雄英体育祭は全国に放送される。
学校に向かうだけで顔も名前も知らない人達に話しかけられる。
が、雄英に辿り着くと人が避ける。
半獣化とはいえカムイの全身獣化は厄災そのもの。人間は本能的に恐怖を覚える。災害、ヴィランに慣れたプロヒーローの教師陣はともかく、直接見た生徒達の心に刻まれた恐怖は簡単には消えない。
A組に入ると会話が止まる。まあ、別に特別親しい相手がいたわけでもない。と………
「お、おはようカムイ君。カムイ君は、大丈夫だった?」
緑谷が話しかけてきた。
「俺なんて最終種目に残っただけなのに有名人だぜ!」
「私、小学生にどんまいって言われたー!」
「まあ有名になって悪い気はしねえけどさ」
「困っちゃうよね☆」
「つっても1位のカムイ程じゃねえだろ!」
それを皮切りにクラスメイト達が話しかけてくる。
「……お前等、俺が怖くないのか?」
「ああ!? 誰がビビるかボケ殺すぞ!!」
まあ爆豪はそうだろうな。
「ケロ………怖いわね」
と、蛙吹が誤魔化さずに言った。確かにこの電磁波と脳波は恐怖を感じている時のもの。
「蛙吹君!?」
「ちょ、梅雨ちゃん!?」
「でも私達、カムイちゃんの力が怖いだけなのよ」
蛙吹はジッとカムイを見つめる。
「中学でも怖がっちゃう子がいたわ。今その子は、私の親友なの………だからカムイちゃんも教えて、貴方のことを」
「教えろっつってもなあ………梅雨ちゃんは何が知りてえ」
「どんなお菓子が好きかしら?」
「雷おこし」
「そういう話でいいのよ」
「いいのか」
「ええ」
良いらしい。
と、その時チャイムが鳴り扉が開く。相澤が入ってくると全員大人しく席に着いた。
ミイラ男のようだった相澤の包帯が取れていた。蛙吹が安堵すると相澤がリカバリーガールが大げさだっただけと返す。
「んなもんより今日の“ヒーロー情報学”、ちょっと特別だぞ」
特別と聞き小テストかと戦慄する上鳴と切島。雄英高校に入学した時点で平均値は高い方だが、受験漬けが終わった今彼等の学力は下がりつつある。
「『コードネーム』。ヒーロー名の考案だ」
「「「胸膨らむヤツきたああああ!!」」」
わああああ!! と騒がしくなる教室内。ヒーローにあこがれ雄英に入ったのだ。そういうのはテンションが上がる。
ちなみにこの時期なのは雄英体育祭も終わり「プロからのドラフト指名」があるからだ。指名の本格化は経験を積んだ2年、3年で1年は将来性への興味。
ちなみに集計結果のトップ5は
轟 4123
爆豪 3556
稲妻 2098
常闇 360
飯田 297
指名最少人数は瀬呂の14。他は0。最終種目までいった芦戸、緑谷、青山も0だ。八百万達は入ってた。
「カムイさんが意外と低いのですね」
「あの場にいたヒーローはビビっちまったんだろ。2位の爆豪も少ねえし」
「ビビってんじゃねえよプロが! つーかそれは俺が舐めプ野郎より怖くねえってことかあ!? ざけんなビビれ!」
どっちだよ。
「これを踏まえ記名の有無に関係なく、いわゆる職場体験に行ってもらう」
A組は一足先にヴィランとの戦闘を経験したが、要するにプロの仕事場を体験し実りのある経験を積むわけだ。それでヒーロー名をつける。
「まあ仮ではあるが適当なもんは………」
「つけると地獄を見るわよ!」
そう言って入ってきたのはミッドナイト。相澤は基本的に何でもいいと思っているので、査定を彼女に任せるらしい。
「将来、自分がどうなるか……名をつけることでイメージが固まりそこに近づいていく。それが「名は体を表す」ってことだ。オールマイトとかな」
まあ、実際名は体を表すのは確かに多い。上鳴とか爆豪とか芦戸とか。
十五分後。
「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」
まさかの発表形式。自分のネーミングセンスが晒されることに何名かが不安そうな顔をするが、青山は堂々と前に出る。
「輝きヒーロー『
「「「短文!?」」」
「そこはIを取ってcan'tに省略したほうが呼びやすい」
「それね、マドモアゼル☆」
これは、と教室の空気が張り詰めていく。
「次は私ー!」
と、今度は芦戸が元気よく教壇に向かう。
「エイリアンクイーン!」
「
『リドリーヒーロー エイリアン・クイーン』と書かれた紙を堂々と見せつけてくる芦戸。
これは、間違いない。最初に変なのが来たせいで、大喜利みたいな空気になってしまった。
「じゃあ次、私いいかしら」
と、挙手したのは梅雨。どんなのが出るのかとゴクリとツバを飲む一同。
「小学生の時から決めていたの。フロッピー」
『梅雨入りヒーローFLOPPY』
「かわいい! 親しみやすくていいわ! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」
切島鋭児郎。
「んじゃ俺!
『剛健ヒーロー
赤の狂騒。これはだいぶ古いが男気ヒーロー
そのまま次々に発表していく。
耳郎響香『ヒアヒーロー イヤホン=ジャック』
障子目蔵『触手ヒーロー テンタコル』
瀬呂範太『テーピンヒーロー セロファン』
まんまだ。
砂藤力道『甘味ヒーロー シュガーマン』
再び芦戸三奈『
上鳴電気『スタンガンヒーロー チャージズマ』
葉隠透『ステルスヒーロー インビジブルガール』
八百万百『万物ヒーロー クリエティ』
轟焦凍『ショート』
「名前!? いいの!?」
「ああ」
常闇踏陰『漆黒ヒーロー ツクヨミ』
峰田実『もぎたてヒーロー
口田甲司『ふれあいヒーロー アニマ』
爆豪勝己『爆殺王』
「そういうのはやめたほうが良いわね」
すん、とテンションが落ちるミッドナイト。まあヒーロー名に殺は、うん。
麗日お茶子『ウラビティ』。
飯田天哉『天哉』。まだ何かに迷っているようだ。
稲妻カムイ
「雷神ヒーロー『イメルカムイ』」
「そこはカンナカムイじゃないの?」
「それは略すと母親の名前になる」
母の名はかんなである。ちなみに出身は北海道。
緑谷出久。
「ええ、緑谷! お前それでいいのぉ?」
「うん、今まで好きじゃなかったけど、ある人に意味を変えられて………僕は結構衝撃的で、嬉しかったんだ。これが僕のヒーロー名です!」
『デク』
再び爆豪勝己。
「爆殺卿!!」
「違う、そうじゃない」