「Mr、避けろ」
「!
「バッカ冷たっ!」
荼毘の言葉と同時に蒼炎が放たれ、近くにいたタイツの男は熱気に叫んだ。Mrと呼ばれた男は周囲の地面ごと消える。
轟はギリギリ避けたが緑谷を抱えていた障子と抱えられていた緑谷は回避が遅れて腕を焼かれる。
「死柄木の殺せリストにあった顔だ! そこの地味ボロ君とお前、なかったけどな!」
と、轟の背後に移動したタイツが腕に付けていたリングからメジャーを引っ張りだす。
「ちっ!」
「熱っ!」
轟が氷を生み出し勢いを殺すと同時に攻撃。こちらもシルクハット男に負けない回避力で回避しメジャーで氷を切り裂く。
「カムイ………貴様等ぁ!」
首を切り落とされたカムイを見て障子が叫ぶ。緑谷と轟も遅れて気付き顔を歪める。怒りに任せて放たれる冷気により大規模な氷が生み出された。
「あちち!!」
全力で回避したタイツの男。文字通り頭が冷えた轟は舌打ちしながら規模より伝播速度を重視した冷気を放つ。
「ぬおお!」
「わわ」
障子はカムイを背負うトガに拳を振るうもナナが割り込んできて受け止める。
「いってて……飛んで追ってくるとは。発想がトンでるね」
「爆豪は?」
「勿論」
と、ミスターと呼ばれた男がポケットから何かを取り出そうとしてハッとゴソゴソ探る。
「
と、障子が2つの玉を見せる。
「ホホウ! あの短時間で、さすが六本腕! 弄り上手!」
「逃げるぞ2人とも! カムイの遺体は………諦めろ!」
どう見ても死んでいるカムイ。死者と生者を秤にかけ、生きている者を逃がす為に撤退を選択する障子。早い判断、大したものだ。
「アホが……」
「いや待て」
追いかけようとした荼毘をミスターが遮る。緑谷達の目の前の空間から滲むように黒い靄が溢れ出した。緑谷たちはその光景に見覚えがある。USJを襲撃したワープのヴィラン!
「合図から5分経ちました。いきますよ荼毘」
周囲に現れるワープゲート。飛び込んでいくヴィラン立ち。トガがんしょ、とカムイを背負い直す。
「また、まだ目標が」
「ああ、あれはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいだからプレゼントしよう。悪い癖だよ、マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは……
仮面を取るミスター。目出し帽から覗く口からベロと舌を突き出せばその上に転がる2つの球体。障子が持っていた玉が氷に変わる。
「ぬっ!?」
「氷結攻撃の際ダミーを
モノを圧縮する系の個性なのだろう。音もなく爆豪達が消えたのも彼の個性!
「くっそ!」
「そんじゃーお後がよろしいようで──!?」
ワープゲートに消えていく男。そんな彼に向かう光。男が気づいた頃にはもう回避は間に合わない。
「ぶねー、助かったぜナナちゃん」
「雷爪!?」
黒い金属がレーザーを防ぐ。カムイの雷爪・宙斬だ。電気系の個性を持てば一応使用できる事は知っている。上鳴が借りて雷速で変形した雷爪が引っかかって吹き飛んでいた。
使いこなすことが難しいそれを扱えるのか。と、その時……
「わっ!?」
カムイの体が動きミスターを殴る。慌てて振り返ったナナと呼ばれた首無し女がカムイの体に触れると再び動きが止まる。
「カムイ君!? 生きて───!」
「!!」
驚愕しながりも三人が飛び出す。緑谷が身体に走る激痛で動きを止めるも轟と障子の腕が伸びる。
障子が一つ掴み、荼毘がもう一つを掴み轟の手は空を掴む。
「悲しいなあ、轟焦凍」
緑谷が再び肉体に鞭を打つ。
「確認だ。解除しろ」
障子の指を弾くように常闇が現れ、地面に倒れた轟の横で爆豪が現れる。その首は荼毘に掴まれ体の殆どは靄の中。
「問題なし」
「かっちゃん!!」
自分を助けようとボロボロの体で足掻く緑谷に、爆豪はただ一言。
「来んな、デク」
爆豪の姿は完全に靄の中に消え、靄も空間に溶けるように消えた。
「………あ………あ゙あ゙!!」
生徒40名のうち15名が意識不明の重体。重・軽傷者11名。無傷で済んだのは12名。そして2人行方不明。
プロヒーローのうち3名が重傷の意識不明。一方
完全なる敗北であった。
「もう動かねえよな。てか首取れてて何で動くの?」
「体は電気で動くから」
カムイの頭を優しく撫でながら七海は傷口をそっと繋げる。少しだけ癒着した。胸の傷も血が流れないように医療用接着剤を塗っておく。
「ナナちゃんが停電させたじゃないですか?」
「漏れた。すごい電気量」
発電、通電を防ぐ七海の『停電』だが、カムイは停止できる電気量以上の電気を生み出し無理やり動いた。都市の1日の消費電力より遥かに上だ。
「バケモンじゃん」
「すごいよねえカムイ君。血も沢山流れてるねえ」
背中がベットリ血に染まったトガが嬉しそうにいう。
「ん〜! ん〜!!」
と、拘束された爆豪がガチャガチャと拘束具を鳴らしながら暴れる。
「ああ、お友達は無事だよ。首が取れてるのにミスターに攻撃したんだってよ………手足ぐらいは千切っておくべきかな」
と、死柄木がカムイに腕を伸ばす。と………
『どうせすぐ生えるだけだよ弔。黒霧、彼を連れてきてくれ』
モニターから音声が流れ死柄木が手を止める。黒霧がワープゲートでカムイの体を飲み込んだ。
とある施設。電気を吸収する拘束具を過剰なほど繋げられたカムイ。
「雷業と言えど混ざり物。しかし混ざり物と言えども雷業か………凄まじい個性数値じゃな」
「そうだね。だから彼にも友達になってほしいんだ。敵対すれば、間違いなくオールマイト同様ぼくの夢を阻むだろうからね」
かつて自身の顔を奪い、命に届きかけたオールマイト。ドクターがいなければそのまま死んでいただろう。
「七号、念の為もう一度停電しておこう。もしまた動き出したら、2度目はないだろうからね」
「はい」
男の言葉に七海がカムイにそっと触れる。周囲の機械が一瞬停止した。
「ナナちゃんはそろそろメンテもしないとじゃし、一度戻ろう。なぁに、傷はふさがっとらん。上位の脳無数体で見張れば問題ないじゃろう」
カムイが拘束された機械の周りに蠢く数体の影。対オールマイト用脳無にも匹敵する性能………つまりはトップヒーローでも苦戦、ないし敗北の可能性がある戦力が複数その場に残され、男達と七海は泥のようなものに飲まれて消えた。