個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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襲撃再び

『マンダレイ、虎、ピクシーボブ! ヴィラン襲撃! 一人とは限らない、生徒達を避難させるにゃ!』

 

 ラグドールからの突然の通信に驚愕する3人。しかしすぐに切り替える。流石はプロと言うところだろう。

 故に気付けた。

 

「とと!?」

 

 グンと何かに引き寄せられるピクシーボブ。咄嗟に地面を操り自身を固定。同時に自分を引き寄せる何かに向かい土石流。

 

「きゃあ!?」

「ぬおおお!?」

 

 野太い悲鳴と若い男の悲鳴。片方は避けた。経験則と言うよりは身体能力に任せた動き。異形系のものだ。

 

「無事かマグ姉!?」

「もう、不躾な飼い猫ちゃんねえ!!」

「ヴィラン!!」

「ぬお!?」

「ぐぅ!!」

 

 マグ姉と呼ばれたオカマは土塊に一瞬で顔以外が埋まり爬虫類の異形系の男はナイフを投げようとするが高波のような土流に飲まれた。

 

「山岳部で私達を襲うなんて恐れ知らずというか馬鹿というか」

「ぶぁ! ぐぅ、離せ贋物! 場を選ぶヒーローなど不要!」

「贋物………ステインの信奉者(フォロワー)かしらん?」

 

 よく見るとステインがしていたマスクを模したマスクをしている。あれショッピングモールで売ってたやつだ、とA組の誰かが思った。

 

「贋物を排し英雄を回帰させる! 俺こそ、ステインの意志を全うする者!」

「………………」

 

 ステインの深淵を覗いた緑谷、飯田はその言葉の『軽さ』に眉を顰める。

 感銘を受け感化されたふりをしているだけの贋物。ステインのような凄みもない。

 

「なんでヴィランがいるんだよ!? 万全を期したんじゃ…………!」

「それは同意………マンダレイ!」

「ええ!」

 

 森の奥に黒煙が上がるのが見えた。火の個性かサポートアイテムか………。まだ他にもいそうだ。

 

 

 

『皆! ヴィラン2名………3名襲来! 内2名捕縛、1名ラグドールの連絡待ち! 他にも複数いる可能性あり! 動けるものは直ちに施設へ!! 会敵しても決して戦闘せず撤退!!』

 

 マンダレイのテレパスは補習を行おうとしていた相澤達にも届く。

 

「は? なんで、(ヴィラン)が………!? バレないんじゃなかった!?」

 

 物間の悲鳴を背に外に飛び出す相澤。物間の言葉を反芻する。考えたくもないが………

 

「………まずいな」

 

 山に火を放たれている。消火系の個性は………ピクシーボブに土を被せて貰えば………。

 

「心配が先に立ったかイレイザーヘッド」

「──ブラド!!」

 

 待ち伏せするように立っていた火傷だらけの男が蒼い炎を放った。

 

「邪魔はよしてくれよヒーロー。用があるのはお前等じゃない」

 

 と、その時。雷鳴が響く。かと思えば文字通り地を揺らす轟音。

 

「マスキュラー? いや、そんなレベルじゃ………」

 

 男がそうつぶやいた瞬間身体に巻き付く帯。焼き尽くそうとするも炎が出ない。

 

「まあ………プロだもんな」

「マスキュラー………マスキュラーだと。あの殺人犯も来てるのか!」

 

 

 

 

「洸汰………そうだ、洸汰を探さないと」

 

 マンダレイは顔色悪く叫ぶ。従甥の洸汰………ヒーローである自分達を嫌い何処かに隠れ家を作り、何時も其処に居るであろう少年。あくまで伝達だけのマンダレイはメッセージを送ることは出来ても場所を知ることは出来ない。

 

「マンダレイ! 僕、知ってます!」

「!! 案内を……」

 

 と、そこまで言いかけた時だった。森の木々を吹き飛ばしながら巨大な影が現れる。

 

「ははははは! なんだよお前等その姿! なっさけねえぜ!?」

 

 仮面をつけた大男。全身から赤い糸のようなものがあふれ身体に巻き付いている。

 

「なんだよ、ヒーローの卵だろ? どいつもこいつもだっせえジャージだなあ。今()()()()どっちがかっけえコス見つけられるか勝負中なんだよ。コスチュームねえか? なあ!」

 

 異様な威圧感。それを明確に感じ取れたのは緑谷と飯田。覚えがある。これはステイン相手にも感じた、殺気だ。

 

「ねえなら死ねやあああ!」

「こんの!!」

 

 振り下ろされる剛腕を受け止めるべくせり上がる土の塊。男はそれを力任せに吹き飛ばす。

 爆薬でも炸裂したかの如く吹き飛ぶ土の柱。男は腕を振るい他二名のヴィランを土塊ごと吹き飛ばした。

 

「げほ! もう、乙女を傷物にするんじゃないわよ」

「助かったぜ………」

 

 解放された2名のヴィラン。豪快に見えて加減はしていたらしい。

 

「俺のスーパーナイフナイフソードは何処に!?」

「そういうのいい加減ダサいと思うぜ俺ぁ」

 

 男はヘラヘラと笑いながらマンダレイ達を見る。

 

「仕方ねえな。ひとまずその頭の機械で我慢してやる。くれよそれ!」

「欲しいなら玩具屋でグッズ化してるわよ!!」

 

 ピクシーボブが巨大な大魔獣を生み出す。男は仮面の向こうでおそらく笑みを浮かべた。

 

「いいぞぉ! ぶっ殺させろおおお!!」

 

 規格外の破壊力。対応できるのはピクシーボブぐらいだろう。他二名はマンダレイ達が相手する。

 

「皆行って!! 良い!? 決して戦闘はしない事! 委員長、引率!」

「了解しました! 皆、行こう!」

「先行ってて皆! 僕は、洸汰君を!」

「緑谷君!?」

 

 と、再び轟音が響く。雷鳴が鳴り響き山向こうが照らされる。なんか山の輪郭が蠢いている。いったい何が起きているのか。

 

 

 

 

 その頃、洸汰の秘密基地。

 大男が佇んでいた。

 

「センスのいい帽子だな子供。俺のこのだせえマスクと交換してくれよ。新人は納期がどうとかでこんな玩具つけられてんの」

「うぁ………」

「あ、おい!」

 

 逃げ出した洸汰を見て仮面を捨てながら先回りする大男。その顔に洸汰は目を見開く。

 

 当時、ニュースで何度も見た。洸汰の両親であるウォーターホースを殺し逃走した殺人鬼。ウォーターホース達が最後に一矢報いるが如く、その顔に傷をつけたという。

 

「景気づけに一杯やらせろよ!」

 

 顔の左に刻まれた大きな傷跡。左目は存在せず代わりに義眼が嵌められていた。

 

「パパ………! ママッ──」

 

 子供など簡単に叩き潰す拳。しかし横合いから飛び込んできた影が洸汰を助ける。緑谷だ。

 

「んん? お前はリストにあったな」

「お前、さっきの………!?」

「なんだ俺に会ったのか? まだいいの見つけてねえよな!? 今からそのガキの帽子奪えば間に合うよな!? よこせよ、なあ!」

 

 言葉は通じるのに、話が通じない。ステインの静かで燃えるような殺気とは異なる享楽を交えた焼け付くような粘つく殺意。

 

 洸汰を守りながら、やれるか?

 

(じゃない! やるんだ!)

 

 やるしかないんだ。

 

「だいっ………大丈夫だよ洸汰君。必ず助けるから!!」

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