神野のとあるバー。
連合の目的は爆豪の勧誘だ。体育祭の粗暴な言動を見て抑圧された社会がどうだの金や名声で動くヒーローが正しいかだの、問がうんたら。
爆豪曰く「馬鹿だから要約出来ない長話」。簡単にまとめてしまえば「嫌がらせしたいから仲間になってください」という謳い文句を一笑に付す。
爆豪が勝つのが好きなのは確かだ。だがそれは
無論無策ではない。懐柔が目的なら本気で殺せないと判断してのことだ。存外粗暴に見えて考えて動ける男なのだ。
どうにか隙を作ろうとしたまさにその時、オールマイトを筆頭にヒーローが現着した。
壊れた壁からシンリンカムイが枝を伸ばし連合を拘束。燃やそうとした荼毘をグラントリノが気絶させ、壁に穴が空いているがエッジショットがわざわざ扉の鍵を開け警官達が突入してきた。
死柄木が黒霧に脳無を持ってこさせようとしたが指定の位置にいない。別働隊が既に制圧したのだ。
ならばとワープしようとするも、黒霧は即座に気絶させられた。
「爆豪少年だけか…………稲妻少年は何処にいる!!」
「……………さあなあ。先生がナナと一緒に連れてったよ。ナナは彼奴への対抗個性を山程持ってる。そこのガキ同様馬鹿みたいに暴れて殺されてるかもなあ!?」
死柄木は笑う。この状況ではただの強がり……にすらならない負け惜しみだとしても。
「偉そうに! 何が「私が来た」だ! 救えてねえぞヒーロー!? なんでって?
オールマイトという最強のヒーロー。それがさっさと出撃していればカムイはともかく爆豪はその日のうちに帰れたろう。
ニュースを利用しまだ調査中であることを偽り、その間にもこれだけの数のヒーローを集めた。それだけの時間があればオールマイトならとっくにここを制圧して、脳無格納庫も吹っ飛ばしていたことだろう。
ヒーローがこれだけの数いるならオールマイトでなくとも出来たはずだ。
だがオールマイトが動かず作戦に従うから、誰もが無意識にそれが最善最速と判断した。
「お前が作った薄っぺらい平和に甘えたヒーローも、そのヒーローに全部任せっきりの屑共も! ぜぇんぶお前のせいで生まれたんだぜ、オールマイト!」
だからといって好き勝手していい理由にならないし、そもそも行動した悪人が悪いに決まっているただの言いがかり。
「俊典、飲まれるな」
「!! …………わかっています。どれだけ君が今の社会に文句を言ったところで、もう終わりだ」
「終わり………? ふざけんな。こんなところで………お前なんかに…………失せろ。消えろ!」
「奴は何処にいる! 死柄木弔!」
「お前が嫌いだ!!」
その瞬間、黒い泥が空間から溢れ出す。その泥から這い出るように現れるのは間違いなく脳無。
「脳無!? 何もないところから、あの黒い液体は何だ!?」
「エッジショット! 黒霧は!?」
「気絶している! こいつの仕業ではない!」
「どんどん出てくるぞ!」
バーの中に現れる脳無の大群。目的は連合の救出だろう。
「エッジショット! 絶対に放すんじゃないぞ!」
「お゙!?」
と、爆豪の口からも黒い泥があふれ爆豪の体に絡みつく。
「爆豪少年!?」
飲み込まれる爆豪を慌てて引きずり出す、或いは自分事飲み込ませようとすると流動的なそれは爆豪以外受け付けず爆豪の姿が消えた。
一方その頃、緑谷達は息を潜めて戦慄していた。
脳無保管庫。緑谷達がなにかする前にヒーローに制圧され、ヒーロー達の通話を聞く限り爆豪の方にはオールマイトが向かった。
ならばもうすることはないとウォッチマン飯田が帰還を提案した瞬間保管庫の奥から聞こえた声。
一瞬。たった一瞬で何もかも吹き飛ばされた。
ヒーローも建物も地面も。大きくえぐられた景色を前に佇む男の威圧感は緑谷達に死を連想させる。
ヒーロー達は幸い生きてはいるが意識があるのは一人だけ。
「流石No.4! ベストジーニスト! 僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!」
個性『ファイバーマスター』。繊維なら何でも操れるという使い勝手がいいとは言えない個性で全員の服を操り回避させた。
判断力、技術力、相当な練習を必要とする強さ。
「君のは
予想だにしなかったオールマイト級の強敵の出現に、しかし立ち上がろうとしたベストジーニストへの追撃。今度こそ全員倒れるヒーロー。
それを音で聞きながらも緑谷達は動くことすらできなかった。
そこに爆豪が現れてもすぐに体が動かない。
続いて死柄木達
まだこちらに気づいてない筈だ。だから悠長に話している!
フルカウルなら1秒で爆豪の下へたどり着ける!
動こうとする緑谷達を飯田と八百万が止めた。
無謀なんてものではない自殺を止めるために。
「……やはり来ているな」
「!!」
その言葉に飯田の背筋が凍りついた瞬間、何かが急速に突っ込んできた。
続いて男に殴りかかるはオールマイト。
「全て返してもらうぞ! オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すかオールマイト」