個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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オーバーホール

「大物とは、皮肉が効いてるな(ヴィラン)連合」

 

 死柄木の言葉にペストマスクの男はそう返す。どうにも友好的に接する気はなさそうだ。

 

「何? 大物って、有名人?」

「先生に写真を見せてもらったことがある。いわゆるスジ者さ。「死穢八斎會」その若頭」

 

 マグネの疑問に答えてやる死柄木。このご時世ヤクザなんて時代遅れの集団。細々生きつないでいる指定(ヴィラン)団体なんて、それなりに調べられる立場にいなければ顔も知らないだろう。

 

「極道!? ヤダ、初めて見たわ! 危険な香り!」

 

 マグネは危ない男が好みだったらしくテンションが上がる。

 

「私たちと何が違う人でしょう?」

「よーし、中卒のトガちゃんにおじさんが教えてあげよう」

 

 自分達とどう違うのかと尋ねるトガにコンプレスが説明した。

 嘗ては裏社会を取り仕切っていたこわーい団体。ヒーローの隆盛により衰退し、オールマイトがとどめとなった。

 

 生き残りも(ヴィラン)予備軍として監視されながら生きている。とっとと解散してしまえばいいのにそれをしない奴等など時代遅れの天然記念物だ。

 

「まぁ、間違っちゃいない」

 

 結構侮辱的な態度だったが男は気にしていないようだ。

 

「それでその細々ライフの極道くんが何故うちに? 貴方もオールマイトが引退してハイになっちゃったタイプ」

 

 近年増え始めた組織立った(ヴィラン)。現状組織というよりは単なるチームの集まりだが、活動的になっているのは間違いない。

 

「いやオールマイト(ヒーロー)よりもオール・フォー・ワンの消失が大きい」

「────」

 

 裏社会の全てを支配していたという闇の帝王。オールマイトが現れた世代には都市伝説扱いだったそいつを、老人達は死亡説が流れても恐れ続けた。

 

「それが今回実態を表し……タルタロス(監獄)にぶち込まれた。つまり今は、日向も日陰も支配者がいない………日向は少々微妙だがな」

 

 オールマイトと共に魔王と戦った黄金の竜。規格外の力を持つあれはあの状態で実は死にかけていたというのだからつくづく規格外が過ぎる。

 

「日向が彼奴だとしても、力をつけきる前に個を飲み込む群を支配する次の日陰の支配者になればいい」

「…………ウチの“先生”が誰か知ってて言ってんなら………そりゃ挑発でもしてんのか? 次は、俺だ」

 

 魔王に育てられし後継者、死柄木弔が睨みつけながら宣言した。

 

「今も勢力をかき集めている。直ぐに拡大していく。そしてその力で必ずこのヒーロー社会をドタマからぶっ潰す」

「…………計画はあるのか?」

「計画? お前さっきから……仲間になりに来たんだよな?」

 

 先程から友好の欠片もないやり取りに死柄木が問いかける。敵対しに来た、と言われたほうがまだ納得できる。

 

「計画のない目標は妄想と言う。妄想をプレゼンされても困るんだよこっちは。勢力を増やしてどうする? そもそもどう操っていく? どういう組織図を目指している?」

 

 ヒーロー殺しステイン、血狂いマスキュラー、死刑囚ムーンフィッシュ………どれも駒として一級だが、連合はその全てを直ぐに落としている。

 使い方がわからなかったのか、と煽る男。

 

 イカれた人間十余人もまともに操れないのに勢力拡大? コントロール出来ない力を集めて何になる。

 

「目標を達成するには計画が要る。そして俺には計画がある。今日は別に仲間に入れて欲しくてきたんじゃない」

「トゥワイス……ちゃんと意思確認してから連れてこい」

「計画には莫大な金がいる。だが時代遅れの小さなヤクザ者に投資しようなんて物好きはなかなかいなくてね。ただ名の膨れ上がったお前達がいれば話は別だ。俺の傘下に入れ。お前達を使ってやろう。そして俺が次の支配者になる」

 

 それはつまり仲間になりに来たのでも、仲間にしに来たのでもなく、連合を自分の下に与させに来た。

 

「帰れ」

 

 その傲慢に対する死柄木の反応は簡潔であった。意を汲み取った様にマグネが立ち上がり巨大磁石に巻いた布を剥がす。

 

「ごめんね極道くん。私達誰かの下につくために集まっているんじゃないの」

 

 個性『磁力』。男にS極を付与してN極に引き寄せる。

 

「こないだ、友達と会ってきたのよ。内気で恥ずかしがり屋だけど、私の素性を知ってなお友達でいてくれた子。彼女言ってたわ。『常識という鎖に繋がれた人が繋がれてない人を笑ってる』」

 

 そこから飛び出したことを、勇気と言ってくれたのだ。

 

「何にも縛られずに生きたくてここにいる。私達の居場所は私達が決めるわ!!」

 

 ガンと鈍い音が響く。接触時、男はマグネの腕を爪で掻く。マグネの上半身が弾け飛んだ。

 

「「「────」」」

 

 連合の誰もが目を見開く中倒れるマグネの下半身。

 

「マグ姉!?」

「先に手を出したのはお前等だ………ああ、汚いな! これだから嫌だ」

「!!」

 

 ゴシゴシ服についた血を拭う男。やばいと判断したコンプレスが飛び出すも肩に何かが当たり、個性が不発に終わる。

 

 ただ男を触るだけ。触られた男は蕁麻疹を浮かべながら腕を振るい……

 

「どっちが味方?」

 

 突如現れた少女が両者の腕を千切った。

 

「!?」

「ってえええ!?」

「!!」

 

 死柄木がまず男に向かって駆け出し男は少女に向かって手を伸ばす。

 

「盾!」

 

 突然現れた別の男が死柄木の手から男を庇う。腕を投げ捨てた少女に伸ばされた腕は首無しの女に手首を掴まれた。

 

「危ないところでしたよオーバーホール」

 

 男を庇った男はそのまま崩壊。首無しの女、七海はオーバーホールと呼ばれた男を投げ飛ばすも、壁を破壊して現れた大男が受け止める。

 

 その背に乗る小さな人間、更に現れたほか2名。全員が嘴のようなペストマスク。わかりやすくお仲間。

 

「なあなあナナミ〜。どっちが私がこれから仲間になる奴等? どっちも弱そうでウケる」

「ナナちゃん………」

「ナナ……! なんだコイツは!」

「このメスガキがぁ! よくもやってくれたな!!」

 

 大男に乗った小さな奴が叫ぶ。少女は凶悪な笑みを浮かべバチリと紫電を走らせ、七海がその肩に手を置く。

 

「そこまで………」

「冷静に話が出来ていいな。お前達も止まれ」

 

 と、オーバーホールは己と腕に触れる。腕が弾け、かと思えば断面に集まり修復された。

 

「うわ、気持ち悪ぃ〜」

 

 少女はヘラヘラと笑う。

 

「お前も腕付けられる?」

「ちょ、オイ! なんだお前! ナナちゃん此奴何!?」

「……スカウトした」

「これを!?」

 

 わはーとコンプレスの腕を拾い直し切断面にベチャベチャ付ける見た目より子供っぽい少女にコンプレスが叫ぶ。七海が勧誘してきた仲間らしい。

 

「マグネ見れば助けられたんだろうけどさぁ!

いでで、やめなさい!」

「…………こうなると冷静な話し合いもできそうにないな。そうだな、戦力を削り合うのも不毛だし、ちょうど死体は互いに一つ。キリもいい。頭冷やして後日話し合おう」

「てめぇ、殺してやる!」

「弔君、私刺せるよ。刺すね」

 

 トゥワイスとトガが殺気を放つ。それに対して死柄木は……。

 

「………駄目だ」

 

 制止を命じる。

 

「責任取らせろ!!」

 

 トゥワイスはそれでも叫ぶが死柄木は許可を出さない。

 

「賢明だ手だらけ男」

「直ぐにとは言わないがなるべく早くがいい。よく考えてみてくれ…自分達の組織とか色々。冷静になったら電話してくれ」

 

 そう言うとオーバーホールは去っていった。残されたのは殺気だった連合にニコニコ笑う少女。

 

「それで? このクソガキはなんだ」

「雷業カンナ! 仲間になりに来てやった! けどなんかケンカしてるし1人殺されたみたいだし、なっさけね〜連中だあ。これの仲間になるの? 嫌なんだけど」

 

 あっはっはっ、と豪快に笑う少女。

 

「てめぇ、何笑ってんだよ!? マグ姉が殺されたのに!」

「? アタシ、そいつ全然知らねーし!」

「カンナ………仲間になるはずだった相手なの」

「ん? ん〜? でも死んだ。弱い奴仲間に入れたままでもどうせ直ぐ死ぬって」

「このクソガキ!!」

 

 トゥワイスが激昂して一発ぶん殴ってやると拳を構える。次の瞬間雷がトゥワイスを焼き気絶させた。

 

「が、ふ………!」

「…………雷」

「カンナ…………」

「ああはいはい、悪かった悪かった〜。話してみれば仲良くなれたかもしれないね」

 

 何処までも軽い態度。友好的ではない空気に七海は首の穴からため息を一つ。

 

「この子はまだ子供。分からないことだらけだけど、強さは本物」

「らいごーのいし? を成就させるピースらしい。全然全く意味が分からないけど、連合(ここ)で個性鍛えろって七海が言うから従ってやる」

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