個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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無敵の男

 緑谷の謹慎が終わり本格的にインターンについて話が始まる。爆豪は仮免を取れてないので関係ないから居なくても問題ない。

 

「入っておいで」

 

 と、相澤が言うと扉が開き3人の男女が入ってくる。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう。多忙な中都合を合わせてくれたんだ、心して聞くように」

 

 男二人に女一人。その男のうち1人、つぶらな目をした男子生徒を見て緑谷がギョッと目を見開く。知り合い?

 

「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3人。通称ビッグ(スリー)の皆だ」

 

 つぶらな瞳の男、目つきの悪い男、髪の長い女。

 仮免を取得したのが例年通りの二年だとしても一年はプロヒーローと同等の経験を過ごした学生であり、その中でもトップに君臨する3人。

 

「映えある雄英生の中の、頂点」

「学生の中で一番プロヒーローに近い方々」

「あの人達が……的な人がいるとは聞いていたけど!」

「びっぐすりー!」

「めっちゃキレーな人いるしそんな風には見えねー………な?」

 

 雄英………というかヒーロー大好きな緑谷のブツブツがないということは去年の体育祭では目立つ活躍がなかったのだろうか? しかし今は雄英トップ。

 

「じゃあ手短に自己紹介してもらうか。天喰から」

 

 その言葉にギンと鋭く教室を一瞥する天喰と呼ばれた黒髪の男子生徒。乗りに乗って僅かに獣化したカムイの方が怖いので全員どんな言葉が聞けるかの緊張だけですんだ。

 

「駄目だ。ミリオ……波動さん………ジャガイモだと思って望んでも、頭部以外が人間だ。どう見てもかぶりものした人間だこれ。辛い、言葉が出ない、頭が真っ白だ。帰りたい」

 

 ええ、とまさかの態度に困惑する一同。

 

「あ、聞いて天喰くん! そういうのノミの心臓っていうんだよ。ね! 人間なのにね! 不思議!」

 

 と、女子生徒。

 

「彼はノミの天喰環」

 

 いいのか、その紹介で。

 

「それで私は波動ねじれ。今日は校外活動(インターン)について皆にお話してほしいと頼まれてきました。けどしかしねえねえところで君は何でマスクを? 風邪? おしゃれ?」

「これは昔……」

 

 そう問いかけたのは障子。

 あくまで傷に意味を求められたくないだけの障子は答えようとするがしかし波動はすぐに別の生徒に向き直る。

 

「あらあとあなた轟君だよね! ね!? 何でそんな所を火傷したの!」

「!? それは………」

「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる? 動くの!? ね? 峰田君の頭のボールは髪の毛? 散髪はどうやるの? 蛙吹さんはアマガエル? ヒキガエルじゃないよね? どの子も気になるところばかり。不思議」

 

 事前に下級生の名前全員覚えてくる辺り、真面目な生徒であるのだろうが知りたがりが過ぎる。

 

「天然っぽーい。かわいー」

「幼稚園児みたい」

 

 上鳴と芦戸はほんわかしてる。

 

「おいらの玉が気になるってちょっとー! セクハラですって先ぱはぁい!!」

「カムイちゃん」

「ん」

 

 八百万が後ろでとてつもなく悍ましいものを見る目を向け梅雨ちゃんの言葉にカムイが電気を飛ばす。グペッ! と短い悲鳴を上げ峰田は固まった。

 

「なんで峰田くん雷で痺れさせたの? 峰田君の言う玉ってなぁに? 蛙吹さんがやらせてたよね。2人は仲良し? ねえねえあのね気になるの教えてねえ」

「合理性に欠くね」

 

 相澤にギロリと睨まれ最後の男子生徒がハッとする。

 

「イレイザーヘッド! 安心してください、大トリは俺なんだよね! 前途ー!?」

 

 と、突然叫び耳をこちらに向けてくる。誰もが意味も分からず教室に静寂が訪れた。

 

「多難ー! っつってね! ようし、つかみは大失敗だ!」

 

 三人とも何処か変わっている。ビッグ3と呼ばれる割に風格も感じない。必修でもない校外活動(インターン)の説明に現れた3年生に困惑の視線ばかり向き、ミリオと呼ばれていた男もそりゃそうだ、と頷く。

 

「1年から仮免取得だよね。フム………今年の1年はすごく元気あるよね。1人に至っては実質プロヒーローだし」

「………………」

「そうだねぇ。何やら滑り倒してしまったようだし……君達纏めて、俺と戦ってみよう!」

 

 彼等の経験をその身で経験しろ、と言うことだろう。

 

「稲妻君は必要ないよね! 君だけ校外活動(インターン)じゃなく実質プロ活動だから!!」

「まあ、そりゃそうだが」

 

 見学かよ、つまんねとカムイ。一同は体育館γに移動した。

 

 

 

 

「それじゃ、誰から相手します?」

「もちろん、全員でいいよ! 時間は有限、合理的にいかないとイレイザーヘッドに怒られる!」

 

 体育館γにて切島の言葉にミリオはそう返した。ピリッと空気が張り詰める。

 

「纏めてって、まさか本気でそういう意味ですか?」

「もちろんさ!」

 

 舐められてる、と感じた。全員に戦意が宿る。ただし芦戸は波動に角を「動く!」とイジられムズムズするこそばゆさに「おやめくだされ」と抗議し話をあまり聞いていない。あの角、左右連動してるらしい。

 

「俺達そんなに弱そうに見えますか?」

「むしろ1年の頃の俺達より強そうだよね! でも、だからこそ全員一度にその身で体験するべきだよね!」

「そういうことなら………まずは俺か」

「いきます!」

「緑谷!?」

 

 真っ先に飛び出した緑谷。瞬間、ミリオの()()()()()

 

「きゃあああ!?」

 

 上着もズボンも等しく落ちてなんならパンツも。丸見えになるそれにA組で一番乙女な耳郎が叫ぶ。緑谷も動揺し動きが鈍った。それでも放たれた蹴りはミリオの顔面をすり抜けた。

 

「顔面かよ」

 

 緑谷に振り返ったミリオに迫るネビルレーザー、酸、テープ、ミサイル。しかしそれらもすり抜けた。

 

 土煙に隠れたミリオ。追撃するべきか判断に迷う近接組。と……

 

「まずは遠距離持ちからだよね!」

 

 何時の間にやら耳郎の背後に現れたミリオ。全裸だ。

 全裸だ!!

 

 絹を裂くような悲鳴を上げた耳郎がイヤホンジャックを自分の喉に刺す。その口から放たれる音速の衝撃は、しかしミリオを透過する。

 

「え、ほ………!」

 

 サポートアイテムを容易く操ってくるカムイへの対策として編み出した自らの喉を使う音波攻撃。まだまだ慣れていないので身体への負担が大きい。

 

 一瞬ふらついた耳郎の腹にめり込む拳。

 

「ワープした!?」

「透過だけじゃないのか!?」

深淵投射(ブラックバレル)!!」

 

 影に形などない、とはカムイの言葉。

 黒影(ダークシャドウ)は手を伸ばす、巨大化などはしても形は大まかに常闇と似通っていた。普段はそもそも実体なく常闇の中に宿るのだ。

 

 それでも顕現した形が常闇の影写しなのは、黒影(ダークシャドウ)自体がそれに執着しているから。

 しかし対話と訓練、個性の解釈の拡大により今の彼に形の縛りはない。

 

 凝縮された漆黒のエネルギーが放たれる。が、やはりすり抜けたミリオの腹を貫通しながらミリオ本人は常闇に迫る。

 

深淵闇躯(ブラックアンク)!!」

 

 咄嗟に黒影(ダークシャドウ)を纏い近接主体に切り替えるも腹にめり込む拳。瀬呂がテープを放ち、かわそうとしたミリオがカクリと転びそうになる。足に何時の間にか峰田のモギモギ。

 

「おお、やるじゃないかみ──」

 

 倒れながら入水するようにミリオの体が地面に沈んだ。モギモギはその場に残された。

 

「地面に消えてる、なら!!」

 

 と、葉隠が地面に触れる。葉隠は自身の周囲の光を屈折させる。これまでは肌でそうして来たと解釈していたが、青山のレーザーすら曲げられない。火傷はしてない。それはつまり、肌に直接触れていない屈折している隙間がある。それを、広げる!

 

「透過拡大まるみえ!」

 

 地面が透明化する。その中で落ちていくミリオを見つけた。体制調整? 兎に角体の向きや手足の位置を変えるとものすご勢いで上がってきた。

 

「疾すぎ!?」

 

 上がってきた、と思った瞬間には峰田の後ろ。腹を蹴られ、瀬呂の腹に峰田がぶち当たる。頭のモギモギのおかげでダメージが少なく済んだ瀬呂を更に殴る。

 

「地面がないねー。君だね!」

「わわ!? とうめいにんげん!!」

 

 体操服ごと消える葉隠。しかしミリオが大雑把に振った腕に感触。そのまま殴る。

 

「ぐえー!」

 

 ゴロゴロ転がる葉隠。地面が戻った。

 

「仕組みは分かったけど、どうすんだこれ!?」

「『クラスアイテム』『ショート』!!」

「ん?」

 

 八百万が冷凍ガスの入ったサポートアイテムを生み出す。轟が呼んだか、と振り返った。

 

「温度………いえ、空気も透過していますわ! 基本無敵、攻撃のチャンスはカウンター!」

「いい観察眼だね!」

「っ!!」

 

 咄嗟に盾を出すもミリオの拳は盾をすり抜け八百万の腹にめり込む。

 

「カウンターなら、俺が!」

 

 上鳴がミリオへ向かう。全身に雷を纏う。これなら確かに攻撃を受けると同時にダメージを与えられる。

 

「こうするよねこういう時は!」

「またかよおおお!?」

 

 峰田が飛んできた!

 

 上鳴が慌てて帯電を解除。刹那感じる攻撃の意思。再び帯電に峰田が「あばば」。ふらつきながらも衝撃に備えるも来ない。

 

「動きを先読みするんだね。でもそういう相手知ってるのさ!」

 

 ジャージを拾ったミリオがジャージを腕に巻き付け上鳴を殴る。帯電が切れた瞬間腹に膝!

 

 芦戸、梅雨、他の遠距離持ち達にも迫る。防ごうとするがその都度対応される。

 

「POWERRRRRRR!!」

 

 勝者ミリオ。

 

 

 

 通形ミリオ。相澤曰く、プロを含めた上で最もNo.1に近い男。強さ、キャラ、精神性、そのどれもが高水準。

 

 個性は『透過』。あらゆるものを透過する。

 透過し物質内にいる時に解除すると同時に物質が同じ場所に存在する事は叶わず弾き出される。

 

 一瞬で移動するそれは弾き出される際体の向きや方向を調整し弾き出される場所を調整していたのだ。

 

 ただし透過中は音も光も透過するので本人は重力だけが残る闇に放り込まれる。一応透過する部位を選べるが、例えば壁抜けには片足を透過、壁にある部分だけ透過したまま足裏などを解除、残りを透過し何も見えないまま壁を抜けてから解除しなくてはならないと使い勝手の悪い個性。

 

 壁抜けでさえそんな手順を必要とする使い勝手の悪い個性を無敵にしたのは先を予想する力。そしてその力は経験により裏打ちされる。

 

 インターンは間違いなくその経験を手に入れる絶好の機会だ。

 

「なので八百万、葉隠、上鳴。教える側にも経験が必要。稲妻がプロヒーローと同等だろうと学生はインターン先にならない」

「え〜!?」

「残念です……」

「うぇ〜い」

 

 

 

 さて、時間は代わりその日の夜、とある廃工場。

 その日その頃その場所で。

 

「見るからに不衛生だな。ここが拠点か?」

「ああ! いきなり本拠地につれていくかよ。面接会場ってとこ!」

「勘弁してくれよ。ずいぶん埃っぽいな。病気になりそうだ」

「安心しろ! 中にいる奴等はとっくに病気だ!」

 

 (ヴィラン)連合トゥワイスはペストマスクを付けた男を引き連れ扉を開ける。

 

 中には荼毘と七海を除いた他のメンバーが揃っていた。

 

「話してみたら意外といい奴でよぉ! 死柄木(おまえ)に会わせろって! 感じ悪いよな!」

 

 何処か嬉しそうなトゥワイス。仲間が増えるかもしれないのが嬉しいのだろう。死柄木はしかし胡乱げに男を睨む。

 

「………とんだ大物、連れてきたな………トゥワイス」

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