個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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期末テスト

 それは幼少期の出来事。

 カムイが公安に拾われ暫く経った頃。一般常識を身につけるために珍しく暇だった公安委員会会長が市販のドリルを持ってきた。

 

 後お菓子。子供はお菓子で喜ぶと思ってんだこの婆。もちろん食うけど。

 

「……………今度クッキーでも焼いてみようかしら」

「そうか」

 

 あれはひどいできだったな。

 

 

 

 そんな事を思い出しながら勉強会の会場たる八百万邸に向かうカムイ。教師役のカムイは他の面子より一足先にやってきた。

 

「ようこそカムイさん! さあ上がってくださいな!」

 

 内村という執事に案内され森のような広大な庭を抜け、玄関にたどり着くと八百万が待っていた。教師役だからか眼鏡をかけている。

 

「さあ、カムイさんも!」

「…………………」

 

 カムイの今日の格好は雷と竜のスカジャン。眼鏡は似合わない気もするがニッコニコで見つめてくる八百万に折れ眼鏡をかける。とても嬉しそうな笑顔の八百万。

 

「あら、来たのね。その人が百と一緒にお友達の勉強を見る………」

 

 八百万を大人にして雰囲気を柔らかくしたような女性。

 

「姉か? 初めまして」

「まぁ………まぁまぁまぁ! ふふ、はじめまして。百の母でございます」

「…………お若いですね」

 

 素直にそう思う。

 

「ありがとう。それにしても………」

 

 と、八百万母はカムイの服を見る。育ちがよさそうだし、こういう格好は好ましくないのだろうか?

 

「素敵な服ね」

「……………どうも」

 

 今更ながら同年代の友達がいなかったカムイにとって、自分の親世代の相手と仕事関係なく話すのはあまりない経験だ。

 

 普段の素行が悪くとも仮にも公安………公職の職員。敬語程度使えるが、友達の親にも敬語でいいのか?

 

「さあさあカムイさん! 皆さんのために先ず範囲を決めましょう!」

「? 範囲?」

「はい。必要でしょう?」

「テスト範囲をおさらいすりゃいいだろ」

「え?」

「………?」

「…………カムイさんは、ひょっとして一度学んだらテスト前に勉強したりしない方ですか?」

「? 授業中聞き逃したりしてたのを教えるのが勉強会だよな?」

 

 カムイは基本的に地頭が良いので分からないことが分からない。上鳴達も、ヴィラン騒動やら体験学習やらで授業に集中出来なかった、程度の認識だ。

 

「カムイさん。まずは、答えの出し方を知らないのではなくわからない人がいるのをわかってください」

「学んでいるのに分からない?」

 

 八百万はまず、皆が来る前にカムイに教え方を教えることになった。というか本当に人に教える事が出来なかったのか。

 

「稲妻さん、アレルギーなどはありますか?」

 

 と、不意に八百万母が入ってくる。

 

「アレルギー?」

「はい! 頭の働きをよくするお菓子を作ろうと思って………ですが小麦粉や鯖など、アレルギーのある人もいらっしゃるでしょう?」

「俺は別にアレルギーは……………鯖?」

「はい。青魚の脂は脳にいいんです」

「………………………」

 

 カムイは理解出来ない生き物を見つけてしまった顔で八百万を見る。八百万は頭を押さえた。

 

「お母様、クッキーに魚は」

「どうして? 勉強会なんだもの! 赤点を取っては、林間合宿に行けないのでしょう? 私はせめて脳を活性化させるお菓子を用意しなくては!」

「………………キッチン借りれます?」

 

 

 

「それでは、そろそろ休憩しましょう」

 

 勉強会。八百万がそう言うと使用人達が食事を持ってくる。

 

「メイドさんと、休憩!?」

 

 峰田が無言で蛙吹にしばかれる。懲りない男である。

 

「カムイちゃんの教え方、とても上手だったわ」

「八百万にやり方を聞いたからな。梅雨ちゃんもよく教えてたじゃねえか」

 

 峰田は保健体育を女子に教えようとしてしばかれていた。こいつ結局何しに来たのだろうか? ああ、セクハラか。

 

「お〜、美味しそう!」

 

 芦戸が笑顔で叫ぶ。葉隠もうんうん、と嬉しそうだ。

 

 メニューはほうれん草のポタージュ、鯖パイ、ナッツ入りスパイスクッキー………。

 

「全部カムイさんの手作りなんですのよ!」

 

 なんで嬉しそう?

 

「カムイちゃん、料理出来るのね」

「一人暮らしだからな」

「美味しい!」

 

 と、芦戸が叫ぶ。

 

「ケロ………これ、弟達にも食べさせてあげたいわ」

「持ち帰り用も作ってあんぞ」

 

 八百万母が張り切ってたくさんの材料を用意してたから。

 

「なんか私達、女子として負けてるねー」

 

 葉隠の何気ない一言が女子達(葉隠含む)を傷つけた。

 

「やる気は湧いてくるけどよぉ…………わりい、やっぱムズいわ」

「上鳴………」

「なんかもう頭に直接内容が入ってくりゃいいのに!」

 

 と、教科書に頭を擦り付ける上鳴。カムイはパチパチと掌で電気を爆ぜさせる。

 

「刻み込んでやろうか? 脳の電気信号に直接干渉して意味記憶にインストール」

「出来んの!?」

「失敗すると廃人になるけどな」

「じゃあ遠慮すんよ!」

「いいじゃん、ずっとウェイウェイ言ってれば?」

 

 上鳴は個性を使いすぎると脳がショートしてウェイウェイとしか言わなくなる。それを思い出し笑う耳郎。

 

「カムイちゃんは個性だけでも本当に色々出来るのね」

「元々電気に出来る事が多いからな」

「俺出来ねえけど」

「お前、雷滞留させる個性だものな」

 

 出力次第では雷業に狙われたかもだが………。

 

「後一応、電気を集めたりもできるぜ!」

「雷を放てねえならまずは格闘技でも覚えろよ」

「格闘技かぁ………切島辺りに聞いてみるかな」

 

 

 

 そして筆記試験当日。手応えを感じた上鳴、芦戸達は大喜びで八百万とカムイ達に報告に来た。

 残すは演習試験のみ。

 

 事前に仕入れた情報によれば入学試験と同じロボと戦うという。上鳴も芦戸もこれなら余裕だとテンションが高めだ。

 

「余裕だぜ!」

「花火ー! カレー! 肝試しー!」

「残念!! 諸事情あって今回から内容を変更しちゃったのさ!」

 

 と、相澤のマフラーの中から校長が現れた。あのサイズで? 可変式なのだろうか?

 

 芦戸と上鳴はテンションが上がったポーズのまま固まっている。

 

「これからは(ヴィラン)活性化の恐れがあるからね!」

 

 ステインの影響だろう。強い信念は一種のカリスマを放つ。熱と称されるだけあり、燃えるように広がるものだ。

 

 未然に防ぐことが最優先。それでも学校も万全を期したい。

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!」

 

 故にこれから二人一組(チームアップ)で教師に挑む。

 

「ただし! 稲妻君は例外なのさ!」

「USJ、体育祭、体験学習で既にはっきりしているが、お前の戦闘能力は学年………いや、学校でも随一。プロヒーローの中でもお前と戦い勝てるヒーローはいる数を数えたほうが早い」

 

 つまり大半が勝てないと断言する相澤。爆豪が忌々しげに睨むが何も言ってこないあたり、実力は認めているようだ。

 

「なので相手は私さ! ただし私は今日は他の生徒の相手もするからね、今日は見学で後日! 因みに相方は飯田少年さ!」

「……………」

 

 単純な連携だけではないだろう。そう考えれば、稲妻自身自分に個人的な課題は思いつかない。飯田は足場だろうか? 或いは自分より速い敵への対処か。

 

 カムイの場合、重視されるのはフォロー力だろうか? どちらにしろ、オールマイトと戦える。面白くなってきた。

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