「稲妻君!」
叫んだのは誰か。緑谷か飯田か……。
兎にも角にも稲妻が吹き飛ばされたのは間違いない。
「クソ!」
相澤は生徒がやられた事に生徒が先行した迂闊さよりも止められずみすみす傷付けさせられた己の不甲斐なさに舌打ちする。
「訓練じゃねえ、ヴィランだ! 十三号、生徒達は任せた!」
言うが疾いか飛び降りる相澤。
「馬鹿がまだ一人! ぶっ殺すぞ!」
一人のヴィランが叫ぶが返事がない。振り返るとヴィランの何名かが痺れていた。
「やることはきちんとやってたか」
間抜けに振り返るヴィランを踏みつける相澤。ハッと漸く他のヴィラン達も動き出した。
「あれ?」
片腕を持ち上げていたヴィランはしかし困惑したように己の腕を見て、相澤の捕縛布が巻き付き投げ飛ばされる。
「こいつイレイザーヘッドだ! 個性を消されるぞ!」
どうやらメディア露出の少ない相澤の個性をきちんと把握しているヴィランも居たらしい。
「消すぅ〜〜〜? へっへっへ。俺等みたいな異形の個性も消してくれんのか!?」
そう言って迫るは岩の肌に4本の腕を持つ巨漢の異形型ヴィラン。異形型は素で人間をしのぐ身体能力を持っている。
「いや無理だ。発動型や変形型に限る」
相澤は岩に覆われていない顔を殴りつけ足に捕縛布を絡み付けると力を利用して投げ飛ばす。
異形型の多くは近接戦闘を得意とする。そういった相手に実質無個性なのだから、当然その対策はしている。
「肉弾戦も強く、その上ゴーグルで目線を隠されて誰の個性が消されるか分からない。集団戦においてはそのせいで連係が遅れる。なるほど………」
ガリガリと己の肌を掻きむしりながら分析するリーダーらしき手だらけ男は嫌そうに呟く。
「いやだなプロヒーロー。有象無象じゃ歯が立たない…………」
多対一に置いて強みを発揮するヒーロー。されど今回は敵が多すぎる。
「行かせませんよ」
瞬きの一瞬で十三号と生徒達の前に移動した黒い靄のような体を持つヴィラン。恐らくは転移系の個性持ち。
「はじめまして。我々は
「平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思いまして」
「………は?」
こいつ今、なんて言った?
オールマイト。平和の象徴………存在するだけで
「本来ならここにオールマイトがいらっしゃるはずなのですが、何か変更があったのでしょうか? まぁ……それとは関係なく。私の役目はこれ」
黒い靄が生徒達を覆わんとする。十三号は咄嗟に個性を発動させるため手袋の指先を開く。が、その前に動き出す生徒2人。
爆豪と切島だ。硬化した鉄をも砕く拳と爆発が襲いかかる。
「その前に俺達にやられる事は考えなかったか!?」
「危ない危ない………そう、生徒と言えど優秀な金の卵」
「だめだ! どきなさい2人とも!」
2人を巻き込まないために個性の発動を止めた十三号が叫ぶが、遅い。
靄が生徒達を飲み込む。
「散らして、嬲り殺す」
靄が晴れると生徒達数名がいない。転移させられたのだろう。
十三号は飯田に脱出し連絡するように言う。
相澤が下で個性を消しまくってもセンサーが復活しない。センサーの邪魔をしているヴィランはここには居ないのだろう。ならば直接伝えに行くしない。
邪魔をしようとする黒靄ヴィランに攻撃を仕掛けた十三号だったが、敵の個性はワープゲート。
眼前と背後の空間を接続され、十三号は自分で自分を塵にしてしまった。
相澤も本命の手だらけ男を狙うも相澤の戦いを観察していた手だらけ男は動きを読み肘打ちを防ぎ、肘を
そしてカムイを吹き飛ばした後全く動かなかった脳無が再び動き出し相澤を地面に叩きつけ腕を圧し折る。その光景を目撃したのは比較的近くに跳ばされ緑谷の機転でヴィランを捕らえた緑谷、蛙吹、峰田の三人。
もう一方の腕もへし折る。
しかしここで黒い靄のヴィラン………黒霧というらしい男が生徒に抜けられたことを報告。直にほかの教師………即ちプロヒーローがやってくる。
死柄木というらしい男は帰ると言い出した。その前に矜持を圧し折ると誰にも反応できない速度で近づき蛙吹に触れた。しかし相澤が個性を封じる。
緑谷が慌てて死柄木を殴りつける。腕は折れなかった。ここにきて出力を調整出来た。が、その拳は割り込んだ脳無により防がれた。
脳無がそのまま緑谷の腕を掴もうと手を伸ばす。瞬間、雷鳴が鳴り響く。脳無が吹き飛んだ。
「無効化じゃねえなあ。吸収? 減衰? どのみちダメージなくても押せば飛ぶなあ」
「カムイちゃん!」
「稲妻君!」
「ああ? 生きてたのかよ、お前」
現れたのは紫電纏うカムイ。バチバチと周囲で空気が弾ける音が響く。
「テメェこのガキ! さっきはよくも!」
「まだ体が痛えぞごらぁ!」
と、先程カムイにより動きを封じられていたヴィラン共が向かってくる。
「引っ込んでろ三下」
BZZZZZZZZZT!!
大気を引き裂き駆け抜ける雷がヴィラン達を焼く。雷鳴が鳴り響くほどの高音ではない。加減した雷撃。視線すら向けない。カムイの興味は一つだけ。
「遊ぼうぜ脳無」
己の攻撃を防ぎ投げ飛ばした脳無というヴィランただ一人。
「は。生きてたのは驚きだけど、実力差ってのが分からなかったのかい? 脳無はオールマイトを殺すために改造された特別製。片腕失ったお前じゃ……………ぁ………?」
ニヤニヤと笑っていた死柄木は、しかしすぐに困惑する。向けられているのはカムイの右腕。
「お前、その腕………」
「? ああ、生えた」
「生えんなあああああ!?」
カムイは袖が千切れ剥き出しになった右腕をコキコキと鳴らす。相澤は目を見開いた。
カムイ曰く個性は変形型。変形型は普段は人の姿をしていても変身後にその生物の力を使うタイプもいる。例えばタコの再生能力など。
(此奴は雷を使う獣………『雷獣』。リューキュウと同じ存在しない生物への変身のはず………)
それが再生能力を持っている可能性も、なくはないだろう。だが新たな腕を生やすレベルだなんて、それこそ個性を複数持っているかのような。
「リジェネ使うなよなあ。お前デインとか使ってろよ」
「俺はミナデインだっての。つーか動かねえな此奴? 脳の電気信号も……………ああ」
自分を吹き飛ばした相手に仕返しの一つもしようとしてこない脳無に首を傾げたカムイはしかしすぐに納得したように手だらけ男を見る。
「さっさと此奴に命じろ。そりゃなあ、俺にとっては大概雑魚だから内面で判断するが、ちゃんと強い相手は内面なんざなくても遊びてえんだ」
「余裕振りやがって。ムカつくなあこのガキ…………いいよ、お望み通りだ。脳無、そのガキを殺せえ!!」
「──────!!」
死柄木の言葉に脳無がカムイへと迫る。振るわれる拳は人など容易く破壊する必殺。それを、カムイは殴り付けた。
「ハハ!」
指が砕け腕が二、三か所圧し折れるも次の瞬間には元通り。それどころか両手の爪が伸び皮膚が黒く染まる。あれが恐らく個性の本質、『雷獣』への変化。ただし一部分。
両手両足。靴が裂け、鋭い爪が地面を掴む。
「
ドォン! と腹の底から揺さぶられるような轟音。
立ち込めるオゾン臭。
「────!!」
当然そんな熱量に耐えられる性能を持っていない脳無は火傷を負い、そこはショックを吸収出来ず炭化し砕けていた。しかしすぐに治りカムイを殴り付ける。
骨が砕け皮膚を突き破るもカムイもすぐに癒えた。
「お互い不死身系男子か! どっちが先に壊れるか、勝負と行こうぜ!」