高校生が医者を目指し友の足を治そうとする、そんなドラマ。医療ドラマではなく、あくまで挑む意思を固めるまでを描いた青春ドラマ。そんな映画だった。
自分の為に走るのを辞めるなと激高する友とのすれ違い。彼が走る姿を見たいがためだけに陸上の世界にいた主人公。
その筋書きはありきたりだが、役者がいい。
表情、声色、身振りで物語の世界に意識を引き寄せる。
映画館を出て同じモールのカフェに入る。飲み物を注文し映画の感想を話す。
「面白かったね〜」
「基本アクションかアニメなんだが、まあ悪くなかった」
カムイはどちらかと言うと迫力のある映画が好きだ。どうせ大スクリーンで見るなら派手な方が見応えを感じるタイプ。
それでも今回の映画はなかなか面白かった。
「でしょ! あの監督の作品、ほかにもねえ………」
と、オススメを伝えるべくレインを贈ろうとして固まる冬美。
「お父さん………」
「………………」
エンデヴァーからメッセージが来ていた。映画中電源を切っていた間に結構。ちゃんと距離感を守れているのかとかそんなメッセージ。
「お父さん………結構こういうの心配するんだなあ」
「意外そうだな?」
「ずっとヒーローとしてばかり活動してたからね。実は結構話すの久しぶりだったんだよ? お見合いの時」
「………」
「オールマイトの一件からかなあ。すぐは荒れてたけど、だんだん落ち着いてきて」
万年2位のエンデヴァー。なら次のビルボードチャートでNo.1になるのは………そんな繰り上がりで納得するたまには見えなかった。そりゃ荒れるか。だが落ち着いたのは、上ではなく周りを見る余裕が出来たからか。
「焦凍もお母さんに会うようになって、お母さんも笑って………お父さんも歩み寄ってきてさ………だから。えっと………」
「家族になれるかもって? 妙な気を遣うな」
「うん…………ありがと。やっぱり私はさ、皆で家族になりたいから」
「…………ドラマが好きなのもそれが理由か」
「え?」
「ああいう現代の日常を切りとったストーリーだから、一般的な家庭環境を映す。そうじゃなくても家庭環境の問題が解決していくのを描くからな………お前からしたら憧れなわけだ」
「……………踏み込むね」
「俺に踏み込むって言ったのはお前だろ」
そうだった、と苦笑する。
「うん。そうだよ………こうなれたらって何度も思って、今、なれそうな気がして………」
「なれるといいな」
「そこは「なれるさ」じゃないの?」
「ドラマの見過ぎ。んな都合のいいことばかり言ってくれる男ばかりと思うなよ」
むぅ、とむくれる冬美をハッと笑うカムイ。でも、そうだ。なれるさ、なんて簡単に言われるのは、嬉しいだろうけど無責任だ。カムイはドラマの主人公と違って家庭に問題のあるヒロインのために奔走しているわけじゃないんだから。
「でも、なれるといいなって言ってくれてありがとう。絶対家族全員で食卓囲むぞ〜!」
「目立ってるぞ」
「!」
ハッと周りの視線に気付いた冬美は座り直した。頼んだ飲み物を飲んで直ぐに店を後にした。
個性は肉体の体質に影響を与える。カムイなら電気に対する耐性、エンデヴァーなら熱への耐性、オールマイトならなんかもう色々な耐性。
冬美は氷を操る氷叢の血縁。その個性は氷結系で、寒さに耐性がある。故に、逆に熱に弱い。
まだまだ8月。蝉の声が騒がしい道を歩いて少し顔が赤い。カムイは公園の休憩所のベンチに座らせると自販機に向かう。
「迷惑かけちゃったなあ」
暑さ対策はしてきたつもりだが、暑いは暑い。
ふぅ、と首元の肌を少し露出させ個性で冷やす。公共の場での個性使用は本来禁止だが、実際は他人に危害を加えなければ注意や黙認に近い。
はふぅ、と息を吐く冬美。もう少しモールから近い店にすれば良かったかな、と少し後悔。と………
「
轟音と共に悲鳴が聞こえた。振り返ると燃え盛る4本腕の異形型の背に乗る仮面の男。異形型の2本の腕にはコンビニのATM。
「やっちゃった。やっちゃったよ兄貴ぃ!」
「この時間、ヒーローは別の場所だ。来るまで時間がかかる! さっさと走れぇ!」
コンビニ強盗だ。それもそれなりに計画的な。が、計算外なのは此処に実質的なヒーロー免許を持つ男がいた事だろう。
「どけええ!!」
「っ!!」
冬美の休む休憩所ごと突っ切ろうと迫る異形型。が、その前に蹴り飛ばされた。
「オールマイト引退から、増えてきたなこういうの」
「カムイ君!」
午前の紅茶を買ってきたカムイ。冬美に投げ渡す。
「わ、シャーベット。売ってたっけ」
「個性の応用で凍らせた…………異形型はタフだな」
カムイに顔を蹴られた異形型は首を振りながら起き上がる。
「もっと強く蹴ってもよかったな」
「てめぇよくも人の妹分の顔をおおお!!」
と、背中から転げ落ちた
渦を巻きながら周囲に広がる炎。ただでさえ暑かった公園がより熱くなる。
「任意のものを燃やさない炎の個性か。なかなか珍しい」
芝生や木々を燃やしながらも炎に包まれているはずのATMに異常がないのを見たカムイは落ち着いた様子で呟く。
「焼け死ねええ!」
放たれた炎はカムイの前でグニャリと曲がる。
「なあ!?」
「炎は磁力の影響を受けるんだよ」
周囲の炎が揺らめき、蠢きカムイの手の前に集まり球体となる。
炎とは一部が電離しプラズマ化したガス。カムイに操れぬ道理などありはしない。指で弾くと同時に突き進み
公園のスプリンクラーが遅れて作動し周囲に水が撒かれ始めた。
「くそがぁ………クソヒーローども。調子乗ってんじゃねええ………!」
「耐えたか」
操作権を奪った炎に対しても焼かれない様にはできたらしい。炎の圧力で吹き飛んだだけの男はまだ元気だ。
「ヒーローの時代は終わる! お前等の陰に隠れていた日陰者が自由を謳歌する解放の時代! 全ては、
「なら一番偉いのは俺じゃねえか。てめぇ等みてぇのが束になっても俺のが強ぇ。文句あるならかかってこいよ!!」
「言われなくてもやったらあ!」
と、男は取り出した注入器を
「あ?」
「きゃあ!?」
冬美の足元まで撒かれていた水が蠢き冬美を捕らえる。いや、そこだけではない。公園に撒かれた水が全て蠢き巨大な異形型へと形を変え男を抱え上げる。
「液状化…………いや、同化か? 逆によく今まで日陰にいたな」
「シャイなんだよこの子は!」
先程までは炎と同化していたのだろう。その割に普通に蹴れたから、恐らく本来は一部しか同化出来ないところを薬で増幅しているな。
「知り合いだろこの女!? 少しでも動けばかわいい顔に傷つくぜ!」
雷、は駄目だな。冬美も感電する。
「おとなしく地面に手を突け!!」
「カムイく………んぐ!?」
ゴボリと冬美の口元を水が覆う。カムイは舌打ちして地面に手を突いた。男はニヤリと笑う。
「んん〜!!」
水の槍がカムイへと迫り………次の瞬間全てが凍り付いた。
スプリンクラーに撒かれた水が凍りつき、温度の低下した地面に空気中の水分が付着し氷結、冷凍庫の縁のように氷により白く染まる公園。
「よっと」
そのまま冬美の体を覆う氷を蹴り砕いて抱えると地面に降りる。
「お、お前………炎じゃ………」
「カムイ君って電気系の個性じゃ」
「ああ、電気だ。こんなん冷凍庫と同じ仕組みだ。冷やしたんじゃなく熱を奪った」
人質は解放。容赦は必要ない。雷撃が
その後やってきた警察に
「なんだ、待ってたのか」
「うん」
入り口近くのベンチで待っていた冬美。先に帰ってもらってもよかったのだが。
「冬美いいい!」
「あ、お父さん」
と、警察署から出るとエンデヴァーがやってきた。
「無事か!?」
「うん。カムイ君がね、あっという間に倒しちゃったの!」
「そうか…………ありがとう、カムイ君」
「ああ」
「だがそれだけでは認めんぞ!!」
暑苦しい。
「お父さん! もう!」
「……………焦凍に修行を付けているそうだな」
「轟にというか、ヒーロー科にな……轟と言えば、あんたのバニシングフィスト見て応用を思いついたんだが………」
何やらヒーロー同士技談義を始めた。エンデヴァーも子供の戯言と流さず話を聞く。なんか、男の世界?
「お父さん、仕事戻らなくていいの?」
「む………そうだな。無事が確認できて何より。俺は仕事に戻る。カムイ君、冬美を家に送り届けてくれまいか」
「ああ」
「ただし家には上がるなよ! 最近夏雄は帰らないらしく、2人きりになってしまう!」
「飯の時間は過ぎてるが、さっき梅雨ちゃんから『ご飯はとっておくわ』て連絡来てたから帰るよ、普通に」
ならばいい、と去るエンデヴァー。
「ああいうのが普通の親なのか?」
「う〜ん。ドラマではよく見るけど…………いい親の場合と子供の幸せを考えているようで考えてない場合もあるからなあ。でも、うん。心配してくれてるんだと思う。思いたい」
「弟は違うみたいだがな」
「昔は私達、結構普通の家族だったんだよ? 仲、良かったんだけどね………」
轟焦凍が生まれる前だろうか? それを知る冬美は戻したくて、それを知らないから弟は嫌っている、と。
「じゃあね。今日はいろいろあったけど、次は学校での焦凍の話聞かせてね!」
「ああ」
轟家まで送り別れる。
そのまま寮へ戻った。
「カムイぃぃぃぃ! てんめぇ、こりゃどういうことだあああ!!」
峰田が携帯持って突っ込んできたので足で受け止めそのまま踏みつける。モギモギの弾力が足裏に伝わる。頭から取らないとモギモギはくっつかないのだ。そうじゃなければ日常生活も不便だろう。
「何の話だ?」
落ちた携帯を拾うとカムイの写真。『イメルカムイ、デートしてた!』とSNS。
「お友達じゃなかったのかよあああん!?」
「友達と遊んでいただけだ」
「こんな時間まで!?」
「
「ちくしょう! お前なんて金髪の幽霊にやられちまええ!!」
うおおお、と涙を流しながら走り去る峰田。なんなんだいったい。
「金髪の幽霊?」
「あたし達百物語してたんだ〜。そん時常闇の話が怖くてさ」
「幽霊ねえ………いるなら見てえもんだな」
母さんが俺をまだ未練に思ってくれてんなら。
「うおおおお! オール・フォー・ワン! オール・フォー・ワンがあああ!」
おんおん無く老人。七海はよしよしと頭を撫でてあげる。
「わかっとる。わかっとるんじゃ、これも計画の内。でもね儂、もっとずっと彼と一緒にいたかった」
「気持ちわる………気持ち、分かります」
今気持ち悪いって言いかけた? と突っ込む者はここには居ない。
「流石ナナちゃんは優しいのう。もう大丈夫じゃ、弔を完成させる準備をしなくてはな。その先に、彼の望む世界が待つ………じゃからこっちもそれに使いたいんじゃよなあ」
と、ドクターが見るのはカムイの血。雷業最後の生き残りの血だ。厳密には売られた突然変異や落ち零れ達の血も市井に紛れているが、『竜の血』に加工可能な程深くはない。
「ウーマンちゃん達の強化や、マスターピースの完成度の底上げ。使い道はいくらでもある。なのに、雷業の目的などに!」
カプセルの一つを睨む。一人の少女が液体の中に浮いていた。目覚めさせる最後の素材は雷業………カムイの血。
「何が親友! 儂がオール・フォー・ワンの一番の理解者じゃあ!」
きぃー、とハンカチを噛むドクター。七海はそっと距離を取り頭を撫でてあげた手をゴシゴシ服で擦る。
「これが、雷業の?」
「今のナナちゃんにはわからんじゃろうが、これは雷業の目的、その最後のピース。稲妻カムイがおとなしく連合に入ればこんな手間かけなくて済んだんじゃ。断るばかりかオール・フォー・ワンを、よくも!」
どのみち
「この子の名前は?」
「名前? ん〜………ウーマンちゃんは既におるし………ショージョちゃんなんてどうじゃ?」
「私が名付けていいですか?」
「かまわんよ」
「じゃあ…………カンナで」
オリジナルヴィラン
兄貴
個性『
炎を纏ったり纏わせたりするぞ! 炎を纏わせた物はその炎では燃えない! 本来効果範囲は狭いがトリガーで炎を放てる様に!
デストロの本に感銘を受けて抑圧からの解放を目指す。強い個性を持つ引っ込み思案な妹分をビッグにするのが夢だった。
妹分
個性『同化』
触れたものと同化し操作可能! 環境に合わせて属性を変えられる強固性だ! ただし体の一部のみかつ質量はトラック1台分だ! トリガーを使い全身かつ公園に撒かれた水や水道を流れる水とも同化したぞ!
異形故虐められて引っ込み思案な女の子。ビッグになるとか興味はないけど兄貴がなんかやる気だった。将来の夢はお嫁さんだ!