『うお! 今度は一人で120名脱落させた!? いいですね〜、眠気が吹き飛んだ』
「………………」
目良も大変だな、と公安の知り合いがする放送を聞くカムイ。
余所見するなとは言われたが、俯瞰的に全体を見ているのでこれは余所見ではない。ちゃんと他の動向も見ている。
そろそろ轟が接敵しそうだ。
「!!」
飛んできたボールを炎で焼く。そこそこ丈夫な素材で出来ているのか炎の勢いで速度を落とし地面に落ちた。
「やるやる〜。流石は雄英体育祭3位! 轟君だっけ? しかし、一人で行動するなんてすごいね〜。余裕ありまくりー」
校風なのか卒業後チームを組む予定なのか、忍び装束で統一された集団。リーダーらしき男が軽い調子で話しかけてきた。
「でもさぁ、いくら雄英だからって一人はまずいっしょ!」
「1対10だよ? どうすんの?」
赤、黒、青、緑、黄色、桃、紫、白群、水色、橙。全部で10人の忍者が轟を狙う。
「助かる。探す手間が省けた」
「ハハ。かっこいいねえ!」
黒、青、緑、黄色がボールを投げてくる。全然忍べない派手な色なれど忍者っぽいだけあり投擲は得意らしく個性なしにしては中々の速度。
が、轟が氷で防ぎ同時に地面を走らせた冷気が足を拘束する。
轟の足元から紐を張るように薄く凍りつき、忍者達の足元で氷が増殖したのだ。
「あんたら、本当に体育祭見てたのか?」
その割には簡単に姿を晒した。芦戸がどんまいコールを食らう羽目になった大氷結を使えばそのまま終わっていたぞ。
「もちろん見てたよ!!」
と、リーダーの赤が六角ナットを飛ばしてくる。空中で速度そのままに巨大化した。
(小大と似た個性か?)
物間によってカムイズブートキャンプに巻き込まれることになったB組の一人、小大唯の個性、物体を大きくしたり小さくしたりする『サイズ』を思い出す轟。
氷で防ぐ。
「まだまだぁ!!」
今度は釘。巨大化し質量の増した釘がとうとう氷の盾を砕いた。そのまま迫りくるナットを回避する。
忍者達は足の氷に釘を差し砕き、仲間達の氷にもナットを投げつけて拘束を破壊した。
「炎、また使わないのかなあ? まあ使われても、熱に強いタングステンだけどね、これ」
開いた指にいつの間にか挟まれているナット。大した手品だ。個性を考えればあれは単純な技術なのだろう。
「言ったっしょ、轟くぅん! いくら雄英生だからって、単独で動くなんて………余裕、ありすぎだっての」
何処か苛立ったようにも聞こえるその声は、或いは轟の態度を舐めていると取ったのかもしれない。
実際、舐めていたのは否定出来ない。どうせカムイより下だと………。まあ、それ自体は事実なのだが、それでも彼等は思っていたよりやる。
「助かる」
「ん?」
「ちゃんと強くて。おかげで、今の俺の実力が分かる」
「そう。んじゃ、精々現実を痛感しなよ!!」
いけ、と赤が叫ぶと青と黒が動く。水と泥水。回避すると2人に増えた黄色が迫る。眼帯の位置が違う。鏡像?
「ぬうん!!」
「てあ!」
張り巡らされた巨大なパイプを腕力で剥がし投げてきた。増強系………増やしたのは隣にいた緑か?
炎には泥水と水を使うつもりだったのだろう。で、氷には物理。他5人は?
「飛ばせ」
「おう!」
橙が刃物を生み出し、白群が風に乗せ飛ばして来た。紫が露出する肌を金属光沢のある黒い色に変え迫る。切島…………いや、鉄哲の類似個性!
「半冷半燃って、妙な名前つけたよな」
「そうか?」
「半氷半炎にするべきだろ。氷と炎が出んだし」
そうはいっても、ただ出すだけだ。冷やして凍らせ、熱して燃やす。なら別段名前の通りの個性ではないだろうか?
「炎や氷の個性持ち全般に言えることだが、お前等も質量保存の法則超えてるからな?」
「エネルギー保存じゃねえのか?」
「例えばハンダゴテ………あれ熱しても炎は出ねえし、冷凍庫に張り付く氷だって量は知れてる。可燃物や水が明らかに増えてんだよ」
もちろん冷気や熱自体は発生している。触ると熱いし冷たい。空中に氷や炎を生み出す事は出来ない。
だが、轟の体から発生させた冷気は水分量関係なく氷を生み出す。
「まずは慣れてる氷から極める………
「んぐぉ!?」
飛んできた刃を氷の盾で防ぎつつ、金属化した紫を氷の大槌が殴り飛ばす。
「ちぃ!」
桃が糸のようなものを出し受け止めた。
「ぬおおお!!」
黄色が接近し盾を砕かんと拳を振るうが、鈍い音を立て拳が弾かれた。盾には亀裂。
「硬い!?」
「脆い!」
氷を生み出せるならその形、密度も自在の筈と個性の解釈を広げたが、まだ荒い。心の中に疑問が生じている。
(………『確信』しろ。疑問を捨てろ、常識を捨てて解釈を広げろ! 俺には、出来る!!)
要するにイメージが足りてないのだ。もっと強く、硬く、鋼鉄をイメージしろ!!
赤が再びナットと釘を放ち巨大化させる。
「………そんな薄氷で!!」
防いだ。防げた。だがそれでも上限はある。それは個性の練度や確信とは異なる、個性の限界。限界がないなら言ったモン勝ちの個性を持つアメリカのトップはもっと理不尽だ。
「音からして精々が鋼鉄! だったら、氷じゃなく鋼鉄を砕くつもりでいけ!!」
「「「おう!!」」」
泥水を放つ青が水流を細くする。泥水……細かい粒子の混ざった圧縮水流の破壊力は水のみより上。
「
轟が雪玉を投げつける。触れた瞬間冷気が広がり青の腕が凍り付いた。
「くっ!?」
「氷結は伝ってくるんじゃないのか!?」
「事前に冷気を閉じ込めてたんだよ」
複数の雪玉を生み出しラクロスのラケットの様な形にした氷で一気に投げつける。
狙ったわけではない氷は躱され辺りにばら撒かれ弾けた。
「動きが、雑だよ、轟君!」
接近した赤の攻撃を防ぐ。掌底? と、掌に隠されていたナットがゼロ距離で巨大化しその勢いで轟を吹き飛ばす。
「舐めてたよ………ああ、俺達こそ舐めていた。謝るよ、流石は雄英。でもね、それでも単独は、やっぱり余裕がありすぎでしょ」
「……………巻き込んじまうからな」
「…………何?」
「この前、カムイと姉さんが出かけた時、カムイの奴姉さんを人質に取られかけたんだ。あのカムイが」
プロ、
「領域、展開………」
「──!」
さっきばら撒かれた雪玉や散らばった氷が、気温を下げて!?
「
周囲の温度が急激に冷え込む。
「悪いが今から、ここは俺の領域だ」
「さ、寒! だけど、それだけだ!」
黒が水を放とうとした瞬間、一瞥もなく腕が凍り付いた。
「ぐっ!?」
壁に叩きつけて割る。再び水を放とうとして轟と目が合う。轟が黒に手を向け握りつぶす様に指を動かすと黒の体が氷で拘束される。
「!? 地面に触れてなかったぞ!!」
「言ったろ。ここは、俺の領域」
「リーダー!」
「!!」
2人の黄色が赤から受け取った電柱ほどの太さになったタングステンの釘を振るう。氷の盾に防がれる。砕けない!? 違う、ひび割れた瞬間修復している。
「くそ!」
「切り刻まれろ!!」
黄色が1人になり、緑が紫を増やした。
橙と白群の合体技に鋼鉄の体を持つ2人の紫が迫る。
「エンデヴァーのバニシングフィスト。炎を拳の形にしてたろ? 炎操れるなら氷も操れねえの?」
氷の鎧を纏った巨人が巨大な盾を振るい紫と刃を吹き飛ばした。
「っ! 引くぞ、あれには勝てん!!」
「判断が疾いな。だが、遅かった」
バキンと全員が氷に拘束される。轟には触れていない。地面にだって!
カムイの速度に対応するために編み出した必殺技。冷気を固体のみならず気体ごと伝播させた領域を生み出す。
効果範囲内全てが何時でも氷を生み出せる轟の領域。
流石にそれだけの冷気を出そうとすると体温が下がりすぎるという個性限界を外部で冷気を循環させ増幅させるという手段でクリア。ただし発動には事前準備が必要で、発動後は体温も下がり始める。
「なめてたよ、轟君………体育祭とは別人だ。ターゲット取るの、一人は俺にしてくれ。リーダー責任だ」
「リーダー!? 待て、俺は2年だ! ここは俺に!」
「…………すいません。先を急ぐんで、近い奴から」
轟はそう言うと黒と黄色のターゲットにボールを当てた。
「いいね、面白え」
と、不意に携帯が震える。メッセージ?
| 焦凍は一次試験を超えたか? |
| 時間的にそろそろだろう! |
| 無視をするな! |
| 焦凍おおおおお! |
「…………………」
「どうした?」
「スパムメールだった」
忍者10人組
アニオリのヒーロー科生徒達。なお、アニメでは10人組のうち個性が発覚したのは5名