個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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ショッピングモール

 オールマイトとの戦闘により大気圏外から地球を見下ろした翌日、課題クリアならず落ち込みまくっていた上鳴、芦戸、砂藤、切島。

 

 しかし相澤の全員で林間合宿に行くという言葉にテンションが上がっていた。

 まあ、居残り補習をするということは教員を割くということになる。合理的ではないだろう。

 

 代わりに合宿のメニューに加えて補習もあるが。

 

 しかし全員で行ける。色々買うものもある。

 ならばと葉隠が買い物を提案し、翌日付き合いの悪い爆豪と用事のある轟以外のメンバーで県内最多店舗数を誇る木梛区ショッピングモールを訪れた。

 

「カムイちゃん、なんだか顔色が悪いわ」

「電磁波酔いした…………少しオフにする」

 

 人が多いとそれだけ電波や思考の電磁波が飛ぶ。普段から気にならない程度に弱めているが人が多いと流石に気分が悪くなる。

 

 あまりこういった場所に来ないので初めての感覚だ。あ、葉隠が見えなくなった。普通の人間には葉隠はああ見えているのか。

 

「とりあえずウチは大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

「俺もだな。旅行の時とか、服だのなんだの基本現地で買いそろえてたし」

「分かります。現地の空気をよく感じ取れますわ」

 

 旅行の度に出費が高そうな行動に耳郎はもしかして意外と金持ち、と言いたげな目を向ける。八百万が同意したから余計。

 

「俺アウトドア系の靴ねぇから買いてえんだけど」

「あー、私も私もー!」

「待ちたまえ! 靴は履き慣れたものとしおりに書いて………あ、いや。しかし成る程、用途に合ったものを選ぶべきなのか!?」

「ピッキング用品とドリルって何処に売ってんだろ」

 

 真面目な飯田。真面目な顔で何かほざいている峰田。皆目的は様々だ。一先ず時間を決めてバラけることになった。

 

 

 

 

「そういえばカムイちゃん、体育祭の時は大丈夫だったの? あの時も人は多かったけど」

「観客席と距離はあったし、通話禁止で機内モードの奴等も多かったからな」

 

 ここはそんな事ない。アンテナが立たないとスマホを振ってるやつも居る。あれって何か意味があるのだろうか?

 

 体育祭といえば…………。

 

「おい! 見ろ、雄英の!」

 

 体育祭の話題は未だ消えず。遠巻きに眺めてくる分にはまだましで、見目麗しい八百万達に無断でカメラを向ける者達も。

 

「うわ!?」

 

 八百万達がなにか言う前に男達はカメラやスマホを落とす。画面にはまるでレンズの直ぐ側で睨んでいるかのような目が。

 

 恐る恐る拾うとなんともない。確かに撮ったはずの目のデータは何処にもない。気味が悪くなってきた男達はそそくさ立ち去る。

 

「どうしたんでしょう?」

「電子機器に異常が出たんだろ」

「ケロ…………」

 

 察した梅雨がニコリと笑う。お礼は、言わない方が良いのだろう。

 

「兄貴曰くカードゲームなんかも買うといいらしいな」

「カードゲーム! 夜のお楽しみというやつですね!」

「トランプとかなら合宿所にあるんじゃ………」

「いえ、マイカードを持参するべきだと」

「へえ、そういうもんなのか」

「らしいですわ!」

「ヤオモモもだけど、カムイも意外と世間知らずっちゅうか、ズレてるよなあ」

 

 金の使い方も結構大雑把。キャリーバッグを買う際も値段の確認すらせず決めてポンと金を出していた。やっぱ、実は金持ちなのだろうか? と………

 

「あ、雄英の! すいません、写真撮ってもいいですか!」

 

 最終種目までいった八百万はやはり目立つ。ついでに言えば彼女は職場体験でCMにも出てたりした。

 

「やっぱヤオモモ目立つなあ」

 

 耳郎と梅雨は騎馬戦まで。レクリエーションにも出たからそこそこ知られてはいるが、八百万程ではない。そして八百万が知られているということは………。

 

「雄英1年優勝の!」

「私服チンピラみてえ!」

 

 カムイも当然知られている。

 

「お待ち下さい! 今チンピラとおっしゃりましたか? カムイさんは威嚇行動など行っていないではありませんか!」

「気にすんなよ八百万。ガラがわりぃ自覚はしてる」

「ですが………!」

 

 次代の象徴として直すように言う奴もいるが、直す気はない。そもそも象徴に対して乗り気ではないし。

 

「それに向こうも本気じゃねぇだろ」

「な、なんかごめんなさい………」

 

 そこまで怒られると思っていなかったのか謝る一般人。八百万も反応しすぎました、と謝る。

 

「あの、それで………写真いいですか? 1位の人!」

「…………………ああ」

 

 

 

 そんなやりとりがあった後もテレビを見た人達が話しかけてくる。と、そんな中…………

 

「カムイ君…………?」

 

 カムイの名を呼ぶ声。振り返ると女子高生ぐらいの少女がカムイを見つめていた。

 

「…………渡我被身子?」

「わぁ………わぁ! 覚えててくれた、嬉しいなあ! また会えた! 嬉しい!」

「ケロ………知り合いなの、カムイちゃん」

「ガキの頃一度だけ。まあかなり印象的な出会いだったからな」

「懐かしいなあ。あの時のカムイ君、かぁいいくって……我慢できなかったです私。でもカムイ君「変わってるな」の一言だけで気持ち悪いって殴らなかったよね。やめなさいってぶたなかったよねぇ!」

「どういう関係かしら?」

「さっぱり分からない」

「その……もしかしていじめにあっていらしたのですか?」

 

 困惑する梅雨ともしや、と心配そうな八百万。

 

「あ、カムイ君のお友達? 体育祭に出てたよね! カァイイねえ! 私ね、渡我被身子!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「梅雨ちゃん! カァイイ呼び方だねえ!」

 

 渡我は笑顔で叫ぶ。なんというか、人懐っこい子だとほっこりする一同。

 

「今日ねえ、バイト始めたんだ。カムイ君雄英に入ってたから、ヒーローになるんでしょ? 何時か出会えるかと思って………そしたら今日再会出来て。嬉しいなぁ、嬉しい………嬉しいよ」

「そこまで懐かれるようなことしたかぁ、俺」

「してるよ…! してたよ! カムイ君にとって覚えてないような何でもないこと、私は嬉しかったんだ! ね、だからね、チウチウさせて!?」

「ちゅ、ちゅう!?」

「……………ああ」

 

 顔を真っ赤にする八百万をおいて、思い出したように声を上げるカムイ。

 

「しびれたなぁ。雷が全身に走ったの!」

「文字通りな。とりあえず買い物のあとでいいか?」

「うん!」

 

 と、その時クラスラインに連絡が入る。麗日からだ。

 

「!? 死柄木って、ヴィラン連合の!?」

「緑谷さんと接触!?」

 

 放送が流れる。一時的に閉鎖するらしい。

 

「やったぁ! じゃあ買い物できないね! ね! カムイ君、チウチウしたいな! 行こう!」

 

 不安そうな市民と異なり楽しそうな渡我は、周りなどまるで見えていないかのようだ。カムイの手を引く。

 

 カムイは八百万達に断りをいれるとその場から離れ近くの公園に移動した。

 

 

 

 

「いただきま~す」

 

 カムイが自らの爪で斬った傷に吸い付く渡我。そのままチウチウ吸い込み飲み込んだ瞬間雷が襲う。

 

「けほ…………」

「……………」

 

 カムイに姿を変えていた。カムイの肉体は電気に対して高い耐性を持つ。体質まで真似る渡我の変身なら、カムイに化けることで雷に耐えられるわけだ。

 

「はふぅ、あいかわらず痺れるような美味しさ」

「痺れてんだけどな、実際」

 

 そのまま再び傷口に吸い付く渡我。カムイの姿なので何とも言えない光景だ。

 暫く啜り漸く満足したのかドロリと輪郭が崩れ元の姿に戻る渡我。

 

「じゃあまたね、カムイ君!」

「また?」

「バイトねぇ。ヒーローと関わる仕事なのです。だから今度はカムイ君が私を探してね!」

 

 恋する乙女のように可愛い笑みを浮かべる渡我被身子。るんるん楽しそうに去っていった。

 

 

 

 

 渡我被身子は可愛いものが好きだ。そして血が好きだ。

 やめなさいと殴られた。気味が悪いと叩かれた。

 

 公園で一人泣いていた彼女が出会ったのは、すごく疲れた様子の少し年下の男の子。血だらけの彼がカァイイくてかっこよくて、血を飲ませてと頼んだ。頼んで気付いた。また気持ち悪いって逃げられる。

 

『ん? ああ、いいぞ』

 

 その後物理的に痺れた。

 

「んふふ。んふふ〜…………カムイ君、変わらなかったなぁ」

 

 強くて格好良くて優しくて、細かい事を気にしない。彼の前でなら自分はただの女の子になれる。

 

 ずっとずっと探していた男の子。ヒーローの卵と知って、なら彼が追ってくる存在になれば向こうから見つけてくれるかも、そんな風に思っていたら今日再会できた。

 

「カムイ君になりたい! カムイ君と同じに! 知ってますよ、カムイ君は優しいから、優しく触るんです。だから、なりますよ私。カムイ君の(ヴィラン)に。カムイ君が全力で壊せる(愛せる)存在に!」

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