個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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個性訓練

 崖下に落ちたA組達、襲い来る土塊の魔獣。

 その上空で輝く雷光、響く雷鳴。全員が察して周りを見ればやはりカムイの姿がない。

 

 もう既にたどり着いていることだろうと察してブチギレる爆豪。キレこそしないが、燃え上がる一同。

 

 カムイが物間に言った「俺かそれ以外」………傲慢でも思い上がりでもなく、彼はそれだけ他と隔絶している。対等などクラスにはいない。それでも彼は見下さない。

 

「ざけんなクソがすぐ追いついてやらァ!」

「!!」

 

 爆豪が叫びながら魔獣を爆砕し、轟も冷気を放ち氷漬けにする。

 

「負けて、らんないからね!」

「ケロ」

「おうよ!」

 

 他のメンバーもやる気を出す。気の持ちようというのは存外パフォーマンスに影響を及ぼす。

 

 

 

 

「お疲れ」

 

 PM3:15、A組全生徒マタタビ荘到着。

 

「思ったより早かったじゃない」

「何が3時間ですか……」

「腹減った、死ぬ〜」

「悪いね。私達ならって意味、アレ。でも皆も大したもんよ、5時は越えると思ってたもん」

「………………」

 

 真に驚くべきは山岳救助が主なプロヒーローでも3時間かかる距離に大量の土魔獣を配置できるピクシーボブの個性規模と8時間近くは維持するつもりだった個性の持続力。

 

 かなり強力な個性だ。個性増幅装置使ったウォルフラムよりもずっと強そう。山岳部じゃほぼ敵無しだろう。

 

「私の土魔獣結構簡単に攻略されちゃった。いいよ、君等。特にそこの4人……」

 

 と爆豪、緑谷、轟、飯田を見るピクシーボブ。

 

「躊躇のなさは経験値によるものかしらん?」

 

 全員ヴィランと対面自体はしているから、心構えだろうな。

 

「そして堂々たる一着の貴方! 3年後の楽しみが選り取り見取り! ツバつけとこー!」

 

 ピクシーボブは今焦っているのだ。適齢期的なアレで。

 

「適齢期と言えば──」

「と言えばって!!」

 

 ピクシーボブの肉球グローブが緑谷の顔にブニッと添えられた。

 

「ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

 

 緑谷が視線を向けたのは角がついた帽子を被った子供。

 

「ああ、違う。この子は私の従甥だよ。洸汰、ホラ挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから」

「あ、えっと僕、雄英高校の緑谷。よろしく」

 

 と、手を差し出す緑谷。洸汰と呼ばれた少年はその手を取らず緑谷の股間に拳を振るう。

 

「緑谷君! おのれ従甥! 何故緑谷君の陰嚢を!?」

「ヒーローになりたい連中なんかとつるむ気はねえよ」

「つるむ!? いくつだ君は!」

 

 爆豪がマセガキが、と笑い轟が空気を読まずお前と似てるな、と呟く。

 

「似てねえわ! つーかてめぇ、喋ってんじゃねえぞ半分野郎!」

「悪い…………似てる」

 

 一先ず一同は荷物を部屋に置いた。本格的な訓練は明日からなので各自休憩。芦戸を筆頭に女子達がカードやりに来た。

 

 そして夕食を済ませ、風呂。峰田が覗こうとして見張りをしていた洸汰に人として駄目だしされ突き落とされる。

 

 その洸汰も女子達の感謝の言葉に振り返り発育のいい最近の子の裸体を見て鼻血出して落ちた。緑谷が慌てて受け止め気絶した洸汰と共に風呂から出ていった。

 

「なななななんなここここピリピリするるるる」

「ああ、俺水に浸かると漏電すっから」

「俺は平気〜。峰田はなるべく近くに漬けておこうぜ」

「あばばばばばばば!」

 

 上鳴は温泉の端の方にいたカムイに峰田を持っていった。何人かも距離を取りちょうどいい塩梅の電気風呂で疲れを癒やした。

 

 

 

 

 翌日、合宿二日目AM5:30。寝ぼけ眼で集まる一同。

 

「おはよう諸君。本日より本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように」

 

 全員が相澤の言葉に気を引き締める。

 

「というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」

 

 相澤が渡したのは個性把握テストでも使用した飛距離測定ボール。カムイが蒸発させたアレだ。

 前回の記録は705.2M。何処まで伸びたか。

 

「この3カ月色々濃かったからなあ! 1キロとかいくんじゃね!」

「やったれー!」

「んじゃ、よっこら………くたばれ!!」

 

 くたばれ………。

 

 爆風に吹き飛ばされていくボール。暫くして飛距離が相澤の持つ測定機に表示された。

 

「709.6M」

「!?」

「あれ……思ったより…」

 

 約3カ月。なるほど確かに生徒達は成長している。だがそれは精神面や技術面、それから多少の体力。個性そのものの成長はそこまでしていない。故に……

 

「今日から君等の個性を伸ばす。死ぬほどきついがくれぐれも死なないように」

 

 

 

 

「稲妻、お前は個性の出力を上げる必要ないから他の訓練」

 

 とのことなのでカムイは砂鉄で作った巨人の上に佇み、電磁波で周囲の感知。カムイは元々個性の放つ電磁波も感知できるのでA組、B組の状態を把握。

 

「………他の連中の妨害もよろしく」

 

 ほぼ監督側になった。まあ6()()しかいないし。

 雄英も忙しいからだ。だからこそプッシーキャッツ。

 

 個性『サーチ』のラグドールという女性が全体を把握。

 個性『土流』のピクシーボブが修行に適した地形形成。

 個性『テレパス』のマンダレイが一度に複数にアドバイス。

 

 そして虎という元女性が殴る蹴るの暴行。

 

「ほんとに、一人だけ規模が違うなぁ……」

 

 砂鉄の巨人の頭上にたたずむカムイを見てマンダレイが呟く。あれで居て本質が変形型の特徴をもつ複合個性で余力を残しているという。

 

 しかも異形型個性に近い個性である変形型だからか、素の身体能力も下手な増強系より遥かに高いらしい。

 

「弱点なくない?」

「強いて言うなら獣化しすぎると戻った時に加減を間違えるらしいことですかね」

 

 

 

 

 

 キノコネットワークに似てる電磁波。小森キノコか………。

 電磁波の範囲が拡大。複数の浮遊………取蔭切奈。電磁波の乱れ………上鳴と………物間。緑谷の個性因子はまだ反応が妙だな。中の因子は未だ目覚めず。

 

「…………………」

 

 生徒達を監視しながら森の動物達の電磁波にも干渉。ついでに磁気を操りランダムにばら撒いた方位磁石の針の向きを全て西方向に向ける。

 

 

 

 

「………感知、細密操作も高水準。個性維持(スタミナ)もあの規模で夕方まで。あの子逆に何を持ち合わせないの?」

「さあ…………」

 

 

 

 PM4:00。訓練終了。

 夕飯のカレーは生徒達の手で作る。因みにカムイは市販のルーにスパイス、ソースなどを入れて味変するタイプ。時間があればスパイスから作る。

 

「今回は材料が足りねえな」

「うま! から!」

「レシピ教えろやコラァ!」

「どういう情緒だよ爆豪。でもうめえよカムイ!」

「強くて料理上手…………あり! 唾つけるならやはり彼!?」

「どうでもいいですけど俺にあんたを捕まえさせんのは合宿の後にしてくださいね」

 

 

 

 

 とあるバー。そこに集まるは(ヴィラン)連合。死柄木は3枚の写真を他のメンバーに見せた。

 

「此奴等殺せばいいのか? よし殺そう! 全員俺の獲物な!」

 

 と、大柄な男が身を乗り出す。

 

「落ち着け。殺しておきたいのはこのモジャモジャ。他の二人は、生かして連れてこい。こっちはまあ、出来たらで良いがな」

 

 写真に写るのは緑谷出久、爆豪勝己、稲妻カムイ。そのうち緑谷を殺すように命じる死柄木。

 

「まあ、他も殺していいがこのガキだけは必ず殺せ」

「殺しはよくないぜ! 任せな!」

「かわいい顔してるわね」

「…………」

 

 各々反応を示す中、トガはジッとカムイの写真を見つめる。

 

「あらトガちゃん。その子は殺しちゃ駄目らしいわ。代わりに他の生徒をたっくさん殺しましょう?」

「やです。殺しません」

「はぁ?」

 

 その言葉に死柄木は不愉快そうに顔を歪める。

 

「なんだ、今さら人を殺したくないとかいう気か? 何しにここに来たんだよお前」

「カムイ君に追いかけてもらうためです。私が殺したいのはカムイ君だけなのです!」

「お前数人殺してるんじゃなかった?」

「殺しに来たなら殺します。死にたくないですから」

 

 主に少女を狙うヴィランを逆に返り討ちにしてカァイく失血死させたが、それは向こうが先に殺そうとしてきたからだ。

 

「私が私の意思で最初に殺すのは、初めてをあげるのはカムイ君です!」

「だから殺すなって…………まあいい。足止めぐらいはするんだな?」

「はい! 殺さないよ、でも斬るね!」

「ふふ。じゃあ殺すのはお姉さんに任せない」

「マグ姉。うん、ありがとうございます!」

 

 トガはオカマに頭を下げる。オカマは良いのよ、と微笑んだ。

 

「ななちゃんななちゃん、頑張ろうねえ」

「うん」

 

 トガはそのまま自分と同じ女の子である雷業七海に抱き着く。七海は首から上がないのに何処からともなく声を出す。

 

 トガは彼女に懐いている。好きな人に匂いが似ているらしい。

 

「女の子同士仲が良いと微笑ましいな! 反吐が出るぜ!」

「まあトガちゃん、友達いないって言ってたしねえ」

「えへへ。向こうでも友達増えたらいいなあ」

 

 悪意は静かに動き出す。

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