三日目の個性伸ばしも終わり、夕飯も終わった。これから行われるのは肝試し……なのだが。
「うわあああ! 堪忍してくれ、試させてくれー!」
芦戸、上鳴、瀬呂、砂藤、切島は補習。泣きながら相澤に連れて行かれた。
そんな5人を無視して説明が入る。
A組、B組で脅かす、驚かされる側に分けて先行はB組。A組は二人一組で3分ごとに向かい、ルートの折り返しにある札を持って帰ってくる。
脅かす側は直接接触禁止、個性を使って脅かす。
「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」
「やめてください汚い………」
だから結婚できねーんじゃねえの、とは言わない耳郎。
「なるほど! 競争させることでアイデアを推敲させ、その結果さらなる個性の幅が生まれるというわけか! さすが雄英!」
時に20人のクラスから5人補習だと残りは15人。つまり、1人余るわけだ。
「俺1人でいいよ。代わりに先行かせろ、さっさと寝る」
精密操作、探知により脳をちょっと使ってるカムイはふぁ、と欠伸した。
「ん」
「ん?」
地面から生首が飛び出してきた。地面が柔らかくなっている。骨抜という男子生徒の個性だったか。
勢いよく飛び出してきたのは小大。確か物のサイズを変える個性。小さくした何かと一緒に沈んでそれを元のサイズに戻し体を持ち上げたのだろう。
「ん」
「そうか…………考えたほうだろ」
「ん」
「ああ、頑張れ」
微妙な空気。カムイはそれだけ言い残すと森の奥へ進んでいった。小大はちょっと落ち込んだ。ていうか今普通に会話してた?
その後ケタケタ笑いながら飛んでいく口を見つけた。取蔭だろう。
妙な悪寒。吹出の「ヒュウウ〜ドロドロドロ」には精神を不安にさせる効果があるらしい。本当に万能な個性である。
さらに進むと無数の茨が木々に絡まりネトネトした粘液が垂れ下がる。ホラー映画にありそうな雰囲気。と、空から降ってくる巨大な影。
「グオオオオオオオオッ!!」
確か宍田という異形型かつ変形型の個性を持つ生徒。昔ぶっ飛ばした個性『鯨』のヴィランに比べれば迫力は劣る。
「グ、グオ………」
カムイは横に避け先へ進む。宍田はその場で項垂れた。
「お早いおつき! 全然びびんないねー君!」
ニャハハ、と笑うラグドール。ほい、と折り返し地点到達証明の札を渡してくる。
「ねえ、そう言えばずっと気になってたんだけどね?」
「あん?」
「君なんで
「────」
瞬間、カムイの手がラグドールに向かい伸びる。反応も出来ず目を見開くラグドールを抱えその場から跳ぶカムイ。脳味噌をむき出しにした異形がラグドールが座っていた待機所を破壊する。
「ネホヒャン!」
「え、ヴィラン!? 嘘、にゃんで!?」
「此奴、何処から……」
バイザーと一体化したヘッドギアを付けビットギャグを装着した青緑の肌の脳無。多腕でチェンソー、ハンマー、ネイルハンマー、ドリルなど工具が生えている。
「ネネネ、ネホヒャアアアン!!」
「失せろ」
蹴り飛ばす。無数の木々を破壊しながら吹き飛んでいく脳無。壊し損ねた。妙な弾力はゴム………いや、頭足類の筋肉か。
「マンダレイ、虎、ピクシーボブ! ヴィラン襲撃! 一人とは限らない、生徒達を避難させるにゃ!」
カムイは電磁波の感知範囲を広げ…………。
「…………あ!?」
「おや、気づかれてしまったね」
「────!!」
聞こえてきた言葉にラグドールが目を向ける。即座にサーチを発動し弱点を把握しようとして顔を青く染めた。
「っ! う、え………ええ!」
「なんだ、てめぇ………!」
吐き気を抑えられないラグドール。カムイも不快げに睨む。
「そんな反応されると傷つくなあ」
言葉とは裏腹に声色からは不快さなど感じさせない男。妙な鉄のマスクを被った男の内包する個性因子の電磁波は
個性を見るラグドールも似たような理由だろう。触れている身体から流れてくる電磁波は、不安、嫌悪、恐怖、厭悪、惨憺、忌避。
「ほう? もしかして、この
次の瞬間………瞬間と呼ぶにも烏滸がましい刹那、カムイの蹴りが男に迫る。
思考加速×2、倍速、オーバークロック(複製)、高速移動×4、情報処理×5、2倍速、加速、超加速…………個性因子強制強化。
「────!!」
カムイの蹴りが避けられた。オールマイトですら回避ではなく防御を選ぶカムイの攻撃を。
「個性因子が焼き切れそうだね。そういうレベルで発動しないとならない速度に、一つの個性で至る。さすが雷業の最高傑作と謳われた雷業統琉の子供だね」
「俺は母さんの子だ」
バチチとカムイの身体から溢れる紫電。一つ一つの威力が凄まじく、触れた樹木が内部で蒸発した水分により爆ぜる。
「始まりの雷業とは僕も仲が良くてね。君とも友達になりたいんだよ」
「……………」
始まりの雷業。初代の事を言っているなら、個性黎明期から生きてる事になる。そして大量の個性因子。
「お前がオール・フォー・ワン!」
「知っているようだね雷業カムイ君。それとも、もう名乗れない母の名字で呼ぶべきかな?」
放たれる雷。不自然に逸れた。
(! 雷に干渉された感覚はなかった。防がれたとも違う、これは………)
「君は血に誇りを持つべきだ。雷業は素晴らしいよ、その個性も……肉体も」
黒い靄から現れる一人の男。人の形をしているが、脳無同様生体電気のパターンが一定。雷撃を放つも逸らされる。
「伝導率か!」
覚えがある。雷業の粛清部隊の個性。
対電気系個性の中にいた。伝導率を上げる個性は空気に電気の通り道を作ることで雷を誘導する。だが殺した。
脳無と同じならそれだけじゃない筈。と、周囲の植物が蠢く。尋常ならざる速度でカムイへ絡みついた。
「んの!!」
電撃で焼き切ろうとするも焼けない。伝導率が極限まで高まった植物は電気を流したところで熱を生まない。地面へと逃げた電気が土を焼くが、植物には無意味。
「少し大人しくなってもらおう。後は頼んだよ」
周囲の植物が伸び、絡み合い巨大な腕を形成。数十メートルはある腕がカムイを叩き潰すように地面を揺らした。