「わあああ! 駄目駄目ちょっと待──!」
抵抗虚しく緑谷の部屋が開け放たれる。
出迎えたのは数多のオールマイトグッズ。壁一面のポスター、机の上にフィギュア。カーペットもオールマイトグッズだ。
「オールマイトだらけのオタク部屋だ!」
「憧れでして………お恥ずかしい」
照れくさそうな緑谷。部屋には本人のあり方が映し出される。緑谷はとてもわかり易い。ヒーローノートも本棚にあるし。
「ふん、くだらん」
と、常闇。部屋の扉の前に陣取り動こうとしない。芦戸と葉隠に力尽くでどかされた。
「黒! 怖!」
「貴様等………」
鹿の頭蓋骨の壁飾り、人の頭蓋骨の置物、黒いカーテン、黒いシーツ、黒いカーペットと黒尽くし。なんか闇の魔法使いが着てそうなローブも壁に掛けてある。妙な絵画に、金色の杯(プラスチック)や燭台(LED)。
黒魔術でもやってそうな部屋だ。天井にも黒いリメイクシートと目の模様のポスター。壁にはどんな土産屋でも見かける小さな剣のキーホルダー。
本物サイズの剣や盾もある。勿論贋物だが。
「このキーホルダー、俺中学の時買ってたわー」
「男子ってこういうの好きなんね」
「かっこいい」
「出ていけ!」
「一応
「………ああ」
カムイの言葉に常闇は力なく頷いた。瀬呂と上鳴がぽん、と肩に手を置いた。
続いて青山ルーム。
ラメカーテン、壁紙、シーツ、カーペット、大量の鏡に何故かある2つのミラーボールとギラギラ輝く鎧。
「まぶしい!」
「ノンノン。まぶしいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!」
「思ってたとおりだ」
「想定の範疇を出ないよね」
葉隠と芦戸はすぐに興味を失った。さて、残る2階の住人は峰田だが………。
「入れよ。すげえもん見せてやるよ」
ハッ、ハッと呼吸を荒く手招きする峰田。
「3階行こ」
「入れよ………なぁ………」
誰も峰田の部屋に入ることはなかった。
飯田ルーム。
本が多い以外は一見普通の部屋だ。
「難しそうな本がズラッと。さすが委員長!」
「個人で持つにしては少なくありませんか?」
「八百万の家は一人一人に書斎数部屋用意されてたからな」
「え? 私達知らないけど、カムイだけ知ってんの!? なんでなんで!」
芦戸が詳しく! と絡んできた。
「以前勉強会の際、私とカムイさんは教える側でしたので資料を用意する際に」
「なぁんだ」
「見てこれ! めっちゃメガネある!」
と、何がツボったのか壁の棚に大量に置かれたメガネに麗日が噴き出した。
「何がおかしい! 訓練による破損などを考慮して!」
「取り敢えずレンズが劣化するのと落ちて割れる可能性もあるからケースに入れとけ」
「ムッ、確かに!」
上鳴ルーム。
「チャラい!」
「手当たり次第って感じダナー」
「えー? よくねー!?」
スケボー、バスケットボール、ダーツに複数の帽子などなど。なんというか、かっこいいと思ったものを取り敢えず買った感。
口田ルーム。
「うさぎいる! かわいいー!」
ペットのウサギがいる以外は普通部屋だ。若干物が少ないのはウサギの安全の為だろう。ちなみにウサギの名前は
何故か飯田ルームからメガネを持ってきたままの女子達に可愛がられている。
「ペットはズリーよ。口田、あざといわあ」
なんか競い出した。
「…………釈然としねえ」
と、上鳴。
「そうだな」
「僕も☆」
色々言われた常闇と青山もだ。
「男子だけが言われっぱなしってはぁ、変だよなあ? 「大会」っつったよな!? なら当然、女子の部屋も見て決めるべきじゃね!」
と、峰田。芦戸が「いいじゃん」と乗り気になる。耳郎は「え…」と嫌そう。A組の中で実は一番異性との距離感が年頃なのは彼女だったりする。
「えっと、じゃあ部屋王を決めるってことで!」
「部屋王」
峰田はニヤリと笑う。自分だけの主張なら絶対に………そう、絶対に通らない提案も少なからず自尊心を傷付けられた男子の意思に乗じることで民意を得る。
これにより自然に女子部屋を物色できる!
「取り敢えず峰田は部屋入られてねえから女子部屋入るなよ」
しかし現実は無慈悲である。
「さんせーい!」
「うん。ウチは絶対入れたくない」
「うーん。眺めるだけならよし!」
「そうですわね。タンスなどに近付かないなら」
寮長の提案に乗る女子組。峰田はその場で崩れ落ちうわああああああ!! とガチ泣き。魂胆が見え見えであった。
一先ず男子部屋を先に見て回るために4階へ。爆豪、切島、障子の部屋だ。爆豪はくだらないと寝ているので切島と障子。
「じゃあ切島! ガンガンいこう!」
「どーでもいいけど女子にはわかんねーと思うぞ。この男らしさは!!」
切島ルーム。
『大漁旗』に『必勝旗』。自分で書いたらしき気合、男気、寝るなと書かれた紙、日課のトレーニング予定に『男とは燃えてこそ!』と書かれた紙。格闘映画のポスターとヒーローのポスター。ラックの上に炎をもしたランプにロボットのフィギュア。後ジャンプ。
サンドバッグが置かれ、床にはダンベル。
「…………うん」
「彼氏にやってほしくない部屋ランキング2位くらいにありそう!」
「アツいね! アツクルシイ!」
「ほらな!」
「俺もよくわからん。次、障子か」
「別に面白いものなんてないぞ」
障子ルーム。
「面白いものどころか!」
布団、座卓、座布団のみ。
「早く女子に行くぞ! 適当に済ませろ!」
「急にどうした峰田」
「こうなったら覗くだけでもしてやる!」
瀬呂ルーム。
「エイジアン!」
「ステキ~」
「瀬呂ってこういうの拘るやつなんだ」
アジアンインテリアで統一されたオシャレな部屋。
轟ルーム。
「和室だ!」
「造りが違くね!?」
「カムイが手伝ってくれた」
砂藤ルーム。
「まー、つまんねー部屋だよ」
「轟の後は誰でもそうだって。つかなんかいい匂いしねえ」
「ああイケね! 忘れてた! だいぶ早く片付いたんだよ! シフォンケーキ焼いてたんだ!」
「ギャップの男シュガーマン!」
稲妻ルーム。
「最後はカムイかー………うま」
「どんな部屋なんでしょう………美味しい」
「ギターとか置いてそうだよねうまっ」
「ギターとか別に趣味じゃねえよ」
扉を開ける。机に何やら基盤が置かれ、棚には複数の機械。自作PCなんかもある。
「おお〜、こういう趣味あるんだ?」
「電気の細かい調整の練習用だがな。完成したのは中古屋で売る」
「こっちもなんかうまそうな匂い」
「クッキー焼いてたんだ。一人暮らしの時の小麦粉余ってたから」
「こっちもギャップ!!」
ジャム塗って食った。
「これで最後だな女子行くぞ女子うまっ!」
「落ち着けってうま」
「やだなー…………うま」
女子棟2階。
「ちなみに2階の4部屋は書斎になっておりますので、皆さんも後で借りてくださいね」
「うち2部屋は机と椅子がなくて本棚だけだけどな」
「ああいった整理は初めてでしたが、なかなか楽しかったです!」
因みにカムイも手伝った。その際に2冊ほど本を借りた。「原子の世界」と「ノンフロン冷凍」の2冊。
「基本的に男子が来ていいのは2階までな。特に峰田」
「上がっていいの今回だけだかんね。特に峰田」
「私は別に遊びに来ていいよ〜。峰田君以外!」
「オイラがなにしたってんだ!?」
「教室内でのセクハラ発言、更衣室覗き未遂、女湯覗き未遂」
一同はそのまま3階に向かう。
耳郎ルーム。
「………はずいんだけど」
「思ったよりガッキガッキしてるな!」
ドラムやギターなど楽器が置かれている。ロッキンガールと言うやつだ。
女っ気がないだのノン淑女☆だの言った上鳴と青山がイヤホンジャック食らってた。
葉隠ルーム。
「次は私、葉隠だー!」
可愛らしいぬいぐるみが複数。カーテンは音符柄、シーツは花柄と女子らしさが出ている。
「プルスウルトラプルスウルトラ」
耳郎と異なり女子女子している部屋にフラフラ入ろうとする峰田。視線はタンス。一歩部屋に踏み込んだ瞬間カムイの雷食らった。
「…………」
軽く痛み与えるつもりが気絶した。そう言えば獣化以来個性使ってなかった。出力がガバに………いや、個性が成長してるなこれ。
気絶した峰田を縛って置いて4階へ向かう。
芦戸ルーム。
「じゃーん、かわいいでしょうがー!」
柄物が多い。
麗日ルーム。
「味気のない部屋でございますが………」
もともと一人暮らしだからか生活感の溢れる部屋だ。小物などが女子って感じ。次は梅雨ちゃんの部屋だが………。
「梅雨ちゃんは気分が優れないみたい」
「優れんのは仕方ない。優れた時に見せてもらおうぜ」
「…………………」
最後の部屋へと向かう際、カムイが振り返るとこちらを見つめる梅雨ちゃんと目があった。
「じゃ、最後は八百万か………」
「それが……私、見当違いをしていまして。皆さんの創意工夫あふれるお部屋と比べて…少々手狭になってしまいましたの」
部屋の半分以上を天蓋付きベッドが占領していた。後は本棚や机がある。
「でけぇー! 狭! どうした八百万!」
「私の使っていた家具なのですが………まさかお部屋の広さがこれだけとは思っておらず」
お嬢様なんだね。
一階談話スペース。
「んじゃ八百万、投票用紙作ってくれ」
「普通の紙でよくない?」
「全員分の名前と、本人には横線か色。委員長投票のような不正はなしだ」
「うう………」
自分に投票し副委員長になった八百万はいたたまれない。
「さてそれでは、爆豪と梅雨ちゃんを除いて第一回暫定部屋王は! 投票数3票、砂藤力道〜!!」
「俺ぇ!?」
「ちなみに全て女子票! 理由はケーキが美味しかったから!」
「私はクッキー!」
「私もカムイさんに投票しました。クッキー、美味しかったですし」
「「「部屋は!?」」」
一同はそのまま解散しようとしたが、お茶子が救出組を呼び止めた。カムイは先程の梅雨ちゃんを思い出し何も言わないことにした。
「カムイ………」
「障子か、なんだ?」
カムイも部屋に向かおうとすると障子が話しかけてきた。
「寮長のお前に頼みがある。明日、みんなに時間を作ってもらえないだろうか」
「食事の後でいいか?」
「出来れば食前がいい。あまり、愉快なものではないからな」
そう言ってマスクを…………いや、口元を擦る障子。林間合宿でも頑なに取ろうとしなかったマスク。
「共同生活をする以上、何時までも隠し事をできるとは思わないし……できるなら、隠したくないんだ。これは………」
「……………隠し事、ねえ」
「?」
「いや……そうだな。ついでに俺の生まれについてもちょっと話すか」
全部が全部話せるわけじゃないが、雷業については話しておくか。どうせもう存在しない家の事だし。