個性特異点と呼ばれる概念がその昔提唱された。
親から子に受け継がれる個性が複雑かつ強力になる事に目をつけたとある学者が出したその説は、『異能』を『個性』として世界に受け入れ始めていたその時代において受け入れられるわけもなく終末論、オカルトの類とされた。
だが実際、世代を経る事に個性は強力になる。それは確かな事実だ。そして、人の肉体は個性の進化に追いつかない。
実際にそうなるかはまだまだ不明だ。しかしとある集団は、個性の深化を急いだ。結果的に肉体の進化より先に個性がより深く変化し、代を経る事に早世していった。最後の世代と『される』者は20を超えることはなかった。そして滅んだ。
まあ殺害されたのもあるが、その大半は老衰。肉体は生命維持を行えなくなって…………異形系ではなかった者までその死体は
「オオオオオ!!」
島中の鉄が浮かび上がり集められる。
現状五感で認識した半径三キロ内の鉄を操っているようだ。あくまで操っているのはI・アイランドの表層のみ。しかし放置すれば人工島であるI・アイランドは容易く
幸いにも閉園時間を過ぎた観光区に落ちたようだが居住区に落ちていたらどうなっていた事か。今正に捻られ槍に変わるビルがホテルだったらどれだけの人間が死んでいたか。
「研究資料とかの損失もヤバそうではあるか………」
そっちは研究職ではないカムイにはあまり気にならないが。と、捻れた槍が居住区に先端を向ける。
「チィ!」
鉄を操る個性だけでカムイの
駆け抜ける衝撃波だけで窓ガラスが砕け、ビルが軋む。
人の制御を外れた個性。人であった頃の残滓か、或いはただ暴れているだけなのかは知らないが大人しく死ぬ気はないようだ。
「────!!」
ウォルフラムの周囲で浮かんでいた鉄が全て全方位に放たれる。カムイは己の中心に巨大かつ強力な磁界を形成。制御権を奪い叩きつける。それでも幾つか漏れた鉄塊の一部がI・アイランドに降り注ぐ。
「ギアアアアア!!」
体を覆う鋼鉄の鱗が砕け悲鳴を上げる竜は、しかしその鱗を直ぐに修復する。超再生ではない、鉄操作の一環。ダメージはある。
「ゴガガガアアアアア!!」
「あ?」
内臓が傷ついたのか、竜の口内に流れる血液が発光する。鉄操作でも筋力増強でもない………個性ではなく、雷業の血!
放たれる極雷の咆哮。カムイの
後ろの居住区に落ちないように逸らそうとして一部がカムイの体を焼いた。雷を吸収するカムイではあるが、人型の許容量を超えた。すぐさま傷を癒やしながら半獣化するカムイに差す影。
上空から降り注ぐ鉄の立方体。一辺1キロはあったが、カムイからすれば避けるのに十分な大きさ。下が居住区でなければ…………。
「そもそも避けるまでもねえんだよお!!」
振るわれる拳。響く雷鳴、輝く雷光。鉄塊が容易く吹き飛ぶ。亜音速で向かってくる鉄の散弾は竜の知覚を超え操作を許さず鋼鉄の鱗を砕く。
「ゴ、アアアアア!!」
筋力増強の因子が活性化し、内から鱗を弾く程に筋肉が膨れ上がる。僅か1秒。されど、
「
内臓を守るために腹に分厚く張っていた鉄の鎧ごと殴り付ける。I・アイランドへの被害を気にした手加減された一撃。
それでも鎧が砕け、巨体が浮かび上がる。
「チッ………!」
だが吹き飛ぶ速度は遅い。鉄を操り体を固定する竜。そのまま前脚を組み落下の勢いを合わせたダブルスレッジハンマーを振り下ろそうとして……
「DETROIT SMASH!!」
オールマイトが周囲の大気を巻き込む拳を振るう。
竜が浮き上がり、鉄の触手が千切れる。I・アイランド全体が揺れるも、巻き起こった風圧に対して被害が少ない。
力の向き、逃がし方を完璧に計算した一撃。超パワーと何十年も付き合ったオールマイトがたどり着いた絶技。参考にしよ、と素直に感心したカムイは再び鉄を伸ばし己を支えようとする竜へ追いつき蹴り飛ばす。
空中に『輪』が刻まれる速度で吹き飛ぶ竜は水平線の彼方に消え巨大な水柱が上がる。オールマイトは懐かしいなあ、とその光景を眺める。若い頃はパンチの衝撃だけでやれたのだが、今はすっかり衰えた。
と、カムイが両手を組む。両腕が雷光を放ち黄金に染まり、開いた手の隙間にたまる膨大なエネルギーが溢れ宙にまるで巨大な竜のアギトを象る。
「消し飛べ、雷業の亡霊」
放たれるは夜を朝に変えるほどの光量を誇る極大の竜の雷鎚。発射と同時に着弾。
陸地に放たれれば地図を書き換える必要があるレベルの大破壊。その余波も当然天災の如く。
I・アイランドなど軽く飲み込む高波、吹き飛ばす暴風。カムイが直ぐ様天災を消し飛ばそうと構えるも、それよりも速くオールマイトが飛び出していた。
「
手を十字に交差させ空気を蹴りつけ加速し迫りくる厄災へ逃げるどころか逆に突っ込む 。
「SMASH!!!」
十字に突き進む衝撃波。天災が消し飛んだ。
「やっぱすげぇなぁ、オールマイト。全盛期に喧嘩してみたかったぜ」
雷業の紛い物は……反応が消えた。死んだか、血の力を使い切ったか…………まあどっちでもいいとカムイはI・アイランドに降りる。
「ゲホ、ゴホ………ふぅ、結構疲れたなあ」
「無茶をするなよオールマイト。救助活動は俺達がやる」
「やっぱり色々バレてるね…………うん、じゃあお願いするよ。すまないね」
「? あんたがいなけりゃ被害はもっとやばかった。謝ることなんざ何もねえだろ」
まずは人の多い居住区からだな、と磁界を飛ぶカムイの背を見てオールマイトはいい子だなぁ、と思った。
同時に危うい。全盛期の自分にも迫る絶大な力。それはつまり英雄にも魔王にもなれる資質があると言うこと。
以前の発言からして生きにくい生き方を選ぶ、そんな子ではある。けど理想の為に力を欲した自分と違い、彼は力を正しく使うために理想を欲している。もしも、この世界がそんな理想を求めるに相応しくないと思えば………。
「君が世界の敵になるとしたら、それは世界が君の敵となった時なのかもしれないな…………」
不甲斐ない。あの時の怪我さえなければ、彼の全力に応えてやれたものを。今の自分は生徒1人の全力を受け止めてやることも出来ない。
「それでも彼は理想を求めている」
正しくあれる理由を探している。魔王になれる素質がありながら、ヒーローを目指している。ならば導こう、彼がせめて迷わぬように。
居住区に辿り着くと既に活動している者達がいた。
「梅雨ちゃん、葉隠、芦戸」
「カムイちゃん……」
「あ、カムイ君! ちょうどよかった、光貸して〜!」
周囲の光を歪め透明化している葉隠は多少光を操れる。周囲の光を集めて発光してみたが、まだ夜で、街灯のほとんども消えて光が弱い。カムイが雷光で照らすとその光を拡散させる。因みにより光が拡散するよう服を脱いでいる。
この状態だと目を凝らせば輪郭が見えたりするがカムイは普段から見えているし気にしたことは無い。
「いったい何があったのかしら? 爆弾が爆発したの?」
「そういやそんな設定だったか…………あれはヴィランの流した偽情報。そいつ等が暴れたんだよ」
「え、ヴィラン!? でもでも、今この島オールマイトもいるのに!?」
「USJと同じく、ヴィランにオールマイトを倒す策があったのかしら。でももう激しい音は聞こえないみたい」
「ああ、終わった」
「……………そう。カムイちゃんもお疲れ様」
ニコリと笑う梅雨。弟妹をもつ長女だからか、観察眼があると言うか。
「あ、こっちに人! 今瓦礫どかしま〜す!」
カムイが片手を向けるとコンクリートは内部の鉄骨に操られ浮き上がる。
「お〜、便利。あ、血が出てる! 酸性絶無、粘性高め! ほいっと!」
医療用接着剤みたいな使い方している。ああいうのは自分には出来ないな。今日だって結局最後は壊すだけだ。
「私も、三奈ちゃんみたいなことは出来ないわ。だから、出来ることをしましょう?」
「カムイく〜ん! 光、こっち頂戴!」
「そうだな」
その後緑谷達も合流した。
メリッサ曰く、本来なら警備ロボが救助活動もするのだが、今は管理システムがやられている。なので一度管理システムを乗っ取ったカムイが新しいサーバーを作るまで、暫くサーバーの代わりになることにした。
「カムイ君って本当に色々出来るんだね」
「コンピューターなんざ結局電気信号の記憶装置だからな」
「同じ電気系個性なのに………もう下位互換ってレベルじゃねえよ。逆に俺お前に勝ってるとこってどこ」
「人柄」
「カムイちゃんもいい子よ?」
雷業。血はトリガー、骨はサポートアイテム、肉体は脳無の素材………まさに捨てるとこなし最高素材!byとある医者