個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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個性把握テスト

 異形系と呼ばれる生まれながらの個性を持つ者達がいる。腕が多かったり目が3つだったりなんか変なの生えてたりと色々ある。中には身長がセンチではなくメートルで示すべきサイズの者も。

 

 個性社会となって1世紀ほど。まだまだ対応できているとは言い難いが、最新設備の雄英はバリアフリー。ドアもとても大きい。

 

 カムイのクラスは1年A組。中に入ると既に数人の生徒達が交友を築いたり始めから知り合いだったり我関せずだったりと様々な反応を見せている。

 

 カムイは席に座ると腕を枕に眠り始めた。夜遅くまでゲームしていたのだ。

 

 

「起き給え! 先生がご到着された!」

 

 その言葉に目を開けると真面目そうなメガネがいた。メガネはやはり真面目なキャラに似合うらしい。

 

「体操服に着替え校庭に向かうそうだ。入学式もガイダンスもなしとは、これが雄英!」

 

 自由な校風と聞いていたが、教師まで自由らしい。

 カムイは起こしてくれた男子生徒に礼を言うと体操服に着替え、他の生徒達と共に校庭に向かった。

 

「「「個性把握……テストォ!?」」」

 

 ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50M走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。

 中学から普通にやってる個性抜きの体力テスト……そこに個性が加わっただけの事。しかし原則個性は使用禁止の、名前だけの個性社会。多くの者にとって初めての経験だろう。

 

 画一的な記録を作って平均を出す、合理的ではないと呟くのは1年A組担任相澤消太。

 

「稲妻、中学の時のソフトボール投げいくつだ」

「俺?」

「主席だからな」

 

 相澤の言葉に生徒達から視線が集まる。何やら目つきの悪い男子生徒が特に強くにらんでくる。

 

「中学…………50」

 

 ヒーローを目指して鍛えている男子としては、まあ平均的だろう。

 

「じゃあ個性使ってみろ。円から出なきゃ何しても構わん」

「ん、これ機械入りか」

 

 ソフトボール内に金属。カムイはポイ、と上に軽く上げる。何してんだ、と視線が集まる中紫電をまとう右手を落ちてくるソフトボールに向け、指で弾く。

 

 シュインという音が響きオレンジの線が宙に刻まれた。

 

「……………あ、消えた」

「消えたな。測定不能、と」

 

 『LOST』と書かれた電子画面を見せてくる相澤。ソフトボールは音速を超え摩擦で蒸発したのだ。

 

「なんだ今の!? 測定不能って!」

「ケロ。一瞬だけ雷が見えたわ」

「まじかよ!? 俺と被ってんじゃん! や、俺あんな事出来ねえけど」

「でも途中までめっちゃ飛んでたぞ! すっげえ!」

「面白そう!」

 

 興奮する生徒達に対して、相澤は冷めた目で「面白そう、ね……」と呟く。呆れているようにも見える。

 

「ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

「「「!?」」」

 

 空気が変わる。苛立つような相澤が放つ空気は現場を知らない者達にとって言いしれぬ重圧感を与える。

 

「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」

「「「はああああ!?」」」

「生徒の如何は俺たちの“自由”。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 入学初日で退学者が出るらしい。先輩には話せる友達作るように言われてたが、除籍にならなそうな奴を見極めてからだな、と思うカムイであった。

 

 

 

 50М走。隣の女子は何やら口や服を触っている。極々僅かに重心が変わる。重さを消す個性のようだ。

 

 よーい、と声が聞こえ、STARTと叫ぶ。

 カムイはゴールに立っていた。

 

「…………」

 

 機械が固まっている。どうやら一瞬過ぎて移動したと認識出来ないらしい。

 

「1秒以下っと」

「速っ! え、瞬間移動?」

「さっき電気使ってたろ………」

「一瞬だけ足がピカってしてた!」

 

 生徒達が困惑する中元気な少女が腕をブンブン振りながら叫ぶ。光に敏感。光に関係する個性だろうか?

 

 握力測定。タコみたいな異形系個性の男子生徒が540キロを出す。カムイも握る。

 

「1245」

「すげぇ!?」

「いやだからどんな個性!? 電気関係ねえじゃん!」

「コ◯ンの靴みたいに電気で刺激して、とか?」

 

 

 立ち幅跳び。

 

 校庭の端まで跳んでフェンスに着地した。記録は無限。

 

 

 反復横跳び。

 

「速すぎて増えて見える!」

 

 

 ソフトボール投げ。

 

 何やら縮れ毛の生徒が相澤と話している。先程から一度も個性を発動していない最下位。勧告だろうか?

 と思ってたら発動した。指が砕けている。

 

 増強系のようだが個性(ソフトウェア)の性能が肉体(ハードウェア)を超過している。競技ごとに肉体がぶっ壊れるなら、そりゃ使わないわけだ。

 

(出力調整出来ねえのか?)

 

 あれだけの出力に加えて肉体を破壊する程の肉体性能を超えた個性。普通なら届けを出して訓練しそうなものだが、ヒーローを目指す割には個性の強さにあぐらをかいて…………いたにしてはオドオドしすぎだ。

 

 あ、目つきの悪い生徒が叫びながら突っ込んで相澤の操る布に捕まった。

 因みに相澤は見た相手の個性を消せるらしい。

 

(視認、からの発動までのコンマ数秒。遅すぎだな。俺なら何回か殺せる)

 

 そして他のテストも始まる。上体起こしはともかく、長座体前屈はまあまあ。最後の持久走はバイクに乗る女と並走した。

 

 バイクってありなのか? まあありだから何も言わないんだろ。

 

 

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

 やる気を出させるための合理的虚偽。

 

「「「はあああ!?」」」

「あんなの嘘に決まってるじゃない………ちょっと考えればわかりますわ」

「去年雄英1年一クラス全員除籍になったけどな」

「…………え?」

 

 普通にやるつもりはあったのだろう。最下位の少年が思ったより見込みがあったのか、別の理由かはしらないが。

 

「稲妻ちゃん」

「ん?」

 

 相澤が去ったあと教室に戻ろうとするとカエルみたいな少女が話しかけてきた。異形系ではあるのだろうがなかなか整っているタイプだ。

 

「私、蛙吹梅雨。梅雨ちゃんと呼んで」

「名前? じゃあ俺はカムイでいいよ。名字、嫌いなんだ」

「私、気になったことはすぐ聞いちゃうの。カムイちゃんはどんな個性なのかしら」

「お〜、それな! 気になるぜ俺も!」

「浮いたり速かったりいろいろだよな!」

 

 と、金髪と赤髪の男も混じってきた。

 

「俺の個性は『雷獣』………変形型の個性で雷を操る怪物に変身する個性だ」

「変身してたかしら?」

「しなくても雷を使うんだよ。出力は落ちるけど」

「カムイちゃんにはまだ先があるのね」

「ナメプかよ」

 

 縮れ毛君に襲いかかった目つきの悪い生徒が睨んできた。無視した。

 

「で、雷の性質うまく使えば磁力とかも操れる」

 

 パチチと空気が弾ける音が響き、校庭からザァ、と黒い靄が浮かび上がる。大量の砂鉄だ。

 

「磁力でものを加速させて吹き飛ばしたり、磁場に乗って浮いたりが今回したことだ」

 

 電荷レベルで操れるのでもっと色々出来るが、そこまでは言わなくて良いだろう。説明面倒くさいし。

 

「まじかよ。俺の完全上位互換じゃん」

 

 項垂れる金髪。彼も電気系個性の使い手だった。見た感じ発電は出来るが指向性を持たせることもできなさそうだが。

 

 格闘技でも習って蹴りや拳がスタンガンになればそれなりに戦えるヒーローにはなれるだろう。サポートアイテムに頼る手もある。

 

 話は終わった。カムイ達は教室に戻る。

 

「ケロ………そういえば、握力や速さの方を聞くの忘れてたわ」

 

 本質的には変形型らしいから一部を変身させていたのだろうか? そうなると本気は今日見せた磁力を更に大規模に行い近接戦闘もこなせる隙のない強さということになる。

 

 

 

 

 さて翌日。

 午前中は必修科目や英語など普通の高校らしい授業。

 

 昼は大食堂にて一流の料理を安価で。

 

 そして午後。ヒーロー基礎学。

 オールマイトが普通にドアから来た。テンションが上がる生徒達。

 

 午後の授業は戦闘訓練。入学前に学校に送った『個性届』と『要望』に沿ったヒーローコスチュームが渡される。

 

 ゴテゴテしたアーマーもいればただのジャンプスーツもいる。女子は体のラインが出るスーツや大胆に前がはだけているものまで。

 

 小柄で頭に玉がある少年がそんな女子達を眺めていた。

 

「カムイちゃんは私服みたいね」

 

 カムイは革ジャン。そこらのチンピラのような格好である。

 

 戦闘訓練は2vs2のチーム戦。ヒーローチームとヴィランチームに分かれ、ヴィランチームは核兵器ということになっているハリボテを制限時間内に守る。ヒーローは逆にタッチ。或いは両チーム相手を捕まえれば勝利。

 

「わー、一緒だね。頑張ろうね!」

「ああ」

 

 カムイはIチーム。ペアは葉隠。

 

 因みにカムイは電磁波を捉えることが可能。また、デンキウナギのように周囲を探知したりも出来るし、生物の放つ生体電気を感知したりと様々。

 

 その見ている景色を常人にもわかるように説明しろと言われても難しいが…………まあ要するに、カムイは全裸の美少女が楽しそうに笑っているのが見えてたりする。

 

(……春だからな)

 

 しかしそもそも最初から見えているので、個性を聞いていない時点ではただの痴女としか思っていなかった。

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