個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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仮免取得試験

「緊張してきたぁ」

「多古場でやるんだ……」

「試験で何やるんだろう。ハー、仮免取れっかなあ」

「峰田。取れるかじゃない、取ってこい」

「おっもっもちろんだぜ!!」

 

 この試験を乗り越え仮免を手にすれば、緑谷達はヒーローの志望者(たまご)から晴れてひよっ子………セミプロへと孵化する。

 

「頑張ってこい!」

「気張れよ有精卵」

 

 相澤とカムイの激励にA組は拳を握りしめる。ちなみにB組は別の試験場だ。同校でつぶし合わぬための措置である。

 

 男子は学ランで女子はブレザー。縦にボタンが二列並んだダブルブレスト。男女、異形関係なく制帽を被っている。

 

「しゃあ! なってやろうぜひよっ子によぉ!」

「何時もの一発決めようぜ! せーの! プルス──」

「ん?」

 

 知らん男がソワソワしながら寄ってきた。

 

「ウルトラ!!」

 

 そのまま大声でタイミング早く叫ぶ。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよ、イナサ」

「ああ、しまった! どうも大変! 失礼いたしましたー!!」

 

 円陣に加わってきた男は勢い良く頭を下げた。そのまま地面に頭が激突。A組が引いた。

 

「なんだこのファッション熱血」

「なんだ、このテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

「飯田と切島を足して二乗したような………」

 

 と、何やら騒がしいこちらは視線が集まり、視線を向けてきた者達は制服に気づき他のものを呼び止めさらに視線が集まる。 

 

「あれじゃん! 西の、有名な!」

「…………東の雄英、西の士傑」

 

 数あるヒーロー校の中でも雄英に匹敵する難関校。士傑高校の生徒達だ。

 

「一度言ってみたかったっす!! プルスウルトラ!! 自分、雄英高校大好きっす! 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっす! よろしくお願いします!!」

「あ、血」

「いくぞ」

 

 士傑の女子生徒が呟いたように思っきり血が出ていた。目つきの鋭い男子生徒が先に行くよう促す。

 

「………………」

「……………!」

 

 と、去り際に目つき男がカムイを、テンション男が轟を見て目つきを変えた。その変化に気づいたのはカムイだけ。

 その目に何処か見覚えがあった。

 

「……………ああ。映像で見たステインと体育祭であった頃のエンデヴァーの目だ」

 

 だからなんだって話だが。強いて言うなら轟が当てられないかだけが心配だな。

 

「夜嵐イナサ」

「先生、知ってる人ですか?」

「すごい前のめりだな。よく聞きゃ言ってることは普通に気のいい感じだ」

「ありゃあ、強いぞ。夜嵐……昨年度。つまりお前等の年の推薦入試、トップの成績にも関わらず何故か入学を辞退した男だ」

 

 通常仮免試験は2年から受けるのが普通。つまり彼は自由な校風の雄英と異なり伝統と規律が重んじられる士傑において例外的に一年参加を認められた実力者。

 

 後雄英の推薦トップということは、入学時の轟よりも実力は上ということ。

 

「つっても初期ロキくんにだろ?」

「瀬呂、俺は轟だ」

「いや知ってんのよ。間違えたわけじゃねえんだわ」

 

 初期ロキは個性を半分しか使わないから明確に轟より上とは言えないが、初期ロキだって実力は決して低いわけではない。

 

「しっかし雄英大好きって割には推薦蹴んだな」

「ねー、変なのー」

「変だが()()だ。マークしとけ」

「相澤も認める実力者ね。だってよ、油断するなよお前等」

 

 期待するような目を夜嵐の背に向けるカムイ。ピリッとA組の雰囲気が切り替わる。

 

「よそ見してんじゃねえボケが! てめぇに真っ先に追いつくのは俺だ!」

「いいえ、私達ですわ」

 

 8月中旬から今日この日まで他ならないカムイと戦い、カムイという頂点に挑み続けたのは自分達だ。だというのに実力も知らない他所に目を向けるカムイに爆豪が苛立ち八百万も珍しく爆豪の言葉に食ってかかる。

 

「ですからカムイさん。()()は駄目、ですよ?」

「そうだな。じゃあ、魅せてみろよ、他が目に映らなくなる程に」

「「「おう!」」」

「「「ああ!」」」

「ええ」

「はい!」

 

 

 

 

 第一試験はふるい落とし。1540人の参加者の中から次に進めるのは条件達成者()()()()

 その条件とは受験者の身に付けた3つのターゲットのうち()()のターゲットを一人6つ配られるボールで触れれば倒したと判断され、2人倒せば合格。

 

 ステージは 中央正面に岩場、西側にビル群、東側に工業地帯、南に滝と湖。様々な個性持ちが十全に力を発揮できる環境が揃っている。

 

 好きな地形で得意な戦いを押し付け最後のターゲットにボールを当てる。漁夫の利狙いでも十分勝てる。というよりボールの数はギリギリなのだ、そちらの方が安全策。

 

 どの校でも生徒を100人も連れてきてる高校はないから、チームアップするのが普通。

 普通なら………

 

 A組の脳裏に浮かぶは最強。参加した場合、たった1人で早々に条件を達成し欠伸の一つでもしながら休憩所に向かうであろうカムイ。

 

 並び立つと決めた。追いつくと決めた。

 手を組まないことが強さとは言わない。それもまた必要なことと理解した上で、危険な現場ではなく、自分や他人の命に危険のない試験なのだ。我を通したい。

 

「不合理だよ全く。誰に似たんだか」

「イレイザー!」

「だってよ」

 

 観客席から互いに離れていくA組を見てため息を吐いた相澤に話しかけてきた女ヒーロー。何処かの高校の教師だろう。

 

「結婚しようぜ!」

「しない」

 

 芦戸辺りが見たらテンション上がりそうなやり取りだ。

 

「此奴はMs.(ミス)ジョーク。傑物学園の教師だ」

「おお、噂のイメルカムイ! 私の個性は爆笑! 私の周りには常に笑顔があふれてるんだぜ!」

「ぶはははは! そりゃ本物の笑顔じゃねえだろ! ギャハハハハハ!!」

 

 相澤がジョークを睨む。カムイの笑いが止まった。

 

「くだらねえ悪戯するな。お前もわざと引っかかるな」

「いや、なかなか面白かった」

「そいつは例外として、参加人数19人かぁ。お前が1人も除籍してないなんてな。気に入ってんだ、今回のクラス」

「ああ」

「照れんなよ………え、あ。認めた? マジ? デレた! 付き合おう!」

「黙れ」

 

 取り敢えずジョークは相澤が苦手なタイプで、しかし気に入られてしまっているのは分かった。

 

「でもよ、なら何で言ってやらないんだ? ほら、皆分散しちまったぜ。よくねえよ、何でか分かるか?」

「個性が割れてる」

 

 雄英体育祭は全国放送。そこでは生徒達が個性を使い競う姿が映し出されている。

 どんな個性を使うのか………人によっては限界値も。

 

「そ、だから例年慣習に近いことが行われる。個性不明のアドバンテージを失ったトップ校。色々有名だしな〜、出し抜いてやろう! って思いもある。んで毎回起こるのが雄英潰し!」

 

 スタートの合図と同時に多くの生徒達が雄英の生徒に向かい動き出した。まあ今回のルール的に、一人で動くのはむしろ正解な気もしないでもないが。

 

「つってもな。俺はむしろ、知らない前提で動く彼奴等が知ってるつもりの他の奴等に遅れを取るとは思えねえなあ。だってそうだろ? 雄英体育祭で情報を調べたって………何時の話してんだよって話だ」

 

 

 

 

「上限を急激に増やせねえなら、体の使い方を学ぶことだな」

「う、うん。だから飯田君から」

「違え違え、オールマイトだ。倣いすぎるのは辞めたとしても、学ぶことはあるだろうが」

 

 オールマイトの移動技「New Hampshire SMASH」。進みたい方向と逆向きの拳を放ち拳圧を推進力とする技だが、作用反作用の法則なら常日頃から発生している。それ以上の威力の拳を振るってオールマイトが吹き飛んだことはない。

 

「空中じゃないし………」

「だったら踏ん張った地面が砕けるだろ」

 

 それがないのはオールマイトの力の伝え方が完璧だから。一切無駄のない力の移動。それを学べば上限が変わらずとも動きが変わる。

 

「え、ごめん。特に意識したことないな……ほら、ヒーローが街を壊しちゃいけないなあって気構えで」

 

 しかしオールマイトは()()()()だった。仕方ないのでオールマイトの過去の映像や古武術、格闘術の動画を何度も見直し緑谷が頑張って解析することなった。

 

 

 

「“自らを壊すほどの超パワー”………まぁ、杭が出ればそりゃ打たれるさ!!」

 

 傑物を始め複数の高校の生徒が投げて来るボール。

 

「ワン・フォー・オール、10%」

 

 フッと緑谷の姿が消える。

 

「え──」

 

 先頭の集団から一人が消え、岩に叩きつけられる。

 

「ちょっと無駄があった」

 

 先程まで自分がいた場所に出来た深い足跡を見て反省する緑谷。しかし今は他の生徒が来る前に壁に叩きつけられ気絶した生徒のターゲットにボールを掴んだまま当てる。

 

 相手のターゲットが赤に光った。

 

「くそ!! 使え!」

 

 傑物の一人が個性を使ったのだろう、ボールを角ばらせた。明らかに硬さも増している。それを別の生徒が投げると地面を潜る。

 

 軌道を読ませないためだろう。デクはすぅ、と息を吸う。

 

1()2()()!!」

 

 今度は先程と逆に。力を身体に伝え打ち出すのでなく、地面に伝える。蜘蛛の巣のような亀裂が広がり地面が砕ける。

 

 しかし環境が変わろうと関係ないとばかりに迫る硬質化ボールは………当然だが雷どころか音より遅い。

 

 全て受け止めバランスを崩した一人に接近しすれ違いざまにボールを握ったまま叩きつける。

 

 緑谷のターゲットが青く輝いた。

 

『うえ、もう!? ええと、脱落者2名! 通過者1人目です! いいねはやいね。このままどんどん通過してくださいね皆さん』

「まじ、か………っ」

 

 雄英体育祭では自分の力に振り回されていたのに、今は完全にその超パワーを制御し加速系の個性と見紛う速度。

 

「成長、早すぎるでしょ………」

「そうじゃないと、背中も見せてくれない人がいるから」

 

 緑谷出久、一次試験突破。二次試験へ一番最初に通過した。

 

 カムイは楽しそうに笑っている。

 

 

 

 一方市街地エリア。

 

「ああああ!? 一人目? 何処のどいつだ先に行きやがったの!!」

 

 BOOOM!!

 

 爆豪がキレ散らかしていた。

 個性『爆破』。同世代の中でも屈指の破壊力を誇る爆豪に対する他の生徒達の対応は、まず様子見。緑谷のように動けば動けなくなる、なんて分かりやすい弱点はないのだ。

 

「ヒーローを目指す者としてその態度はいかがなものか」

 

 獲物を探して取り敢えず高い所を目指し高架の上に立てば蠢く肉塊とその中央に立つ細目の士傑生。

 

「我々士傑生は活動時、制帽の着用が義務付けられている。何故か? それは我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統ある名を冠しているからだ」

 

 周囲の肉塊にターゲットが付いている。参加者達だろう。動けなくした上で通過もせずに残っているようだ。

 

「これは示威である! 就学時より責務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者(ただもの)のままヒーローを志す諸君らとの水準差だ」

 

 要するにヒーローとしてのあり方は自分が納得する形でしか認めませんってわけだ。

 

「ステインとかいうクソヴィランの真似事かよ、くだらねえ」

「取り消すがいい! 私がヴィラン等の影響を受けたなど!」

「試験内容聞いてなかったんすか先パイよぉ! 今のヒーローには迅速が求められてんのに私情を優先してんじゃねえよ!!」

 

 肉倉精児。個性『精肉』!

 もんで肉体を変化させるぞ! 他人の肉体はこねて丸めるだけだが自身の肉体は自由度が高く切り離して操作したり寄せ集めて大きくしたり出来る!

 

 触れたらほぼ即終了の肉塊が迫る。対して爆豪が行うのは徹甲弾(APショット)の乱れ打ち。名付けて機関銃(オートカノン)

 

(大した攻撃密度。だが視野狭窄!)

 

 高架下を通り背後から迫る肉倉の手の肉の一部。見ずに撃ち落とした。

 

「は?」

「わざわざ気に入らねえ奴潰そうとすっから勝ちを逃すんだよ! 俺に喧嘩売らなきゃ通過してたのになあ!」

「っ! その態度を改めよと言っている! 貴様と言い稲妻といい、力あるだけで上に立つ物が英雄の品位を──!」

「もっと言葉を選べ! 今際の際だぞ!?」

 

 絨毯爆撃。周囲の精肉した参加者ごと爆炎に包まれる肉倉。完全に気絶した。と、爆炎から逃れた肉塊が元の姿を取り戻す。

 

「助かった! でも2次試験で敵になったら怖いからここで落ちてくれ!!」

「めちゃくちゃ強い! 数で押すぞ!」

「てめぇ等が落ちろやモブ共!!」

 

 

 

 

 

「俺そんなに品位を落とすようなことしたか?」

「ん、どうした?」

「大方、ターゲットの電波拾って一人だけ観戦してんだろ。状況は?」

「うちから脱落者はいねえ。通過者は」

「そっちはいい」

 

 と、相澤は止める。

 

「落ちてねえなら先着に入るさ、全員な」

「ベタ惚れじゃん!」

 

 と、ジョークが笑った。

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