個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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神野の悪夢2

「ずいぶん()()()()じゃないか」

 

 受け止めた拳を弾く衝撃で地面が砕ける。途轍もない暴風が連合や爆豪を吹き飛ばした。

 

「バーからここまで5キロ余り。僕が脳無を送って、道中に上級を配置して40秒はかかってのご到着。衰えたねオールマイト」

「貴様こそ! なんだその工業地帯のようなマスクは!? だいぶ無茶をしているんじゃないか!?」

 

 ぼんやりと人骨のような凹凸が刻まれ無数のパイプが生えたマスク。オールマイトに頭蓋をつぶされた過去を考えればあれが生命維持の装置なのだろう。

 

「5年前と同じ過ちは犯さん! 爆豪少年を取り返す! そして貴様は刑務所にぶち込む! 貴様の操る(ヴィラン)連合もろとも!」

「それはやることが多くて大変だ。お互いにね」

 

 オール・フォー・ワンの片腕が異様に膨らみ衝撃波が放たれる。オールマイトを枯れ葉のように吹き飛ばし、後方に有った何棟ものビルを破壊する。

 

「「空気を押し出す」+「筋骨発条(バネ)化」「瞬発力」×4「筋力増強」×3……この組み合わせは楽しいな。増強系をもう少し足すか」

「オールマイトォ!!」

「彼はこの程度じゃ死なないよ。だから弔、ここは逃げなさい。その子を連れて」

 

 と、オール・フォー・ワンの指が黒く変色し赤い稲妻のような模様が刻まれ歪に伸びる。そのまま気絶した黒霧を突き刺すと仲間思いのマグネがワープなら貴方が使えと叫ぶ。

 

「僕のは出来立てでねマグネ。転送距離はひどく短い上に()()移動の彼と違って僕の元へ持ってくるか僕の元から送り出すしか出来ないんだ」

 

 ついでに送り先は()。なじみ深い人物でないと機能しないと言う。

 

「個性強制発動」

 

 黒霧の体から大量の靄が溢れ巨大なワープゲートが作られる。

 

「さぁ、行け」

「先生は………」

 

 どうすんだ、そう言おうとした死柄木の言葉は爆音に遮られる。オールマイトが戻ってきたのだ。

 

「逃がさん!」

「常に考えろ弔。君はまだまだ成長出来るんだ」

 

 再びぶつかり合うオールマイトとオール・フォー・ワン。凄まじい暴風が吹き荒れる。

 

「行こう死柄木! あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれている間に!」

 

 Mr.コンプレスは気絶した荼毘を『圧縮』して回収する。

 

()()を持ってよ」

「めんっ………ドクセー!」

 

 爆豪へ向き直る連合達。6対1で襲いかかり、オールマイトが助けようとしてもオール・フォー・ワンが邪魔をする。

 

 膠着状態。人数差、必ず救けたいオールマイトと嫌がらせできればいいオール・フォー・ワンの精神的な差。

 

 有利なのはヴィラン側。と………その時塀の一部が破壊され巨大な氷山が作り出される。その上を駆け抜けるのは緑谷と飯田、2人に支えられた切島。

 

 勢いそのまま戦場の空を横切る。

 

 オール・フォー・ワンが邪魔をしようとするが、意趣返しの如くオールマイトが妨害する。

 

「来い!」

「………バカかよ!!」

 

 緑谷でも飯田でも、八百万でも轟でもなく。入学してからずっと対等に接し続けてきた切島の呼びかけに応え爆豪が飛び上がり手をつかむ。

 

「何ィィィ!?」

 

 何処にでも現れる、と忌々しげに緑谷を睨む死柄木。マグネが個性『磁力』を使いコンプレスとスピナーにS極磁性を付与して撃ち出すが、マウントレディがボロボロの体で立ち上がり阻止、トゥワイスでもう一発撃とうとしたが、追いついてきたグラントリノが顎を蹴り全員気絶させた。

 

「なぁ、彼奴! 緑谷! っとに益々お前に似てきとる!! 悪い方向に!」

「保須の経験を経て………まさか来ているとは。10代……!」

 

 しかしこれで心置きなく倒せる。

 

連合(こっち)も後二人! 終わらせる!」

「弔君、終わりたくないです」

 

 迫りくるグラントリノに崩壊を行うべく触れようとする死柄木。と、オール・フォー・ワンが再び指を変形させマグネに突き刺す。

 強制発動『磁力』。

 

 マグネの個性磁力は男にS極、女にN極の磁力を付加する。自身には付加出来ない!

 

「え?」

 

 紅一点(N極)に引き寄せられる男共(S極)

 

「やー、そんな急に来られても!!」

 

 勢いよく突っ込んできた男達に押されワープゲートに押し込まれるトガ。死柄木もワープゲートの向こうに引きずられ、マグネは変形した指で放り込まれる。

 

「待て……先生! ダメだ! ()()()()じゃあんた………駄目だ! 俺、まだ──!」

「弔。君は戦い続けろ」

 

 弔の姿が黒い靄に飲み込まれ、靄は空間に溶けるように消えた。オールマイトが隙をさらしたオール・フォー・ワンに殴りかかるがグラントリノが黒い泥を吐き出しオール・フォー・ワンの眼の前に転送させられる。

 

 加えて『衝撃反転』。グラントリノとオールマイトに同時にダメージ。グラントリノの頭が潰れていないのを見るに反転限界があり、グラントリノのダメージは限界を超えた分の衝撃なのだろう。

 

「僕はただ弔を助けに来ただけだが、戦うというなら相手になろう。なにせ僕は君が嫌いだ」

 

 かつて数多いたオール・フォー・ワンの部下達。オールマイトは彼等をその拳で潰して回り平和の象徴と呼ばれるようになった。

 

「僕らの犠牲の上に立つその景色、さぞやいい眺めだろう?」

「────!」

 

 再び膨れ上がった腕にデトロイトスマッシュを打ち付け先程の破壊を相殺するオールマイト。

 

「心置きなく戦わせないよ。ヒーローは()()よな、守るものが。ああ、そのうち1つは守れていないね?」

「黙れ! 稲妻少年の居場所も、すぐに吐いてもらうぞ!!」

 

 オール・フォー・ワンの片腕を握りつぶし、転送する間もなく拳を叩きつける。マスクがくだけ、あらわになった顔には目も鼻もない。歪に歪み嘲笑う口だけがある異形の頭はグニッとゴムのように歪み衝撃を殺す。

 

「おかしいなあ。全てを手に入れるはずだった彼から奪ったのは君達だろうヒーロー?」

「なんだと!?」

「彼は雷業の末だよ」

「────!」

「君達ヒーローが認めず、その存在を消した雷業の子に、どの面を下げて教師なんてやっているんだい?」

「寄り添っているふりはやめろ! 貴様も目的は彼の力だろう!」

「早いなあ、バレるの」

 

 桁外れの個性出力。雷業の血筋というのなら納得というよりは、()()()かという気分。ある意味では予想通りと言えよう。

 

「貴様はそうやって人を弄ぶ! 壊し! 奪い! 付け入り支配する! 日々暮らす方々を! 理不尽が嘲り笑う! 私はそれが許せない!」

「嫌に感情的じゃないかオールマイト。同じような言葉を前に聞いたな。ワン・フォー・オール先代継承者、志村菜奈から」

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