本日のヒーロー基礎学。
相澤、オールマイト、そしてある一人のヒーローの三人体制になったらしい。
(
今回のコスチュームは各自の判断で着るか着ないか決めるらしい。純粋な戦闘服の場合もあるし、一つの環境に特化した場合もあるからだ。
緑谷は修理中なので体操服になった。
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順で2列にならぼう!」
学級委員長として指揮する飯田だったが前方が対面、後方が横列の市営バスのような席並びだった。
「こういうタイプだったかー!」
ショックを受ける飯田。各々自由に座っている。葉隠はコスチュームなので当然全裸だ。
「私思ったこと何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」
「あ、ハイ! 蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで。貴方の個性、オールマイトに似てる」
「!?」
面白いぐらい動揺しているのが脳の電磁波から伝わってくる。確かに威力だけならオールマイトに匹敵する超増強型の個性。しかしオールマイトは怪我しないだろ、と切島という生徒が言う。
因みに彼は硬化。対人では強いが派手さのない地味な個性と自虐する。まあ堅実とも言えるが。
「派手に強いって言ったら轟や爆豪、稲妻だよな」
「爆豪ちゃんはキレてばかりで人気でなさそう」
「んだとコラ出すわ!」
「ホラ」
爆発の個性だけあり感情も爆発しやすいようだ。個性が人格に影響を与えるという研究結果も眉唾ではないのかもしれない。
「なあ稲妻。オイラもお前に聞きたいことがあんだよ」
「ん?」
でかい葡萄みたいな玉がついた少年、峰田がカムイに話しかけてきた。
「お前昨日の訓練で葉隠触ってたよな! 葉隠って全裸なんだろ!? どんな感触だった!」
「ちょっと!?」
「なんかしっとりして柔らかくて……………粘液の少ねえでけぇナメクジ」
「ちょっとぉ!?」
「しっと……柔らか!?」
もー! もーー! と葉隠が叩いてくるがこれっぽちも痛くない。
「爆豪はクソを下水で煮詰めたみたいな性格だけど峰田は腐った葡萄を煮詰めたみたいな性格だな」
「テメェのボキャブラリーはなんだコラ殺すぞ!」
などと会話が進み、バスも進みやがて目的の場所にたどり着く。
ちょっとした川の広さがあるウォータースライダーに人造滝があり渦巻きが常に回る池のある水難ゾーン、燃え盛る街の火災ゾーン、土砂が敷き詰められた土砂災害ゾーンに、倒壊した街から巨大なドームまで。ちょっとしたテーマパーク並みの広さだ。
「すげぇ! USJかよ!?」
因みに名前は『
後はオールマイトを入れての三人体制のはずだが何故かいない。
「えー、始める前にお小言を一つ、2つ……3つ、4つ」
なんか増えた。
「皆さんご存知かと思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます」
人を引き寄せたり瓦礫を撤去したり水を吸い出したりと、災害救助でとても役立つ。
「しかし簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういう個性を持つ人もいるでしょう」
「………………」
カムイは無言で腕を組んだまま耳を傾ける。
超人社会と呼ばれる今の時代は、しかし実態は個性を制限し超人を常人の枠組みに押さえつけ成り立っている。一歩間違えれば容易に人を殺せる『いきすぎた個性』を誰もが持ち得ているのだ。そのことを忘れないように忠告する。
相澤の授業で自身が秘めている力の可能性を知り、オールマイトの授業でそれを人に向ける感覚も覚えた。この授業ではその力で人を助けられることを知る。
「君達の力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上、ご清聴ありがとうございました」
「ステキー!」
「ブラボー! ブラボー!」
麗日と飯田をはじめ生徒達が拍手する。
「そんじゃあまず……」
と、相澤が指示を出そうとした瞬間だった。広場からズズと異音。黒い靄のようなものが渦巻く。
昏く暗い闇のような黒。空間に空いた穴のような縁を掴む手。
「……………!」
その奥から目が見えた。赤い瞳。なのにその闇より暗い悪意を宿した目。
直ぐに全身が露わになる。
手のようなオブジェを全身につけた異様なスタイル。顔も手で掴まれるように隠されている。
続いて現れる顔を隠した集団。中には顔を隠していないのもいる。その中の1人、脳がむき出しとなった黒い大男。
「ん?」
ドムッと妙な音が響く。掌男が振り返れば何時の間にか大男に接近したカムイの拳が大男の胸に打ち込まれ、しかし大男はなんの反応も示さない。
「なんだよ、速いな。でも無駄だ、脳無に打撃は通じねえ。やれ」
その言葉に脳無と呼ばれた男が反応しカムイの腕を掴む。尋常ならざる怪力でカムイを振り回す。ブチンと音が響き火災ゾーンまで吹き飛ばされた。
「ハハ。まず1人だ………」
脳無は握っていた
「っ! 稲妻君!」
「思ったより強かったな。オールマイト以外で俺を吹っ飛ばせる奴がいるなんて」
瓦礫を押しのけ立ち上がるカムイは素直に敵の強さを賞賛した。と………
「なんだぁ? ワープで連れてくるんじゃなかったのかよ」
「ガキ一人か。俺に焼かせろ!」
「かわいい坊や。いい悲鳴で泣いてねぇ」
周囲にヴィランの集団。腕から炎を出す男、炎の鬣を持つ獣型の異形系、髪が炎の女、燃える骨、口から火をチロチロと吐き出す蜥蜴など様々。
「燃え死ねやぁ!」
先んじて炎を吐き出すのは口元が牙に覆われた男。カムイはあっと言う間に炎に包まれた。
「おいおいいきなり肺まで焼いたら悲鳴が聞けねえだろ」
「何やってんだ。ギャハハハ!」
ゲラゲラと笑うヴィラン達は、しかしすぐに笑いをやめる。立ったままのカムイが、炎の中で微動だにしない。熱硬直で動く様子すらない。人の肉が焦げた匂いすらしない。
「火力、足りない。足りてなぁい? もっともっと燃やせ。嗅がせろぉ、人の燃える匂いいい!」
と、全身大火傷の不気味なヴィランが腕を上げると周囲の炎が渦巻きカムイを包み込む。
個性『操炎』!
あらゆる炎を意のままに操る! 増やせないし温度は上げられないので種火を必要とするぞ!
因みに放火魔。名前は……
「おらぁ!」
学生に蹴り飛ばされる雑魚ヴィランで十分だ。
火傷の跡一つないカムイはゴキリと首を鳴らし驚愕するヴィラン達を獰猛な笑みで睨む。
「どうした? 来いよ! 俺を殺すんだろう!?」
「ず、図に乗るな!」
「ぶっ殺せええ!」
炎弾、熱線、炎剣、炎の渦、炎の拳、炎の獅子に炎の蛇、炎髪。
火災ゾーンに潜むだけある炎熱系の個性の大群。
炎の髪を持つ女の顔を掴み獅子へ投げつけ、諸共蹴り飛ばす。炎と渦で包まれるも渦の中から発生した稲妻がヴィランを焼く。
「こ、こいつ炎が効かねえのか!? なんで!」
「さっきから燃やしてんのになんで効かねえんだよぉ!!」
と、地面が盛り上がり巨大な腕が出てくる。
「おおおれににに、まかせろろろら!!」
現れたのはスライムのように不定形な赤く発光する体を持つヴィラン。殴りつけるがバチャリと一部がはじけるだけ。
個性『マグマ』。全身溶岩人間だ! 物理攻撃は一切通じねえ!
「俺に触れても燃えねえええ!? なんでだ!? だがなあああ………がぶぅ!」
そのまま標的に噛み付くヴィラン。
マグマは液体であるため一定温度を超えると蒸発してしまい上限温度は決まっている。そのヴィラン単体では1400度が限界だが、沸点の高い別の何かを取り込むことで温度を上げられる。
火災ゾーンに使われる材質は本来熱に強いが、それを体内で融かし、かつ温度を上げていく。
「蒸鉄熱波!」
体内で沸点を超えさせ、膨れ上がった蒸気の圧力を利用し吐き出す。文字通り鉄すら融かす超高温の吐息。同じ炎熱系の個性持ちですら近付くだけで火傷しそうな大技の温度は実に5000℃。だが………
KABOOOOOM!!
響く雷鳴。ゴロゴロと余韻が響く。
訓練では雷鳴が一切発生しない程度に調整されていた落雷とは比べ物にならないエネルギー量。
ヴィランの攻撃を掻き消した。
「どうして効かねえかって?
雷鳴の原理。それは空気が音速で膨張した証。
雷の温度は、実に約30000℃。それが一瞬で行われる。
宣言通り、エネルギーの絶対値が比べ物にならない。
「久々に遊べそうなんだ。邪魔してえなら、殺す気で来い!!」