個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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神野の悪夢4

 雷獣形態。

 個性の強さと人間の武術、それを両立させたカムイにとって最強の形態。

 

 放たれる雷撃の一つ一つが本来数億かけて生み出すミサイルすら容易く凌ぐ破壊を生み出す絶対的な力。

 打ち合うは赤黒い光線、緑の雷、闇の球体、ets

 

『反射膜』+『目から光線』+『緑雷』+『ダークボール』+『空気を押し出す』+『黒曜石』+++

 

(対応が早い。あの妙なもろい膜……()()()()()()()()()()())

 

 触れれば破れる薄い膜。僅かに触れた瞬間にはそこに攻撃が飛んでくる。信号を脊髄が受け取り、なんて()()はまるでなく文字通り触れると同時に反射行動をとる類の個性のようだ。

 

 本来個性が一つである事を思えば対応出来るフィジカルがなければ使いこなせない個性。そうでなくとも手数で押し切れるであろうその個性は手数無限大のオール・フォー・ワンが持つことでその真価が進化する。

 

 音速程度で飛んでくる鏃なら遅すぎて回避余裕だが光線や雷撃は文字通りカムイへ迫る速度だ。

 

「CAROLINA SMASH!!」

 

 オールマイトが放つ天災すら破壊した一撃が膜の全てを破壊する。膜が消え失せた場を駆け抜けようとするカムイ。

 

『超反射』+『動体視力』+『弛緩』。

 

 ギョロリと周囲の触手に大量の蛇の目が現れ睨まれたカムイが硬直。電気(こせい)により肉体をマニュアル操作。切り替わり時間は0.2秒。その僅かな時間がカムイの腹を抉らせる。

 

 が、再生。雷爪を振るい目を破壊。膜が張り直された。

 

『触手』+『鉄鱗』+『金属硬化』+『重化』+『質量圧縮』+『加重』+『磁性無視』+『熱耐性』+『伝導率(複製)』

 

「どう防ぐ!?」

 

 超質量の攻撃。地面にたたきつけられればその衝撃で半壊滅状態の街をさらに破壊されるだろう。カムイの雷撃でも焼き切るのに1秒という時間がかかるし、それも一部。オールマイトに残り火を使わせるのが目的か………。

 

 その触手を掴むは瓦礫の巨人。カムイの磁力により操られた鉄筋鉄骨内包する瓦礫により作られた超質量の巨人が拳を振るいあげる。

 

 無数の熱線により切り裂かれ骨の魚、人面触手が噛み砕く。それよりも速く空へと移動していたカムイが両手を合わせ、0.08秒のチャージ。

 

「ハッタリだ」

 

 回避はしない。防御で十分防げる。

 真下は街。放てる一撃の威力などたかが知れている。

 

「ほらね?」

 

 溜めに対して軽い攻撃。予想より少し強かったが、それでもオール・フォー・ワンは防ぎきった。

 

「ヒーローは大変だ。君の父、雷帝の方がよほど強かったよ?」

 

 カムイの父のヴィラン名を呼ぶオール・フォー・ワン。ビキリとカムイが苛立つ。その間にも無数の攻撃が飛んてくる。

 

 オールマイトの対応が少しずつ弱くなっていくのを感じながら、オール・フォー・ワンは避難中の住民を狙ってはカムイとオールマイトに対処させる。

 

 と、不意に触手の数本が崩れ落ちた。

 

「さて、大部ストックが焼き切れたな。今なら、どうかな?」

 

 ゴボッとカムイの口から溢れる黒い泥。カムイを手元に転送したオール・フォー・ワンはカムイに触れる。

 

「イメルカムイ!!」

 

 カムイの個性が奪われる。それは最悪の展開。オールマイトが叫ぶ中オール・フォー・ワンの個性はカムイの個性因子に触れ………。

 

「!!」

 

 オール・フォー・ワンの左手が弾かれる。

 

「これでも容量不足か!」

「触れんな」

 

 接近し過ぎたオール・フォー・ワンにカムイの蹴りが炸裂。大気が弾けるほどの衝撃。

 衝撃反転、衝撃吸収でも消しきれない威力にオール・フォー・ワンの体が空高く打ち上げられる。

 

 再びチャージ。今度は多めに0.1秒。

 それに加えて、竜化。人の武を捨てエネルギー量に特化した姿へと変じる。

 

「肉体の因子への適合………その果てに選択した姿がそれか」

 

 全身から膨大な雷を放つ黄金の竜。バカな、他のヒーローや一般人が余波だけで死ぬ!

 

 そう思い周りを見てみて見れば、傷ついたヒーローも一般人もいない。少し離れた場所に浮かぶ鉄骨や追いついてきたヒーロー達に運ばれる一般人達。

 

「ヒーローだねえ…………」

 

 ちゃっかり人命救助まで行っていたらしい。ならば当然、加減なく全力だろう。こちらも相応の力を以て挑まねば死ぬ。

 

「因子解放……」

 

 『絶縁』+『源電』+『伝導率(複製)』+『電撃拡散』+『ゴム化』+『電気ウナギ』+『電気拡散』+『雷操作』+『操電』+『送電』+『電気耐性』+『電熱処理』+『熱耐性』+『酸素供給』

 

 触手に無数の人の顔が浮かび上がる。電気への耐性、電気の操作、電気の誘導、電気を減らすなど雷への対策に加えて発生する熱、オゾン化にまで対策するために全力で使用される個性の元の持ち主達の顔だ。

 

「僕のは醜くていけないねえ」

 

『雷竜咆哮砲!!』

 

因子解放『全ては一つを守るために(オール・フォー・ワン)

 

 夜が昼に変わるほどの光量。街が壊されてなければカムイのその一撃の余波で壊されていたであろう高熱による空気の膨張、大気のオゾン化。カムイが作り出していた雷雲もろとも吹き飛ばし汚れた大気は消え美しい星空が姿を現す。

 

 削減されてなおも膨大な電気エネルギーは拡散しまるで巨大な光の木のような光景が隣町からすら確認できた。

 

 磁気が乱れ降り注ぐ宇宙線を吸収しながら体力の回復に努めるカムイだが、ドクドクと夥しい血が傷口から流れ落ちる。

 

「いやぁ、大したものだ」

「────」

 

 人の姿に戻ったカムイのそばに落ちてきたオール・フォー・ワンの首。生命維持装置を残して投げ飛ばされていた首から身体が再生していく。

 

「これはすごく疲れるんだよね。脳無みたいに体をいじれば別だけど、そこまで出来るほど健康じゃないんだ」

 

 何処からか転送してきた脳無に持たせた襤褸布を纏い身体を隠すオール・フォー・ワン。だから、と楽しげな声でカムイに手を向ける。

 

「君の肉体を強すぎる個性から守り続ける、母親の方の個性を貰おうか」

「………デヴィット・シールド」

「?」

 

 唐突に出された名前に困惑するオール・フォー・ワン。悪の道に踏み出したオールマイトの親友だ。嫌がる顔を想像し、彼がさらなる悪に染まるようにヴィランに力を与えたが、まさかそれを蒸し返すつもりだろうか?

 

「いい発明だったよな、因子増幅器………薬も使わねえ人体へのリスクのない強化装置」

「ウォルフラム君には頑張って量産にこぎつけてほしかったねえ」

「何よりいいのが、あれが()()()()で因子に干渉するところだ」

「──────」

 

 気付いた時にはもう、遅い。

 

「あんたの親友の願い、届けたぞオールマイト」

「DETROIT!!」

 

 筋骨隆々(マッスルフォーム)のオールマイトの拳が迫る。

 

「SMASH!!」

「が!!?!」

 

 拳の衝撃。さらに追い打ちで電撃。

 規格外の拳に雷属性の付与がされている。

 

「MISSOURI!!」

 

 個性で対応しようとした瞬間後頭部に一撃。意識がブレる。

 

「TEXAS!!」

 

 打ち上げられる。体が痺れて動かない!

 

「New Hampshire!!」

 

 追ってくるオールマイトに何とか距離を取ろうと推進力を生み出す個性を使うが大気を叩いた反動でオールマイトが方向転換。ついでとばかりに膝を食らう。

 

「CALIFORNIA!!」

 

 そのまま縦回転。たたきつけられる拳により地面に落下。

 

「調子に………!」

「Oklahoma!!」

 

 無数に枝分かれし迫る鋲を砕きながら叩き込まれる拳がオール・フォー・ワンを吹き飛ばし、オールマイトはそれより早く先回り。

 

「UNITED STATES OF!!」

 

 カムイにより届けられた天才デヴィット・シールドの作り出した個性因子増幅装置の信号パターンにより激しく燃え上がる因子をさらに燃やし、全身全霊、渾身の一撃が放たれる。

 

「SMAAAAASH!!」

 

 拳が地面を叩いた衝撃だけで局所的な竜巻が発生し地面が陥没する。隕石の衝突の如き威力を数多の個性で防ごうとするも防ぎきれず地面にめり込んでいくオール・フォー・ワン。

 

 土煙が晴れ、立つのは一人。傷だらけの英雄。

 

「「「オールマイト!!」」」

 

 カムイ達の元まで響く街中の………或いは日本中の声に応えるようにオールマイトは片腕を持ち上げる。

 

(ヴィラン)は動かず! 勝利! オールマイト!! 勝利の!! スタンディングです!!』

 

 ボロボロの体で無茶をする。彼なりの最後の仕事だろう。

 所詮は残り火の因子。一瞬だけなら強く燃やせても、回復させる手段はカムイにはない。

 

 平和の象徴は最早戦えない。それでも、ここにありと人々に示す。

 

「見てるか婆。あれが本物だ………」

 

 

 

 その後カムイは救出に来たヒーローが連れてきた救急隊員に運ばれる。瓦礫の山を進むにはヒーローの個性がなければかなわない。

 

 多くのヒーローがカムイが緊急性がないと判断したまだ生命活動が活発な住民を助けていく。多くが助かるだろう。それでも、すでに死んでいる人間までは蘇らない。

 

『次は………』

「…………ん」

 

 救急車に乗り込む前に、ビルの大型ディスプレイからオールマイトの声が聞こえていた。

 

『君だ』

「……………」

 

 響く歓声。

 まだ見ぬ犯罪者への警鐘、折れぬ平和の象徴の姿。されど本当は、次に託すという託宣。それを向けられたのはきっと………。

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