必殺技。必ず殺す技と書くが、まあ要するにヒーローとして象徴的な技、型を作るということだ。
体に染み込ませた型、技は他の追随を許さない。因みにカムイは『ライジュウ』『ライコウ』『ライジン』と名前は3パターンだが複数の必殺技を編み出してたりする。
修行場は体育館γ。またの名を
セメントスが地形効果。エクトプラズムが仮想敵。ミッドナイトは助言。
カムイも必殺技を編み出しつつアドバイスすることにした。
(磁気冷却………磁気による熱への干渉………)
より厳密には熱と密接な関係のある常磁性体操作。そこから電子スピンの自由……エネルギーを汲み上げる。解除してもエントロピーは変化しない。電子スピンに必要な熱を周りから奪う。
「……
周囲に霜が降りる。轟のように巨大な氷は出せないが、物体の温度を冷やすにはもってこいだ。流石に空気から熱を奪うのは流動的過ぎて無理だが。
「梅雨ちゃ〜ん!?」
「ケロ………」
梅雨ちゃんが冬眠しかけた。
後は炎や水の反磁性を利用して支配してみるか?
雷の出力が上がった今、今後半獣、雷獣形態になった後も出力がガバるのを見越して雷以外の攻撃手段を編み出しておきたい。
「なあカムイよ〜。俺も雷飛ばせねえかなあ」
「そこは個性の違いだな。サポートアイテムに頼るか……そういや俺の雷を引き寄せたりはしてたな」
なら例えば、雷エネルギーを何かに溜めておいてその何かと自分の間に敵を入れて電気を再び引き寄せる、とか?
「雷を自分以外に纏わせるとか出来ねえよ俺」
「出来ねえと思うからだ。服を焦がさず全身から電気を放てるのは、お前が服の向こうに放電しているからだぞ。体から直接じゃねえ」
「え、そうなの?」
「個性の解釈を広げろ。何が出来ないかより、何が出来るかでまず構想。個人的な感覚だが個性使うのに必要なのは3つ」
何時の間にかカムイの言葉に耳を傾けるA組一同。相澤もカムイの内容が言われてない今合理的じゃないとは判断しない。
「個性の形を決める個性因子、それを形として放つエネルギー………これはカロリー、体力、脂質、糖分でもなんでも構わねえ。で、最後に重要なのは………超常をなせるという『確信』」
物理法則を無視した個性という名を与えられし超常。世界のルールすら書き換えるその力を人の意志で使用するならば、当然法則を超える確信がなくては話にならない。
「しかし、心の問題だけで解決するのでしょうか?」
と、八百万。
「そういう意味じゃお前が一番頭ガッチガチのクリエティ………ガチエティだな」
「ガチ、エティ………!?」
「ガチエッチ!?」
「峰田黙れ」
瀬呂がテープで峰田の口を塞いだ。
「例えばお前、個性把握テストでスクーター作ってたろ? あれの重量分の脂質を使用してんならお前もっとガリガリになるだろ」
明らかに体重以上の重量を生み出していた八百万。これは質量保存の法則を完全に無視していた。
「常識を捨てろ。まずはしたい事を考えて、試して試して、無理だったら諦めろ。合理的だろうと不合理だろうと、やらなきゃ出来ない。やろうとしないことこそ不合理的だ」
「耳が痛いね、どうも」
はぁ、と頭をかく相澤。
「イレイザーヘッドの口癖真似たのね」
「最近思い出した。俺、ヒーロー以外にも教師になりたかったんだ」
だから、クラスメイト達に向き直る。
「強くなるために二つの道を用意してやる。Aコース、昭和もびっくり体罰級指導。おまけに効果は保証しない。Bコース、神野でオールマイトにやったみてえな個性因子増幅。これで君も最強ヒーロー。ひとまず4名ずつ交代で。どっちにする?」
「「「「Aコース!!」」」」
「いいね。
「………講師としてあっちの方が人気ね」
「年が同じだからこそ挑み甲斐があるんでしょう。合理的で良い」
「そこまでだA組ぃ! この時間からは我々B組が…………地獄絵図!?」
積み上げられた瓦礫の上に座るカムイとその周りに倒れるA組面々。ブラドは思わず叫んでしまった。
「派手にやったなあA組」
「あれあれあれぇ!? カムイ君以外倒れてるじゃないかあ! おかしいなあ、優秀なA組が訓練だけで動けなくなるのかい!? 夏休み、怠慢が過ぎたんじゃないかなあ!! 同じことやってもきっとB組なら耐えられるんだろうけどねえ! ほら、鉄哲とか日常生活に鍛錬入れてるしさあ!」
「じゃあやるか?」
「ん?」
「お前等もAコース。俺に、俺達に、負けるつもりはねえんだろ?」
「……………………」
嫌な予感しかしない。物間はフッ、と笑う。
「敵に塩を送るって? 僕はともかく、優しい拳藤とかが余計な手間を取らせるのを嫌うだろうしね!」
「やってやるぜAコース!」
「鉄哲ゥ!?」
「悔しいが1年最強はお前だ! そのお前が考えたトレーニングプラン、受けてやろうじゃねえの!」
「拳藤ぅ! クラス委員長として他クラスに迷惑かけるのは止めるべきだよねえ!?」
「物間から言われるとは思わなかった。まあそうなんだけどさ………同じ寮長、でも差はめっちゃあって、挑む機会なんて早々ない相手。ここで相手しないなんて、ヒーローとしてどうなのって話じゃん」
「おう! 漢だぜ拳藤!」
「女だよ!」
そして夜。
「雷以外の攻撃手段ですか」
「磁力で物を浮かして、とかも出来るがな。砂鉄なんかは爆豪や緑谷みたいにある程度の攻撃力持つ奴には防がれるし、市街地で標識だの引っ剥がしまくる訳にもいかねえ。磁性付与する前提のサポートアイテムが欲しい」
「ねえお前等。先生ちゃんと帰ってほしいんだけど」
「就寝前には帰ります!」
「就寝前には帰す」
泊まり込みしないだけマシなのかなぁ、とため息を吐くパワーローダー。寮生になり入り浸る毎日。寮生前は普通に泊まり込みに来たりもした。仮免試験が近付きサポート科に駆け込んでくる生徒が増えた今、発目のテンションは上がりに上がる。
「2人揃って一夜過ごしたりするなよ? 最後確認に来るから、そん時までに帰れよな。はあ、残業だよまったく」
「デク君、足の装備変えたんだ!」
「うん。昨日、咄嗟に放った蹴りのほうが威力あったし………」
後『すごい馬鹿でも先生になれる!』という本を読んだオールマイトからも『私に倣おうとしている』というアドバイスを貰った。
オールマイトから受け継いだ力だから、とパンチに固執していた。
「悪い遅れた」
と、サポート科によると言って一度離れたカムイが戻って来た。背中に金属製バックパックのようなものを背負っている。
「それは?」
「発目の
アイヌの伝説の巨鳥の名を冠するサポートアイテム。音を立て変形し、金属の巨大な翼となった。カムイはそのまま浮き上がり、来いと手招き。真っ先に突っ込んだのは爆豪。
「うらぁ!」
爆破する掌を叩きつけようとした瞬間、横合いから押される。それは鋼鉄の風切羽の一つ。カムイの背の風切羽が一枚一枚取れ浮き上がる。
「っ! この戦い方って…………」
ヒーローオタクの緑谷はそのサポートアイテムを扱うカムイを見てあるヒーローを思い出す。常闇も目を見開いた。
「こいよ有精卵。
ヒーローチャートTOP3の一人。No.3ウィングヒーローホークスの姿が重なって見えた。