8月も終わりが近付く。二学期も目前まで迫る中、雄英高校運動場の一つ。
砂鉄の海月の上に立つカムイ。その周りで膝をつく者、倒れる者、まだ立つ者達、全員A組の面々。
「そら来いよ。俺に追いつくんだろう? 世代の差なんざ覆すんだろ?」
使用申請をした運動場での訓練。A組全員−1VSカムイ。結果はやはりカムイの圧倒。
それでも、誰の目にも諦念は映らない。動けない者達含めて、巨大な壁の頂を見つめる。
カムイは話した。自分が今この世界において最も世代を経ていると。個性婚故に強力な個性であると。
初期スペックからして違うと。それでも皆、並んでみせると言った。追い抜いて見せると言う者もいる。知った上で言ってみせた。
ならば全力でなくとも、本気で応えよう。彼等が追いつける様に手を貸そう。
「たりめぇだ! 俺等まだ倒れてねえだろうが!!」
「まだ、まだぁ!」
「…………」
汗を流し体が暖まってきた爆豪。フルカウルの許容限界ギリギリを
現状、この三人がカムイを除いたA組TOP3。まだ動ける者達。
限界だと膝を折りそうになる体を奮い立たせる。
さらに向こうへ。
「こいよ、
「で、テンション上がって運動場の一つをぶち壊したと」
「面目ねえ」
職員室にて正座させられたカムイ。相澤ははぁ、と頭を抱える。人口密集地や工業地帯をモデルとした運動場でなら説教の一つでもしたが、一応は森林部。人的被害を考慮したヒーローらしい戦闘の最低限は守っている。ピクシーボブなんかも時に地形を変えるし。
「……………面目ないと思うならそういう面したらどうだ?」
「いや、案外楽しくてな」
「楽しくて?」
「兄貴曰く頂点に挑もうとすんのは一人だけだったって話だ。そういうもんだって思ってた………けど、背を追ってきてくれる奴は案外いるんだ」
「…………………」
「まだまだ遠い。皆から俺の背が見えても、俺からは皆の顔が見えねえのに………なんでかなあ。よく見える」
「そうか…………まあ、人が居ないことを想定した運動場での大規模破壊。クラスメイトも大怪我なし………報告だけで十分だ」
気分が乗ったとは言え、やはり全力は出していない。
「追いつけると思うのか?」
「『世代を経るごとに個性は強くなる。でもカムイちゃんのお母様の個性は、世代を経た雷業の個性から今もカムイちゃんを守っているわ』ってのは梅雨ちゃんの言葉」
筋肉と同じ。行使すれば個性も成長する。それはきっと、世代差を覆せる程に。
「実際前の世代のプレマイも、耳郎の上位互換だろ」
「略すな………」
だがまあ、そうだ。彼等が
「俺は成長する程個性を使うこともねえしな」
雷獣形態と竜化は肉体が変容する程の個性因子を活性化させた形態。あれになった時点で元に戻っても個性は成長するが、基本的にカムイは半獣型で十分。オール・フォー・ワンの様なヴィランなど早々現れないだろう。
「まあ七海とかいう奴みたいに天敵もいるだろうし、俺自身も成長を止める気はねえ」
「そいつは何より。合宿では個性を成長させる必要はないなんて言って悪かったな。少しでも成長させていれば、お前は負けなかったかもしれない」
「あれは俺が油断したからだ。俺より疾い奴がいるとは思ってもなかった」
恐らくは雷業の『雷速』と、それに加えて加速系の個性を持っている。文字通りの雷速以上。次は油断しない。
逆に七海は油断しすぎではないだろうか? 雷爪置いていったし。というか、あれも複数個性持ちなら脳無の一種なのだろうか? それとも個性に耐えられた異形型の人間?
「なにはともあれ、俺達の怠慢を棚上げして言う。油断はするなよ稲妻。お前以上の疾さを持つ
「ああ。俺は最強だが、何時までも俺だけが最強とは思わねえよ。俺が至った場所に、俺以外が来ないってのは傲慢だ。
「そうか………」
相澤も………というより雄英の教師達も改めてカムイの出生について聞いた。I・アイランドにてその血が齎す結果を知ったカムイが注意喚起するべきと判断したからだ。
プロヒーロー達も出処はともかく
「お前が何処の、誰の子であろうと、暫定的にプロヒーローと同等の扱いを受けようと、俺の生徒だ」
「………………」
「だから除籍されたくないならしっかり育てよ」
「かっけぇなあ、イレイザー」
その夜。
「きゃー! 覗き魔がいるー!?」
「ちっ。やりやがったな峰田」
葉隠の叫び声にカムイが舌打ちし立ち上がる。上鳴と切島、飯田とスマヒロ(スマッシュヒーローズ)やっていた。ケータイゲーム派のカムイにとって初めてのテレビゲームだ。邪魔されてちょっと苛立っている。
「目を離した隙に、やはり峰田君は常に誰かが監視するべきだったか!」
「風呂行くふりするなんて漢じゃねえぞ峰田!」
飯田と切島も怒りを覚えながら立ち上がる。
「いやでも、障子達が見張ってんじゃね?」
と、上鳴。その言葉にカムイは生体電磁波を確認。峰田は風呂にいた。
「峰田君じゃなかったよ! 一瞬だったんだけど、なんかニヤけた顔が彼処の窓から覗いてたの!」
怒り半分、怖がり半分の葉隠はカムイの背に隠れながら玄関の窓を指さす。カムイ以外には風呂上がりのTシャツの袖しか見えないが。
なんか甘い匂いがする。これは八百万の使ってるトリートメントだな。葉隠の見た目を知った女子達が見た目に気を使わせようとしていたし、貸したのだろう。
なんて思いながらカムイは玄関を見る。峰田じゃないということは…………誰だ? 覗きと聞いてまず峰田以外思い浮かばないのがA組だ。
まさか
ドンドンドン!!
「ひゃあ!」
葉隠がカムイの背中に抱き着く。服越しでも分かる風呂で火照った体温が背中越しに柔らかく伝わる。上鳴は羨ましそうに睨む。
カムイは葉隠を剥がすと扉に近付き開け放つ。他の皆が慌てて構えを取る。すると………
「ハァァ〜!? 客人がやってきたのに、
HAHAHAHAと続く高笑い。B組物間寧人がそこにいた。カムイは扉を閉める。鍵をかけた。
「続きやろうぜ続き」
ゲームの続きをやろうとするカムイ。再び扉が叩かれる。
「アレアレ〜!? お客様が来てるのに締め出すのかいA組はぁ!? 酷いな〜、これがヒーロー志望のやること!? A組に劣るB組には時間を割くのも勿体ないって!」
ドンドンドンドン!! 扉が叩かれガチャガチャドアノブが回される。
「拳藤? 物間がなんか襲撃してきた。持って帰れ、飼い主だろ」
『飼い主言うな。まあ委員長として連れて帰るけどさ。迷惑かけてごめん』
拳藤に連絡を取ったカムイ。そのまま玄関に向かう。
「あれ、いれるの?」
「飼い主に逃げたのバレたのに気付いてまた逃げられると拳藤が大変だろ」
問題のあるペット扱い!
「ていうかカムイ君なんでB組の拳藤さんの電話番号知ってるの?」
「運動場使用申請の際、B組の寮長もやってるって聞いてな。寮長同士なんか話すこともあるかもって………早速役に立った。なんだ、その顔?」
「べっつに〜?」
カムイは女心が解らぬ。助けを求めるように周りに目を向けるが生憎葉隠の顔はカムイにしか見えない。
「ああ、やっと開けたね! 全く客人を外に閉め出すなんて常識がないよ常識が!」
「じゃあせめて事前に来るって言え」
「そんなことよりさあ、ちゃんとA組とB組は対等に扱われてるのかなあ!? 贔屓されてない? ちゃんと確認させて貰わないと不安だなあ!」
「それA組だけじゃなく雄英馬鹿にしてるからな?」
その言葉に物間は寮そのものでなく生活態度を攻めるべく視線を巡らせた。見つけたのはテレビゲーム。
「おっとぉ! ゲームかなぁ!? A組は余裕があっていいなあ! B組は自堕落な君達と違って鍛錬してるけどねえ! 視察に来たかいがあったよ! そんな風に余裕で過ごしてるといずれB組の足元に跪くことに──」
「跪くのはお前だ」
「何やってんだよ物間!」
「物間クン! A組行ッテ来るッテ出テ行キマシタノ、ビックリしぃマシタ」
その後ろには鉄哲とポニー。
カムイが連絡すると同時にポニーが拳藤に伝えに来たらしい。隣とは言え夜に女子だけはと鉄哲もついてきた。
「ごめんなカムイ。連絡ありがと」
「くっ。邪魔するなよ拳藤。せっかく何処かボロが出ないか偵察してたのに!」
「おいさっき視察って言ったろ」
視察と偵察、まるで意味が違うそれに上鳴が呆れる。
「………まあ、部屋見せるのに抵抗ない奴の部屋なら見ていいぞ。そいつ等がB組の部屋みたいって言った時に拒まねえなら」
「おお! なら鉄哲! 俺の部屋見に来いよ、代わりに明日お前の部屋見せてくれ!」
「おう! いいぜ切島!」
というわけで、急遽B組4人に部屋を案内する事になった。
個性『雷獣』
カムイの父親譲りの個性。血の強い雷業の個性が発現。本来のカムイが受け継ぐ筈の個性はこれのみ。
電気系統の個性なら何でもできる。実はマグネの様に磁性の付与もお手の物。御坂美琴のレールガン、カンナちゃんの粒子砲、ウォルテカムイの戦闘、ラクサスの雷食いから電波干渉、電磁波感知など万能の個性。最近は解釈を広げ原子の世界、磁気冷却に目を向けているぞ。
因みにカムイの変身は厳密には最終決戦死柄木のように個性に合わせた肉体の変化。なので実はイレイザーヘッドの抹消も効かない。
個性『不老長寿』
カムイの不死性の要因。細胞分裂による治癒を超え細胞そのものの劣化を治す。因みにカムイの母方の祖母の個性は『不老』。細胞が劣化しないギックリ腰、入れ歯なんかと無縁な健康体だけどある日唐突に死んだ。死因は老衰。カンナ母さんは健康に生きていれば歳の割に若々しいけどやはり健康的なのは見た目だけで寿命はちゃんとあるよ。