受け取っとけよと渡そうとする2位のメダルから首を持ち上げ縛り付けられてる柱に頭を付け受け取ろうとしない爆豪。オールマイトは口に引っ掛けた。

 

「最後に稲妻君! 優勝おめでとう! 強力な個性に加え、それを精密に操る技術。学生とは思えないほどだったぜ!」

 

 まあ年季が違うからな。

 メダルを受け取る。拍手が起こった。

 

「さぁ! 今回は彼らだった! しかし皆さん、この場の誰もが()()に立つ可能性があった!! ご覧いただいたとおりだ! 競い、高め合い、更に先へと登っていくその姿! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!! てな感じで最後に一言! それでは皆さんご唱和ください! せーの!」

 

 オールマイトの言葉に全員大きく息を吸う。

 

「お疲れ様でした!!」

「プルス………え!?」

「プルス──!」

「プルスウルトラ! えー!?」

「プル!」

「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」

「ああいや、疲れたろうなって思って…………」

 

 会場はブーイングの嵐に包まれた。

 

 

 

 

 さて、その夜。窓のない個室付きレストランにてカムイは老齢の女性と食事をしていた。

 

「……………優勝おめでとう」

「ん」

 

 短く返し肉を口に放り込むカムイ。女性はしばし彼を見つめる。

 

「…………学校は楽しいかしら」

「まあ」

「そう………」

「……………」

 

 会話が続かない。しばらく無言が続き、再び女性が口を開く。

 

「オールマイトはどうかしら?」

「弱ってるな」

 

 それが入学から今日までで出した結論。その事実を悟られないようにしているようだが、段々と個性の電磁波が弱まっている。まるで残り火だ。

 

「オールマイトがいなくなれば、この国のヴィラン犯罪はかつての時代に戻るでしょうね。その為に次の象徴が必要」

「何度目だ」

「分かっているなら、軽率な行動は控えなさい。ヒーロー社会は信用で成り立っている。強すぎる力は恐怖を呼ぶ。貴方はオールマイトと違ってユーモアがないのだから」

「……………………このバラエティのDVD………ユーモアを鍛えろって意味だったのか」

 

 と、カムイはレストランにつくなり『プレゼントよ』と渡されたDVDボックスの意味を漸く悟る。言わなかったかしら、と言いたげな女性。

 

「使う必要はなかったでしょう」

「……………あったさ」

「…………そう」

「それから、やっぱ定期的に『なった』方がよさそうだ。抑え続けると久々に使った時、弁が馬鹿になる」

「なる必要があるのかしら?」

「ヴィラン共が何時までも弱い前提で動くなよ。少なくともオールマイトを弱体化させるような奴が過去にいたんだろ?」

「5年前に死んだはず、だったのだけど」

「同等が生まれねぇとは限らねえ。俺は順当だが、突然変異もあるわけだしな」

 

 カムイの個性の強さは順当に厳選し世代を重ねた血の業。故に基本的な第5世代の個性には負けないが、稀に両親の個性を引き継ぐ、混ぜる子供が両親と異なる突然変異の個性が生まれることがある。そういった個性は基本的に強力なことが多い。それなら或いはカムイに迫る可能性もある。

 

 因みにカムイはオールマイトがその類ではと思っている。年齢的に下手したら第3世代。それであの強さだ。突然変異でなくてなんというのか。

 

「…………場所を用意するわ」

「ああ」

 

 これで少しはストレス発散が出来る。

 

「かつてオールマイトと戦ったヴィラン。歴史から抹消された災害の如き男……生きている可能性が出てきた」

「……………へぇ?」

「個性を奪い、与える。私達もかつて追い、オールマイトが決着をつけたはずの巨悪」

 

 個性を与える。そういえば脳無は複数の個性を持っていたな。個性を持った人間をつなぎ合わせたと思っていたが、まあそれだけで複数の個性なんて持てないか。

 

「最善はオールマイトに貴方を後継と認めさせることだったけど、次善は貴方が奴を捕らえること」

「オールマイトが取り逃がした巨悪を討つ、ね。そりゃ確かに、新たな象徴にふさわしい偉業だ」

「貴方なら出来る、とは云えないわ」

 

 だから鍛える許可を出す、と。

 

「……………話は変わるけど、貴方今恋人は居るかしら?」

「本当に変わったな」

「貴方の()()()()()()()可能性は、まず無個性」

「俺のガキ宿したら死ぬぞ、その女」

「ええ。だからもう一つ………『血の濃い』相手」

 

 カムイに流れる血を薄められるとしたら、カムイ程と言わずとも別方向に血の濃い相手なら或いは。

 

「心当たりはあるわ」

「俺に家庭を持てってか? クソババア。だから嫌いなんだよ、甘くないくせに優しすぎる………なんでそこに立ってんだお前。向いてねえよ、辞めちまえ」

「たとえハリボテでも、誰かが維持しなければ平和は崩れてしまう」

「その為にガキ巻き込んで、その事に傷ついてりゃ世話ねえっての」

 

 割り切りゃいいのにそれも出来ない。大多数の為に小に犠牲を強いてハリボテを維持する。それを正しいと思えないくせになんで会長やってんだこのクソババア。ああ、前任者が突然殺されたからか。

 

「どうせ本命は見合いじゃねえんだろ?」

「…………じきに行われるインターンで、あるヒーローのもとへ向かってほしいの」

「了解。会長」

 

 そう言ってヒーロー公安委員会会長の命を受け止めるカムイ。

 

 

 

 稲妻カムイ。

 職業、高校生。兼公安職員。

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