「死ぬかと思ったね、実際」
全治2日。命に届いてもおかしくない傷に不治の個性まで使われて2日で治ったカムイ。念の為追加で一日入院させられた。
「も、もう治ったんだ」
「ああ」
見舞いに来た緑谷も困惑していた。流石にA組全員で押しかけるのは迷惑とのことで委員長の飯田と副委員長の八百万。それから緑谷と轟、後峰田。女子は葉隠と梅雨。クジで決めたらしい。
「爆豪は?」
「かっちゃんは、無事だよ。今は家から出ないようにって………」
「ていうかお前も自分の心配しろよな。テレビにお前映ったと思ったら血だらけになってんだもん」
峰田が心配そうに言ってくる。女にモテたいがためにヒーローを志した彼ではあるが、存外その性格は友達思い。案外ヒーロー向きの性格をしているのだ。
「まあ俺は基本的に自分の心配したことねえからなあ」
「なんでー? 駄目だよ、ちゃんと自分の心配しなきゃ!」
「首取れても治る体質でどうやって自分を心配しろってんだ」
首取れても、と言う言葉で全員が言葉に詰まる。事実全員ではないがカムイの首が取れていたのを目撃したし、その話も聞いている。
「本当、なんですの? てっきり見間違いかと………」
「ラグドール庇った時にな………そういやラグドールは?」
「ケロ。彼女も無事よ………森の中で気絶しているところを保護されたわ」
「個性は………」
といいかけやめた。あの時にオール・フォー・ワンに触れられ、その後の反応。サーチは奪われたと見ていいだろう。
「ラグドールさん、お礼を言っていたわ」
「君が気にすることじゃないよカムイ君。ネットでも一部言っているものがいるが、気にすることはない!」
「…………ネット?」
「ああ。オールマイトと戦える相手とだったのに、好き勝手言ってくれるよな」
ほら、と携帯を見せてくる轟。掲示板にヒーローの卵がヴィランからヒーローを守った事が記事になっている。コメントでは賞賛する声多数だが一部『守れてねえじゃん』とアンチのコメントがある。
「ただ、どうにも正規の情報誌じゃない事からもわかるように、本来はこの情報は上げられないはずでしたの」
八百万が少し元気なく言う。そりゃそうだ、ヒーロー候補生の学生がプロヒーローでもやばい相手と戦った、など戦闘許可があろうと表向きに出来る筈がない。
英雄的な行動に憧れて無謀をなされては適わない。それでも上がったのは…………
オールマイトとの共闘時点で相当評価の高いカムイにラグドール………『プッシーキャッツ』という人気ヒーローの命を守ったという実績を加えれば、人気に拍車が掛かるというものだ。
公安だな………。あの婆め、余計なことを。これで誰かの評価が下がるということはないだろうが………。過ぎたとは言え女の危機を使って名を上げるのはどうも気に食わない。気分の問題だ。と
「カムイ君!」
病室のドアが勢い良く開き一人の女性が入ってくる。轟冬美だ。後ろには微妙な顔のエンデヴァー。
「攫われて、しかも戦って……怪我も酷くて、大丈夫なの!?」
「ああ、問題ない」
ほら、と入院着を引っ張り傷跡を見せる。血は出ておらず、傷跡だけが残っている。傷の治療、治癒を阻害する個性ではあったが効果は永遠という訳では無いらしい。
「良かったぁ………」
傷跡に触れ血が流れていないことをその目で確認して漸く安堵。心配をかけてしまったようだ。カムイはこういう時どうすればいいのか分からない。
「おいこらカムイぃ! 誰だよこの美人さんは!!」
なので空気の読まない峰田がいてくれて助かった。
「姉さん……?」
「え? あれ、焦凍!」
轟の疑問の声に漸く自分達以外にも病室にいることに気付いた冬美。自分が服のはだけた弟の同級生に文字通り触れ合う距離にいることを思い出しバッと離れる。
「ケロ………轟ちゃんのお姉さん?」
「カムイさんとはどのようなご関係で?」
「ていうか近ーい!」
三者三様の反応を見せる女子達。冬美はええと、と言葉に迷う。
「見合い相手」
「ちょっ!? カムイ君!?」
「見合い? 姉さんとカムイが…………っ! てめぇ!」
困惑していた轟は直ぐにエンデヴァーを睨み付けた。
「提案したのは俺の母親代わりだ。エンデヴァーは寧ろ反対派だな」
「当然だ! まだ早すぎるだろう!」
「お父さん!」
恥ずかしそうに叫ぶ冬美。1位になること、1位になる夢を継がせることに固執しているかと思えば、彼なりに家族を大切には思っているのだ。彼なりなのでくっそ分かりにくいが。ちなみに奥さんの好きな物も言えるらしい。冬美とカムイが2人で庭園歩いている時会長が世間話をして知った。
「カムイの保護者が?」
「ああ。幸せな家庭築けってな」
「家庭!?」
葉隠がギョッと冬美を見る。まあカムイ以外には見えないのだが。
「で、でも断ってるからね! お互いよく知らないのに結婚とか、幸せになれないと思うから」
「…………」
緑谷が『この人が言うと重みが違うなぁ』と言いたげな顔をしていた。
「それって、お互いを知ってれば可能性があるってことですか!?」
「い、いやそれにほら、年だって離れてるしね!?」
別段世間じゃ珍しくもない年の差だけど。グイグイいくじゃん葉隠。
「少なくともお見舞いに来る関係ではあるんですね」
「友達! 友達だから!」
も〜、と顔を赤くする冬美。反応がいちいちかわいい。きっと多くの生徒の初恋を奪っているに違いない。カムイ? 此奴は若干マザコン気質だから。
「心配かけたな」
「………うん。無事でよかった。本当に」
「…………………」
クラスメイトといい冬美といい、自分を心配する相手が増えた。まああんな大怪我は初めてだし会長も心配してたか。
「ケロ……カムイちゃん。貴方を心配する人が、こんなにもいるわ」
「ん? ああ」
「だから、自分を大事にしてほしいわ」
「………………」
常闇を救った時も、カムイがヴィランへの攻撃ではなく自分が逃げることに使っていれば逃げられただろう。
オールマイトを助けに行った時だって、傷は全然塞がっていなかった。結果的に常闇やオールマイト達が助かったし、なるほどカムイはヒーローらしい事をした。
「それでも、自分を守れないヒーローは、何時か全てを取りこぼしてしまうわ」
「………」
「緑谷ちゃん達が助けに行くと言い出した時、私止めたの。悪い言い方をすれば見捨てたのよ」
「そりゃ悪く言いすぎだろ」
ヒーローに任せただけだ。助けに行かない、行くべきじゃないと言ったのは、任せるべき相手がいると、それだけの事。
「カムイちゃんは強いから、カムイちゃんならきっと爆豪ちゃんを連れて………そんなふうにも思っていたの」
「………………」
「でも貴方も、ヒーローも、オールマイトも……傷付いて倒れる人間なのよ。だから………」
「……………わあったよ。心配かけて、ごめん梅雨ちゃん。次からもっと自分も大事にする」
と、梅雨の頭を撫でるカムイ。涙を流していた梅雨はケロケロと笑う。
「そうですわね。私達が頼れないというのもあるでしょう………だから、強くなりますわ」
「うん! だから、ちゃんと頼ってよ!」
「僕も、次こそ守れるヒーローになってみせる!」
「精進あるのみだ!」
「オ、オイラも頑張るぞ!」
「俺も、ちゃんと頼れるヒーローになるからよ」
その言葉にカムイはそうか、と返す。映像は見ただろうに、あの強さを見てもまだ心配して、守れる、頼れる、そんな存在になろうという。
「ふふ………」
「冬美?」
「カムイ君、この前言ってたよね? あの人が私とカムイくんをお見合いさせたのは『幸せな家庭』を作らせるためって………でも、カムイ君は一人じゃないんだね」
「…………………そうだな」
微笑みかけてくる冬美に笑みを返す。
「俺は認めんぞ!!」
顔の炎が激しくなるエンデヴァー。火災報知器が作動。ナースに怒られすごすご出ていった。
「ところでその傷、やっぱり残っちゃうの?」
「いや。別に消そうと思えば消せるが………」
母の個性はカムイを雷業の個性から守り続けるほどに強力な個性だ。傷跡など完全に治せる。
「じゃあなんで?」
「そりゃ、俺があの女(の強さ)を忘れないためだ」
「──────」
勝利の後で気が抜けていたとはいえカムイの反応を超える速度。そんな相手は初めてだ。
「(ヴィランの)女なんかにゃ興味はなかったが、初めてだ。忘れられねえ、忘れたくねえと思える奴にあったのは……冷た」
カムイの体を濡らしていたスプリンクラーの水が冷気により凍り付いた。
冬美ちゃんはまだフラグが立ったわけではなく、心配してるのに自分を傷つけた女を忘れられないとか言って怒ってるだけ。
感想待ってます