夏休み。
林間合宿まで期間はある。その期間をどう過ごすかは各々の自由。カムイと言えば………
「ん」
「おや、どうしました?」
発目の所で電池やってた。
妙な機械に繋がれ電気を吸われているカムイは携帯にメールが来たことに気付く。
カムイの血が入ったカプセルを機械にセットしていた発目が振り返らぬまま尋ねる。
「兄貴からいけねぇからってI・エキスポの招待券が来てな。体育祭優勝時点で貰ってるってのに」
「I・エキスポ!!」
グリンと振り返る発目。I・エキスポとはI・アイランドで行われる祭典。I・アイランドとは世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市。移動可能な直径14キロの人工島。
サポートアイテムの開発を行う発目のようなサポート科としては行けるなら行きたい場所である。
「体育祭の優勝賞品がまさかそれだとは! もっと本気で戦うべきでした! いらないならください!」
「2位にやった」
「なんと!」
「兄貴分からのはまだやってねえけど、要るか?」
「いります! おや、ペアなのですね。では行きましょうカムイさん!」
行く気がないから譲ったのに行くことになりそうだ。断ればいいのだが、どのみち林間合宿までの夏休みの予定など発目の電池か素材になるぐらいしかなかったカムイは仕方なく付き添うことにした。
「その前に風呂入れ。いい加減臭うぞお前」
「出発日には入ります!」
「ならいいか」
いいのかよ、とその場にいたサポート科は心の中で突っ込んだ。
「さあそれまでに私達のベイビーを育てましょう!」
「おう」
ブインとカムイの血をセットした機械が動く。技術が発展したこの時代、それでも長時間稼働にはバッテリーや電池の大きさが必要で、大きくなれば重さが増え消費電力も上がるジレンマ。それを解決するカムイの血を使い作るサポートアイテムは確かにカムイと発目の作品と言えよう。
(((だから言い方!!)))
サポート科一同の心は一つとなった。
そして飛行機。こちらも招待券に含まれていたので無料だ。流石チャート
発目は機械いじりはできないがプログラミングや機械の出力計算等をまとめていた。カムイは飯食ってる。
「そう言えばカムイさんって『充電』もできるんですよね?」
「ああ」
その気になれば宙に飛び交う電波を食って数日は生きれる。というか拾われるまではそうやって生きてきたっぽい。
「大気圏外にふっ飛ばされても宇宙線(陽子)取り込んで生命維持出来たしな」
じゃなかったらオールマイトとの訓練でもうちょい怪我してた。それで怪我で済むあたりカムイはやはり規格外なのだ。
「ならカムイさんの血も使用後に充電出来る? I・アイランドで機材借りれたら調べてみましょう!」
世界最高峰の研究機関であるI・アイランドには、流石に持っていける機材には限りがあった。発目はあくまで観光客だからだ。
巨大な壁に囲まれたI・アイランドは飛行機でしか入島出来ない。
空港にて降りた発目とカムイ。発目は早速一般展示されているサポートアイテムを見に行こうとするのでカムイが襟を掴む。
「まずはホテルにチェックインで荷物を置け。置いていこうとするな」
盗まれたらどうする気なのか。まあ、持ち込みできる程度の機材を盗む輩などいないとは思うが念の為。
「カムイさんはパワーローダー先生みたいです!」
「パワーローダーから見てろって言われる問題児なんだよ自覚しろ」
「!!」
問題児と言われショックを受ける発目。歩きにくいと言うので放してやるが珍しい機械を見る度に向かおうとする。
「このワイヤレスリードくれ」
リード紐こそないが磁気とかアレやそれでペットが遠くに行かないようにするアイテムが売ってたので買うカムイ。
首輪をつけた美少女を連れ回すアレな光景。カムイも発目も気にしない。と、何やら人だかりが出来ていた。
「おや、何やら騒がしい」
「有名人でも来てるんだろ」
I・エキスポは世界中から有力ヒーロー、歴史のあるヒーロー一家、或いはスポンサーなどが誘われる。ヒーローは基本的に国家の安全保障戦力で滅多に海外旅行出来ないが、それでも外国で人気のヒーローは少なくない。あの人だかりもその類に違いない。
「電波酔いしそう」
感知機能をオフにしてはいるが、目を瞑る、耳を塞ぐと同じでそこにある事実は変わらない。瞼越しで光を感じるように、耳栓をわずかな音が越えるように、人工島、サポートアイテムの宝庫と言えるI・エキスポは文明の象徴たる電波が強く、感覚が消えない。
「食べてしまえばいいのでは?」
カムイの言葉に首を傾げる発目。要するに感知するから問題なら、取り込んでしまえば問題なさそうだが。
「そしたら通信とか出来なくなるだろ」
感じ取るだけなら電波は変わらず飛んでいくが吸収したら消える。当たり前の話だ。そしたら通話もネットもカムイの周辺で行えなくなる。
「カムイさんは見た目に反していい子ですよね!」
「一言余計なんだよお前は」
装置を操作すると首輪が軽く引かれる。苦しいと言うほどでないが発目の無駄口は止まった。
「おや、あちらで展示が!」
しかしすぐに再開した。
「ホテルいくつってんだろ」
「夜でいいです! 失ったって惜しくありませんからー!」
「惜しめ」
コホン、と咳き込む声が聞こえる。振り返ると見知った顔。八百万と耳郎と麗日。
「カムイさん! こ、公共の場でホテルとか失うとか、どうかと思いますわ!」
「……………?」
「発目さんも、大切なものなのですから失ってもいいなんて!」
「そ、そうだよ! あたしらまだ学生なんだよ!?」
「学校いられなくなっちゃうで!?」
「むむ。確かに少しですが学校から借りてる機材もありますね!」
「お前それ失っても良いとか言ってたのかよ」
「「「え?」」」
「お恥ずかしい…………」
事情を説明され真っ赤になる八百万。
一先ず荷物はホテルに預けた。説明を受け早とちりしてしまった自分を恥じる。
「A組の………! えー、忘れました! 最終種目に残った方、私は何を失っていたのでしょう!?」
「そ、それはその…………!」
「…………? わかりますかカムイさん!」
「…………知るかよ」
カムイは少し疲れたように吐き捨てた。
「それで、その………カムイさん達は何故こちらに?」
八百万達は八百万家がスポンサーのためI・エキスポの招待状が来たらしい。両親が用事があり残った2枚をクラスの女子達でジャンケンで獲得。
その女子達も一般参加でくるらしい。プレオープンの今日は回れないが、今はホテルにでもいるのだろう。
「俺は兄貴分の先輩がトップヒーローでな。行かねえからってくれたチケット使った」
今思えば会長も送られてきてるのを知ってるはずだから、案外彼女も学生生活を楽しんでほしいと思っていたのかもしれない。象徴にでもなれば簡単に海外旅行出来なくなるし。
「まあ、カムイさんの知り合いにトップヒーローが」
「I・エキスポに誘われるなんて、結構有名なヒーローなんじゃ………」
「いけないとはいえ譲ってくれるなんて、仲いいんだね」
「悪くはない」
エンデヴァーのサインあげたら喜んでたし。
「さて、それでは私は展示されているサポートアイテムを見て回ります!」
「では私達もついて行っていいですか?」
「面白そうやね!」
「ま、何見るか決めてなかったしね」
女子4、男子1の集団が出来た。
色々見て回り、サポートアイテムのパビリオンに入る。
飛行、水中潜航可能な多目的ヴィークル、深海七千メートルまで潜れるスーツなど様々。その殆どの機械に使用されている特許はとある男一人で開発したというのだから驚きだ。
「…………ん? あれって、緑谷じゃない?」
「デク君!?」
耳郎の言葉に麗日が振り返ると確かに緑谷がいた。金髪の美少女と話している。
「楽しそうやねデク君」
「!? 麗日サン!? どうしてここに!」
「楽しそうやね」
二回言った。
八百万と耳郎も緑谷の下へ向かうがそういうのに全然興味ない発目はスタスタと次の展示品に向かう。見失ったらそのまま戻ってこなさそうなのでカムイはついていく。
好奇心旺盛な犬を飼うと疲れる。カムイは将来飼うなら猫にすると決めた。
「おや、あれはなんでしょう?」
爆音が響く。
好奇心に導かれるまま向かう発目。カムイは店で買った菓子を食いながら追いかける。
「タイムアタックのようですね!」
ヴィランを模したロボットを破壊してタイムを競うらしい。なんか爆豪がいる。
「皆! 止めるんだ! 雄英の恥部が世間に晒されてしまうぞ!」
「おや、2位の人! 何故?」
「優勝賞品の方のチケットやったからな」
飯田と切島もいる。飯田と爆豪は別に仲良くないし、切島が同伴者で飯田はヒーロー一家故の招待ってところか。
「これだけ多くの企業の関係者が見ている! これはアピールチャンスです! すいません、サポートアイテム使用はありですか!?」
『ハイ! もちろん!』
その言葉に参加を決めた発目がカムイへ振り向く。カムイはため息を吐くとホテルからアタッシュケースを持ってきた。
ガチャガチャと形が変わりバックパックのような形に変形。
「さあいきますよ! 可愛いベイビーのお披露目です!!」
ガチャンとゴーグルが装着され、無数のドローンが射出。バックパックが発生させる磁場を飛び回る燕のようなドローンはそのサイズからは想像できない電力で雷を放ちヴィランロボットを正確に撃ち抜いていく。
更には電力を上げて作り出した磁場によるバリアーで武装し直接体当たり。時間は18秒。4位だ。
見学に来ていた各サポートアイテム開発会社の関係者と思わしき大人達がおお、と感心しているのを個性『ズーム』で見て満足気な発目。
「さ、お次はカムイさんですよ!」
「何勝手にエントリーしてんだよ」
呆れつつもステージに飛び降りるカムイ。新しく用意されるヴィランロボット。
『それでは、スタートです!』
開始のブザーが鳴り、気付けばステージに背中を向けて歩き出すカムイ。あれ、と司会が困惑した瞬間鳴り響く終了のブザー。
『れ、0.5秒!? 文句無しの第1位です!!』
「■■■■■■■!!」
「ああ、かっちゃんが人の言葉を失った!?」