カムイと飯田は見学。
それぞれの戦いを見ていた。
「それぞれの課題が分かりやすいな」
オールマイトVS緑谷&爆豪。
この二人は単純に仲が悪い。これは明らかに直すべき欠点だ。
何とか協力し、ギリギリで脱出。
イレイザーヘッドVS轟&八百万。
轟は幼少期からの訓練もあり一通り申し分ないが強力な個性に頼り力押しな部分が目立つ。八百万は万能だが咄嗟の判断力や応用力に欠ける。
個性を消して近接に持ち込み弱みを攻める。
体育祭以降自信喪失気味だった八百万だが、轟の作戦がないか、そういうのはお前が向いている、という言葉で自信を取り戻したらしく、イレイザーヘッドを捕まえ勝利。
校長VS芦戸&上鳴。
まあ、うん。良くも悪くも直情傾向の2人は校長の頭脳プレイに手も足も出ず、工業地帯を模した運動場γにて計算し尽くされた連鎖崩壊により出口への道は瓦礫に閉ざされ敗北。
エクトプラズムVS蛙吹&常闇。
蛙吹には課題らしい課題はない。強いて言うなら仲間の弱点を補えるか、という課題だ。常闇の課題は近接戦。体育祭で個性の弱点を突かれた時もそうだが、個性に頼り切りな部分が目立つ。
大量の分身を任意で生み出すエクトプラズムは懐で分身を生み出し近接戦を強制する。最終的に大型の分身に捕まったが蛙吹の機転でカフスを付け拘束扱い。カフスをつければいいというルールを利用した勝利だ。
他もそれぞれ。
例えば十三号と戦った麗日と青山だが十三号のブラックホールに吸い込まれかけ動けなくなった所を青山の言葉に動揺し手を離した麗日に、十三号が個性を解いた結果得意な状況に持ち込めた。実際のヴィラン相手ならそのまま吸い込まれていた事だろう。
耳郎と口田はプレゼント・マイク。
耳郎が音を相殺しつつ口田が虫への苦手を乗り越え音の響かない地下から虫に襲わせる。これは、まあプレゼント・マイクが情けないってことで。
峰田は相方の瀬呂がミッドナイトに眠らされたが瀬呂のテープで息を止めて、モギモギを貼り付け動きを止め脱出。
ミッドナイトが嗜虐心を優先してゲートから離れすぎたのも大きい。ヴィランを相手にすると考えればまあ正しい手段だ。
葉隠と障子はスナイプと索敵対決。音の反響する地下ではあったが、何とか合格。カメラ越しだと流石のカムイも葉隠を探知出来ない。
砂藤と切島はセメントスに閉じ込められた。
糖を消費して力を上げる砂藤は糖を使用しすぎると脳機能が低下する。切島も硬化中は気張っている。どちらも継戦能力が低い。突破力も足りない。課題は多い。
「こんなところか」
どうせならレポートでも書いておけ、と言われたカムイと飯田は今回のまとめを書き終えた。思考力の疾いカムイが大雑把に書き飯田が纏める。
後で上鳴達にでも見せてやれば今後の成長につながるだろう。
「カムイ君のまとめは的確だな」
「ああ………昔、個性の制御が出来ねえ頃資料とか見て学ばされたからな」
不用意に個性を使えないなら、個性がどういう時に使えるか、敵はどのように個性を使うかなどをレポートに書いて提出した。当時まだまだクソガキだったカムイは『俺が出れば終わる』と書いてはやり直しをさせられたものだ。
そして翌日。
運動場γ。入り組んだ道では飯田の全速力は活かせまい。
「俺達だけ脱出は2名か」
「それだけカムイ君の実力が評価されているということ。足を引っ張らないよう努めるよ」
飯田はピシッと言い放つ。真面目だ。
「さて、オールマイトはどう来るか」
「少なくとも昨日のような大規模破壊はないだろう。カムイ君の武器を増やす」
金属パイプだらけの工業地帯ならば、そのような破壊は────!!
瞬間、襲い来る暴風。破壊音が聞こえなかった。音よりも速い衝撃。
「お。いたいた」
破壊の跡をズシズシ歩きながら現れるオールマイト。瓦礫から這い出した飯田が思わず固まり、カムイは獰猛な笑みを浮かべバチリと紫電が爆ぜる。
「あまり壊しすぎると怒られちゃうからね。さ、ヒーロー。
ドォン! と爆音が響く。
「重た!」
飯田が見たのはオールマイトへ殴り掛かり拳を受け止められたカムイ。
「そりゃそうか!」
以前USJに現れた脳無はショック吸収の個性もあるのだろうが、カムイの蹴りを受け止めていた。それと同等の力を持つオールマイトが受け止められない道理はない。
というか本当に同等? 威圧感がまるで違う。
「やるねえ稲妻少年。私の7割の力を持つ学生なんて初めてだ」
「そうかよ。ならこっからは個性ありだ」
「使ってなかったの!?」
全身に電気を流しシナプス直結。肉体のリミッター解除。オールマイトが距離を取るが、振るわれた拳は大気を巻き込み吹き荒れる。先程オールマイトが破壊した為建物は巻き込まない。
「おっとっと!」
嵐のような連打をオールマイトは一つ一つ受け止めそらし、更には反撃。
(そこらの雑魚より速いが、俺の
「飯田! 先に抜けろ!」
「っ! あ、ああ!」
「うんうん。そうくるよね」
もとより実力が隔絶した相方同士。下手に評価のために連係を取るよりも逃がす、逃げるという判断はなるほど正しい。
相手がオールマイトじゃなければ。
雷速で駆け抜ける世界を認識するカムイとて常に思考が加速しているわけではない。だとしたら人と関わるなどできない。それでも多くのトップヒーローの速度を置き去りにするカムイをして反応に遅れる超速度。
個性『エンジン』を持つ飯田より遥かに速い。よいしょ、と振り下ろされるチョップをカムイが受け止める。
「────!!」
ミシッと骨が軋み足が地面にめり込む。追撃が来る前に飯田を掴みぶん投げた。
「おお」
キチンとそこらの廃材をまとわせて飛距離を伸ばしつつも高い建物に落ちるよう着地も考えている。
感心するオールマイトが視線を反らした瞬間にカムイの獣化させた拳が叩き込まれる。
運動場γの一部が吹き飛んだ。
「いけないなあ、ヒーローだろ君ぃ」
いてて、と埃を払うオールマイト。運動場の外まで吹っ飛ばすつもりだったが咄嗟に空気を殴りつけて減速した。
「まあ、殴る方向は考えてたみたいだけど」
ガスタンク等壊されるとやばい部分には向かないように吹っ飛ばしている。それでもまあ、相当な被害だが。
「仮にあんたほどのヴィランが現れたら、多少の被害なんざ知ったことかよ」
「HAHAHA!! 将来的な脅威の為に今の被害を、か。アメリカに留学していた身として、
再び迫り拳を振るう。同時にカムイも拳を振るい打ち合う。衝撃で吹き飛ばされた大気はしかし直ぐに瓦礫を伴い戻って来るが2人は一切気にしない。
オールマイトはチラリと飯田の飛ばされた方向を見て追いかけようとするが無数の鉄屑が体に張り付く。
「
残った鉄屑が磁気をまとい、音速を超えた速度で撃ち出された。
「
オールマイトは空中で高速回転して体に張り付いた鉄屑を吹き飛ばしながらレールガンを弾いていく。
「らあ!」
「せい!」
腕が振り下ろされると同時に落ちる落雷。オールマイトが腕を振るうと弾かれた。
もちろんオールマイトが人間である以上、常識的に考えれば雷に触れた瞬間雷は体内を流れるので弾けるわけがない。
雷がジグザクに進む仕組みを利用した防御。拳で大気を圧縮し絶縁性能を上げたのだ。常識ってなんだ?
「雷や炎、触れられない攻撃にも対策は用意しているものさ。No.1、なめちゃいけない。おや?」
次の瞬間迫るのは漆黒の剣。
迫る、などと言っても並のヒーローでは既に伸び切った後しか認識できない雷速伸縮・変形。あろうことか枝分かれした剣先を指の隙間と歯で受け止めるオールマイトだが、次の瞬間には形を変えオールマイトの体に巻き付く。
「ぬう!」
同時に迫る雨のような雷の矢。それより疾くオールマイトの背後に移動した半獣化カムイが光熱を纏う抜手を放ち。
「ふん!」
「──!?」
オールマイトを中心とした衝撃波が全てを吹き飛ばす。刹那にも満たない時の中、カムイは見た。オールマイトの筋肉が膨張し雷爪を破壊し周囲の空気を押しのけるのを。
(
頭の中で言葉にしても意味が分からない。
砕けた雷爪の柄に触れると瞬時に再生した。
「ふ〜。ここまで戦う相手を恐ろしく思ったのは6年ぶりだ。しかもそれ、半獣ってんだろ? じゃあ完全があるわけだ」
「…………
「…………色々聞きたいことが出来たけど、まずは飯田少年を捕まえようかな!」
「させねえよヴィラン!」
「させてもらうさヒーロー!」
唐突だが、緑谷出久の100%は肉体が破壊されるレベルの出力で、カムイはそれをオールマイトと同等と判断している。
では緑谷の限界値とオールマイトの限界値は同じなのか? そんなわけがない。緑谷出久の100%は裏を返せば緑谷の肉体の100%以上。だから壊れる。なら、オールマイトとて肉体にダメージを負うレベルで力を振るうことが出来る筈。
「
カムイの身体は一瞬で空高く、上空に出来ていた雷雲が吹き飛び尚も止まらず高く高く打ち上がる。
ロケットを発射したかのような衝撃がオールマイトの周囲を吹き飛ばす。
「しまった! あまりの脅威にちょっと本気を! 大丈夫かい稲妻少年!!」
と、雷が運動場γへ降り注ぐ。どうやらまだ戦えるようだ。オールマイトは降りてくるであろうカムイに備え…………。
『飯田・稲妻チーム条件達成!』
「あれ!?」
「いてて………周囲の被害考慮してあれに勝つとかまだ無理だな」
あれでUSJよりも個性数値を表す電磁波が弱っている。全盛期なら周囲の被害無視しても勝てるかどうか。
本来なら一瞬で治る肋がまだ折れている。
「すまない。俺は完全に役立たずだった!」
「変にプライドにこだわって挑まれるより助かった。勝てねえ相手から逃げて情報を持ち帰るのも一つの手だ………」
爆豪あたりなら逃げろと言われても意地でも残ったに違いない。それこそ本当に役立たずどころか足手まとい。
「すごい音がしたけど、どんな戦いを?」
因みに飯田が離れてから後の戦いはほぼ一瞬の出来事だった。
「地球って本当に青くて丸いんだな」
「どんな戦いを!?」
飯田が思わず突っ込む中、オールマイトも戻って来た。
「やあ稲妻少年、飯田少年! おめでとう! 結構強く殴っちゃったけど、平気かな稲妻少年………」
「明日には痛みが引く」
「その程度? なら良かった。いや、良くはないけど。私も明日は腕が筋肉痛だな」
あのレベルの一撃の代償が筋肉痛。マジで全盛期はどの程度の強さだったのだろうか。
というか怪我が原因で弱体化しているなら、その怪我がなければもっと強くなっていた可能性もあるのか。
「………それだけ強くて、なぜ世界に優しくできる」
「ん?」
「触れれば手折れる花だらけの世界で、それを踏みつけないように歩く事に煩わしさを覚えないのか?」
カムイはその花が生み出す漫画とかが好きだから我慢しているが。ほんの少し前まで、世界はそんな娯楽を楽しめるほどの平和は簡単に踏みにじられる。
「………すまない、その疑問に対する答えを私は持っていない。君は力の為に理想を求めているようだが、私は理想のために力を欲したんだ」
「…………そうか」