個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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稲妻カムイ:オリジン

 林間合宿襲撃から翌々日。ヒーロー達はすでに動いていた。

 警察が怪しい目撃情報を既に集めており、その際にツギハギ男………今回の襲撃にて確認された荼毘と思われる男がテナントの入ってないビルに入る姿を目撃したらしい。

 

 そして八百万が襲撃に混じっていた何故かボロボロだった脳無に発信機をつけていた。この2つの情報を下に行動する。

 

 そして緑谷達も八百万の発信機の反応を追い爆豪達を探す。ただし戦闘はしない。戦闘許可の降りない学生の、ヒーローの卵のギリギリのラインだ。

 

 

 

 

「錚々たる顔ぶれが集まってくれた。さあ、会議を始めよう」

 

 警視庁本部庁舎に集まるトップヒーロー達。(ヴィラン)連合と言う、最近までチンピラ扱いされていた集団を相手するとは思えないメンバーだ。それは偏に、彼等の後ろにいる可能性の高い闇の社会に君臨し続けていた魔王、オール・フォー・ワンがいる可能性を考えてだ。

 

「エンデヴァー、君まで来てくれるとは心強いよ」

「黙れ」

「黙れ!?」

 

 No.2ヒーローの参戦に素直に感謝するオールマイトだが凄い目で睨まれた。

 

「貴様の為ではない。娘の為だ」

「娘さん?」

「わがままなど言ったこともないあの子が、友達を助けてくれと俺に頼んだのだ…………」

「友達? 爆豪少年か、稲妻少年か?」

「俺は認めんぞ!」

 

 熱いな。物理的に。

 

 

 

 さて、ヒーロー達は既に連合の居るであろう場所、脳無が置かれている場所は分かっている。だが手を拱いていると認識させる為に記者会見では調査中と報告している。

 

 その記者会見における記者達は当然責める姿勢。

 既に把握している事をわざわざ言わせ、失言させようと画策する。暇な連中である。

 

 だが実際、出来ていなかった事自体は事実。これは雄英というよりは、日本全体で言えることだが組織犯罪へのノウハウが殆ど消えている。オールマイトという絶対的な象徴に悪が恐れをなした結果だ。

 

 たった一人に頼りすぎたツケとも言えるだろう。

 

 そしてそんな事情などどうでもいい。なんなら被害者すらどうでもよく、ただ失言を得たい記者の質問は続く。

 

 曰く爆豪とカムイがヴィランに拐かされ悪の道に堕ちないか、あの凶暴そうな二人がそうならない根拠があるのか、など。

 

「何より稲妻君は体育祭で見せた力。恐ろしかったとプロヒーローさえ呟く…………それは経験豊富なヒーロー達が、彼の中の悪の芽を目聡く見つけたからでは?」

 

 それこそ根拠のない言い掛かり。だが記者の目的は失言を捻り出すこと。これは生放送だが後で切り抜いて世間の流れなど変えられる。ジャーナリズムを扱う自分達が世間の流れを作るのだと本気で思い上がる記者は言葉を待つ。

 

「……………喧嘩売りたいならそういえ」

「ひっ!?」

 

 そう、思い上がり。ただ思い上がった男は本物のヒーローの一睨みに情けなく腰を抜かす。

 

「失礼。確かに彼の力は絶大、恐れを抱く事は否定しません。ですが、彼はその力を私欲に使うのではなくヒーローとして、人の役に立てるために使う事を選んだ。何も知らず憶測で彼を侮辱するのは辞めていただきたい」

 

 

 

 

 

 稲妻カムイ。

 旧姓()()()()帝。

 

 雷業の最高傑作と謳われた男の唯一の子供。

 

 その子供は生まれながらにして雷業の全てを得る権利があった。

 当主の継承の儀を行わず家を飛び出した男が何処ぞの女に産ませた子であっても、最高傑作である父を凌ぐ力。

 

 来る儀まで大切に育てる。逃げ出さぬよう、雷業の粛清部隊が常に身の回りの世話をした。

 

 まあ十になる前の子供一人に皆殺しにされたが。

 

 何故皆殺しにしたか? 許せなかった。何を? その答えは保護された後に初めて知ることになる。

 

「因子が2つあります」

 

 両親の個性因子が混ざった子供が持つ因子とは別。そもそも血の濃さから本来発現する個性は父の物。

 だが彼には母の因子の欠片が宿り、因子には母の記憶が残っていた。

 

 周りの誰もが犯罪者の子。望まぬ妊娠。降ろしてしまえと言う中、母だけはそれでも子供を慈しんだ。

 生まれる子には罪はない。父のような力を持っていても、父のように悪に走らないように自分が育てると。

 

 それでも反対する周りから離れ一人で産むことにした。子供が母の胎を蹴るように、雷を流し母体を傷つける我が子をそれでも愛して。

 

「帝君? どうした、怖い夢でも見たの?」

 

 朝起きて、涙を流す彼に問いかける先輩。少年は窓の外を見つめながら違う、と返した。

 

「俺はカムイだ。母さんが俺に遺した、あの家とも関係ない俺の名前だ」

 

 返せない恩を思い出した。返したくてもここにいない母の愛を知った。

 一人では生きられ…………なくもないが、一人では産まれることが出来なかった命を最後まで守った、たった一人の為だけのヒーローを知った。

 

「ヒーロー………だっけ? あの婆さんに伝えろ。なってやるよ、ヒーローに」

 

 

 

「……………」

 

 異変があったら動く脳無達。逆に言えば彼等は異変を異変と認識出来なければ動かない。

 動く死体。その思考はプログラミングされたロボットと同じか、或いはそれ以下。

 

 雑談もしなければ周囲の仲間の数も数えない。だから気付かない。

 

「…………」

 

 ガシャと一瞬だけ音が聞こえた。何事か振り返ってもそこには何もない。そう、そこに居たはずの脳無も。それでも異変、確認しに動こうとして

 

 次の瞬間には雷速の爪が全ての脳無を貫き研究所を内側から破壊した。

 

「……………何処だここ?」

 

 脳無の履いていたズボンを奪いながら周囲を見渡すカムイ。どうやらどこぞの山の地下室。

 

「馬鹿かヴィランは」

 

 そして何故かカムイのそばに置かれていた宙斬。これがなければ脱出できなかったとは言わないが、カムイの監視用なら雷耐性は持っているだろうから少し面倒だったかもしれない。

 

 本当になんで置かれたんだ。確か気絶する前首のない女が雷爪を使っていたような。

 あの感覚『停電』持ちだろう。ただ個性の効果が残っていて十全に力が使えない。

 

 証拠隠滅のためか、施設が爆発した。爆風より疾く動いて回避。

 状況が掴めない。電波に干渉。ネット…………いや、ニュースを確認。

 

「…………神野か」

 

 雷光が夜闇を切り裂くように走った。

 


 

対電気系個性上級脳無軍団。雷爪による物理破壊で瞬殺。ナナちゃんったらうっかりさん

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